転生傍観者~リリカルな人達~【改訂版】   作:マのつくお兄さん

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33.乱戦と転移

 回るマワル世界が廻る。

 くるクルくるグルくるりグル。

 

 皆がニコニコ笑ってル。

 くすクスくひヒヒくすんくすん。

 

 楽シい嬉しイ愛しテる。私ハ皆を愛シテる。

 

 ふんぐるい むぐるぅなふ くとぅるぅ るるいえ うがふなぐる ふたぐん。

 

 いあ いあ くとぅるぅ。

 

 いあ いあ くとぅるふ だごん。

 

 くふひクフヒハくひハヒヒ。

 

 コノ世全てニ救済を。この世スベテに呪いアレ。

 

 

 ――できレバ、呪いはやめてほシイなぁ。

 

 

 

 住宅街。私ノ家の近ク。

 

 佐藤さんノお家がある場所。

 

 アァなるホド、ダカラあの時アソコで彼は暴レたのカ。

 

 あノ時? アノ時ッテいツ?

 

「ソレじゃア、私ガ陽子をオサエツケるかラ、これデ君ノお母さンの指を全部キリ取っテきてクレるカナ? ソウしタラ、君モ陽子ト一緒ニ犯しテあげルかラね。ソシテ父ナるダゴンの御許ヘと逝くンだ」0

「クヒャヒヒヒ、ウンいいヨ。アレ、お母サんっテ誰だッケ? いあ いあ だごん !! キヒヒヒヒ!!」

 

 周リにイルのは半魚人サン達。深き者達。愛おシキ父なルダゴンの敬虔ナる信徒タチ。愛さレルべき子供達。

 渡されたノハ、市販のノコギリ。ギコギコばっさり。キッと痛いネ。とこロデ犯スっテなんダッケ? 知らナイ知ラない。きっト気持チ良いコトだよネ。

 

「――全ッ然、良く無いわね」

「全くだ」

「クヒ?」

 

 私トおじサンが、ガッチリと鎖デ縛りアゲられタ。

 愛されルべキ子供達が、一瞬ニシテ、アソこにイた人間共みたイニ、ぐちゃグチャべちゃベチャ潰れテク。

 酷いナァ。

 

「佐藤殿、今お救い申し上げますからな」

「ったく、あのモブ野郎……折角救ってやったってのに」

「全くだねぇ。でも、殺さないんだろ?」

「ふん。あんなモブの血で俺の宝物(ほうもつ)汚されてたまるか」

「素直じゃないんだから困るね、この子は」

「――酷い」

「あんなもの、怪異の中でも割と軽い方なのである。金髪娘、それよりさっさと封印準備なのである。このメンバーならアッサリ片がつくであろうからして、起動される前にやっちまうのである」

「博士、あのキショいおっさん跡形もなく消し飛ばして良いロボ?」

「完全に殺すとどうなるか分からんので、九割九分九厘殺しで我慢するのである。殺せば全部どうにかなるならば、別に殺しても構わんのであるが」

「いくら犯罪者相手とはいえ、過激な連中だねぇ……管理局が見てたら何を言われることやら」

「アルフの結界が、そう簡単にアイツ等なんぞに見つかるわけ無いだろ?」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

「さてさて、それじゃあ魔道探偵ローレライ、お仕事開始させてもらうわよ?」

 

 ウルサイ連中ダナァ。この鎖ギチギチで苦シイなぁ。

 

「ふんぐるい むぐるぅなふ くとぅるぅ るるいえ うがふなぐる ふたぐん<死せるクトゥルー、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり>」

 

 おじサンの詠唱デ、死んダお友達の代ワリが一杯呼ばれテクル。

 オジサンの鎖も、呼ばれタお友達ガ壊してクレたみたイ。私ノモ壊シテ? イッソ殺シて? ケセラセラ。

 

「――ジュエルシードはまだ起動してない筈なのに、なんでこんなに――」

 

 ざっくりザクざくザクザックザク。

 

「規格外なんだろうよ。言っただろ? 俺みたいな反則能力持ちはいくらでもいるってな」

「それにしたって、アレは反則云々以前に、気持ち悪すぎるね。胸糞が悪くなるよ全く……フェイト、キツいなら無理しなくても良いんだよ?」

 

 フェイト? ふぇいとふぇいと~?

 最近聴イテなかっタ懐カしイ名前ダね?

 ふぇいと、フェイト、運命(ふぇいと)、グルグルぐるぐる歯車廻る。運命ぐるグルぐるグルリ。

 

「……大丈夫。このくらい」

 

 大丈夫ジャナイヨ。可哀想ダヨ。ヤメタゲテ? ソンナにグサグサ刺しタラ皆イタイって泣いテルヨ?

 

「それにしても、邪神の眷属とやらの割には雑魚じゃねぇか? 肉の壁は厚いけど、魔力量も大したことねぇし」

「あんな垂れ流しのバカ魔力を大したことないなんて言えるの、アンタくらいだよ、全く」

「ああいう類は、本人よりも召喚された奴とか呪いの類が怖いのよ。良いからサクサク狩り出す!! っていうかセイバー邪魔!!」

「ぐっ!? し、しかし佐藤殿救出のためにも前衛が前に出なければ――」

「アンタ敵が単体なら良いかもしれないけど、ぶっちゃけ複数相手の時だと後衛の射撃の邪魔なだけなのよ!!」

「なんですと!?」

「大体道さえ開けば聖骸布で捕まえられるんだからさっさと退く!! ――偽・螺旋剣Ⅱ<カラドボルグ>ッ!!」

 

 凄イ風。大キナ爆発。散ラバル皆のお肉。

 ぐっちゃりグチャグチャ。べったりベタベタ。

 

 痛イ? 痛いヨね。大丈夫ダヨ。全部私が――。

 

「――確保(フィッシュ)ッ!!」

 

 ……アレ? 私フィッシングさレタ?

 グングン近づク恵理那チャンの姿。

 

「あ、コンニチワ恵理那チャン。アルビノ娘。人殺シ。どコカらキたの? 見テヨこレ、酷イヨネ。辺り一面マッカッカ。スプラッタも真っ青ダヨ?」

「――ッ、気を確かに持ちなさい!!」

 

 ペチン、とホッペをタタカレた。

 痛イじゃナイノさ。

 ぐるグルぐるグル足にナニカがマカレてく。

 

「どう!? 義嗣、アンタ意識ある!?」

「ヨシツグ? ダァれ?」

「――ッ!? 天ヶ崎!! アンタ何か解呪関係の宝具あったら寄越しなさい!! 今すぐ!!」

「ったく、てめぇ女じゃなかったらぶっ殺してるところだぞ!? どのタイプの呪いだ!!」

「精神汚染よ!!」

「どれが良いのか知らん!! 神酒(コレ)でも飲ませとけ!!」

「だったら訊くな!!」

 

 そ~ま? ユ~マのそ~ま? UMAのSOMA?

 オイシイの?

 

「っ、ナイスパス!! 義嗣!! 飲みなガ――ッ!?」

 

 一回ハ、イッカイだヨ?

 頭突キ一回。イタイよネ? デモネデモネ、私の友達モット痛イと思ウンダ。

 デモね、ダカラって放り投ゲルのは酷イよ。

 家の屋根カらゴロごろリ。私はゴロゴロ落チていく。

 

「くそ、あのモブなにしてやがんだ!! 誰か行け!! あいつ死ぬぞ!?」

「エルザ!! 行くのである!!」

「合点承知ロボ!!」

「なんなのでござるかこの数は!? この上でジュエルシードを使われたらどうにもなりませぬぞ!?」

「今朝方のは本気では無かったということであるな……ぐぅ、無敵破壊ロボさえいればまた違ったのであるが……ジュエルシードの封印はまだなのであるか? 使われたら詰みであるぞ?」

「ッ、雷撃そのものは効いてはいるみたいだけど、駄目、本体に届いてない……!! 皆、時間を稼いで――ッ!!」

『Photon Lancer Phalanx Shift』

 

 世界がマワル。回る。綺麗な光に包マレて。

 

 真っ赤ナ世界デきラキラ光るオ星様。

 

「ふんぐるい むぐるぅなふ くとぅるぅ るるいえ うがふなぐる ふたぐん<死せるクトゥルー、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり>」

「クソがっ!! また増えたぞ!!」

「ぐぅッ……あぁもうあのクソショタ!! レディの顔面に傷をつけるなんていい度胸だわ!! 帰ったら絶対イジメてやるんだから!!」

「文句を言う暇があるのならば、さっさと援護を、くだされッ!!」

「義嗣ゲットロボ!!」

「でかしたのであるエルザッ!!」

「あ、エルザちゃンやっほ~。人造人間。人外。化物。元気?」

 

 ケタケたケタ。

 

「ッ!! よ、義嗣。エルザが、守ってあげるから、安心するロボ」

「守ル? 何カラ? ジャア私のオ友達を殺しテるあの子達をコロしテよ」

「しっかりするロボ!! アレは化物ロボ!! 義嗣のお友達はこっちロボ!!」

「エルザちゃん!! 良いから早く神酒(ソーマ)を飲ませて!! それで少しは良くなるはずだから!!」

「ど、どこロボ、神酒(ソーマ)って!?」

 

 ソーマ? ユーマ? ユーマならアソコで一杯ケンを出シて人殺シしてルよ。

 

「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼ「金髪娘!! そっちに転がってるソレをエルザに渡すのである!! 貴様が一番近いのである!!」ッ、ル。フォトンランサー・ファランクスシフ「フェイト危ない!!」――ッ!?」

 

 金髪キラキラ運命さん、イジめタ仕返シ殴らレた。

 頑張っタね私のオ友ダチ。スグに挽肉ニなっタけど。可哀想ニネ。

 ケラケラケラケラケセラセラ。

 いあいあだごん。

 いあいあ。

 

「――っの野郎、フェイトに汚らしい手で触れやがって……万死に値するぞクソ虫ガァッ!!」

「天ヶ崎殿!! エヌマエリシュは使えぬのか!?」

「モブが射線上に入ってんだよクソザムライ!! 大体今宝具射出止めたらテメェが孤立すんだろうが!!」

 

 皆ミナサまサマ大混乱。

 

「ったくもう……ッ!! 確保(フィッシュ)!! エルザちゃん、さっさと飲ませてやって!! 皆、もう固有結界発動しちゃうから、決着つかなかったら後は頼むわよ!!」

「ナイスパスロボ!! 義嗣!! 口を開けてロ――ボォ!?」

「ぐ――ッ!?」

 

 金髪運命さんガごっつんコ。三人揃っテ落ちテイク。

 

「裕子チャんは、イッかイ戻っテ。すぐニ迎えにイクからネ」

 

 黒くて綺麗な水たまり。ぞぶりぞぶぞぶ沈んでく。

 

「ゆ、悠馬!! フェイトが!!」

「追えアルフ!! まだ間に合う!!」

「エルザッ!!」

「佐藤殿ッ!!」

「エルザちゃん!! 義嗣くん!!」

 

 皆ミナさま様また会いマショウ?

 

 

 

 

 ――諸君、朝目ガ醒めタラ美少女の顔が目の前ニあるトイウノハ男子の憧れデあるが、顔は近いけど、鼻をつままれて、ナンカ変な液体入ったビンを口に突っ込まれている状況はなんなんでしょう。

 

「ゲフッ!? ゴフッ!?」

「あぁ、こぼしちゃだめロボ。全部飲むロボ」

「――エルザ、さん。鼻つまんだままじゃ息が出来ないんだと思う」

「おぉ、なるほどロボ」

 

 鼻!! 鼻に逆流シテきた上に、器官に入っテむせる!!

 

「お~、よしよし背中とんとんロボ」

「ぜ、ぜながとんどんぢゃなぐて、ゲホッ、グフッ」

 

 うぇ~……なんだろう、味自体は滅茶苦茶おいしい気がするんだけど、変な飲ませられ方だったせいでなんかすっごい勿体無いんだけど……。

 ……あれ、でもなんか器官とか入った感じはするのに、割と苦しくないな。むせたのも条件反射みたいな感じだけど、そこまでのもんじゃなくね?

 

「そして、なんか随分身体が楽なんだけど、なんぞ?」

 

 うおぉぉ!! 滾るぜビート!! 燃え上がるぜハート!! って感じだ。今ならかめ○め波とか撃てるかもしれん。つかこの台詞元ネタ知らん上にうろ覚えだから何の台詞かどころかどういう時使う台詞かも知らないけど。

 

「良かったロボぉ~……うぅ、義嗣が元に戻らなかったらどうしようかと思ったロボぉ……」

「あうあうあ、ちょ、待って!? エルザさんや!? あの、抱きつくのは嬉しいんだけども、力の加減をしテテテテ!?」

「あ、ごめんロボ☆」

「そんなてへぺろ☆ みたいな言われ方しても痛いもんは痛いよ!!」

 

 可愛ければ許されると思ったら大間違いでも無いよ!! 可愛いから許すよ!!

 

 ――ところでここ、どこぞ?

 誘拐されてきた時に見た洞窟っぽいのは分かるけども。

 

「……二人とも、そういう話はまた後で。今は脱出が先決」

「ん、そうロボね。義嗣、立てるロボ?」

「さっきまでは絶好調だったのに、誰かさんによって背骨が大打撃を受けて暫く無理です」

「じゃあ担ぐロボ」

「うわ~!? ちょ、待って!? せめて担ぐにしてもお姫様だっこはやめて!? おんぶにしてよ!? 男の子としてそこは譲れないよ!?」

「……え、君、男の子だったの!?」

「え? あ、フェイトちゃんいたの!?」

「初めからいたよ……」

「うああ、ご、ごめん!!」

 

 それならそうと声をかけてよ!! 完全に気付かなかったよ!! そんなあからさまにションボリというか、呆れたようなため息吐かないで!?

 

 っていうか何をどうしたらこの三人でいる状態なの!? 珍しいにも程がある組み合わせだよ!? この二人とセットでいるはずのアルフと悠馬と博士どこ!? そんでもって我が親友こと刹那とセイバーどこ!? 津軽さんはこの際どうでもいい!!

 

「え~っと、義嗣ちょっと混乱してるみたいだから歩きながら状況を説明するロボ」

「エルザさん、出口は本当にこっちで?」

「間違いないと思うロボ。そっちの方角から風が吹き付けているからそっちロボ。あ、それと媚薬と麻薬の混ざった煙が充満しているから、対毒防御用の魔法を使うのを忘れないようにするロボ。私の空気清浄機能はフル稼働しても周囲2~3m前後が限界ロボ」

「……煙ってプロテクションで防げる? バルディッシュ」

『No Problem』

「あぁ、出力は限界まで絞って、なるべく長時間持つようにするロボよ? フェイトちゃんまで戦力外になったら暫く身動きとれなくなるロボ」

 

 さて、というわけでエルザによる状況説明である。

 まず、私――いや、もう私口調いらないよね?

 

 僕がさらわれる寸前、なにやらおっさんがまたジュエルシードを持っていたらしく、その気配を探知してやってきていたフェイトちゃん、アルフ、悠馬の三人が参戦。

 そして逃げた中年おっさんを倒して僕を救い出す手伝いをする代わりに、おっさんが持っているジュエルシードはフェイトちゃんに譲り渡すという契約で共同戦線を張ることになったらしい。

 で、夜になって僕の自宅近辺の住宅街であのサラリーマン中年おっさんが何百体以上の深き者共を引き連れて暴れたらしい。僕と一緒に。

 確かに、言われてみればなんか色々やらかした覚えがあるので非常に申し訳ない気分になるのだが、そこはまぁエルザちゃんも苦笑いしていたのできっと色々変なこと口走ったりしたんだと思う。マジでごめんね? あんま覚えてないのよ。

 幸い、アルフがいたため結界は張ってあったので一般人への被害は出ていないはずだというのが不幸中の幸いである。

 

 で、まぁ乱戦になりながらも、僕を助けるために恵理那ちゃんが聖骸布巻いてくれたのは良いけど効果が無くて、悠馬の神酒を飲ませようということになったら、僕が暴れたりして大変だったらしい。マジでごめん。

 そんで、丁度僕に神酒飲ませようとしたエルザのところに、吹っ飛ばされてきたフェイトが激突。そのまま三人で、僕とエルザが乗っかっていた民家の屋根から落下し、おっさんの転移魔法みたいな奴に飲み込まれてここに落ちてきた、ということらしい。

 

 また現在地だが、エルザの体内に内臓されている「いつでもどこでも異空間でも座標ばっちり解明ナビシステム、通称スーパー無敵ナビゲーションシステムDX改ver11.68」によると、隣街の遠見市の地下に建造された巨大地下洞穴の中らしい。

 色々とツッコみたいところだが、しない方が良いんだろうね。とりあえずネーミングセンスぇ……とだけ言っておこう。

 

 後は僕が先ほどされていたように、神酒はガッチリ守っていたエルザが僕に飲ませてくれたら効果覿面、SAN値大幅回復で僕完全復活、ということらしい。

 

 ただ、まだ魔の匂いが右足からわずかにするので、完全に祓った訳ではなくて、あくまでレジスト効果が起きているだけとのこと。

 ……あれだね。僕が耐えられてたのって、悠馬が僕の治療のために一度神酒くれてたお陰だったんじゃないの、コレ。やばいよ、僕あいつにもう頭上がんないよ? 土下座とか平気でやっちゃうよ? 靴舐めるくらいならギリギリやるよ?

 ちなみに、さっきまで戦闘の余波で色々身体中ずたぼろだったらしいんだけど、それも回復したとか。マジで神酒様々。悠馬様々である。聖骸布くれた津軽さんにもついでに感謝をしちゃいますよ。

 

「――さて、まぁそんなところロボ。で、質問あるロボ?」

「とりあえずお姫様だっこはいい加減やめて?」 

「だが断るロボッ!!」

「ですよね~!!」

「はぁ……二人とも静かにして――バルディッシュ」

『PhotonLancer』

 

 あぁそうそう、僕達二人が騒いでるせいで洞窟内にいた深き者共がこっちに気付いて襲い掛かってきたりしてるけど、全部フェイトが、いや、フェイトちゃんが排除してます。

 ……それにしても、非殺傷設定じゃないのかな。あのさ、割とスプラッタなんだけど。フェイトちゃんも割かし顔がグロッキー気味なんだけど。

 

「え~っと、フェイト、ちゃん? あのさ、魔法、非殺傷じゃないの?」

「設定は非殺傷の筈なのに、この人達―ーううん、この化物達は何故か殺傷設定と同じ状態になるみたいで……」

「多分、嫌がらせロボ。人間、特に現代人は基本的に自分と似た形状の生物を殺傷することに忌避感があるロボ? それを利用して、わざとそういう風になるようにしてあるんだと思うロボ。戦力の消耗と精神的ダメージを与えることを考えた、なんとも嫌らしい戦術ロボ。

 というか、そもそもこいつら生物ですら無いから、非殺傷設定なんて関係無いロボ。肉塊を魔力で操っているだけで、要は元から死体なんだロボ」

「なるほど……」

 

 なんだろうね、クトゥルフ絡んで来た時は刹那が解説役におさまるのかと思ったら、意外すぎることにエルザちゃんが解説役担当とか。博士も割と説明キャラだし。なんか原作のイメージと剥離が酷いよなこの二人。

 

 いや、常に原作テンションでも困るけどさ。こっちも。

 

「だから、フェイトちゃんもそんな気にする必要ないロボ」

「……気にしてなんか、無い」

「強がらなくて良いロボ。顔真っ青ロボよ? キツくなってきたら言うロボ。エルザも武装はガントンファーだけだけど身に付けたままだったから、戦闘が出来ない訳では無いロボ」

『All right』

「バルディッシュ……」

「バルディッシュも心配してるんだロボ。三人はこのエルザお姉ちゃんにいつでも頼るロボ!! 何があっても守るロボ!!」

 

 なにこのエルザちゃん。良い子すぎるんだけど。

 

「……ありがとう。でも、お願いだからもう少し声を小さくして、エルザさん」

『PhotonLancer』

「グゲギョッ!?」

 

 あ~、また来たのか深き者共。頑張れ、強く生きろ。死体だけど。そしてフェイトちゃん、色々ごめんなさい。でもエルザちゃんと博士は騒がしいのがデフォだからどうしようもないです。

 

「うっ……」

 

 ……フェイトちゃん、割と本気でヤバイかもね。外で、尚且つ味方もいる状態でならまだ良かったんだろうけど、こんな閉鎖的な空間で、味方も騒いでるだけのが後ろに二人。しかも一人はただの足手まとい。そんな中で一人で物凄い速度で走りよってくるゾンビの相手だもんなぁ……。

 深き者共の足の速さは、多分体感でだけど時速40~50kmくらいは出てるんじゃなかろうか。ウサインでボルボルな人でも最高時速40kmちょいくらいだった筈だから、要は世界陸上の短距離走並の速度で全力疾走してくるグロゾンビである。

 

 僕一人だったら、悲鳴あげて逃げようとして背後から食われてるね。間違いなく。

 

 あ、そうそう、そういえば短距離走といえばさ、よく小説とかで50m走を6秒切ったり、5秒台出しちゃう一般高校生とかいるじゃない。女子でも。

 でさ、僕、前世で文系で運動部入ってないくせに足速いほうだったけど、6秒半ばが限界だったのよ。コレって遅い方なのかな。確かに陸上部のエースとかにはかなわないけど、リレーではアンカーやったこともあったのよ? ああいうの見て自信なくしたことあるんだけど、考えてみてほしい。

 

 確か世界記録ですら50m5秒半ばだし、女子に到っては50m5秒90切った人っていないはずなんだよね。

 学校での50m記録なんて手動で計算してるとはいえ、早々50m5秒台なんて出ないよね?

 

 いや、すっごく今は関係無い話なんだけど、ふと思ったのよ。

 まぁ、この世界じゃ魔法があるから気とかもあるんだろうし、50m5秒台どころか、3秒とか2秒とかもいるのかもしれんけども。

 

 ……う~ん、僕ってばこんな状況でも平和な思考してるな。体調良いって素晴らしいね。

 っていうか、そろそろ降ろしてもらおう。

 

「エルザちゃん、そろそろ降ろしてもらっていい?」

「ロボ? もう大丈夫ロボ?」

「うん。なんていうか、フェイトちゃんの顔色がもう完全にヤバそうだから、前衛代わってあげてくれるかな」

「そうロボね。正直エルザも交代すべきじゃないかと迷ってたロボ。じゃあ降ろすロボよ? よいしょっと」

 

 だよね。あの真っ青な顔見てたらそう思うよね。ごめんね? 僕を担いでるから言い出せなかったんだよね?

 エルザちゃんのお姫様抱っこからようやく解放されて、背中をバキバキ鳴らす僕。うん、痛みも問題なし。

 

「フェイトちゃん、そろそろ前衛交代ロボ。義嗣の護衛お願いするロボ」

「……え? 何?」

「交代ロボ。義嗣の護衛お願いロボ。……というか、ちょっと休憩するロボ?」

「大丈夫。――ごめんなさい。前衛は任せる」

「エルザお姉ちゃんに任せるロボ!!」

 

 ドン、と胸を叩くエルザちゃんの胸が揺れた。

 

 くっ、しまった。違うんだ!! 邪な思いで見てたわけじゃないんだ!! この状況下でもぶれないなぁエルザちゃん、とか思ってほのぼのしてみてただけなんだ!!

 っていうか、エルザちゃんもしかして今の揺れ方、ブラつけてないの!? 駄目だよつけなきゃ!! 形崩れるよ!?

 ――あ、アンドロイドだし形が崩れて垂れたりしないのか。何それ全国の女性を敵にまわせる特典だね。

 

「えっと……じゃあ、よろしくね、フェイトちゃん。っていうか、ごめんね? 僕のせいでこんなことに巻き込んで」

「……良い。ジュエルシードを追っていたらたまたまこうなっただけだし、それに。君には一応、小さいけど借りがあるから」

「借り?」

 

 あれ、僕なんかフェイトちゃんに貸しを作るようなことしたっけ? 借りなら今現在進行形で増えてるけど。

 

「……わからないならそれで良い。あまり広範囲にプロテクションを張るのはキツいから、離れないで」

「ん、分かった。お願いします」

 

 こうして、僕達の脱出劇が始まった。


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