魔王様の友人は風変りな悪魔(元男です)   作:Ei-s

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私の作品のモモンガ様は原作と比べてちょいとハードかもしれません(^^;)アルベドはヒドイン+ポン☆コツ属性が入っている気がするけど・・・書いた本人もあんまり理解できて無いwうーん。少し煽ってみたら竜巻が起きて火災旋風になった?のを見ている気分だ・・・

あと、元の地球環境ヤバくしすぎたかも?まぁ、良いかw
ルビ、予約投稿のテストです。


第一話

始めに異変に気付いたのはモモンガだった。

ふと時間を確認すると時刻は0時を過ぎており、友人の気遣いに心満たされていた矢先の、理解しがたい現状に思わず有終の美を汚された思いに怒りが爆発した。

 

「どういう事だっ・・・!」

 

あまりにも大きすぎる感情の吐露は、思わず作った右拳で肘掛けを叩き、そして怒声と共に漆黒の波動が放たれ、玉座の間を奔る。

放たれたのは,負の爆裂(ネガティブ・バースト)であり、玉座の間にいたアルベドやセバス、プレアデス達は突然の攻撃に吹き飛ばされるも、直ぐに跪いた状態となり、顔を上げ尋常ではない様子の己たちの主の様子を伺った。

その時、8人の思考は混乱の極みに至った。先ほど迄穏やかな様子だったモモンガはそこにはいない。絶望のオーラⅤはスタッフ・オブ・アインズウールゴウンにより増幅され、その全身を覆い尽くし黒い靄の塊が玉座に有る様にしか見えない異様な状態だ。

自身に向いてはいない筈の、怒りの感情を宿した、爛々と輝く深紅の双眸を拝見するだけで、背中を冷たい汗が流れる。時折蛍火の輝きを放ち、スキル精神攻撃無効化の副次効果である、精神安定が発生している筈なのだが、絶望のオーラは収まる所かゆっくりと王座の間を、侵食するかのように広がっていく。スタッフから紅い霞の様な、亡者を思わせるオーラまでもが、モモンガの怒りに怯えているかの様に揺らめいている。

 

(一体何がっ!?・・・いえ、それよりも)

 

アルベドは思わず青くなった顔でプレアデス達を見た。

プレアデス達はアルべドを始めとした守護者達よりもレベルが低い。余りにも強力な、モモンガの絶望のオーラに圧倒されている様子でピクリともせず跪き、モモンガの様子を伺ったままだ。

一時の感情でナザリックを構成する者を己の手で誤って処分された際、落ち着いたモモンガはどれ程悔やむだろうかと思う反面、それでも、その衝撃で落ち着いて頂けるだろうか。そして、それで落ち着かれるのであれば、その傷、もしくは死亡するのは名誉であるともアルベドは思う。

アルベドはセバスを一瞥し、生唾を呑み込んで立ち上がった。そして、何時もの様に微笑みかけるのだ。

 

「モモンガ様。どうなしゃ、いましたか・・・?」

 

どうやら少々平静さが不足していたのか、アルベドは噛んでしまった。モモンガの双眸が跪いているアルべドを捉える。深紅の輝きはソレだけで質量が有り、思わず重力が2倍になったかのような、プレッシャーをアルベドは感じた。中々お会い出来ず、そしてその身を一定時間以上、その視界に捉えられた事が無い為か、アルベドは愛する者の意識が己1人に向けられる事に、何かしらの緊急事態の可能性を理解しながらも、不謹慎だとも思いながらも、幸福感を覚える。

だが、先ずやるべき事が有ると考え直したアルベドはその幸福感を断腸の思いで蓋をした。

 

「申し訳ございませんモモンガ様!モモンガ様が何故お怒りになられているのか理解できぬ私をお許しください!」

 

数刻の見つめ合ったかのような停滞した時間の後に、アルベドは勢い良く頭を下げた。そんなアルベドの謝罪が効果が有ったからか、絶望のオーラが収まり始めるのをプレッシャーが消える様子で感知したアルベドは、モモンガの様子を盗み見る。丁度そんな時にモモンガより一層強い蛍火の輝きが放たれ、黒い靄が蛍火の輝きと共に霧散さした。まるでダイヤモンドダストのように儚い輝きが何所かもどかしく美しい。

アルベドはしっかりと頭を上げると、静かに腰かけるモモンガの姿があり、思わず安堵した。

実態としては、モモンガは突如聞いた事が無い女の声を聞き、しかもソレを発したのがNPCであるアルベドであり、コマンドを入力した訳でもないのに、謝罪しながも跪くアルベド。そして、使用した覚えがないのに発動している絶望のオーラ。色々な事が一気に発生したためか、思考が停止したのだ。

我に返れば即座に精神が安定しており、自己意識と思考は冷静なモノとなっていた。

 

(先ずは現状を把握だ・・・?)

 

モモンガはふと思う。自身はこれ程冷静な性格をしていかだろうかと。そして、体感的に絶望のオーラの使用を止めた。違和感に自身の骨の右手を訝しむ様に見た後に、コンソールを出そうとしても出無い。NPC達のまるで生きているかのような反応に、異世界への転移の可能性がよぎる。否定したいとも思うが確証も無いのだ。

 

(これじゃあメールも、GMコールも出来ない。スキルは何故か体感的に使える。魔法も多分使えるはず・・・)

 

「・・・モモンガ様?ルプスレギナに何かご命令が有るのですか?」

 

モモンガの思考を妨げたのはアルベドの一言だった。ついアルベドを一瞥すると、まるで自身の一言が気に食わなかったのかと、不安を覚えているような眼をしていた。まるで生きているかのような行動に、モモンガは思考の海に、自意識を流しそうになるが、コンソールを出そうとしていた右手人差し指が、赤い髪の修道女風メイド服を着たプレアデスの1人。ルプスレギナ・ベータを指している事に気づいた。ルプスレギナは、まるで喜びを感じているような目つきでモモンガを見ており、また直接命令されるという歓喜と期待に、少し震えていた。

 

(忠誠心なのか?ならその忠誠心を向けられるのはどんな奴だ?)

 

モモンガは、ルプスレギナの様子に忠誠心を向けられていると感じ、また、向けられる相手はどんな者なのかと考える。ふと、よくプレアデス達やセバスを見れば少しダメージを受けた様子。ダメージを与えたのに反撃が無い点と、広範囲にダメージを与えた事から負の爆裂(ネガティブ・バースト)を使用した可能性を思案したモモンガは、取り合ず上位者足りる威厳を見せる為に立ち上がった。するとアルベドを含めた8人は跪いたまま頭を下げた。まるで演劇の役者になったかのような気分を味わいながら、肉の体であれば思わず生唾を呑み込む程の緊張感を覚える。

 

「まずは詫びよう。あまりの異常事態に我を忘れたようだ」

 

「勿体なきお言葉。ご冷静になられるのでしたら私達を痛めつけても構いません。至高の御方から痛みを得られるのでしたらそれは幸せでございます」

 

「ぅ・・・うむ」

 

モモンガは意図的に低い声を出し、己の否が有ると認めた。そんな言葉にアルベドは頭を上げ、本当に嬉しそうに頬をうっすらと赤く、桜色に染めながら自身の考えを述べる。余りにも予想外であり、Mっ気を思わせる言葉にモモンガは狼狽えそうになるが、頷く事で回避した。

次に考えるのは何故ルプスレギナを指さした事だ。

モモンガは、主要なNPCの事は意外と覚えており、周辺の探索を理由にしようと考えた所で、ジュンは大丈夫なのか。いるのだろうかと考えた。伝達魔法の使用も考えたが、モモンガはこの話の流れでは時間が無いと判断する。

 

「セバス。プレアデスよりルプスレギナ・ベータ。ナーベラル・ガンマ両名を連れ、ナザリックの周囲1キロを確認しろ。戦闘は避け、知性体がいる場合は無傷で連れて来い」

 

「畏まりました」

 

モモンガは先ずは戦闘力が有り、製作者からして善性の者であるセバスに命令した。万が一属性が性格に反映されている可能性を考慮に入れ、なるべく安全且確実に事を進めたい為だ。名を呼ばれたセバスは頭を上げモモンガを見る。その鋭い視線と返事から必ず上手く事を進めると言っているようだとモモンガは想い、頷く。

 

「ルプスレギナ。万が一戦闘になった場合直ちにナザリックへ帰還せよ」

 

「はい!お任せください!」

 

モモンガはそうルプスレギナへ指示した。この事からこの非常事態に対して確実に事を進めようと判断し直した。と彼らに思わせる為だ。上手くいったのか、ルプスレギナの目に命令される歓喜の代わりに真剣な色を見た。

事実アルベドを始めとした8人は、先ほどのモモンガの乱心具合と、ルプスレギナで十分と思われる命令内容を変更し、戦闘力の高いセバスと、更に魔法を得意とするプレアデス。ナーベラルを加えた事により、『モモンガ様はかなり重く事態を受け止めている』と判断した。

 

「ナーベラル。ナザリック上空に水晶で出来たドクロ状の建造物が有るか確認し、その中にいる者と接触せよ。己の所属と私の命令で接触を図った旨を確実に伝えよ。戦闘する事は許さん。攻撃を受けた場合は即座にナザリックへ撤退せよ」

 

「質問しても宜しいでしょうか?」

 

ジュンがいるかの確認。そしてアチラのNPCが意思を持っている可能性を考えての指示だが、ナーベラルの口からは質問の許可を願う一言が出た。モモンガは、ナーベラルの様子が、何処か不満げに見えた。

 

「許す」

 

「ありがとうございます。では、何故戦闘を禁止するのか。接触する事が第一であり即座の撤退をご命令されたのかを、お教え下さい」

 

ナーベラルとしては、栄有る、ナザリックの一員として、唯逃げるという行為を取りたくなかった。命令である為、従うのは彼女にとって当たり前だが、モモンガの意図を正確に捉えたいという思いから質問したのだ。

モモンガはナーベラルの質問に、彼のギルドホームである水晶ドクロ。スカイ・スカルがどの様な物であるか知らない可能性を考えた。そしてジュンの存在をどう認識しているかの確認する必要性を考えた。

 

「フム・・・ナーベラルの質問に答える前に1つ聞こう。お前たちはジュンを知っているか?」

 

モモンガは、セバスとプレアデスのメイド長みたいな容姿のユリ、眼帯をしたミリタリー風メイド服を着たシズ以外の表情に、陰りが浮かぶのを見た。何か有ったのだろうかと、言いずらい様子とも取れる様子である。誰かが答えるべきなのだろうが、正直に答えるのはちょっと・・・と、暗に言っているかのようだ。

 

「アルベド」

 

「はっ・・・恐れ多くも申し上げます。人間という下等生物でありながらモモンガ様を始めとした至高の御方々のご友人を務め、時にモモンガ様の供をする聖職者と認識しております」

 

誰が答えるのか、そして不快と感じる発言も許可する意図でモモンガはアルベドに言えば、あまりの内容に思わずドクロである口を開けた。正に唖然としていると見て分かる様子だが、アルベドの目に嫉妬の色と不快感を見たモモンガは口をしっかり閉じる。

アルベドの発言により、モモンガは彼女等がジュンを『人間』と認識している点と、『人間』には基本的に良い感情を持っていない点を認識した為だ。人間と認識しているのは、恐らく種族スキルにより『人族』へ変化している点と、恐らくステータス等の偽造を可能とする指輪の効果である。人間への嫌悪感は、異形種プレイヤーの保護が切欠で作成されたギルドの特色である可能性を考えた。アルベドが少し小刻みに震えている事から『人間である事』から相当気に食わないのかとも判断出来る。であれば、モモンガがジュンの安全を考慮して告げる事が有る。彼は溜息を噛みしめた。

 

「ジュンは人族を装っている悪魔だ。そして、このナザリックの作成にも関与し、仲間達が去る中このナザリックを思い、尽力していた者だ」

 

「っ・・・申し訳ございません。守護者を始めとし、周知させておきます」

 

(あ゛・・・)

 

モモンガはアルベドの言葉に嫉妬と不安、殺意を感じた。また、頭を下げ己の顔をモモンガに見せないようにしているアルベドの姿に自制していると見た。そして悪戯心で変更した設定を思い出す。

アルベドも種族は悪魔であるが、ジュンは人間を装えソレを守護者クラスに悟られない。ナザリックに尽力し、他の仲間達とも仲が良い。比較されたと感じない筈が無い一言であるとモモンガは認識した。そして自身を『愛している』と設定されれば、一番己に近いのはジュンであると愛している本人に言われたようなモノと考え、一緒にMOB狩りによく行っていた事を認識している様子であり、アルベドにとってはデートに行っていたと思われていても変では無い。

そこまで考えたモモンガは思わず頭を抱えたくなった。ジュンの安全の為に告げた一言が逆に危険を呼び込んだ可能性が有るが、この緊急事態の把握等には必要であり、自身の安全の為にも必要であると自己弁護もする。

 

(わ、私のモモンガ様なのに!私のチョー愛している御方の全幅の信頼だけで無く他の至高の御方の寵愛をも得ているっ!許せないわあのビッチ!そんな存在がいてたまるか!けど、私が物理的に排除すればモモンガ様に嫌われてしまうっ!どうすれば良いか考えるのよアルべド!如何に自然に排除しなければ、モモンガ様の寵愛があの女に向けられてしまう!下手するともう閨を共に!?考えるのよアルべド!どうするのが正解なのか!取り合えずとしてはシャルティアにも知らせなきゃ!デミウルゴスの知恵も借りて、アウラも巻き込まないと!下手すればモモンガ様を連れ去るかもしれないっ!)

 

事実、俯くアルベドの心は荒れ狂っていた。嫉妬、憎悪、不安、怒り、悲しみ等の感情がその心を蹂躙し、絶対的な強敵であると感じた。ジュンの事を『人間』であれば『ペット』なのだと考えていただけに、同じ悪魔であると知ったアルベドの心に平静は無い。同じ種族であるが故の比較。ジュンと比べ自身が劣っているとモモンガが認識している可能性に、不安は大きくなるばかりである。アルベドはその感情を表に出していないと断言できる自信は無かった。

 

「また、その強さは『たっちさん』と遜色も無い。連れている者は2人だが、片方は守護者クラスだ。以上をもってナーベラルよ。お前の質問の答えとする。質問は有るか?」

 

「御座いません。ご無礼をお許しくださいませ」

 

「よい。他のプレアデスは9階層で侵入者がいないか。また異常が無いかを確認せよ」

 

「「「「はっ!」」」」

 

「セバス。調査の仔細は任せるが私の判断が必要であると認識すれば伝達魔法で聞け。何も無くとも2時間程で戻って来い」

 

「畏まりました」

 

「うむ。アルベドは残れ。行け」

 

アルベドの様子から手早く事を進める必要が有る。そう判断したモモンガは少し口調を強め、反論を許さないかの様に指示を出した。モモンガの空気を察したのか、手早く鐘を打ったかのような素早い返答をするセバスとプレアデス達。

そしてアルベドと2人っきりになるようにセバス達を退出させる。ジュンの強さについて述べた際、アルベドの翼がピクリと動いた為だ。退出する際セバスも含め何所か不安げにアルベドを一瞥したのが印象的だった。

アルベドと2人っきりになり、モモンガは溜息をつきたくなったが一度宙を見上げる事で噛み殺す。また、アルベドが震えている事は黙殺した。

 

「立て」

 

「はっ!」

 

モモンガの一言に毅然とした反応をし、立ち上がったアルベド。一見通常通りに見えるが小さく震えており、目は不安であると言っている様にモモンガには思えた。恋愛経験が特に無いモモンガはそんなアルベドを見ながらどうすれば良いのかと頭を抱えたくなった。地味にアルベドの背後に幽霊の様に半透明だが、人の体に歪んだ蛸に似た頭部を全体的に青白く、また紫を加えたような肌を持つ者。かつての仲間でありアルベドの製作者であるタブラ・スマラグディナの幻影を見た。その触手を蠢かせている様子から『娘を泣かす?泣かすのか?』と言われている気がした。肉が無い体だが、冷や汗が出、背中を伝う感覚をモモンガは味わう。

 

『モモンガさん。そこは一気にぶちゅーっと一発すればあだっ!?』

 

『この愚弟!そんなワケ無いでしょう!モモンガさん。私としては頭下げられるより抱きしめられた方が嬉しいから。ただ、一発は覚悟してね』

 

そんな折、エロゲー・イズ・マイライフと豪語するペロロンチーノとその姉のぶくぶく茶釜の幻聴が聞こえた。思わず視線を泳がせるが、気配も何も無い。地味に殴られた様子のペロロンチーノから伝達魔法(メッセージ)でも使われたのかと思うも、そんな感覚もない事から幻聴であるとモモンガは判断した。骸骨がキスをするというのは、物理的に不可能であるアドバイスは実行不能であるが、その姉のアドバイスは有用だと判断した。また、アルベドのステータスは防御よりである。装備が無い状態では即死はしないと判断したモモンガはスタッフ・オブ・アインズウールゴウンより、手を放した。その場で浮いているスタッフは、通常であれば赤い靄を発するのだが、空気を読んでいるかの様に発さなかった。

 

(あ。柔らかいし、良い匂い・・・って!これはゲームでないと判断する為で、あと傷つけた事を謝る行為ですから!決して疚しい気持ちでする事じゃないですからね!?)

 

モモンガは負の接触(ネガティブ・タッチ)を始めとした、触れるだけでダメージを与えるスキルの効果を切り、そっと正面からアルベドを抱きしめたのだ。花のような匂いを嗅ぎ、女性特有の柔らかさに思わず意識を持って行かれそうになるが、タブラの幻影は猫が威嚇時に毛を逆立てるように全ての触手を逆立て、白く濁った目は怒りからか深紅に輝いている。その危険と断ずる姿に心の中で自己弁護するが、肝心のアルベドからは何の反応も無い。

 

「・・・えっ?」

 

凄まじいプレッシャーを感じているモモンガと比べ、アルベドは現状を理解できず、淑女にあるまじき唖然とした呟きをもらした。

先ほど迄アルベドはモモンガの隣に立つ者としての敗北感とモモンガが自身のみならずナザリックに住む者に失望し、他の至高の御方々の様に去るのではと不安震えていた所に、視界に映るのは肋骨。少し下を見れば淡く輝く真紅の玉。背中には少し冷たいが人の手の様な感覚。

アルベドは現状を理解し始めると体の芯から暖かくなり、頬は桜色に染まる。そして俯き気味だった顔を上げればモモンガの顔が有り、優しく己を見ていると思ったアルベドは自身の目が潤んでいる感覚を覚えた。気が付けばアルベドの震えは綺麗に無くなっていた。

 

「ぁ・・・」

 

「落ち着いたか?」

 

「はい。モモンガ様」

 

モモンガはアルベドと目が合うと、背中に当てていた手をその両肩に移す。その際アルベドが何所か残念そうな呟きをもらしたがモモンガは異様に鋭い視線を幻影のタブラから受けており、気付く余裕等無かった。アルベドは先ほど迄と違い、何所か優し気なモモンガの声に何所か陶酔気味に返事をしたのだ。そんなアルベドにモモンガは内心安堵の溜息をつき、その肩から手を放すと、アルベドはモモンガの右手を不敬と思いつつも、両手で掴んだ。

 

(ちょっ・・・え"っ!?)

 

「ぁん」

 

アルベドはそのままモモンガの右手を自身の左胸に押し当てた。モモンガは反射的に胸を揉み一瞬だけ思考が停止した。硬すぎず柔らかすぎない絶妙な弾力と掌に収まりきらない大きさ。リアル魔法使い(30過ぎの童〇)であるモモンガには余りのも魅惑な果実だった。だが、思考が再開する。

DMMMO-RPGユグドラシル。多くのゲームがそうであるように18禁に該当する内容は勿論の事、下手すれば15禁程度でもアカウント停止処分が入る。モモンガ自身、一度喜びのあまりジュンの女性型アバターと抱き合った際、すぐさま運営より警告を貰った経験が有る。

よって、ここは新しく始まったユグドラシル2のβテストでも仮想現実でも無い。そもそも2100年代の技術力ではデータ容量とソレを処理するCPUの性能的に匂いや自然な表情の動き等再現不能である。

モモンガは目の前で小さく声をもらしながら喜びに震え、潤んだ瞳で自身を見つめるアルベドから目を離せなかった。手も反射的にアルべドの胸を揉み続けていた。

 

「あぁ・・・モモンガ様」

 

「っ!」

 

だが、まるで蕩けそうな程甘いアルベドの声に、自身の名を呼ばれたモモンガは我に返った。既にアルベドの両手はモモンガの右手から離れており、好機と判断したモモンガはそっと揉むのを止め、未だ柔らかい感覚が有るように思える右手を下げた。喜びに満たされていたアルべドの心はモモンガの手が離れると同時に不安と切望が押し寄せ、目に見えて分かるほど落ち込んでしまう。腰から生えている翼が悲し気に揺れ、瞳は今にも涙が溢れそうな程潤んでいる。モモンガが内心手に残っている感覚に残念に思っている事は知る由もない。

 

「やはり私ではダメなのですか?」

 

「そうではない。現状では時間が無いだけだ。私は守護者統括としての仕事を望んでいるのだ」

 

愛している者から求められた。そう思った矢先に止まり、離れた手。ある意味女として、サキュバスとして否定されたに等しく思ったアルベドの言葉にモモンガは不憫に思った為そう答えざるを得なかった。

決してタブラの幻影が百年以上前から有名な漫画同様ゴイスーな超戦士の如く黄金に輝き、スパークしているからでは無い。

 

「・・・大変失礼いたしました。ご指示を頂けますか?」

 

だが、この言葉は良かったのだろう。キリッとした真剣な雰囲気を纏い、跪いたアルベドの姿にモモンガは内心安堵した。

アルベドにはガルガンチュア及び、ヴィクティム除いた守護者を第六階層にある巨大な円形闘技場アンフイテアトルムへ集結する点、また、全守護者に対しジュンへの敵対行為を禁止しシモベへの通達を行う点、最後にアウラとマーレには己から伝えると命じた。

ふと、先ほど迄の弱々しく縋り付きそうなアルベドの目を思い出したモモンガは、自身が設定を変えたが故の苦悩を持ってしまったアルベドに対する罪悪感からついつい言葉を紡いでしまった。

 

「アルベドよ。現状が落ち着き次第話が有る。そう落胆するな」

 

(くふーっ!もしかしてワンチャン有り!?いえ、待つのよアルべド。もしかしたらあのビッチと正式にお付き合いをしていると告げるのかも?いえ、そうではないかもしれないわ?純粋にご褒美として何かを下賜して頂けるのか、閨に呼ばれ・・・いえ、それにしては何か言いずらそうなご様子。まさか、お隠れになられる!?それだけは!それだけは断固阻止せねばっ!私が、我々ナザリックの者達が有能であると示し、お考えを変えて頂かねばっ!その為には先ずは仕事を全うする!必要ならあのビッチも利用せねばっ!)

 

後ろの一言はアルベドに様々な可能性を思い浮かばせ、そして、ナザリックの者達が最も恐れる可能性をも思い浮かべた。故にアルベドは真面目な顔と雰囲気を纏う。最も恐れる可能性を排除する為には自身の嫉妬や不満等を切り捨てる覚悟をもって。

モモンガはアルベドの目に一種の覚悟を見、話の内容を聞くために手早く仕事を終らせようと思ったと判断した。

 

「失礼いたしました。第四階層ガルガンチュア、第八階層守護者ヴィクティムを除き、アンフイテアトルム迄参ります」

 

「特に、お前とデミウルゴスには期待している。間違っても早計な判断は控えろ」

 

「畏まりました。デミウルゴスにはモモンガ様が現状を重く受け止めている旨を伝えておきます」

 

確実に仕事を全うしようと意気込んでいるアルベドの姿にモモンガは一縷の不安を覚えた。営業として、過度の緊張から失敗する者を多く見てきたモモンガだからこそ、少し余裕を持たせるべきと判断した。そもそも自身の安易な行動が原因と認識している事があり、片膝を付くとそっと右手をアルベドの左頬に当て、人差し指で輪郭をなぞり、顎を少し上げて自身と目を合わさせた。

 

「アルベド。お前は美しく魅力的だ。そして、思慮深い・・・頼んだぞ」

 

モモンガの突然の行動に硬直したアルベドだが、モモンガの優しく信頼感も感じさせる言葉に心が満たされ、体は熱くなり、理性が蕩けそうになる。だが、先程思い至った最悪の可能性からその全てに蓋をした。両翼は耐えている事もあり、ピクピク動いてはいたが。

 

「モモンガ様・・・畏まりました。必ずやご期待に沿えて見せます」

 

「・・・うむ」

 

アルベドの自然に返した答えと微笑み。ユグドラシルどころか現実でも見た事がない美しい微笑みに一瞬モモンガは見入ってしまった。手を放し、立ち上がったモモンガは思わず骸骨の見た目なのに頬を染めてはいないか気になり、ついアルベドから背を向けて答えた。アルベドはモモンガの行動に素早く行動すべしと判断し、一礼して玉座の間より退出した。心が至福感で満たされた為か満面の笑みを浮かべて。

玉座の間の重厚な扉が閉まる音に、モモンガは1人になったのを自覚し、ゆっくりと振り返るとタブラの幻影は深紅に染まる双眸を除き通常の姿となっていた。

 

「タブラさん。アルベドの設定を弄った事も、泣かせかけた事も謝ります。ゴメンナサイ!」

 

モモンガがキッカリ90度腰を曲げ、美しい姿勢で謝ると、タブラの幻影は頷き、空気に溶ける様に消えていった。思わず溜息をつき、へたり込みそうになる膝に力を込め、姿勢を正すと今度は半透明で妙に体をクネらせる茶色の粘体。照れている様に見えるぶくぶく茶釜の幻影が見えた。思わず2度見してしまうモモンガ。

 

「なんで幻が見えてんの?あと茶釜さん。そんな体を大きくクネらせて、見せモンじゃ無いですからね!はぁ・・・仕事が山積だよまったく・・・って、なんで俺あんな事を自然とできたんだ!?」

 

思わずそう呟き、先程アルベドに対してやった妙にドラマっぽい自身の行動に羞恥から毛髪も無いのに掻きむしる動作をするモモンガ。蛍火の光を放ち、思い出したかのように手早くスタッフ・オブ・アインズウールゴウンを手に取りギルドの指輪、リング・オブ・アインズウールゴウンを使い転移して行った。

玉座の間には誰もいないと言うのに、妙に重厚なのに何所かコミカルな雰囲気が満ちていた。




次回は多分2、3日中には投稿します。早ければ今晩(9/10)にでも。
あと、オリジナル魔法・スキル等が次から有りますので、後書きにでも入れときます。

(9/10 1:40)追記
もう感想が来てるとかビックリです(^^;)

(9/12 1:40)追記
し、しんどい。Wordが無いとこれ程大変なのか・・・『べ』と『ベ』同じにしか見えんよ(-_-;)

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