魔法少女リリカルなのは 夢現の物語   作:とげむし

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第十七話

 

プレシアさんのお悩み相談から、何故かなのはちゃん、フェイトとの模擬戦。

 

自分より魔法っぽい魔法を使う二人だが、使用方法がエグくてやっぱり魔法少女らしくないと思う。

 

リリナさんのお陰で、また一つ将来が不安になりました。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

毎日毎日、魔法の練習をしている訳ではない。ちゃんと休息も必要なのでございます。

 

という訳で今日はすずかちゃんの家で放課後のお茶会となりました。相変わらずでかい家。

 

「いらっしゃい四人とも」

 

「お邪魔してます」

 

テラスで優雅なティータイムを楽しんでいると、大学から帰宅したのだろう忍さんがやって来る。傍らには恭也さんも一緒だ。

 

「恭也さん、いつも一緒にいるんですか」

 

「そんな訳ないだろう。今日はこの後買い物に行く予定になっているんだ」

 

「デートって言いなさいよ、もう。恭也はそういう所が足りない」

 

「お熱いことで」

 

目の前に広がったカップルワールドに思わず紅茶を一口。砂糖を入れていないはずなのにほのかに甘みがするのはきっと二人の所為である。

 

そんな姿を見てアリサちゃんとはやてちゃんがキャーと盛り上がり、すずかちゃんとなのはちゃんは少し恥ずかしそう。まぁ自分の家族が友人の目の前でイチャつく光景なんて恥ずかしいわな。

 

じゃーねーなんて言いながら軽やかに門へと歩いて行く二人の背後でノエルさんとファリンさんがお辞儀をして見送るのを眺める。ほんと、あの二人はいつでもアツアツだな。

 

「お姉ちゃん、恭也さんが初恋なんじゃないかなぁ。恋人になる前から男の人の話をした事なんて、恭也さん以外ないんだよ」

 

「初恋が成就した訳や。えぇなぁ」

 

「そういう意味ではお兄ちゃんもそうかも。昔からあぁだし、剣道一筋だったし」

 

「あぁー目に浮かぶわそれ。恭也さん素敵なのに勿体無いわよねぇ」

 

他人の色恋で話が盛り上がるのは女の性なのか。二人の親族から聞く話をはやてちゃんとアリサちゃんが興味深そうに聞き入る。それにしても、言葉の要所要所に羨ましいという単語が入るのはまだ早いのじゃないかと思うんだが。

 

「恋人かー。私らはどうなんやろ」

 

「まだ早いんじゃないかなぁ、私達には」

 

はやてちゃんの言葉にすずかちゃんが控えめな返答をするが、そこにアリサちゃんが食いつく。

 

「駄目よすずか。そんな事言ってたら何時まで経っても相手の一人も出来ないわよ」

 

「でもアリサちゃん。なのは達にはまだ早いと思うんですけど……」

 

「そうだよ、アリサちゃん。第一好きな人も居ないんだし」

 

「むぅ、それは確かに。でも私達の周囲に居る男って……」

 

アリサちゃんのその一言で、四人の視線が一斉に自分に向いて思わずティーカップをカチャリと鳴らす。なんだ、何故そこで自分を見る。

 

「堅一君か……悪い訳やない、というかいいんやけど」

 

「いきなり何言ってるのかなはやてちゃんは」

 

本当、いきなり何言ってるかなこのお子様は。

 

「何だろ、少し近すぎるのよねケンは。気安いというか何というか」

 

「意識した事ないなぁ私も」

 

「けんちゃんはなのはの大事な幼馴染だよ」

 

「君達も何言ってんの。ていうか意識されてたら逆に嫌なんですけど」

 

そういう関係では無いと自分では思っているし、相手から恋愛対象として意識されていると思うと気不味くてしょうがない訳で。丁度リリナさんみたいに。

 

全く、こういう話をするには未だまだ早いと思うんだよ本当。

 

「自分達はまだ小学生なんだし、そういうの早いでしょ。今は他人の恋愛眺めて喜んでるだけにしときなさい」

 

「はぁーい」

 

「けん君の言う通り、私達にはまだ早いよね」

 

「せやなぁ。今は忍さん達眺めて楽しんどこか」

 

それっきり、四人娘の恋愛話は流れて忍さん達の話へと移り変わる。というか、忍さんはともかく恭也さんはなのはちゃんに話のネタにされていると知ったらどう思うのかねぇ。

 

妹を可愛がっている恭也さんが少し不憫に思えた。

 

「っ!!」

 

知った時の慰め方を少し考えていた所に、感覚を直接貫くような刺激。

 

なのはちゃんも同じ感覚を捉えたらしく、席を立ち海の方向を眺めていた。

 

「なのはちゃん」

 

「うん、ジュエルシード。行こうけんちゃん」

 

自分の言葉に素早く応え、なのはちゃんがレイジングハートを展開する。自分も併せ、スティールを展開。

 

「おぉっ! 相変わらず凄いな!」

 

「一度見たっきりだものね、温泉で」

 

「なのはちゃん、けん君。怪我しないでね」

 

まともな応援の言葉がすずかちゃんだけと言う何とも言えない状況。ていうかアリサちゃんとはやてちゃんはお気楽すぎるでしょ。

 

「じゃあ行ってくる、多分戻ってこれないと思うから」

 

「アリサちゃん、すずかちゃん、はやてちゃん。また明日ね」

 

とりあえずの別れの挨拶をして、自分達は空へと飛び立った。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

感覚に従い空を飛び、自分達は海鳴臨海公園へと辿り着く。海辺に造られたその公園の中心に、どう考えても不自然な大木が一つ。アレがジュエルシードの化け物なのだろうと思う。

 

そして、その化け物の正面で、両腕の刀を振るう一人の女子高生。

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

「あっ、なのは! 良かったー。私じゃ封印とかそういうの出来ないから助かったよ」

 

服装からして学校帰りの美由希さんが、超スピードで動きながら襲いかかってくる木の枝をバッサバッサと切り捨てていた。

 

しかし動くスピードが相変わらず素早いし、斬撃が鋭い。これも日頃の修行の成果なのかと思うと御神流恐るべしと言いたくなる。

 

「美由希さんが魔法使えたら、ジュエルシードもラクそうだなぁ」

 

「うん、多分。魔法使える私より強いもんお姉ちゃん」

 

「そんな事より、早く片づけちゃってよ」

 

いやぁ余りにも鮮やかにバッサバッサやってるからこのままでも大丈夫かなとか若干思っちゃいました。トンとひとっ飛び大木から退避した美由希さんの言葉を受けて、まずは自分から突撃。

 

加速をつけた急降下で大木へと近づき、そのまま蹴りを見舞う。

 

「セェッ!」

 

だが、その一撃は目に見えない障壁に阻まれ大木へは傷一つ付けられなかった。

 

「障壁を張るのか!?」

 

「うわぁ、厄介そう……」

 

傷一つ付けられなかった事に歯噛みして呻いた言葉に、なのはちゃんが嫌そうな顔で言う。確かに、バリアを張るような相手なんて面倒でしかない。

 

さてどう対応しようかと考えていたら、自分達の反対側から、金色の刃が回転を伴い大木の障壁へと突っ込んで爆発した。

 

「フェイトちゃん!」

 

「ごめん、少し遅くなった」

 

アルフと共に現れたフェイトが静かになのはちゃんの隣へと降り立つ。

 

「じゃあ私のほうで結界張るよ」

 

「頼んだ」

 

アルフの言葉にお願いし、補助魔法の得意なアルフが結界を張ってくれた。さて、これで周囲の事を気にする必要は無くなった訳だが。

 

「なんで美由希さん残してんの?」

 

「あれ、必要無かったかい? 一緒に戦ってるのかと思ったんだけど」

 

「いや、私はもう傍観してただけなんだけど。まぁいいよ、安全な所で見守ってるから」

 

勘違いしていたアルフの言葉に美由希さんはアハハと苦笑しながら静かに大木から離れて自分達を見守る。

 

さて仕切り直してどうしようかなと三人で相談していると、行き着くべき解答へと至った。

 

「三人いるし、多分押し切れる」

 

「全力全開のディバインバスターなら大丈夫だと思うの」

 

「じゃあ自分も、練習の成果を出すかな」

 

結局、障壁を打ち破る程のパワーでの力押しという採択が降りた。

 

三人で横に並び、各々準備に入る。

 

「レイジングハート、ディバインバスターフルパワーでいくよ!」

 

「バルディッシュ、お願い」

 

「スティール、圧縮砲準備」

 

《了解》

 

返答と共になのはちゃんは桃色の、フェイトは金色、自分は鈍色の魔力光をチャージして、タイミングを合わせる。

 

そして一斉に、溜めた魔力を開放した。

 

「いくよ! ディバイーン、バスター!!」

 

「サンダー、スマッシャー!!」

 

「魔力圧縮砲、発射ぁ!!」

 

ドン、と三つの魔力砲撃が空間を走り、障壁へとぶち当たる。

 

「ゴオオオオオッ!!」

 

大木は懸命に砲撃を防御するが、やがて砲撃は障壁をぶち抜き、哀れ大木は叫びながら霞へと消えた。

 

残ったのは、空間に漂うジュエルシードだけ。

 

「三人揃うと意外とあっさりだったな」

 

「うん、結局力押しだったけど」

 

「にゃはは、まぁいいんだよ解決すれば」

 

レイジングハートにジュエルシードを仕舞いながら言うなのはちゃんの言葉に同意して、地上に降り立ち戦闘服を解除する。

 

学校の制服へと戻った自分となのはちゃん、私服のワンピースとなったフェイトの元に、横から人型のアルフと美由希さん、そして美由希さんの胸に抱えられた小動物が一匹やって来た。

 

「あれ、ユーノ。いたのか」

 

「うん、ついさっきね。ごめんなのは、遅れて」

 

「大丈夫だよユーノ君。解決したんだから」

 

「そうそう、気にすんな。それより早く帰って晩御飯でも待つか」

 

さーて帰るぞー。今夜のご飯何かなー。ウチはリニスのポトフと桃子さんから教わった唐揚げだって。なんて日常会話を楽しみつつ公園を後にしようとみんな仲良く歩いていた所で、背後から声がかけられた。

 

「少し待ってくれないか。時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ」

 

突然の声にみんなで一斉に振り返り確認すると、そこには黒衣の少年が。

 

はて、何だって。

 

「えっと……自分達に何か?」

 

「だから、時空管理局執務官だ。今の戦闘に関して、少し話を聞かせて貰えないか」

 

今の戦闘って、もしかしてジュエルシードの事見られていたのか。ちょっとヤバいかなと思っていたら、美由希さんの胸に抱えられていた小動物が突然騒ぎ出した。

 

「時空管理局! やっと来たんですね! 僕はユーノ・スクライア、救助要請を出した者です!」

 

「あぁ君がそうか。遅くなって済まない。今付近の高次空間内に艦船アースラが停泊している。そこで少し事情を聞かせて貰えないか」

 

「え、それはちょっと」

 

いきなり喚きだした小動物の事もそうだが、そろそろ晩御飯だし。早く家に帰らないとな。

 

「いや、申し訳ないがそれでは困るんだが……」

 

黒衣の少年、クロノと名乗った人物がこちらの反応に微妙に困った表情を浮かべていると、フェレットを抱えた美由希さんが前に出た。

 

「ちょっと君、いくつ? 悪戯なら他所でやってくれないかな。この子達は私の妹とお友達で、家に帰らないといけないんだよ」

 

「いや、だから……」

 

「それに、いきなり知らない人に声をかけられて付いて行くと思う? それで、君いくつ? どこの小学生かな?」

 

「しょうが……? 僕は14才だ」

 

「14!? うっそ、見えない……」

 

美由希さんが驚きと共に言った言葉にウンウンと同意する。自分から見ても、彼は自分と同じぐらいか少し上程度にしか見えない。つまり小学生程度だ。

 

しかし14となると話は変わってくる。美由希さんもそう考えたのか、少し表情を厳しくしていた。

 

「あのね、君。14なら分かるでしょう、いきなり現れた得体の知れない組織を名乗る人間に付いて行く事の危険性が」

 

「そ、それは……だがしかし……」

 

「しかしじゃない。それに最近隣町で中学生が小学生の女児に猥褻行為しようとした事件もあったんだから。余計付いて行くわけにはいきません!」

 

「わ、わい……そ、そんなつもりは無いのだが。その、誤解だ!」

 

「その言葉を信用する根拠が無いよ。もういいよ、なのはもみんなも帰ろう」

 

美由希さんはそう言うと、自分達の背中を押して公園の出口へと歩き出す。背後ではクロノと名乗った少年がアタフタと慌てているが、こうなっては諦めてもらうしか無いだろう。

 

自分達は大人しく年長者である美由希さんの言葉に従うのみである。

 

さて、ところで。

 

「ユーノ、時空管理局って何だっけ」

 

「あぁー。そういや簡単にしか説明してなかったかな。帰りながらでも、詳しい話をするよ」

 

なのはちゃんの肩に乗りながら少し自慢気に宣う小動物に、思わず軽くチョップした。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

翌日。時空管理局という組織に関してユーノからある程度の情報を得た自分達は、学校ですずかちゃん、アリサちゃんにも説明を行った。まぁ家のお手伝いさんとか捜索に駆り出してくれていたので事情説明は当然の事である。

 

二人ともそういう組織が来たのなら今後に関して士郎さん達と話したほうが良いよねと言うので、放課後になってアリサちゃん家の鮫島さんが運転する車で翠屋へと到着。

 

店内に入ろうとした所で、入り口の札がCLOSEになっている事に気付いた。

 

「あれ、今日お店やってるはずなのに。店内のライトついてるし……」

 

「とりあえず中に入ろう。桃子さん達はいるでしょ」

 

「うん、そうだね」

 

入り口に鍵がかかっていないのを確認し、なのはちゃんを先頭に店内へと入る。

 

「ただいまー、あれっ!? 昨日の子!」

 

「あれ、本当だ」

 

「なに、知り合い?」

 

アリサちゃんの言葉に軽く頷きながら移動する。店内ではテーブル席に昨日クロノと名乗った少年と緑髪の女性、茶髪の美由希さん程度の女性が座っていた。そしてその正面に士郎さんと、プレシアさん。そしてテーブルの上にはユーノ。

 

隣の席では桃子さんがシュークリームを嬉しそうに頬張っているフェイトを眺めてニコニコしていた。

 

微妙に厳しい表情をしている士郎さんと対照的な桃子さんの姿に何が起こっているのか理解しかねるが、とりあえず自分達は桃子さんとフェイトのいる席へと近づく。

 

「おかーさん、ただいま」

 

「あらなのは、おかえり。みんなもいらっしゃい」

 

「お邪魔してます」

 

「それで桃子さん、一体何が?」

 

「大人の話し合いよ」

 

桃子さんがそう言うと、アナタ、と士郎さんへと声をかける。その声に士郎さんはこちらへと顔を向けると、表情を柔らかくした。

 

「あぁなのは、おかえり。みんなもいらっしゃい。丁度良い、アリサちゃん、鮫島さんは来ているかい?」

 

「え? えぇ、今外の車で待っています」

 

「良かったら店内に入ってもらえるかな。少し話がしたいんだが、今後について」

 

士郎さんに言われたアリサちゃんは、すぐにメールで表の鮫島さんを呼び出す。メールを送ってからすぐに店内へと入ってきた初老の男性、鮫島さんは頭を下げて挨拶をした。

 

「これは高町様、一体どのような御用で?」

 

「お忙しい所申し訳ありません。実はジュエルシードの件で、今後の事を目の前の『時空管理局』と名乗る方々が引き継ぐといった事を言っておりまして」

 

士郎さんがそう言うと、鮫島さんは「ほう」と一瞬目を鋭く光らせた。

 

「アリサお嬢様、皆様。申し訳ありませんが、ここから先は大人の話し合いですので。桃子様、皆様をよろしくお願いいたします」

 

「えぇ、鮫島さんも宜しくお願いします。さ、みんな。おやつ出すからウチで遊んでましょう」

 

桃子さんの言葉に「はーい」と元気良く返事を返し、店内を出て一路なのはちゃん家へと向かう。背後からユーノが『待って、置いて行かないで!』と呪詛じみた念話を飛ばしてくるが無視。なのはちゃんは律儀に『ごめんね、ユーノ君』と返事を返していた。

 

鮫島さんと士郎さんのあの目は、一戦やらかしそうな雰囲気を纏っており、明らかに子供が聞いてはいけない類の話になる事間違いなしである。そんな渦中に居なければいけないユーノには心の中でご愁傷様と言っておこう。言うだけだが。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

なのはちゃん家でゲームをやったり漫画を読んだり、各々好きなように過ごしていたら、いつの間にか夕方。そろそろお話は終わってるんじゃないかしら、という桃子さんの一言で、やっぱりみんなで翠屋へと向かった。

 

店内へと入ると難しそうな顔をしている少年と女性、変わらず厳しい表情の士郎さんとプレシアさん、表情が全く読めない鮫島さん。そして自分達が出た後で来たのだろう忍さんが、これまた自分達の後に来たのだろうはやてちゃんの隣に座っていた。はやてちゃんの後ろにはノエルさんが立っている事から、今日はノエルさんがはやてちゃんの身の回りの世話をしていたようだ。

 

あの温泉の一件以来、月村さん家のお手伝いであるノエルさんとファリンさんが、自分の家にはやてちゃんが泊りに来ていない時はお世話をするようになっていた。すずかちゃんの好意の現れである訳だが、はやてちゃんは恐縮しながらもその気遣いが嬉しいらしく、こうして放課後にはノエルさん達を伴い翠屋やすずかちゃん、アリサちゃんの家で遊べるようになっている。

 

いつも明るい笑顔を振りまくはやてちゃんだが、今日はどうも、その笑顔に陰りがあるようだ。

 

「あぁ、みんな。お帰りや」

 

「うん。……どうかしたのか、はやてちゃん」

 

「うんとな……この人達の知り合いに、グレアム小父さんがおるみたいなんよ……」

 

その言葉に思わず士郎さんの顔を見るが、士郎さんは黙ったまま、静かに頷く。

 

「彼女の言うグレアムは、恐らく我々の知るギル・グレアム提督。過去に闇の書の事件に関わった事のある人物で、この地球出身の人間だ」

 

クロノと名乗る少年の言葉に視線を向ければ、相変わらず難しい顔をしている。

 

「まさかこんな所で闇の書の主に出会うとは思わなかったな……。しかしグレアム提督の件、どういうつもりなのだろう」

 

「エイミィ、連絡はついた?」

 

「駄目です、こちらからの通信に応答しません」

 

緑髪の女性からの言葉に、エイミィと言う女性が応える。どうも内部で何らかの問題が発生しているようである、が……。

 

「えっと……また新しい問題が出てきた、って事でいいのかな」

 

「概ねその認識で問題無いわよ」

 

ふぅ、と溜息をついて紅茶に手をつけるプレシアさんの言葉に、またか、と思わず頭に手を当ててしまった自分は悪く無いと思う。

 

「どうしてこう、次々と問題が出てくるんだこの街は……」

 

「平穏な日常が、足音を立てて遠ざかっていく気がするね」

 

詩的に嫌なことを言わないでくれませんかね、すずかちゃんや。

 

「それで。はやてちゃんの事、そっちの人達に話したんですねプレシアさん」

 

「えぇ。闇の書については、私より管理局のほうが詳しいはずだからね」

 

「それは何よりで。えっと、クロノさんと、そちらは……」

 

「リンディ・ハラオウンよ。クロノの母親です。初めまして」

 

緑髪の女性、リンディさんが自己紹介しながら頭を下げてきたので、こちらも慌てて頭を下げる。

 

「中田堅一です、昨日はすいません。何分夕食の時間でしたので」

 

「仕方無いわ。こちらこそお邪魔してしまってごめんなさいね。それとジュエルシードの件、捜索してくれていてありがとう」

 

「いえいえ、自分は何も。ユーノとなのはちゃんが頑張ってくれていましたから。勿論他の海鳴に住む人も」

 

社交辞令の言葉を交わしつつ、互いに頭を下げ合う。

 

「堅一君、今後はこちらの管理局の方が協力してくれるそうだ。探査用設備もあるから、今までよりずっとラクになる。君となのは、フェイトちゃんには、現地協力者として彼らに協力して貰う事になった」

 

「もちろん、後で謝礼もあるそうだから、無償奉仕じゃなくて良かったわね」

 

士郎さんとプレシアさんの言葉に思わず苦笑で返す。なるほど、そういう交渉を今までやっていた訳か。

 

「僕もジュエルシードの捜索に加わりたいのだが、やる事が出来てしまって。申し訳ないが、今しばらく協力をお願いする」

 

「いえ、自分達の街の事ですから。ね、なのはちゃん」

 

「うんっ。大丈夫、今までもやってこれたんですから!」

 

自分の言葉に任せなさいと意気込んで返事するなのはちゃん。可愛らしさが前面に出たその行為に思わずほんわかしてしまう。

 

「そして、ユーノ・スクライアには本局にある『無限書庫』という資料室で闇の書に関する資料の捜索を行なってもらう事になった」

 

「うん、僕に出来る事なら。だからなのは、一旦お別れだね」

 

「そっか……うん、頑張ってね。ユーノ君」

 

小動物とのお別れに若干寂しそうななのはちゃん。まぁ今まで一緒に過ごしてきていたヒトとの別れは寂しいものである。というか、ペットとお別れのイメージなのかもしれない。

 

「そういう訳で、明日からもよろしく頼むわね」

 

「はい、自分に協力出来る事なら」

 

リンディさんからの言葉に、自分は頷きながら返事を返した。

 


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