魔法少女リリカルなのは 夢現の物語   作:とげむし

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第九話

 

前日、ジュエルシードという危険物を先行して回収しに行ったなのはちゃんを襲った謎の魔導師、フェイトと名乗る少女より、彼女の目的はジュエルシードの回収自体、ひいてはそれを依頼した母親の為であるという事を理解した。

 

現在地球にてジュエルシード回収を行っている高町家では、その回収意図がどのようなものであるかを含め、フェイトの母親、プレシアという人物を見定める為、高町桃子を派遣する事を決定。

 

フェイトの使い魔であるアルフを協力者とし、事態はフェイトの与り知らぬ所で鳴動するのだった……。

 

要は、母親同士の面談がしたいって事です。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

ユーノの発動した転移魔法により導かれた、フェイトの母親の居る場所。ユーノの放つ緑色の光が晴れた先には、驚愕に目を見開くフェイトと落ち着いた表情のアルフの姿があった。

 

フェイトはそりゃ驚く。なんせほんの数分前に別れた人間が今度は自分達から姿を現すなんて事になったのだ。当然転移座標を教えたアルフも説明なんざしちゃいない。

 

という事で、ここは口八丁で何とかやってやろう。

 

「悪いが後を尾けさせて貰ったよ。この小動物は補助とか転移とか得意らしいんでな。君の転移魔法を解析させて位置を割り出して貰った」

 

口を開こうとしたフェイトに先んじて自分が話す。自分の言葉にフェイトどころかアルフすら驚いて見ているのは逆にこっちがびっくりだ。まさかこんな誤魔化ししてくるとは思わなかったらしい。

 

そして嘘のネタにされたユーノは「よく言うよ……」と自分の足元で小声でボヤく。まぁいいじゃないか、多少事実らしいし。

 

「そんな……っ! スクライア……古代遺跡発掘の一族……」

 

フェイトがそんな呟きと共に改めて驚愕を貼りつけた顔でユーノを見る。小声で更に「移動する一族だから……」「緊急避難の転移が……」とか言っていて、ただのハッタリにも信憑性があったようだ。

 

その呟きを聞いて段々得意気になっていくユーノ。調子に乗るなよ小動物。

 

「フェイトさん。こんな風に訪問して申し訳ないけれど、どうしても一度あなたのお母さんとお話しなければいけないと思ったの」

 

「お願いフェイトちゃん、お母さんに会わせて」

 

未だ戸惑っているフェイトに対し、高町母子が声をかける。正直ここまで来てしまった以上、フェイトの同意が無くとも無理矢理会いに行くのも可能なのだが、そこは道理を通そうという事だろう。

 

「フェイト……」

 

「でも……、母さんは気難しい人だから……」

 

アルフからの声に、フェイトが不安でしょうがないと言った顔で返事を返す。まぁあれだけ事前の相談で断っていたフェイトだ、その程度は想定範囲である。

 

「ともかく、自分達はもう来てしまったんだから。ここまで来たら会わせて貰うぞ」

 

「…………わかった。ついてきて」

 

無理矢理にでも、と強い言葉で言った自分に、フェイトは不安そうな顔をそのままに、承諾の意を告げる。諦めた、というのが正しいのかもしれない。

 

そんな不安そんな表情のフェイトに何も思わない訳でもない、高町母子は心配そうな顔をしてるしね。

 

それでも、ここは会っておかなければいけないのである。自分達の回収した危険物が更なる危険物として利用されるのは防ぎたい。

 

それに、フェイトがそこまで不安に思うような人物である。正直、ロクな想像が出来ないので一度面通ししておかなければ、後の対応に問題があるだろうと考える。

 

静かに前を進んでいくフェイトに並んで、自分達は拠点の廊下を歩き出した。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

どこか機械じみた、でも中世の城のような内装が続く廊下を歩き、辿り着いたのは大きな扉。この奥に、フェイトの母親が居るのだろう。

 

その重厚な扉はとてもじゃないが知人の家のような雰囲気ではなく、魔王の玉座のような重苦しい演出を醸し出している。これが娘を、家庭を持つような人間の座する場所だとはとても思えない。

 

いよいよ状況が良からぬ事になってきたなと考えながら、前で扉をノックするフェイトを観察する。

 

「か、母さん……。フェイトです」

 

扉へと呼びかける声は非常にか細く、明らかに平静とは言えない怯えを含んだ色をしていた。

 

この状況をフェイトへ迎えさせたのは自分達であるのは明白で、正直申し訳ないと思う気持ちもある訳だが、そんなものを口にする事すら憚れる。

 

現状を作り出したのは、自分達なのだ。

 

「入りなさい」

 

扉の奥から聞こえる声に緊張が走る。何となく堅い印象を与えるその返答は、やはりフェイトの肩を一瞬震わせた。

 

一つ息を吐き、フェイトは扉へ手を掛け押し開く。見た目とは違い、少女の片腕でゆっくりと押し開くことが出来た扉の奥には、比較的大きな部屋が広がっていた。

 

部屋の奥には書類の散らばった年季の入った机に腰掛けた、フェイトとは違い濃紫の色をした長い髪の毛を湛えた妙齢の女性が存在していた。

 

彼女がフェイトの母親、プレシアなのだろう。彼女はフェイトを見、次に自分達を見て、何ら表情を変化させる事無く問いかける。

 

「フェイト……。これは一体、どういう事かしら?」

 

「あの、母さん……」

 

変わらぬ堅い表情と声色で静かにフェイトへ問いかける彼女の目は、鋭くフェイトを射ぬいていた。だが、彼女はきっと、自分達がここへ来た時点で観察していたんだろう。何ら動揺も、怒りすらも感じられないその態度に、少々状況が拙いような気がしてくる。

 

自分達が侵入してきてからの今までの全てが彼女の掌にあるのだとしたら、こちらの意図すらも掴んでいるはずである。素直に話をしてくれるつもりなのか、こちらを懐柔する意図があるのか、それとも……。

 

「突然の訪問、失礼します。私は高町桃子、昨日そちらのフェイトさんが娘のなのはと喧嘩をしたようですので、お詫びのご挨拶を、と」

 

「た、高町なのはです」

 

堂々とそう宣い頭を下げる桃子さんに、腹の底から感服する。器が違う。釣られるように頭を下げたなのはちゃんにも教育が行き届いていて大変良い子だと納得してしまった。

 

それは相手も同様だったらしく、頭を下げる二人を見て気勢を削がれたのた、純粋に呆れたのか。プレシアは「は?」と言いたげた表情で固まっていた。

 

「それで事情を聞けば、何やら物の取り合いだったらしく。幸いなのはも同様のものをいくつか持っておりますので、お困りのようでしたら、と思ったのですが。フェイトさんからは事情をお聞きする事ができなくて」

 

「そ、そう……。言いつけを守れたのね、フェイト」

 

「は、はい。母さん」

 

本当に困った顔で言う桃子さんに、表情を引き攣らせながらフェイトを褒めるプレシア。そして嬉しいやら状況に困惑しているやらで不自然な表情をしているフェイト。

 

もう場の空気が完全に桃子さんワールドです。

 

「そこで、なのですが。もしよろしければ事情をお聞かせ願えませんでしょうか? 私共もこれを、提供できますので」

 

そう言い桃子さんがポケットから出したのは、なんとジュエルシード。

 

なのはちゃんですら「いつの間に!?」と驚いた声を上げているものだからもうびっくりだ。何者なんだ本当にこの人は。

 

「……いいでしょう。お話をしましょう」

 

どう見ても押し切られた、といった感じで頷いたプレシアさんに、思わず同情した。

 

相手が桃子さんじゃ、ねぇ。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

主婦って怖いと思った。本当に怖いと思った。

 

プレシアの執務室だったろうそこには丸いテーブルと人数分の椅子、おっかなびっくりフェイトとアルフの持ってきたティーセットが並べられ、お茶をしながらの談話が始まっていた。

 

初めは桃子さんから「それにしても、次元世界ですか~」といった事から始まり、他にどんな世界があるのか、魔法とはどういう物なのか、フェイトの事、アルフの事、そしてプレシアの事と、口を休まず聞けてしまっている。

 

これは聞き出しているのが桃子さんだからなのか、他の主婦、例えばウチの翔子さんでもできるのか、とつい考えてしまう。

 

プレシアもプレシアで最初は戸惑いながらも口を開き、今では桃子さんが問いかけなくとも自分から口を開く有様だ。

 

「――――なんていう上司でね。もう本当に最悪だったわ。前後の見境が無い状況での稼働実験なんて」

 

「それはそうよねぇ。私も主人に仕事の事を聞いていた事がありますけど、無能な方というのはどれだけ偉い役職でもいるそうで。困ったものですよね」

 

「そうなのよ。研究者でありながら頭の悪い――――」

 

本当に口が止まらない。本当に凄いと思う。桃子さんも、プレシアも。

 

周りで聞いている自分達は完全に置いてけぼりだ。特にフェイトとアルフなんか、目を見開いて驚いている。きっと普段はこんなに喋らないのだろう。

 

しかしユーノもなのはちゃんも、何だか無警戒なんだが大丈夫なのだろうか。

 

心配性な自分は、心の中自らの相棒へと声をかけた。

 

『スティール、周囲の状況とか分かるか? 何か怪しい動きをしているとか』

 

『只今情報のダウンロード中です。相棒への回答まで三十秒お待ちください』

 

『情報? 何の情報だよ?』

 

『その回答も合わせて、残り二十五秒お待ちください』

 

何やら相棒はやっているらしい。いつの間に、というか何も聞いていないし何も指示していない。

 

何を勝手にやっとるんだと思いつつ、自分は相棒からの回答を待ちながら、ウンザリするような主婦トークに耳を傾けていた。

 

『――――全情報の同期を完了しました。相棒』

 

『ダウンロードじゃないのか。同期ってなに?』

 

『それより相棒、発声の許可を願います』

 

『え、なんで? 何喋るつもり』

 

『いいからそこはイエスと言えばいいのですよ、相棒』

 

ノーと言わせないつもりなら勝手に喋れよこいつ。

 

『分かった、イエスだ。喋っていいぞ、相棒』

 

ゴーサインを出すと、腕輪がキラリと光を放ち、一瞬周囲の目を引いた。その後、その腕輪が。

 

《あっははははははははっっ!! なんという偶然! なんという奇跡!! このような豪運がこの世界に存在しうるとは!! プレシア・テスタロッサ! 貴女の望みは目の前に転がっていますよ!!》

 

いきなり笑い声と共に、訳の分からん事を喋り出した。というか、こいつはこんなに感情が豊かだったのだろうか。

 

《あぁ相棒。あなたの危惧している事はお見通しです。確かに私は先程まで感情というものが希薄でした。ですが今は『何千年分』の蓄積されたデータと同期した為、喜怒哀楽というものについて把握しうる事となったのですよ》

 

「……ちょっとあなた、その腕輪なんなのかしら」

 

「ごめんなさい、コイツ自分のデバイスなんですけど、何やら喋りたいと」

 

《プレシア・テスタロッサ。色々すっ飛ばしてしまいますが、貴女の望みは今、この時、叶います。私の、相棒の言葉に絶対の忠誠を誓うならば》

 

「…………坊や。あなたのデバイスは随分愉快なようね」

 

相棒の言葉に顔を引き攣らせ自分を睨むプレシア。確かに睨まれても仕方ない事をコイツは言ってしまっている訳で。

 

早くコイツの口を止めようと思ったその時、相棒が再度言った。

 

《――――行きたいのでしょう、アルハザードへ。いえ、行って、取り戻したい人がいるのでしょう?》

 

その言葉に、プレシアがピタリと動きを止め、驚愕の表情で自分を、正確には自分の腕輪を見る。

 

「何を……何を言っているの、あなた」

 

《全て、全てを理解したのですよ。相棒は理解していなくとも、データとして存在している以上、そのデータは全て私のデータなのですよ、プレシア。エネルギー駆動炉ヒュウドラの事故から、狂ってしまったモノについても》

 

「どこでそれを!?」

 

《言ったでしょう、データとして存在している以上、それは私のデータである、と。私は、【時の庭園】と呼ばれるここの最深部、貴女が存在に気付かなかった管制端末と同期しているのです。故に、ここに存在する全てのデータが、私のデータとなっています》

 

「そんな……有り得ない、有り得ないわ」

 

ワナワナと震えながら言い募るプレシア。完全に自分らは置いてけぼりだ。

 

と思ったら、相棒が自分に語りかけてきた。

 

《相棒、あなたは豪運の持ち主だ。あなたはプレシアを、フェイトを、アルフを、リニスを、アリシアを、そしてあなたの母上も救う事が出来る》

 

「え? ちょ、え、誰だって? ていうか母上って自分の?」

 

《あぁ理解しなくて良いのです。ただここに事実として、救う事ができる。あなたはとても素晴らしい、豪運の持ち主だ》

 

「リニス、アリシア、あなた、本当に」

 

《えぇ、理解していますよ、プレシア。なにせ私は『何千年』も前からここに居たのですから》

 

相棒はそう言うと、一際光を放ち、言い放った。

 

《私は【時の庭園】最深部、相棒である中田堅一の生まれた研究施設兼次元航行用移動要塞【時の庭園】の管制AI、太古の昔ハズラットと呼ばれ、今は『アルハザート』と呼称される世界で生まれたデバイスなのですよ》

 

相棒のその言葉は、どこまでも空間に響いていた。

 

高らかに宣言したスティールの言葉に、場がシーンと静まり返る。

 

《……おかしいですね。もう少し何らかのアクションがあってもおかしくはないのですが》

 

「いや、お前の言ってる事が意味不明すぎて反応できねぇんだよ。ていうか母上ってお前」

 

《そうですか。えぇ、現在この【時の庭園】にて傷を修復された状態で保存されています。仮死状態ですね》

 

「いやお前、そんなサラッと何言っちゃってんの。ていうかお前、その、設備とかどうやって維持してたんだよ」

 

《地球にもあるでしょう、自然エネルギーを代替燃料として利用する技術が、その魔法版です。自然に漂う魔力を細々と蒐集して維持していたようです。尤も、プレシアが来た後からは魔晄炉からエネルギー取り放題でしたが》

 

「おま、それ盗電じゃねぇの。何サラッと自分の犯罪自慢しちゃってんのこいつ」

 

「……ごめんなさい。ちょっといいかしら、坊や」

 

相棒に尚も言い募ろうとしたが、横からの声に口を閉じる。

 

見ると、プレシアがフルフルと震えながら小刻みに唇を震わせていた。

 

「はい、なんでしょう?」

 

「えぇ、そうね。何から聞こうかしら。何がいいかしらね」

 

《おや、随分混乱しているようですね。あぁ我々の事でしたらご随意に。この相棒、中田堅一と呼ばれる人に見える生命体が実はアルハザードの生んだ超古代の生物兵器だったり、それを制御する枷の役割を持つデバイスが私だったりと、応えられる事は豊富にあります》

 

「うわぁ、何コイツ。こんな性格だったっけ。こんな根性曲がってたっけ」

 

《だから言ったでしょう、何千年分もの蓄積により感情が成長した、と。そりゃ一人で孤独にそれだけの期間を過ごせば多少捻くれもします。人間ではないので飽く迄多少で済んでいますが。感覚器官ありませんし》

 

「…………せいぶつ、へいき?」

 

小首を傾げながら疑問形で口にするフェイト。

 

その言葉に待ってましたと言わんばかりに、相棒が更に喋り出した。

 

《そうですよ、フェイト・テスタロッサ。相棒はその昔存在していたアルハザードがハズラットと呼ばれていた頃、原初の頃にハズラットへ知識と力を授けた外なる神と人の間に生まれた生命の遺伝子を元に作成された生物兵器の、更に複製されたクローンなのです》

 

「おいざっくりすぎて心が痛いんですけど。色々気になる単語が出てるし凄くザクザク刺さるんですけど」

 

《安心して下さい、相棒。誰が何と言おうとあなたは紛れもなく人間です》

 

「お前が一番人間扱いしてねぇんだよっ!!」

 

「何というか、けんちゃんもヘビーな人生よねぇ、ホント……」

 

自分の腕輪を叩きながら叫ぶ自分に、桃子さんがホゥ、と溜息を吐いて呟く。

 

いやまぁ、よく考えるとかなりヘビーですよね。

 

「でもけんちゃん、全然気にしてないよね」

 

「僕も堅一のそういう所、凄く尊敬するよ」

 

「やめて、自分を褒めてどうするんだ」

 

何だかキラキラした目で見つめてくるなのはちゃん&ユーノに少しテレて返事を返す。

 

ほんと、何なんだ一体。

 

「……えぇ、漸く状況は理解できたわ。とりあえず坊や、そのデバイスの言葉の証拠は、あるのかしら?」

 

《疑り深いですね、プレシア。まぁ尤もな事です。それでは、一番簡単な方法で貴女に証拠を提示しましょう》

 

スティールがそう言うと、突然空間にガゴンッ、という大きな音が響いた。

 

「うわっ! なに、なになにっ??」

 

「おい、微妙に揺れてる!?」

 

《ご安心を。別の高次空間に格納されていた【時の庭園】本来の区画を呼び戻し再度接続しているだけです》

 

「ちょっと! 勝手に人の家に何をしているのよ!?」

 

《気にしないでください、プレシア。【時の庭園】は元々ブロック構造。貴女が所有していたここ、コアブロック以外のユニットは全て着脱可能な上拡張し放題なのです》

 

「うわわわっ! じ、地面がゆれ、揺れてるじゃないか!」

 

《そりゃぁ高次空間内でのドッキングとは言え、多少の振動や衝撃は発生しますよ。現在確認した所20あるブロックの内2つが既に使い物にならない程損壊を起こしていたので破棄しました。まぁ相棒の生まれた研究棟なのですが、恐らく彼女が相棒を次元跳躍させた後兵士諸共自爆しようとした名残でしょう》

 

「なにそれっ! 凄く壮絶な話な気がするんですけど!?」

 

《彼女の身体が保存されている医療棟はコアブロックにあるのでご安心下さい。接続完了、これより彼女の身柄をこの空間内へ移動させます》

 

相棒がサラッという言葉はいつも壮絶な事ばかりだ。

 

そんな事を思いながら揺れの収まった地面を見つめていたら、遠くからガゴンガゴンと、鉄を殴るような音がどんどんこちらへ近づいてくるのが聞こえてくる。

 

「……なぁ、何の音だ?」

 

《ご安心を。彼女の身柄を最深部から安全装置付きで運んでいる所です。まぁ隔壁が降りているとか壁だったりする場所なので無理やり開いては閉じてを繰り返して運んでいる訳ですが》

 

「いやぁあっ! 私の家なのよぉぉおお!?」

 

「かっ、母さん! おち、落ち着いて母さん!!」

 

「スンマセン! ホンットすんません!!」

 

相棒の言葉に半狂乱になって髪を振り回すプレシア、いやプレシアさん。

 

宥めようと頑張っているフェイトの床に思わず正座で座り、土下座で何度も頭を下げる。

 

そりゃ、他人にいきなり自分の家リフォームされたら堪らないわ。

 

《相棒、そこ邪魔なんでどいて下さい》

 

「お前ホンット自由な性格になっちまったな!? っと、どわぁっ!!」

 

思わず頭をあげて自分の腕輪を睨みつけたのと同時に、下からズバッと何かがせり出してきて思わず背後へ飛び退く。

 

そこには緑色の光を放つカプセルのような機械が2つ、出現していた。

 

片方は空、もう一つには、透き通る桃色の髪の毛をした、恐らく少女から女性へと移り変わる程度の年齢だろう女性の姿が浮かんでいる。

 

自分はその姿に呆然としながら、相棒へと問いかける。

 

「えっと。この人」

 

《はい、相棒。この方がハズラット最後の天才、あなたの製造者であるリリナ・アル・ハズラット。活動停止時の年齢は16歳です》

 

「…………じゅ、じゅうろくうぅうううううううう!?」

 

お母さんは女子高生でしたー!!

 


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