魔法少女リリカルなのは 夢現の物語   作:とげむし

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第十五話

 

月村家の秘密を共有した自分達。

 

また、はやてちゃんの一人暮らしも共有され、ついでに自分も人間じゃない事をカミングアウトする事となった。

 

人外との遭遇率が高い街、海鳴市。ホントに大丈夫かこの街……。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「んん~っ、と。おはようはやてちゃん、朝早いね」

 

「おはようさん、堅一君。みんなお寝坊さんやな? さっきファリンさんが来て、もうすぐ朝ごはんやて」

 

「昨日あんだけ布団の中で喋っていればね」

 

波乱の幕開けをした温泉旅行2日目。

 

昨日あの後正気を取り戻したすずかちゃんも交えての宴会から、子供達は大部屋で自然に寝付くまで話をしていた。

 

すずかちゃん家のペットやアリサちゃん家の犬、なのはちゃんは何故かユーノの生態に、フェイトはアルフの事。

 

それをニコニコしながらはやてちゃんが聞いて、今度アリサちゃんの家に泊まりがけで犬をモフモフしに行く事になった所で、自分は寝てしまった。

 

あの後どうなったのかは判らないが、みんなぐっすりと寝ている事から楽しく話していたんだろうと思う。

 

それはそうと、アリサちゃんがユーノを握り潰してしまいそうなので、掌をやんわり解してユーノを開放してやる。

 

「うぅ~ん……はっ! あ、堅一」

 

「よう。どんな夢見てた」

 

「発掘作業中、土砂崩れに巻き込まれて潰される夢……」

 

随分と爽快な夢だったらしい。

 

ユーノの事は置いておいて、少々寝相が大変な事になっているみんなを起こすことにしよう。

 

「おーい、みんな起きて。そろそろ朝ごはんだよ」

 

「んん~む、もうちょっと……」

 

「お約束の文句をありがとう、アリサちゃん」

 

モニョモニョと布団を抱きしめながら言うアリサちゃんに苦笑を浮かべながら、優しく揺すりながら起こす。

 

今日はきっと、良い旅行日和のはずだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「おか~をこ~え~ゆこ~よ~、くち~ぶえ~ふきつ~つ~♪」

 

「ご機嫌だね、はやてちゃん」

 

「昨日はなんやかんやで散歩できへんかったからな。今日こそウォーキングコース制覇や!」

 

今日は自分がはやてちゃんを押して進む。道いっぱいに子供達で広がって、喋りながら景色を楽しむお散歩。木々に囲まれたコースはとても空気が澄んでいて呼吸をするのも気持ちよく感じる。

 

「あ、見て。湯気が出てる」

 

「ホント。きっと温泉があるのね」

 

すずかちゃんが指さした山間を見て感心するアリサちゃん。なるほど、確かに温泉の、硫黄の香りがする。

 

「そういや温泉卵食うてへんなぁ」

 

「散歩が終わったらお土産屋さんとか散策するから、その時食べようか。お小遣いは貰ってるから」

 

「ホンマに! あーなんかヨダレ出てきたわ」

 

「食い意地張りすぎでしょ」

 

冗談めかして言うはやてちゃんに、思わず吹き出して突っ込む。周りのみんなもアハハと楽しそうに笑い、周囲が笑顔で包まれる。

 

さて、そろそろ散歩も半ばかな、という所まで来た時、足元にチョロチョロと小さいのがやって来た。

 

「あっ、ユーノ君」

 

「なのは。ジュエルシードを見つけたから、これ」

 

ユーノはそう言うと胸に抱えていた青い宝石を掲げる。

 

「全く、なんだって2日連続でこんなもんが見つかるんだ」

 

「僕に言われても知らないよ。まぁ良かったじゃないか、今回は発動する前に封印できたんだから」

 

「にゃはは、確かにそうだけどね」

 

意外に辛辣な事を言うユーノに苦笑を浮かべながら、静かにレイジングハートへ収納するなのはちゃん。

 

それを見届けると、ユーノは極々自然に、なのはちゃんの肩へと駆け上った。

 

「探査魔法を使ったけど、ココら辺にはもう見当たらない。念の為足の早いアルフが目視で見に行ってるから」

 

「うん、ありがとうユーノくん」

 

やれやれ、今日こそは平穏無事に過ごせそうだな。

 

「全く、ジュエルシードなんて、厄介ね」

 

「まぁまぁ、アリサちゃん」

 

「うっ、ごめん」

 

プンスコと怒りを表すアリサちゃんと、その言葉を聞いて凹み出すユーノ。全く、変に責任感の強い奴だなぁ。

 

まぁ、その責任感が無ければ今よりもっと被害が甚大になっていた可能性があるから、そこには感謝しておかないと行けないよな。

 

「それよりほら、先に進もう。フェイトが景色を見ながらいつの間にか前に行ってる」

 

「あれ! いつの間に!?」

 

今純粋に旅行を一番楽しんでいるのは、間違いなくフェイトだった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

一日の締めに温泉に浸かり、ゆっくりと身体を解してから、晩御飯。

 

今日も今日とて大人達はお酒を飲みながら宴会をし、子供は子供で集まって楽しく懐石料理を摘んでいた。

 

今度は夏に海でも行きたいね、などと話をしていた所で、父さんと士郎さんがやって来る。

 

「やぁ、はやてちゃん。少し話をしていいかな」

 

「はい、改まってなんですか?」

 

穏やかに話しかけた士郎さんに笑顔で応じるはやてちゃん。

 

士郎さんと父さんは、はやてちゃんの対面に座ると、静かに話し始めた。

 

「実はね。はやてちゃんの事を、二人で話し合ったんだ。その、グレアム小父さんには悪いとは思うが、一緒に暮らす大人が必要なんじゃないかと思ってね」

 

グレアム小父さんとは、はやてちゃんが一人暮らしをしているという話の中で出た、資産管理や援助を行なってくれている、はやてちゃんの両親の知人、という人。

 

何でもイギリスに住んでいるらしく、一度だけ直接会った事はあるらしいが、その後は手紙だけでやり取りをしているのだそうだ。

 

士郎さんの言葉にはやてちゃんの表情が若干固くなる。

 

「まぁ、急にどうこうしようという訳ではないんだ。ただ、我々は君の境遇を知って、何とか助けになれないかと思っている。それだけは分かって欲しい」

 

「それは……はい。有難い事です」

 

「はやてちゃんが今暮らしている家は、ご両親と過ごしていた家だろう。大事な家を引き払え、何てことも思ってないし、施設に入れるなど以ての外だ」

 

「だが子供が一人暮らしなんてぇのは危ないし、何が起こるか分かったもんじゃねぇ。だろ?」

 

士郎さんと父さんの言葉に、黙って頷くはやてちゃん。

 

父さんはその様子を見つめると、自分の膝をポンと叩いた。

 

「ずっとって訳じゃねぇ。二日に一遍でいいんだ、俺の家で過ごしてくれ。ウチなら翔子もずっと家に居るし、俺だって敷地内の整骨院に居る。掛かり付けの病院に送ることもできるし、何かあった時はすぐ対応できる」

 

「えっ、でも……ご迷惑じゃ」

 

父さんの言葉に、遠慮がちにそう呟いたはやてちゃんだが、父さんは今度は膝をバシンッと強めに叩くと一喝。

 

「バカヤロウ! 子供がそんな事考えるもんじゃねぇ! 子供は迷惑をかけるもんだ。俺達大人に、もっと甘えていいんだよ!」

 

厳しくも有り、優しくも有る父さんの言葉。

 

はやてちゃんは身体をビクリと震わせた後、静かに、涙を零した。

 

「父さん……」

 

「えっ、いや、そ、そんな目で見るな。くそっ、まいったな」

 

「ちがっ、その、私、叱られるのが親以外でなくて、それで、なんやようわからんけど、うれしぅて」

 

はやてちゃんの言葉に、父さんと士郎さんが、少し苦い顔をする。

 

自分にもその理由は分かる。はやてちゃんの周囲に、どれだけ長い間大人が居なかったのかがありありと分かる言葉だった。

 

この年頃の子供で孤独を知り、日々を無味に過ごす事の虚しさを理解してしまっている、その言葉の意味に重いものを感じずにはいられない。

 

父さんは頭をガシガシと掻くと、その手をはやてちゃんの頭へポンと乗せた。

 

「まぁ、なんだ。ウチに来れば悪い事すりゃ叱るし、良い事すりゃ褒めてやれる。同情とかじゃねぇ、子供は甘えるもんなんだよ。分かったか?」

 

「はい、はい……うぅ、うわぁーんっ!!」

 

頭を撫でる父さんの言葉に、とうとうはやてちゃんは、大泣きしてしまった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

明けて翌日。

 

温泉旅行も最後、朝にみんなでゆったりと温泉に浸かってから、お土産屋さんを散策。

 

「折角だし、こういうバスタオルとか買っていこうかな」

 

「あ、いいねそれ。高いものじゃないし、記念にみんなで買っていこうよ」

 

でかでかと海鳴温泉の名前が入ったタオルをみんなで購入したり、温泉まんじゅうやら温泉卵、美肌効果のある温泉の素などを買って、帰宅の途に着く。

 

今日は日曜日なので、明日は学校だ。そう考えると若干憂鬱にはなるが、学校では今日とはまた違う環境で皆に逢えるからそれが楽しみでもある。

 

都市部に帰ってきて解散した自分達中田家は、一路はやてちゃんの家に。今日から早速、はやてちゃんの定期的なお泊りを開始してしまおうという事である。

 

はやてちゃん本人としても旅行の後に一人寂しく過ごすのは嫌だったらしく乗り気であり、「堅一君家にお泊りや~」とはしゃいでくれている。

 

今夜は綾子ちゃん、翔子さんと三人川の字で寝るらしい。雅俊さんが少し哀れだが致し方なし。涙を呑んでもらおう。

 

はやてちゃんの家は話に聞いた通りご両親が残してくれていた一軒家で、一般家庭であればそれなりの大きさの物件である。

 

外見も小綺麗に維持されているが、庭周辺の雑草なんかは生えたままであったり、やはりハンデのあるはやてちゃん一人では難しい手入れなんかはされていないのが見受けられる。

 

玄関からスロープがちゃんと造られており、はやてちゃんが自身のハンデと向き合って生活している様子が伺える。

 

「汚い所やけど、あがって待っとって下さい」

 

「いやいや、十分綺麗だよ」

 

「私手伝うから、おじいちゃん達はそっちで待っててね」

 

「宜しくお願いします」

 

自分達を広間へと促してから、はやてちゃんと翔子さんがお泊りの準備の為一階奥の部屋へと移動していく。

 

広間にはソファがあり、大きなテレビと食器棚やダイニングテーブルなど、今時の一般家庭らしい造りだ。

 

自分達の居住スペースが純和風なので、高町家もそうだがこういう洋風に造ってある部屋はとても興味が惹かれる。フローリングって畳とは違う魅力があるよね。

 

父さんと二人、ソファに腰掛け待つ事暫し、膝の上に鞄を載せたはやてちゃんを押して、翔子さんがやって来た。

 

「準備OK。行けるわよ」

 

「今日は宜しくお願いします」

 

「おう。じゃあ行くか」

 

よっこいしょとジジ臭くソファから立ち上がった父に釣られて自分もよっこいしょと立ち上がる。

 

さて玄関へ行こうと思った所で、ふとはやてちゃんの膝上、鞄の上に置かれた一つの本が目についた。

 

「あれ、はやてちゃんそれは?」

 

「あぁこれ? えろう昔の事やからわからんけど、いつの間にか持っとったもんやねん。綺麗やろ、中身見たことないんやけどな」

 

鞄の上には、鎖で縛られたような装飾の大きな本が一冊。何だか判らないがそれが気になっている自分に気がつくと同時に、腕にいる相棒が声を出した。

 

《相棒。そちらの本ですが、どうやら魔装具のようです》

 

「…………マジか」

 

「え、なんて?」

 

《私と同じような、魔力行使用の兵装だという事です》

 

思わず唖然として、はやてちゃんと二人で見つめ合う。

 

何という事でしょう。はやてちゃんは疾うの昔に、魔法関係と関わりがあったのでした。

 

「……じょ、冗談やろ?」

 

アハハ、と乾いた笑いを浮かべながら冷や汗混じりに言うはやてちゃんだが、ところがどっこい。これが現実です。

 

「自分でも分かる。それは魔法関係の奴だよ」

 

「…………疾うの昔に、関わりがあったっちゅうこっちゃね。アハハハ……ハァ」

 

「父さん、予定変更。はやてちゃんの荷物だけ持って帰っておいて」

 

「今から行くのか?」

 

「うん、高町さん家に。心配し過ぎるって事は無いと思うんだ、はやてちゃんの状態を鑑みても」

 

「だな。分かった、嬢ちゃん、鞄だけ寄越してくれ」

 

「宜しくお願いします。堅一君も、よろしくな」

 

「自分じゃないんだけどね。フェイトの母親にお願いする事になるから」

 

自分の言葉に膝の上の本を眺めながら、はやてちゃんは再び溜息を零した。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

はやてちゃんと二人、はやてちゃんの家から歩くこと数分で高町家に到着。携帯で話はしてあるので庭の方でなのはちゃんとユーノが待っていたので声をかける。

 

「や、旅行帰りなのにごめんね」

 

「ううん、大丈夫。それよりけんちゃん、その本がはやてちゃんの?」

 

「私の持っとったやつなんやけど……」

 

「うん、間違いない。デバイスだね、これは」

 

なのはちゃんの肩から本の上へとジャンプして飛び乗ったユーノが前足でツンツンと突きながら答える。自分達より詳しいユーノが見て間違いないという事は、やはり思い違いという事は無いようだ。

 

その事実にやっぱりかぁと力なく応えるはやてちゃんの顔は、さっきから苦笑いだ。

 

それもさもありなんと思いながら、自分達は、ユーノの転送魔法で時の庭園へと降り立った。

 

「ふわぁ、ホンマに瞬間移動しよる。すごいなぁ」

 

「ユーノはこういう魔法得意だからな。自分もなのはちゃんにもできんよ」

 

初めての魔法体験にワクワクしたはやてちゃんがキラキラとした瞳で小動物を眺める。どこか自慢気に歩くユーノの姿は、どこか滑稽だった。

 

既に念話である程度の概要は伝えてあるので何らかの準備を行なってくれているだろうと思い、いつもの大部屋、プレシアさんの執務室へとお邪魔する。

 

「失礼しまーす」

 

「いらっしゃい、待ってたわよ。初めまして、八神はやてさん。フェイトとアリシアの母の、プレシアです」

 

「あっ、はじめまして。この度はご迷惑をおかけして」

 

「いいのよ、それは」

 

物腰柔らかに微笑むプレシアさんの背後で、フェイトとアリシアがやっほーと笑顔を浮かべる。そしてその背後で、リニスとリリナさんが何やら作業をしていた。

 

まぁ今は関係無いのかなと思いつつ、話を促す。

 

「そうそう。早速だけどその本、見せて貰えるかしら」

 

「あ、はい。これなんですけど……」

 

プレシアさんははやてちゃんから本を受け取り、表を眺め、ひっくり返して裏面を眺めてから呟いた。

 

「……やっぱりそうね。リリナさん、これ解析できるかしら?」

 

「まっかせて。ハズラットの叡智の結晶である私の解析機器に不可能はありません!」

 

何やら車椅子姿ながら張り切ったリリナさんに笑顔で本を差し出すと、リリナさんは嬉々として受け取り、何か台座のようなものに本を置く。

 

「よし、じゃあ今から簡単に解析かけちゃうから。その間話でもしてて」

 

そう言うと、宙に浮かび上がったキータッチに流れるように指を踊らせ始める。なるほど、確かに凄い技だ。

 

この解析が終われば何か分かるのかな、と思っていたが、プレシアさん自身で、アレが何なのかは知っているそうだ。

 

「昔、アリシアの治療に使えないかと思って探したこともあるものなのよ。資料データは持っているわ」

 

プレシアさんがそう言いつつ宙空に指を振るうと、いくつものウィンドウが出てくる。

 

中には画像データもあるが、雰囲気からして何やらきな臭い感じがしてならない。

 

「あの本は『闇の書』と呼ばれる、持ち主の願いを叶えると言われているロストロギアよ。但しジュエルシードとは違い、持ち主は本に選ばれた人間のみ。それが」

 

「今は、私っちゅう事ですか?」

 

「そう。そして……そうね。少し嫌な話になるけれど、覚悟は良い?」

 

チラリ、と視線を向けるプレシアさんの言葉に、はやてちゃんはゴクリと唾を大きく飲み込んだ後、フゥと一息ついた。

 

「結局、聞かへんと分からん事やし。聞きます」

 

「そう、強いわね。簡単に言えば、持ち主の願いが叶うといった事は無いわ」

 

そう言うと、プレシアさんは一枚の画像を大きく表示する。

 

そこには、荒れ果てた世界に存在する、一つの人影が浮かんでいた。

 

「これは、恐らく闇の書が完成した際に現れる書に存在する管理人格、と言われているわ。闇の書は他者、或いは魔法生物から魔力を蒐集し、魔力を貯める事で初めて力が顕現する。でもそうなった場合、持ち主は闇の書に取り込まれて、世界を無差別に滅ぼして死ぬ事になるわ」

 

死ぬ、という単語にはやてちゃんの身体がビクリと震える。余り想像したく事態ではある。自分ははやてちゃんの肩に静かに手を置き、なのはちゃんがその掌をギュッと掴んだ。

 

「あかん、私どうしよ……」

 

「大丈夫、大丈夫だよはやてちゃん」

 

「何とかなりますよね、プレシアさん」

 

自分となのはちゃんの言葉に、プレシアさんは淡い笑顔を浮かべて答えてくれた。

 

「えぇ、何とかする為に私達も協力するわ。その為にも今解析して、何が有効か対策を練っているの。リリナさん、どうかしら?」

 

「ちょっと中身まで見るのは無理かな、今は。防壁と攻勢の防御プログラムがあるみたいなんだけど、別個のシステムで動いてるみたい。ただ、今現在もこの本がはやてちゃんの魔製結晶に干渉してるのは分かった」

 

「えぇと、どういう事ですか?」

 

はやてちゃんの言葉に、リリナさんが笑顔で応える。

 

「この本とあなたが繋がってて、もしかしたらその足も、この本を何とかすれば治るかもしれないって事」

 

「ホンマですか!?」

 

「うん、恐らくね。侵食型の干渉だから、肉体にも影響を与えていると思うの。その足は麻痺みたいな感じでしょ。それに、多分時が来たらこの本が自動起動して、何らかのアクションを起こすと思うんだよね。他者から魔力を蒐集する為の何らかの」

 

「恐らくは、これ。ヴォルケンリッターと呼ばれる四人の戦士ね。闇の書と同時に確認される、古代ベルカの騎士を模した魔導プログラム体よ。この四人が、時が来たらはやてちゃんの前に姿を表すわ」

 

プレシアさんがそう言うと、一枚の画像を再び大きく表示する。画像には確かに、朧気ながら四体の人影が見て取れた。この四人が現れた時、はやてちゃんの何かが始まるという事か。

 

横目ではやてちゃんを見ると、何やら目を輝かせている。

 

「四人かぁ、洗濯とか大変そうやな。あ、食事の用意もや」

 

「心配するのはそっちか」

 

「げ、現実的だね。はやてちゃん」

 

何とも生々しい想像に思わず苦笑する。

 

「ともかく、このヴォルケンリッター達が出てこないと何とも言えないみたいだから。その時には私達に相談してね」

 

「はい、ご迷惑かけますが宜しくお願いします」

 

こうして、はやてちゃんと闇の書を巡る事情が、始まったのだった。

 

まだ、ジュエルシードすら片付いていないのに。

 


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