魔法少女リリカルなのは 夢現の物語   作:とげむし

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第十二話

 

結局フェイトもプレシアさんも、自分の事は自分だけで、決着をつけたようだ。

 

周囲の影響があったのかもしれないけれど、なのはちゃんは兎も角、自分は何もしていないと思う。フェイトが、強かったから収まる所に収まっただけの事。

 

まぁ、そんな単純に修復できるものじゃないだろうから、安心するには早いんだろうと思うけれどね。

 

閑話休題、自分の製造者でリリナさん、ざっくばらんな人でした。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

諸々、というかテスタロッサ家に纏わる一連の出来事が形的には収束したその日の夜、自分達は時の庭園へと集まっていた。

 

集まると言っても、具体的には高町家および中田家の面々である。高町家はフェイトが世話になった事もありプレシアさんが呼びつけて申し訳ないが是非にと、中田家に関しては自分絡みでリリナさんが是非にという事で、こうして一堂に会した訳である。

 

「えー、それでは。プレシアさん、アリシアちゃん、リリナさんの快復を祝って、乾杯」

 

『かんぱーいっ!』

 

状況は完全にホームパーティー。一番広いプレシアさんの執務室に長テーブルをズラリと並べ、テーブルの上には所狭しと桃子さんと翔子さん、プレシアさんや士郎さんなんかも手伝った料理が並べられてジュースにアルコールも揃っていた。

 

大人は大人同士、子供は子供同士肩を並べてそれぞれ好きなように食べたり飲んだりをしている。

 

「綾子ちゃーん、シューマイ食べるー?」

 

「食べゆー!」

 

子供用椅子に座った綾子ちゃんに笑顔でシューマイをあーんするなのはちゃんに心が癒される。その隣では、フェイトがアリシアちゃんの世話を焼いていた。

 

「アリシア、ちゃんと野菜も食べないと駄目だよ?」

 

「うー、ピーマンは苦手ー」

 

「流石にピーマンは苦くて駄目か」

 

自分達ぐらいになれば何とか食べられるようになるだろうなと思いつつ、翔子さんお手製の酢豚に手を付ける。うむ、酸味が効いてておいしい。

 

酢豚を食べつつ周囲を改めて見ると、桃子さんと翔子さんが、プレシアさんと談笑、ウチの父は士郎さんと雅俊さんと飲みつつ大笑い。リリナさんは、美由希さんと談笑をしていた。

 

子供組は自分以外を改めて見ると、女性率が凄く高い環境である。

 

「しかし、堅一の母親か。俺よりも年下じゃないか」

 

「まぁ、お腹を痛めて生んだ子じゃないですからね、自分は。それにしても限度があると思いますけど」

 

「正確には母親、とは言えない訳だしね。色々複雑だと思うよ」

 

恭也さんの言葉に同意しつつ、プチトマトを齧っているユーノへと視線を向ける。テーブルの上でプチトマトを齧っている姿は、完全に小動物のソレだ。

 

「ユーノ、お前の怪我とか魔力って、まだ回復しないのか?」

 

「外傷は大丈夫なんだけど、魔力がね。全部絞り切っちゃったし、もう二、三日は必要かな」

 

「便利だか不便だか分からんな、魔力というのは。体力のほうが回復しやすいじゃないか」

 

恭也さんの言葉にウンウンと頷く。それほど長引くほど使いきってしまえる力というのは、反動が大きすぎる気がする。

 

ユーノのような状態になるのは余り良くないと思うので、自分も魔法を使う時は気をつけなければな。

 

《相棒の場合、常に制限をかけた上での行使となるので使い切るという心配はありません。それよりも制限以上の出力を行わないよう気をつけなければなりません》

 

「そうしないと世界がヤバイんだろ、分かってるよ」

 

「力がありすぎて暴走しちゃうっていうのも考えものだよね」

 

ユーノの言葉にウンウンと頷く。限界以上に膨張した風船のように、自分の身体が魔力でパーンと破裂したら嫌だなぁ。

 

ちょっとグロい想像をしてしまい気分が悪くなり、それを喉の奥へ流し込むようにジュースを一気に飲み込んだ。

 

グイ、と首を傾けた時に、スリ、と足元に何かが触れる感覚が走る。

 

「ん、なんだ?」

 

《あぁ、連絡するのを忘れてました。数年前に時の庭園内で瀕死の猫がいたのを捕獲していたんです。つい先程アリシア・テスタロッサ達の治療に使った純粋魔力の余剰分を利用して治療した上で開放しておきました》

 

「お前、リリナさんといい瀕死の生物を捕獲する趣味でもあるのか?」

 

《見つけたから捕獲した、それだけの事です》

 

どういう事だよそれは。

 

相棒の言う通り、自分の足には毛並みのフサフサとした猫がスリスリと頭を擦りつけていた。

 

ヒョイっと持ち上げてみると、その猫はニャーと可愛い声で鳴いた。

 

「あっ、リニスー!!」

 

「えっ!?」

 

自分の持ち上げた猫にアリシアちゃんが反応し、その言葉にフェイトが驚きの声をあげる。

 

なるほど、こいつはリニスっていうのか。

 

「おー、お前リニスっていうのか」

 

「この度は助けて頂いてありがとうございます。プレシアの元使い魔のリニスです」

 

「………………」

 

猫が、喋った。

 

「リニス!! あなた、生きていたのね!?」

 

「えぇ、プレシア。あなたとの契約が切れ、消滅する間際に機械に捕獲され、今まで生き長らえていました。とりあえずラインを繋いでください。また瀕死になってしまいます」

 

リニスがそう言うと、プレシアさんは慌てた様子で何やらゴニョゴニョと唱え、同時にリニスが光を帯びる。

 

何かあるのだろうと思い自分がリニスを床に降ろすと同時に、光輝いていたリニスが、そのまま人型へと形を変えた。

 

「――自意識のある行動は数年振りです。ラインの復旧、ありがとうございますプレシア」

 

「リニス……私、あなたの言葉を」

 

「構いませんよ、プレシア。今は全て、良い方向へ向かっているのですから。堅一さん、プレシアとフェイトの事、改めてありがとうございました」

 

「いや、自分は何もしてませんから……」

 

人型、それも清楚なお姉さん風な女性となったリニスに少し動揺しつつ返事を返す。

 

それにしても、プレシアさんもリニスも、なんで微妙に胸元が開いている服装なんだろうか……。

 

「リ、リニスーッ!!」

 

「うおぉんっ!! リニスー!!」

 

いきなり大声で、というか涙を流しながらリニスへと抱きつくフェイトとアルフ。そんな二人をリニスはあらあらと言いながら優しく抱き留めていた。

 

何事かと思いながら眺めながら、そういえばアルフが言っていた事を思い出した。リニスは昔フェイトの傍に居たが居なくなってしまったのだと。

 

その結果が瀕死で捕獲され、今に至るという事なのだろう。

 

「な、なんか色々起こりすぎて、なのははそろそろ目が回りそうです」

 

「大丈夫、自分もそろそろついて行けないから」

 

苦笑いを浮かべるなのはちゃんと一緒に、自分は大きく溜息を吐いた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

フェイトの教育係兼プレシアさんの使い魔であるリニスを交えて改めて乾杯を行い、賑やかなまま、宴会はお開きとなった。

 

フェイトは今日から地球、海鳴市で全員が住める程度の広さの部屋が見つかるまで時の庭園で家族仲良く寝泊まりし、昼間はアルフと一緒にジュエルシードを探してくれるとの事。

 

アリシアちゃんとリリナさんはリハビリをしながらリニスによってお勉強を、プレシアさんは海鳴市の物件探しと、テスタロッサ一家+αはこれから忙しくなりそうだ。

 

自分達も放課後はジュエルシードを探すつもりで行動する。しかし、中々隠匿が得意な物質なようで一日探して見つからないなんて事もあるだとうとユーノは言う。

 

まぁ事が起こる前に回収するに越した事は無いが、事が起こってしまった時、対処できれば問題ないだろうと思う。

 

兎も角、当面のやる事は決まったので、後はそれに沿って動くだけである。

 

「――――で、今日はプールな訳ですか」

 

「ケン、いつまで不服そうな顔してんのよ」

 

「いや、約束したはしたけどさ。その約束に関しても流石に色々理不尽じゃないかなぁと思ったりね」

 

「ま、まぁまぁけん君」

 

「今朝からずっとその調子じゃないか堅一」

 

プールサイドで黄昏る自分に不満そうに声をかける浮き輪装備のアリサちゃんと、自分を何とか宥めようとするすずかちゃん。そして一緒に来た小動物兼ユーノ。

 

今日は約束のプールの日。なのはちゃん達の他に、美由希さんとすずかちゃん家のメイドであるノエルさんとファリンさんと一緒に、恭也さんのバイトしているプールへと来たのである。

 

なんというか、現地に来た所でなんでこうなってしまったんだろうとか改めて考えてしまったのが良くなかった。

 

「それにしても、可愛い水着だね二人共」

 

アリサちゃんは赤色の帯広ビキニ、すずかちゃんはシンプルな藍色のワンピースで立っている。素が良いだけに何とも可愛らしい。妹的な意味で。

 

「フフン、どうよ」

 

「あ、ありがとうけん君」

 

アリサちゃんは何故か自慢気に、すずかちゃんは少し恥ずかしそうにお礼を言う。いやいや、お兄さんこんな可愛い子とプールで遊べるなんてシアワセダナー。

 

「あんたね、そう思ってるなら表情を嬉しそうにしなさい」

 

「いやだってね、気不味いんだよ、男子一人って」

 

「確かに、そうかも。でも私達は気にしないから」

 

いや自分が気にするんですよ、すずかさんや。

 

「あっけんちゃーん!」

 

「あぁ、なのはちゃ――」

 

背後からの声に振り向くと、そこにはオレンジのビキニを着たなのはちゃんが。胸元と下にフリルのついた、結構、いやいや、かなり際どい感じのローライズビキニを着たなのはちゃんが、嬉しそうに手を振りながらこちらへと駆けてきていた。

 

「――恭也さん、あの水着誰が選んだんですか」

 

「母さんだ」

 

「あぁ……もう、なんていうか。とりあえずあの子が如何わしい人に攫われないよう目を光らせておきます」

 

「頼んだ」

 

視線をなのはちゃんに固定したまま、傍らに静かに立った恭也さんと言葉を交わす。

 

あれはいかん。可愛い、可愛いんだが、そこはかとなく蠱惑的なものを感じる。健康的なエロスというか、その筋の人が見たらきっと大喜びしてしまうだろう類のものである。

 

「なによあんた、鼻の下伸ばしてんじゃないわよ!」

 

「けん君、なのはちゃんばっかり」

 

「いたっ、ちょっ、ごめんごめん! 二人の事もちゃんと目を光らせておくから!!」

 

声と共にバンと背中を張られ脇腹を抓られた。

 

「あれ、なにしてるの?」

 

「別に、なんでもないわよなのは。さ、早く行きましょ」

 

「え、うん。あっ、お姉ちゃん達待たないと」

 

「そうだね。けん君はもうちょっと反省してね」

 

「あの、すずかちゃん。自分はこれ以上何を反省すれば」

 

「はぁ……」

 

呆れられてしまった。

 

こうして微妙に自分一人だけ気不味い思いをしつつ美由希さん達を待ち、更に美由希さん達が来た時のリアクションで、今度は三人分怒られるのであった。

 

美由希さんの水着姿は、健全な青少年には目の毒なのでございます。

あのスタイルの良さは反則だ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

波のあるプールでなのはちゃんと一緒に波と戯れ、アリサちゃんに泳ぎを教えるファリンさん達を眺め、すずかちゃん、美由希さんと水泳競争をする。

 

なんだろう、これは世の中の男性が見たらとても羨む状況なのではないかと思った自分は間違っていないと思った。

 

嬉しいやら困惑するやら、どうしようとか思いながら一旦プールサイドへとあがると、プールサイドで監視している恭也さんの会話内容が聞こえてきた。

 

「――だから、気をつけてね」

 

「はい、分かってます」

 

恐らく恭也さんより少し上ぐらいだろう男性から、何かを気をつけるよう言われている恭也さん。

 

あの恭也さんが気をつけるような事って一体なんなんだろうか……。

 

「恭ちゃん、今の会話、どうかしたの?」

 

自分と同じタイミングで会話を聞いていたのだろう、プールに浸かりながらサイドに肘をつき恭也さんへ声をかける美由希さんの姿があった。

 

「あぁ。ここ最近、女性の着替えや下着が盗まれる事件があってな。つい先日も女子更衣室で男が捕まったばかりなんだ」

 

「あぁ、そういう事なんだ」

 

「美由希達も、気をつけるように。くれぐれも単独行動は控えるようにな。それじゃあ俺は見回りに行ってくるから」

 

「了解、なのは達の事は私とけんちゃんに任せてよ。ね、けんちゃん」

 

「そうですね。心配しないでください」

 

自分達の言葉に笑顔で頷き、恭也さんは見回りへと行った。

 

「しっかし、やっぱりこういう所にはいるもんなんですね」

 

「まぁそういうものなんだろうね。恭ちゃんみたいな堅物もいれば、そういう偏執的な人もいる訳だ。けんちゃんはどう?」

 

「自分なら下着とか集めるくらいなら本人に声をかけるかな」

 

「お、言ったなー」

 

自分の言葉にニヤニヤと厭らしい笑顔を見せる美由希さん。

 

どうやらからかう気満々のようだが、黙ってからかわれる程自分は素直な子供では無いのだ。

 

「今日の美由希さん、凄くセクシーですね。その水着、とても似合ってますよ」

 

「ちょっ、い、いきなり何いってんの!?」

 

「美由希さん可愛いですし、スタイル良いですから。水着を着ると余計綺麗に見えます」

 

「やめてやめて! 悪かったからもう許して~!!」

 

「いやいや、自分はただ美由希さんを女性として意識した上で褒めているだけじゃないですか」

 

「だったらそのニヤニヤした表情は何よ! 恭ちゃんが私からかう時の表情ソックリ!」

 

顔を赤くして怒る美由希さんにひょひょひょと笑いながらプールへと飛び込む。

 

背後から盛大なバタ足の音が聞こえてきたと同時に、物凄い勢いで美由希さんが追い掛けてきているのを確認して、自分も最大速で水を掻く足を動かした。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

美由希さんとの色気もへったくれもない全力水中鬼ごっこやら水中バレーやら一頻り遊んでいた時、突然周囲に強大な魔力が発生したのと同時に、結界が張られた。

 

「っ! これ、ユーノか!?」

 

《その通りです、相棒。恐らくジュエルシードが発動したものと思われます》

 

「え、なに? 何か起こってるの?」

 

声のした方向に慌てて視線を向けると、そこには自分の言葉に戸惑っているアリサちゃんとすずかちゃんが居た。その奥には美由希さん達もいる。

 

「『おいユーノ! なんでアリサちゃん達が結界内に居るんだ!』」

 

『ご、ごめん堅一! 範囲が広すぎて、結界から出すことが出来なかったんだ! 今ジュエルシードを取り込んだ想いの塊がそっちへ行った!』

 

情けない声をあげるユーノに思わず心の中で舌打ち。まぁ結界が無いよりはあったほうがマシなんだろうが。

 

「なのはちゃん! レイジングハートは!?」

 

「い、今取りに行ってくる!」

 

「急いで! すずかちゃん達はすぐに水からあがって! 今ジュエルシードが」

 

「け、ケン……あれ」

 

声と共に見ると、震えるアリサちゃんが自分の背後、中空を指さす。

 

なんというか、もの凄く嫌な予感を覚えながらゆっくり振り返ると、そこには、大きな水の塊が壁のように聳えていた。

 

「相棒! 装着!!」

 

《了解、戦闘服装着します》

 

水中から飛び上がりながら一瞬で装着を行い、戦闘服へと着替える。その勢いのまま、今にもプール内へと雪崩込もうとしている水に向けて突っ込む。

 

だが、しかし。

 

「うおりゃぁああっ?」

 

《完全に相棒を避けてますね》

 

水は自分の周囲で完全に分裂し、ダッパーンと背後に居たすずかちゃん達へと突っ込んだ。

 

「うわ、しまっ……って、おい」

 

「きゃぁあ! ちょっ、なによこれーっ!」

 

「いやぁ! 引っ張らないで、脱げちゃう、脱げちゃうぅ!」

 

目の前では、水に溺れる訳ではなく、どういう事か水に着ている水着を引っ張られる女性陣という状況が出来上がっていた。

 

「わわわっ、すずかちゃ~ん!」

 

「ちょっ、この! なによこれエッチ!」

 

《どうやら物理的な危害は加えられなさそうですが。今の内に攻撃しては如何でしょう》

 

「いや、でも自分だと物理ダメージがアリサちゃん達に通っちゃいそうだぞ」

 

《困りましたね》

 

そう、水がアリサちゃん達に纏わりついている所為で自分が攻撃したらアリサちゃん達を傷つけてしまいかねないのだ。

 

こいつは困ったなぁと思いつつ状況を確認していると、あれよあれよという間にどんどん水着が脱げていく。

 

「きゃぁっ! ちょっ、やめて~!」

 

「け、けん君! 見ないでぇ!!」

 

「はいっ!!」

 

胸元まで顕になってしまったすずかちゃんの言葉に背中を向けて返事を返す。

 

あぁしかしこれは更に困った。顔を化物のほうへ向けたら見えてしまう訳で、でも見ないと攻撃できない訳で。心の目とか発現しないかな自分。

 

そんなくだらない事を考えていると、バリアジャケットを着たなのはちゃんとユーノが、慌てて飛んできた!

 

「お、お待たせ! ってなにこれ、どうなってるの!?」

 

「見てはいけない……。恐らく、ジュエルシードを発動させた人間、多分捕まったっていう更衣室荒らしの願いが形になったんじゃないかな、と」

 

「なるほど、つまりアレは変態の怨念で衣服を剥ぎ取るヤツな訳だな」

 

「そ、そういう事なんだ……」

 

ユーノと自分の言葉に苦笑いを返すなのはちゃん。うん、自分で言っておいてなんだけどあんまりだと思う。

 

だが、そのあんまりな事が現実に起こっている訳で。

 

「きゃぁあ! な、なんて事を!」

 

「ひ、酷い……。水着だけ脱がせて放り投げるなんて」

 

「サイテー! 水着かえせー!」

 

な、なんて最低な発動体なんだ……。

 

閑話休題。

 

「ユーノ! プールの人を早く転送しろ! 自分が戦えない!」

 

「わ、分かってる!」

 

慌てたユーノが魔法陣を展開し、魔法を発動させる。

 

「OKだよ堅一!」

 

「よっしゃ!」

 

ユーノの声と共に後ろに振り返り、とりあえず空中に足場を作り一気に水の塊へと拳をぶつける。

 

「ゴオオオオオッ!!」

 

「なのはちゃん!」

 

「うん! ディバインシューター、シュート!」

 

掛け声と共に桃色の魔力球が水へと飛んでいき、派手な音を立てぶち当たる。レイジングハートと共にここ数日練習していた魔法の成果である。

 

魔力球が効いているのだろう、水の塊が呻き声をあげながら震えている。

 

今こそ好機!

 

「スティール! 封印術式展開!」

 

《了解、封印術式展開します》

 

声と共に両腕に五角形を模した魔法陣が展開される。

 

展開されたのを確認すると、再び一足飛びに水へと飛びかかった。

 

「喰らえ! 封印術!」

 

ゴッ! と鈍い音を立てて双掌打が水の塊へとめり込む。一拍置いてから、水の塊は中身を盛大にぶち撒けた。

 

ドッパーンという音と共に中から飛び出したのは、色とりどりの水着や下着。

 

「あれ……ジュエルシードは?」

 

「え、けんちゃん。ないの?」

 

「そんな、まさか……分裂してるのか!?」

 

「な、なんだってー!?」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

その後、本体というか、大量に分裂していた水の塊を見つけた自分達は、なのはちゃんの新技『レストリクトロック』で纏めて固めてドカーンと倒したのであった。

 

そうして無事にプールを出た自分達だが、帰宅中、ノエルさんが運転する車内は、とても嫌な空気が漂っていた。

 

「…………見たでしょ」

 

「…………見たんだ」

 

「…………見たくて見た訳じゃないでしょ。事故だよ」

 

「何よその言い草は!」

 

「ひどい……」

 

「あぁもう何て言えばいいんですかねぇ!?」

 

アリサちゃんとすずかちゃんが、自分に対して恨めしいような恥ずかしいような視線をずっとぶつけてくる訳です。

 

そりゃあチラッと、ほんの少しだけ見えてしまった訳だが、それは致し方の無い事でしょうと思うんですよ。

 

あんな突発的な事象に早々対応なんてできる訳はないので。

 

「まぁまぁ、もうそこら辺にしといてあげなよ二人共」

 

「美由希さん! 美由希さんだって見られたんですよ!」

 

「別に、けんちゃんだしねぇ」

 

「ぐぬぬ……」

 

ぐぬぬって、ぐぬぬって言っちゃってるよアリサちゃん。

 

どこ吹く風とスルーする美由希さんに対し、またもや恨めしい視線を向けるアリサちゃん。

 

全く、この子はどうすればいいのかねぇ。

 

「にゃはは。大変だね、けんちゃん」

 

「全くだよ……」

 

なのはちゃんの言葉に、自分は溜息と共に応えたのだった。

 


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