魔法少女リリカルなのは 夢現の物語   作:とげむし

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第二十三話

 

闇の書の問題に対し、いよいよ管理局を巻き込んで動き出す。

 

なのはちゃん・フェイト組とヴォルケンリッターとの模擬戦で、二人はデバイスを破壊されてしまった。

 

やはり踏んだ場数が違うという事だろう、ヴォルケンリッターは強かったという事で。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

アースラ艦内に用意されている訓練室。先程までなのはちゃん、フェイトとヴォルケンリッターが模擬戦を行なっていた場所に、今自分が立っている。

 

スティールをセットアップし身体を解し終わり、自分に相対するヴォルケンリッター、シグナムを見る。

 

「連戦だが、大丈夫か」

 

「問題は無い。以前はヴィータが世話になったが、今回は私が相手をしよう」

 

抜き身の剣、シグナムがデバイスであるレヴァンティンを構えながら言う。なるほど、将たる自分の目で自分の力を計りたいという事なのだろう。

 

自分もスティールの装備を確認し、シグナムへと向けて構える。

 

「さて、やろうか」

 

「あぁ」

 

ゆっくり、静かに構えながらジリジリと相手へと近づく。シグナムは刀剣、自分は無手とリーチの差は目に見える形に存在しているが、それは問題では無い。

 

ゆっくりゆっくり近づき、恐らくはシグナムの射程圏内へと脚を踏み入れた途端、シグナムが一気に踏み込んできた。

 

だが、それは予想通り!

 

「はぁっ!」

 

「ヌゥン!!」

 

近づいてくる剣に合わせ、右の拳で正面から迎撃。ガキィン! といういい音を出し、拳で剣を弾く。弾かれた勢いを利用しシグナムは回転しながら右真横に一文字斬りを仕掛けるが、それも見えている!

 

再び甲高い音と共に斬撃を左の足甲で受け、弾きながら右足のバネで飛び上がり、顔面を狙う後ろ回し蹴り!

 

「ぐっ!」

 

「オラァッ!」

 

剣で受けられたのを確認してさらに左足を出して旋風脚。頭を低くして避けられ、蹴り足を斬りに来た所で宙に壁を出し蹴りつけ反動で後ろへと飛ぶ。

 

トンッと着地した所で追撃をかけてきたシグナムの斬撃を避け、剣を振り下ろした勢いを止められないシグナムへ向け左拳から一撃入れる。

 

「がっ!」

 

「ぐっ!」

 

拳が入ったのを確認したが、シグナムは同時に蹴りを放っていた。胴に響く衝撃を受け思わず後ろへと下がる。

 

「……これほどの技量、その年で持ち合わせるとはな。末恐ろしい」

 

「そりゃどうも。あんたも騎士と名乗る癖に実戦思考の泥臭い剣術で厭らしいな」

 

「我らヴォルケンリッターは主を守るための剣であり盾。手段は問わず、ただ主を守るのみ」

 

「なるほど。それじゃ、スピードあげていくぞ!」

 

宣言通り、トップスピードでシグナムへと迫る。迎撃のつもりだろう袈裟斬りを紙一重で避け懐へと飛び込む。

 

「オラァッ!」

 

「おぉっ!」

 

そこからはもう、お互い乱打の応酬だった。

 

蹴りを放ち受け、斬撃を避け打撃を入れる。腕を取れば取った腕を斬りに来られ、斬撃を受け止めそのままぶん投げる。

 

上下左右様々な角度からの斬撃を避けつつ、時には上空を取り後頭部へと蹴りを放つ。

 

剣を弾き、受け流し、避け、こちらも蹴りを、打撃を放つ。上、左、右、右左下上右右っ――――

 

「オオオオォォオオッ!!」

 

「あああぁあああああっ!!」

 

いつの間にかお互い吠えるように裂帛の声を放ちながら、攻撃の応酬をしていた。

 

腕や脚、いつの間にか胴にも打撃や斬撃を受けた形跡があるが、今はそれすら気にならない。腕を動かす度、蹴り足を動かす度に身体が疼き、肉体の奥底で何かが蠢く。

 

迫る斬撃が、隙を伺う蹴りが、その気迫を伴う瞳が恐ろしい。いつしか必殺の一撃となっている斬撃を避ける度、腹の底が震える。

 

だが、しかし。拳を撃ち出す度、蹴りを当てる度に、身体は加速していく。恐ろしさはあるが、止まらない、止められない。

 

いつしかお互い、笑顔を浮かべながら攻撃の応酬を行なっていた。

 

「オォッ!!」

 

「らぁっ!!」

 

必殺の斬撃を両腕の手甲で受け止め、蹴りを胴へと放つ。衝撃を殺しきれず、お互いもんどり打ちながら背後へと飛ぶ事になってしまった。

 

ドウッ! と背中から床へと落ち一瞬呼吸が止まるが、寝転がってなどいられない。すぐさま身体を起こし構えを取ると、シグナムも起き上がり剣を構えた所であった。

 

「ハァ……ハァ……そろそろ、終わりにしよう」

 

「あぁ……これ以上は、止まらん。お互い死ぬまで相対する事になりそうだ」

 

「同感だ。ここは一つ、自慢の一撃で勝敗をつけるとしよう」

 

「それがいい」

 

話し合いの結果、そういう事になった。シグナムは剣を鞘に収め、カートリッジをロードする。なるほど、先程フェイトのバルディッシュを斬った技だろう。

 

ならばと自分も魔力をここぞと展開し、右手の掌に小さな、だがかなりの魔力を圧縮して溜め込む。溜め込んだ魔力が鈍色の光を放ち、周辺へと漏れ出る。

 

「……それが、貴様の自慢の一撃か」

 

「あぁ。遠慮せずに迎撃してみろ」

 

「言われずとも」

 

納刀した状態で前傾のままジリジリと間を詰めるシグナム。両腕を身体の脇で構え、同じく前傾となる自分。

 

間が詰まった、と思った時にはお互い一気に飛び出した。

 

ダンッ! と強く床を踏みしめ、お互い最後の一撃を繰り出す。

 

「おぉっ! 紫電、一閃っ!」

 

「圧縮、発勁!!」

 

雷光のように素早い斬撃が炎を纏い迫る。その剣に、腕に溜めた魔力と共に、右の掌打をぶち当てる!!

 

バチィン! 甲高い音と共に、自分は背後の壁へと叩きつけられた。またしても背中を打った衝撃で一瞬呼吸が止まり、目の前が真っ暗になる。

 

だがここで意識を飛ばしてなるものか。右足へと力を込め、思い切り床を踏みしめる。

 

「ハァハァ……」

 

「……負け、か」

 

声のした方向を見ると、剣を振り切った姿のシグナムが、静かに前へと倒れていく所だった。

 

シグナムが倒れたのを確認し、背中を壁に預け、足の力を抜く。ズルズルと床目指して腰が落ちるが、しょうがない。それだけ、今の戦いは全霊を賭けたものであったのだから。

 

『……とりあえず君達、やりすぎだ』

 

スピーカー越しに聞こえてきたクロノの声に、思わず苦笑してしまった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

最後の一撃は魔力と共に勁を撃ち出す技。練習していた魔法と山田流のブレンド技として一つの形となったものである。発勁が中国武術である訳だが、そこは山田流、いつの間にか自流派のものにしてしまっていました。

 

で、この発勁だが、唯の発勁では無く浸透勁の一種。寸勁と呼ばれる衝撃を内側へ徹す技である。御神流の徹と同様の性質である。

 

当り所が悪ければ素手で人を殺せる技なのだが、そこはさすが自分。武器へとぶち当てる事で致命傷を避け衝撃を身体へと伝えた訳である。

 

「なるほど、そのような技があるのか。この世界の武術も奥が深いな」

 

自分の説明にウムウムと頷くのは、自分と同じようにベッドに横になっているシグナム。自分が倒された技がどのようなものであるか興味が湧いたらしく、その説明をさせられたのであった。

 

それにしても、二人してベッドで横になるとは。

 

「もう、模擬戦なんですからちゃんと加減してくれないと困ります! リーダーもですよ!」

 

「はい、すいません」

 

プリプリと怒るのは自称湖の騎士で補助と癒しが本領というシャマル。確かに言う通り傷は癒えた訳だが、身体の疲労感は如何ともし難い訳で、今はこうして横になっているのだった。

 

「まぁしゃあないわ、あんだけやらかしとったらなぁ。正直、血を出しながら笑って殴り合ってる二人にドン引きやで」

 

「あ、主……」

 

はやてちゃんの言葉に落ち込むシグナム。なんと分かりやすい。

 

「なのはちゃんなんか顔青くしとったからなぁ。堅一君が怪我する度悲鳴あげとったし」

 

「ん、そっか。まぁそれでいいんだけどね」

 

「心構えが足らんか。私も相対したから分かるが、テスタロッサはともかく高町は戦いに赴くという意味を理解していない所があるな」

 

「自分もそれは分かってるからね。だから模擬戦で思いっきりいかせて貰った」

 

自分の言葉にシグナムがなるほど、と呟く。シグナムが言った言葉は自分も理解しており、なのはちゃんに危うさを感じる部分でもあった。

 

今までなのはちゃんが行使してきた魔法と、戦ってきたジュエルシードの魔物。自覚無く生命のやり取りをしていたのだが、結局最後までなのはちゃんはジュエルシードの事件で命のやり取りはどういうものかという事を理解してなかった気がする。

 

生々しい現場に遭遇しなかったという事も大きいのだろうが。

 

だから今回、シグナムを相手に血生臭い戦いをした訳でもある。実際やりあったのは本気だったし、正しく戦いであったのだが。演出とか手抜きとか、そんな事は一切無い。

 

これでなのはちゃんに自覚が出て、正直言えば危ない事から身を引いてくれればいいなと言うのが本音である。

 

嘱託魔導師の試験勉強をしている訳だが、正直それもどうでもいい。なのはちゃんが危険に足を踏み込まなければ、必要の無い事ではある。

 

だがしかし、きっと彼女は見過ごせない。自分に出来る事があり、それで誰かが助かるのであれば、これからも危険へと踏み込んで行くだろう。

 

そうなった時、危険であるという自覚があるのと無いのとでは大きく差が出る。

 

今回の事で、その自覚が芽生えてくれればいいなぁと思う。

 

こういう考え方もなんか、保護者的な見方だなぁ。

 

「堅一君はなのはちゃんの保護者やん」

 

「またはっきり言うね」

 

「だってそうとしか見えんよいつも」

 

「さいですか」

 

今更何言ってるのと言わんばかりのはやてちゃんの言葉にしょうがないと頷く。自覚があって保護者やってる自分は一体何なんだろうな。

 

まぁ放っておくと危なっかしい彼女の事だ、目に見える範囲に居るなら頑張っていこうと思う。

 

うむ、今後も兄として保護者として、頑張りましょうかね。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

なのはちゃん達は壊れたデバイスをアースラのメンテナンス担当の人に見て貰っていたらしい。どうやら修復は可能なようだが、彼女達は壊れたデバイスをそのまま持ち帰り、今は時の庭園へと来ている。

 

「ふむ、レイジングハートもバルディッシュも、綺麗に壊れているわね」

 

二機のデバイスを確認してプレシアさんは静かに呟いた。しかしその目で面白いものを見るように輝いている。

 

「強度不足という事でしょうね。アームドデバイス、でしたっけ。あちらの強度の方が強かったという事でしょう」

 

「後はこのカートリッジシステムね。瞬間火力の上昇とは面白いギミックだわ」

 

デバイスに残された記録映像を見ながらリリナさんと二人で検討をしている。二人共目が輝いている。怖い。

 

「フレームの強化とモードの変更、今シーリングモードは基本使っていないみたいなので汎用性の高いモードへと追加修正しましょう」

 

「後はそうね、このカートリッジシステム。魔力負荷が気になるけどテストしながら追加してみましょうか。リリナ、作れる?」

 

「この程度のものであれば明日にでも。構造は大体分かりますから後は小型大出力と負荷軽減を目指して作りましょうか」

 

何だか恐ろしい会話が目の前で進行されている訳ですが。何を言っているのだこの人達。

 

「あ、はは……。あの、お手柔らかに」

 

ものすっごい不安そうな笑みを浮かべながら言うなのはちゃんの言葉が聞こえていないのか、科学者二人があーでもないこーでもないと検討を続ける。

 

そんななのはちゃんの肩をポンポンと叩き、静かに首を振るフェイトのある種悟ったような表情が全てを物語っていた。

 

あぁなったらもう、止まらないぞ、と。

 

「とりあえずあの二人は放っておいて、なのはさん、フェイト。自宅へと帰りましょう」

 

「リニスさん! どうか、レイジングハートをおかしな感じにしないでくださいね!」

 

「私のバルディッシュも、お願い……」

 

「えぇ、もちろん。変な改造はさせないようにしますから、安心して下さい」

 

科学者組の両親、プレシアさんの使い魔であるリニスが笑顔でそう告げた事で明らかにホッとした表情の二人。

 

目の前しか見えていない二人に比べてリニスが信用されるのはまぁ当然の事である。如何に実の親であろうと、いやだからこそこうなった時の恐ろしさが分かるというものなのだろう。

 

「良ければ一緒に夕食をどうですか? もちろん堅一さんも」

 

「今日はリニスのハンバーグなんだよ」

 

「にゃはは、じゃあお邪魔しちゃおうかな。ね、けんちゃん」

 

「うん、それじゃ遠慮無く」

 

ワイワイと話しながら技術室を離れ転送装置へと向かう自分達。その後、科学者二人は二時間経って漸く自宅へと帰ってきたのだった。

 

これだから科学者という人種は……。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

一先ず蒐集についてはヴォルケンリッター、管理局武装隊とに別れて開始する事になった。

 

デバイスを修理中のなのはちゃん、フェイトの二人は自動的に不参加となり、シグナムに勝利した自分はヴォルケンリッター、シグナムと管理局のクロノと一緒に行動する事となる。

 

「ま、順当な組み合わせなのかね」

 

「武装隊とヴィータはリーゼの二人に頼んでいる。というか彼女達は初めヴォルケンリッターと組むのを拒んだのだがな。心情は理解できる」

 

そう言うクロノだが、彼自身は別に嫌な顔をせず二人と組んで魔法生物を倒している。

 

しかし砂漠のようなこの無人世界で巨大なワームのような生物を倒している訳だが、何なんだろうなこれは。

 

「文明が発達した後崩壊した世界なのだろうと研究者は言っている。実際に遺跡も存在する事からほぼ間違いないだろう」

 

「それで砂漠化した訳か。緑豊かな無人世界もあるのか?」

 

「そういう世界も存在するが、大抵管理世界住人の観光地として整備されている。レジャー産業の盛んな場所だな」

 

何とも現実的なお答えをありがとう。

 

目に付く魔法生物を一通り狩った後、シグナムがどこからか闇の書を転移させ、書に魔法生物の持つリンカーコアを蒐集させる。

 

「……やはり魔法生物では、ページが中々埋まらないな」

 

「誰にも被害を出さずに蒐集するにはこの手段が一番だ。君達に選択の余地は無い」

 

シグナムのボヤキにピシャリと言い放つクロノ。まぁ何というか、被害者と加害者という構図ではあるので何とも口を挟みにくい。

 

シグナムとしてもバツの悪い顔をして書をまたどこかへと転送する。大方ヴィータが蒐集を行なっているのだろうと思う。

 

『クロノ君。そろそろ地球時間だといい時間だよ』

 

「そうか、分かった」

 

開いていた通信からエイミィさんの声が聞こえ、本日の蒐集の終わりを告げる。

 

今日も一日お疲れ様でした、って感じかな。

 

「それじゃあ明日も僕とシグナムは蒐集を行う。堅一、君は学校が終わって可能だったら来て欲しい。エイミィ、いいぞ!」

 

『了解! それじゃあまた明日ね~』

 

クロノが合図すると三人それぞれの足元に転送用の魔法陣が広がる。自分は自宅、シグナムは八神家、クロノはアースラへとそれぞれ転送される訳だ。

 

「じゃあ、また明日」

 

「あぁ。明日もよろしく頼む」

 

シグナムの言葉に頷きで返す。

 

魔法陣の光で一瞬視界を奪われたと思ったら、自分の家の玄関前へと居た。

 

相変わらず、この転送魔法というものは便利ではあるが何だかなぁと思う。本当に眩しいし原理が分からんから少し怖い部分もある。

 

「ただいま~」

 

「おかえりなさいっ!」

 

ガラッと玄関開けてすぐなのはちゃん。なんでいるのこの子?

 

「お、お邪魔してます……」

 

「堅一っ! 晩御飯できてるよ~!」

 

おおぅ、フェイトとアリシアまでいる。なんでやねん。

 

「今日シグナムさん達手伝ったんでしょ? 色々お話聞かせて欲しいなって」

 

「晩飯時に話すような事じゃないと思うけど……。まぁいいか。先にお風呂入らせてね、砂漠だったから砂が酷くて」

 

「砂漠! 砂漠の惑星行ったの? いいな~私も行ってみたい!」

 

「アリシアは危ないから駄目だよ」

 

なるほど、自分の体験談というか、そういうのが聞きたい訳かと納得し風呂へと向かう。

 

それにしてもこの時間に家に居るという事は、もしや泊まるという事では……。

 

「あ、けんちゃんお帰り。今夜は三人泊まっていくからね」

 

「あぁやっぱりそうなんだ。ただいま翔子さん」

 

ひょっこり台所から顔を出した翔子さんの言葉にやはりと頷く。どうやら三人とも泊まる気満々で来たらしく、着替えとかその他諸々準備しているのだとか。

 

はぁ、今夜は少し、長くなりそうだな……。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「リベンジです」

 

「しに来ました」

 

アースラの訓練室。

 

修復が完了したレイジングハートとバルディッシュを手になのはちゃんとフェイトの二人がヴィータとシグナムの二人に言う。

 

あれから数日間、デバイスの修理が終わるまでは二人で魔法のトレーニングをしたり自分の蒐集に関する話を聞きに来たり嘱託試験の勉強をしたりと精力的に活動を続けてきた二人。

 

血生臭い事が待ってるという事も話はしたが、それでも自分もはやてちゃんを助けたいという二人の決意は本物のようで、改めて認めてもらうのだと修理が完了し新機能の説明などを受けてすぐこうしてリベンジに来た訳だ。

 

「へん、やってやろーじゃねーか!」

 

「その決意、力を持って示してもらおう」

 

ヴィータは小生意気に、シグナムは嬉しそうにリベンジに来た二人に対して言う。

 

ヴィータはどう思っているか、自分も言われたが蒐集はヴォルケンリッターだけで十分だと思っている節が有り、シグナムが一喝して黙らせた事があったりする。

 

恐らく今回も煩わしいとでも思っていそうなのだが、はてさてどうなるか。

 

「メインフレームの強度は既存値の約三倍、リリナと私の二人で作った六連装カートリッジシステムを搭載し、二人の戦闘技術を生かす為のモードを実装した、まさしくワンオフのデバイスよ」

 

「カートリッジは大火力で少負荷を目指しました! フレーム構造の変化とモードチェンジの短縮効率化、フレームの魔力伝導率の向上も合わせてやったので、今までの彼女達とは一味も二味も違いますよ!」

 

プレシアさんとリリナさんがフフンと自慢気に言う訳だが。管理局の眼鏡で小柄な女性、マリエルさんが二人の話にワクワクと言った感じで食いついている。観戦席は最初っから不思議ワールドが展開されてしまった。

 

「要するにパワーアップしたっちゅーこっちゃなぁ」

 

「だね」

 

自分と同じように観戦を決め込んでいる、こういう勝負毎には毎回ヴォルケンリッターが立ち会いを求める闇の書の主であるはやてちゃんとフェイトの姉であるアリシア。そのはやてちゃんの後ろで車椅子を押すシャマル、隣で控える狼状態のザフィーラ。

 

リンディさんやクロノ、エイミィも見物に来ており、この勝負はもはや見世物に近いものとなっていた。

 

対峙する二人は真剣なのだが、何とも周囲の観戦組が不真面目である。

 

「あ、始まった」

 

はやてちゃんの言葉に視線を向けると丁度四人が動き出した所だった。

 

前回同様なのはちゃんはヴィータ、フェイトはシグナムと対戦カードが決まっていた。

 

但し前回と違いヴィータはなのはちゃんのプロテクションを破れず、またディバインシューター、デバイスが変わって高速化したアクセルシューターにより距離を取らざるをえない戦いになっているようである。

 

対するフェイトもシグナムと何度か切り結び、カートリッジをロードしたと思ったらバリアジャケットを簡素化し、高速機動モードとも言える形態へと変化する。手足に生えた小さな羽が印象的だ。

 

そこからフェイトは更に加速し、対するシグナムもスピードを上げて切り結ぶ。

 

「あの形態ね、この間堅一とシグナムが戦ってるのを見た時から考えてたんだって」

 

「あれは自分の所為か」

 

アリシアからの意外な言葉に思わず瞠目。自分のように基本的に攻撃は避けるもしくは受け流すような人間ならば良いだろうが、フェイトの避け一辺倒で大丈夫なのかと思いはするが、いざとなればプロテクションで何とかなるのかと思い直す。

 

まぁ、プロテクションを張る間も無く攻撃が直撃したら危ないだろうとは思うが。

 

両者共に一歩も引かず、またなのはちゃん、ヴィータの対戦も射撃が直撃せず、ヴィータも懐に入れずと膠着状態を繰り返している。

 

これはそろそろ終わりかな、と思ったら予想通り。クロノがマイク片手に室内へ向けて喋り出した。

 

「そのくらいでいいだろう! シグナム、二人の実力は問題あるか?」

 

『いや、問題無い。もう少し斬り結びたいと思うほどに、二人の実力は上がっている』

 

『チッ。うざってぇ誘導弾の使い方しやがって……』

 

楽しそうなシグナムとは対照的に心底うざったそうに言うヴィータ。やれやれ、あの性格は何とかならんのかな。

 

「こらヴィータ、そんな事言うたらあかんよ。食後のおやつ抜きにするで~」

 

『げっ! は、はやてぇ~!』

 

はやてちゃんの一喝でしおらしくなるヴィータ。おいおい、中身は本当にガキだなあの子は。

 

ま、兎も角。今後はなのはちゃん達も協力できるようになったので嬉しそうである。

 

だがしかし、結局大変な事には変わりない。何とかみんなで頑張っていこう。

 


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