真剣で私に恋しなさい! ~Junk Student~   作:りせっと

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今回の話は少し短めです。


第2章 塵屑の決意
13話 ~国吉灯、決意する~


 決闘が終わって30分が経過した。夕日は今まさに沈もうとしている。じき夜が来るだろう。

 川神院に集まった観客たちは興奮冷めやまぬまま帰宅し、残っているのは川神家と川神院の修行僧たち。それに今だ意識が回復しない鍋島とさっきまで修行僧たちの治療を受けていた灯だ。

 

 

 

「お主意外にピンピンしとるの?」

 

 

「むっさい男に手当されたからふて寝したい気分だがな」

 

 

 

 灯の目の前にいるのは鉄心。ふと様子を見に来たら機嫌が悪そうではあるが思いのほか元気そうだ。タフなのか? それとも回復力が凄まじいのか? おそらくは前者だろうと鉄心は予想する。

 

 ただいくらタフであろうと怪我を負っていない訳ではない。灯は頭に包帯がガッチリと巻かれ、目視は出来ないが腹にもアザを消すためのシップが何枚か貼られている。極めつけは右腕を骨折した時のように三角布で吊ってあることだ。

 

 鉄心は細い目を見開いて吊ってある右腕を凝視する。

 

 

 

「その三角布は腕を赤くした代償じゃな?」

 

 

「そうだ。今右手で腕相撲したら5歳の幼女にすら負ける自信がある」

 

 

 

 幼女!? とどこかで叫ぶ声が聞こえたような聞こえなかったような気がしたがこの場で気にすることではない。

 

 

 

 

 

 灯の筋力リミッター開放、通称「ドロー1」は莫大な力を引き出せる。

 ただ当然リスクはある。リミッターを付け直した際に全く力を込めることが出来なくなる。解除し続けた時間にもよるがだいたい1日ほどは右腕は使い物にならない。握力は缶ジュースを持てなくなるほどまで落ちるし、腕は肩の高さまで上がらない。酷使した筋細胞を直ちに休ませなければならないことが原因だ。

 

 

 

「ただその代償を負った結果はあったの。鍋島が一撃で沈んだのは初めて見たわい」

 

 

「あの状態のワンパン直撃で沈まなかったらそいつは頭取れても生きてるだろうよ」

 

 

「言うのぉ、それだけ自信があると言うことか」

 

 

「カードは自信を持って切るタイプなんだ」

 

 

 

 そう言うと唇を片方だけ引き上げ不敵な笑みを作る。あの状態での一撃によっぽどの自信があるようだ。威力が絶大であるのは鉄心も目にしているので、その自負が口だけではないことは百も承知だ。

 

 

 

 

 

 先の決闘を見て鉄心は若干朧げながらも灯の戦闘スタイルを理解し始めた。

 

 試合の時に見せた破壊力。リミッター解除する前も充分な威力を保持していた。それとガードが下手くそ……もとい防御意識が薄いこと。そして灯の性格を考慮すると――この男はとにかく一撃一撃の威力を重視した超攻撃型であると言うことだ。

 例えるならジャブを一切せずに右ストレートで全てを仕留めK・O勝ちするボクサーと言ったところだろうか?

 

 

 

 鉄心はちらりと灯の左腕を見る。あの怪力にしては意外と細い腕をしている。非常に筋肉が詰まっており、鍛えられていると予測。触っていないので断定出来ないが柔軟な筋肉であるのだろう。

 

 ふと鉄心は気づいた。この筋力のつき方は誰かに似ている。身近にいる誰かに……1秒ほどで答えは出た。

 

 

 

(モモか、モモに似とるんじゃ)

 

 

 

 鉄心の孫である川神百代。彼女もパワーに特化している武道家だ。世界の名だたる武人を右腕1本で数え切れないほどなぎ倒して来た。一撃で決着を付けるスタイルは灯と似ている。

 

 それに百代は全てをワンパンチで乗り切り且つ”瞬間回復”を会得してしまったが故に防御の技術が欠け始めている。回復すればいいのでガードは必要ないと、無意識の内に根付いてしまってるのだ。防御意識が薄いとこも灯と似ている。

 

 だが百代は瞬間回復を持っているから防守をしない。それに対し灯は瞬間回復を使えない。だのになぜ防御意識が薄くなってしまったのか?

 

 

 

 

 

 その疑問は既に鉄心の中で解決していた。

 

 

 

(日向……お主も攻撃を防ぐなんてことしなかったの)

 

 

 

 灯の祖父、国吉日向の戦闘スタイルは攻撃を避けずに受け、それよりも多く攻撃を打ち込んでいく物だった。相手が1発殴ってきたら日向は3発殴り返して敵を打倒する。ノーガードの打ち合いで数え切れないほどの勝ちを奪ってきた男だ。

 

 その祖父に鍛えられてきた灯だ。防御よりも攻撃を優先するようになったのは必然と言える。

 性格といいどこまで祖父に似たんだ……と若干鉄心が呆れた瞬間、それが切っ掛けとなりあることを思い出した。

 

 

 

「国吉、そういえばアレはどうした?」

 

 

「アレ? コンドームか? 鉄心さんはもうとっくに枯れているから関係ないもんだろ?」

 

 

「失礼な! まだ現役……って違うわい! あの武器じゃよ? 日向が愛用していた武器じゃ。お主は使えんのか?」

 

 

 

 その内容は国吉日向が現役時代に愛用していた武器はどうなったのかというもの。

 日向に鍛えられた灯も使えるのではないか? と勝手な想像をしながら武器の行方を問う。鉄心の脳裏には日向があの武器身につけて腕を組んで仁王立ちしてる姿が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがそれに対する返答は想定外のものであった。

 

 

 

「あぁ……アレか、使えるよ。俺のメインウェポンだ。ただ壊れた」

 

 

「…………は? 壊れた?」

 

 

「おう、パキーンと割れた」

 

 

「割れた……じゃと……?」

 

 

 

 鉄心の目が見開いた状態で固まってしまう。日向の象徴とも言える武器だったのだ。ライバルだった鉄心にとっても思い出深い物である。

 それをこうもあっけらかんと、一言で壊れたと言われてしまったら何も言えなくなる。何か喋ろうとも言葉が出ない。

 

 

 

「直したいんだけどな、俺じゃ無理だ。かと言って今の時代に鍛冶屋何ていねぇだろ? 鉄心さんあんた直せるか?」

 

 

 

 ただ直せるかと聞いてくる辺り未練が無い訳ではないらしい。灯も眉間に皺を寄せ、渋い表情を浮かべてどうにかならないかと尋ねていきた。

 

 

 

「わしも無理じゃ。専門外じゃし」

 

 

 

 だろうな――と期待はしていなかったのか灯はあっさりと引き下がる。

 

 灯が直したがっている遺品は武器を専門に扱っている鍛冶屋、または相当腕が良い技術屋等でないととても直せそうにない。

 何より灯にとっても非常に大切な品物だ。おいそれと他人にホイと渡せる物ではない。信用でき腕が立つ人物じゃなければ依頼する気はないのだ。

 

 だがそんな人は近くにいないので既に修復は諦めている。だからこそこのような淡泊な態度を取れるのだ。

 

 

 

「さて……治療もしてもらったし、そろそろ行くわ。ここにいるとモモ先輩に襲われそうだ」

 

 

 

 時計を見ると既に夕飯を食べ始めてもおかしくない時間だ。

 これ以上川神院にいると灯はバトルジャンキー先輩に捕まってもおかしくない。なので退散することする。体はまだ充分に動くが流石にいつもよりは疲れている。

 

 

 

「そうか、今日は中々面白いもんを見せてもらったよ」

 

 

「年寄りの楽しみとしては中々のショーだったろ?」

 

 

 

 軽口を叩きながら麩を開けて川神院の正門へと向かう。鉄心が見送ったその背中は怪我を負っていながらも非常に堂々としているものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れさま」

 

 

 

 門を出た瞬間誰かに声をかけられた。声質からして女性である。非常に大人っぽい声で灯と同年代ではなさそうだ。

 正体を知るべく灯は声が聞こえた方を見る。すると見知った顔がそこにはいた。

 

 

 

「んぁ? 弁慶? なぜここにいる?」

 

 

 

 魅力的な声の持ち主は弁慶であった。何時も通り錫杖を片手にもち、紐で繋がれている瓢箪が軽く揺れている。

 壁に寄りかかっていた弁慶は腕を使って壁から離れ、木の葉が揺れるようにユラーッとした歩き方で灯に近づいてきた。

 

 

 

「少しお前と話したくてさ」

 

 

「美女からのお誘いはいつでも大歓迎さ」

 

 

 

 どんなに体が疲れていようと、どんなに大きな怪我を負っていようとも、美女から「一緒に話そうよ」とか言われたら灯は絶対に断らない。フェミニストとしては当然の決断だった。頭に包帯、右腕に三角布を装備をしているので格好は付きそうにないが。

 

 ただ何時も通りの灯を見て弁慶に軽い笑みがこぼれた。

 

 

 

「こんな状態でも何時も通りなんだね。大した怪我じゃなさそうに見えるよ」

 

 

「右腕は別だが他は弁慶の言う通り大したことねぇよ」

 

 

 

 弁慶に影響されてか灯も似たような表情を作って左肩をすくめた。右肩は動かしづらい状態なので無理には動かさない。

 

 

 

「その右腕は?」

 

 

「真っ赤に燃えた代償」

 

 

「なるほど……」

 

 

「格好悪いからそんな見んな」

 

 

「そんなことないって」

 

 

 

 鍋島を壁まで吹き飛ばし気絶させるほど力を出したのだ。力の代価に支払った右腕は名誉の負傷と言ってもいいだろう。

 少なくとも弁慶はそう思っている。自分も似たような技を隠し持っているので多少の親近感も湧いた。だが親近感が湧いたのはそれ以外の理由もある。

 

 

 

「私は今日の決闘を見て灯の印象が少し変わった」

 

 

「良い方に変わったなら戦った甲斐があったんだが」

 

 

「お前は社会不適合者、自分の好きなことしかやらない人間だと思ってたんだ」

 

 

「自覚していたが他人に言われると何か来るものがあるな……」

 

 

 

 好きな物は酒とギャンブル。学園には遅刻しまくり、授業はサボりまくり。社会不適合者と言われても灯は何も言い返せない。何より自分が1番そのことを自覚している。更に弁慶見たいな美人に言われると、心の傷口に塩をぶちまけられるような辛さがこみ上げてきた。

 

 

 

「それに……プライドがない奴だとも思っていた」

 

 

 

 灯の行動を省みると決闘から逃げてばかり。勉学に対しても何位以上取るといった気持ちもなさそうに見える。数は少ないが頼みごとをされることは合った。が、どれも渋々とテキトーにやっている。グータラで不真面目だと思われるのは避けようがない。目標を持たずに唯々生きているように感じられた。

 

 弁慶も似たような行動を取っているとこはある。しかし学年3位を取らねばならないし義経を意地でも守る覚悟はある。そのような決意の差が灯と自分の違いだと思っていた、が。

 

 

 

「だけど今日の昼休みと決闘でそれは間違いだと気づいた」

 

 

 

 昼休みの似合わない一言。決闘で見せた意地。事流れ主義で生きている人間には絶対に言えない、出せない物だった。プライドがないという印象は今日で覆った。灯と弁慶の違うと思っていた所は、それは真逆であり共通点だったのだ。

 

 

 

「灯はかっこいいな。今はそう思っているよ」

 

 

 

 言葉通り灯は譲れない物を持っている。それがなんであるかは弁慶は分からないが確かにそう感じた。心に響いた。今の灯は決して顔だけ見て言うのではなく、心の底からかっこいいと口に出せる。

 

 

 

「そう思われて非常に光栄だ。これで包帯とか巻いてなかったらカッコつくんだけどなぁ」

 

 

 

「いいや、今日が1番かっこいいよ」

 

 

「……口説くのはしょっちゅうだが口説かれるのは久々だな」

 

 

 

 弁慶のような美人にかっこいいなどと言われると男としては鼻が高い。灯もその外には漏れない。何時もの様な不敵な笑みを浮かべずに、歳相応の笑っている顔を弁慶に向ける。

 

 

 

「普段はダメ人間って印象は変わってないけどね」

 

 

「変わりようがない現実を叩きつけられてしまった」

 

 

 

 しかしいくら良いところを見せたとしても、普段のから残念な行動は脳裏に焼きついている。それは決して変わるものではない。かなり持ち上げられて気分が良くなってきた矢先に、しっかりと落とされて灯の顔は引き攣る結果となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それでも弁慶の心が動いたのは揺らぐことない事実である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 弁慶を九鬼財閥の近くまで送り届け、灯は夜道を1人で歩いていた。コツッコツッと灯の足音だけが暗闇の空間に響き渡っている。無機質な音が響き渡っている空間の中、灯の顔は先ほどと打って変わって険しい物であった。

 

 

 

(まさかあそこまで苦戦するとは思ってなかったな……)

 

 

 

 思い出しているのは先の決闘。鍋島は強かった。が、カードを1枚切るまで追い詰められるとは想像もしていなかった事だ。

 

 

 

(最近不抜けていたのが原因か?)

 

 

 

 祖父が死んでからはずっと単独で鍛錬を続けてきた。修行している姿を他の人に見られたくないのと、自らが持つ何枚ものカードをチェックされたくないからだ。

 

 

 

 

 

 だがいくら気合を入れてやっているとしても1人で出来ることには限界がある。どうしても体作りが中心のメニューになってしまう。

 

 

 

 

 

 また気が抜け始めた時に第三者から発破をかけられることがないので気持ちの入れ直しが出来ない。

 祖父とのトレーニングの際は無理やり立たされたりもした。限界を超えろなど無理難題を吹っかけられたりもした。だがそれは重要なのだ。自分以外の人がいるから惨めな姿を見せたくないという気持ちが体を奮い立たせる。

 1人だと妥協する気持ちがなくとも、どこかで手を抜いてしまったりする。それを咎める奴がいないと限界は超えることが出来ない。それは灯も理解していたこと。だがそれを知っていても他人に見られることを嫌ってきた。

 

 

 

(あとは……単純に実践不足)

 

 

 

 1人では組手稽古が出来ない。ある程度実践に近い鍛錬もしなければ腕も錆びてしまう。実際に決闘を行う際の動き方がわからなくなってしまうのだ。

 

 灯が最後に全力で手合わせしたのは祖父が生きていた頃、動きが鈍くなってしまうのは必然である。

 

 

 

(…………戦うための動き方を思い出す必要があるな)

 

 

 

 鍋島との決闘はそこまで動き回る戦いではなかったが、それでも鈍くなってることを実感するには充分過ぎた。

 メニューを筋力トレーニング中心から、1つ1つの技をじっくりと確認しながらの反復練習を中心に切り替える等独力で出来ることはある。しかしそれでは動き方の感覚が少々戻ってくるだけで根本的な解決にはならない。完全に取り戻すまではいかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 川神百代は川神鉄心他、師範代や沢山の修行僧たちに揉まれ続けたからこそ異常とも言える強さを手に入れた。

 

 黛由紀江はワンツーマンで鍛え続けてくれた父がいたから阿頼耶の領域にたどり着くことが出来た。

 

 義経や弁慶、与一だって3人で切磋琢磨し他の九鬼の関係者たちも彼女たちの鍛錬を手伝ってきたからこそ英雄に恥じない能力を身につけた。

 

 灯も国吉日向という鉄心、ヒュームといった伝説になりつつある人物たちとタメを張る実力者に鍛えられてきたからこそ今の強さを誇っている。

 だが灯の場合昔のほうが体の使い方は良かったはずだ。筋力など身体能力は格段にパワーアップしている。が、それを活かすための動きを忘れかけている。それを取り戻すには実践を重ねるしかない。

 

 

 

 

 

  仕方ない、と灯は誰かと共に実践的なトレーニングをすることを決めた。他人にカードを晒すのはいい気分ではないが、そんな気持ちを優先している場合ではない。やるべきは感覚を取り戻すことだ。

 

 そのために付き合ってくれるパートナーをどうするかが問題となってくる。何もずっと相手してくれる人を探す訳ではない。一定の期間、2週間ほど密度の濃い実践式の鍛錬し続ければ充分思い出すはずだ。

 10年ほど祖父、日向の元で鍛え続けてきた。体の底では基本的な動き方はまだ覚えている、底に眠っている物を起こしてを引っぱり出すだけだ。

 

 

 

 

 

 だが灯の協力者はまずマスタークラスの人間ではないと話にならない。そうなると数は思いっきり限られてしまう。

 九鬼のバイトみたく、壁を超えてないにしろ精鋭が数多く迫ってくるのならば話は違ってくるがそれは無理な話だろう。

 

 

 

 

 

 灯はパートナー候補を頭の中に浮かべ始めた。

 モモ先輩、そのまま決闘に持ち込まれそうなので却下。そもそも川神院関係者は全員無理だろう。燕先輩、見返りを相当求められそうなので却下。俺は納豆嫌いだし。ヒューム、何を考えているんだ俺は? 自殺希望者ではない。

 

 

 

 

 

 次々と浮かぶもどれもピンッとこない人選ばっかりだ。そもそもマスタークラスでフットワークが軽くて暇な奴なんてそうそういないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あ、いたわ」

 

 

 

 ある人物が1人、頭の中で浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へい、らっしゃい! て、兄ちゃんか。どうしたのその腕?」

 

 

 

 場所は梅屋。釈迦堂刑部は今日も真面目に似合わない制服を着て、自らの好物を賄いとして手に入れるため働いていた。

 

 そこに同じ梅屋愛好者で歳は大分違うが友達である灯がいくつかの白いアクセサリーをつけて食券を買ってやって来る。

 

 

「限界を超えたらこうなった」

 

 

「まるで意味がわかんねぇよ。お、今日はカレー牛か」

 

 

 

 買った食券を釈迦堂に渡し灯はカウンター席へと着く。足を使って椅子引く姿は相変わらず行儀が悪い。

 

 その様子を見つつも特に注意することなく釈迦堂は注文の品を作りに一度キッチンへと向かい、3分かからずにカレー牛を片手で持ちながら灯の目の前に置く

 

 

 

「へいカレー牛お待ち!」

 

 

 

 置かれたカレー牛を右手は使えないので慣れない左手でスプーンを持ち食べ始める。

 

 

 

「腕の他に頭にも包帯巻いちゃって」

 

 

「ちょいと鍋島のおっさんとやりあってな」

 

 

「へぇ! お前が決闘とかそれはまた珍しい」

 

 

「色々あるんだよ」

 

 

 

 怪我した理由を簡潔に話しながら淡々と左手を動かして注文品を口へと運ぶ。

 利き手が使えないのでいつもより食べるスピードが大分落ちている。やはり不便なもんだと、灯は顔に出さずとも心の中で舌打ちをした。

 

 

 

 

 

 夕飯を食べるには少し遅い時間になっているので周りに客はいない。灯が来る少し前まではサラリーマンがそこそこいたが皆さっさと食べて帰っていった。回転率が高いのは丼ものを扱っている店の特徴だろう。

 

 だが人がいないのは灯に取っては好都合。梅屋に来たのは夕飯を食べに来たというのもあるが、メインの目的は釈迦堂にある頼みごとをお願いしに来たからだ。

 

 

 

「釈迦堂のおっさん」

 

 

「なんだ?」

 

 

「豚丼50杯奢ってやる。だから俺の相手しろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 塵屑が動き始める。

 




  こんばんわ、りせっとです。今回は伝えたいことがありますので後書きに書かせていただきました。



 今回の話、13話で『真剣で私に恋しなさい! ~Junk Student~』の第一章を終了と共に約2ヶ月ほど休止させていただきます。


 休止の理由と致しましては、私は今は学生ニートを満喫しているのですが4月から社会人となります。そのための研修が4月から開始されます。その研修が約2ヶ月程研修センターで行われて、多くの新入社員たちと一緒に住むことが決まっているんですね。
 なので大勢の人に囲まれて小説は書けませんし、何より仕事等を覚えることで手一杯になって小説を書く余裕はないと判断したことが大きな理由です。


 約2ヶ月程でお気に入りが755件もいったことは初めての体験で非常に嬉しく思いました。且つ、数多くの感想を読むのも楽しくて私のエネルギーになっています。私としては絶対にこの作品を完結させたいと思ってます。


 なので遅くともマジ恋A-2が発売する頃には戻ってこれたらと考えています。マジ恋はいくら社畜になろうともやっているんで。私の生存はTwitterとこちらの活動報告でたまに書き込んでいけたらなと思っております。
 それではこれからも『真剣で私に恋しなさい! ~Junk Student~』をよろしくお願いします。

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