転生傍観者~リリカルな人達~【改訂版】   作:マのつくお兄さん

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28.嫌悪と囮役

 幻聴だけが、耳に残っている。

 

 違和感だけが、身体に残っている。

 

 博士の言った言葉で、あの場の空気は完全に凍った。

 当たり前だろう。刹那とセイバーにとっては、つい先ほどまで一緒にいて、それも抱きついていた人間の身体の一部が人間の物ではないと、そう言ったのだ、博士は。

 恐らく無意識になのであろうが、刹那が距離をとったのが分かった。そして刹那を守るように、セイバーが僕と刹那の間に音も無く入るのも分かった。

 

 その二人の表情を見た気はするが、覚えていなかった。

 そこに浮かんでいたのは嫌悪などの表情だったのであろうか? それがショックだったのか? 親友になれたと思った人間が、自分に嫌悪の感情を抱いたのではないかと思えて、ショックを受けたのか?

 

 あぁ、何を今更とも思える。元より僕はモブである。主人公格の子で、それもとても心優しい子と一緒に暮らしていただけでも、充分に幸せだったじゃないか。

 義理とはいえ父は理想の父だ。虎次郎がどう反応するかは分からないが、彼はその事実を知っても大して態度を変えたりはしないだろう。そんな恵まれた環境にいるのだから、別に問題ないじゃないか。

 そもそも刹那は心は女の子なのだ。自分が死ぬかもしれないと泣いて、一人で寝るのも心細くなるような子が、そんな得体の知れない物と一緒にいたいと思えることありえるか?

 

 なンだ。全然問題ないじゃないか。むしろこれが普通。これが当たり前。OK? 僕さん僕さん、頭冴えてるね。どうせなら右足ザックリ切ってもらうのも有りだよ。博士なら資金さえあれば本物そっくりな義足くらい余裕で作ってくれるダろうし、魔の気配がある代物だ。もしカしたらそれを報酬として、タダでやってくれるかもしれないよ?

 

 博士には、訊かれたこトでわかっていることは全て伝えた。

 彼にしては珍しく、真面目な顔で、僕の脚のことも含めて、怪異を解決するために動いてくれると約束しテクれた。

 

 ……刹那とは何か言葉を交わした覚えはあるが、内容は全く覚えていなイ。

 

 ただ、とりあえずこの家を出て行くことはしないようで、それだけは安心した。

 僕のせいで刹那とセイバーが住む所が無くなるなんて申し訳ないからね。まぁ、化物と同居するのが気持ち悪いとは思うので、博士やエルザ達と共に客間で寝てもらうことになったけれど。僕は、一人で自分の部屋にこもることにシた。

 博士からは「後で、落ち着いたらちゃんと謝るのであるぞ」と言われたので、きっと僕は何か失礼なことを言ったのだろう。それだけがちょっと申シ訳なかった。

 

 ――でも、刹那の問題は当面解決したのだし、僕だけの問題であるならば、どうにかなるだろうト思えば、少しは心も軽くナルというものだ。

 

 

 そういう訳で、右足をどうするか考え中でござる!! ござるざる!! 足チョンパは痛いし、今後の人生のデメリット考えると下手には切れんよ!! そもそも片足だけになったら、お父さん心配するからね!!

 ふふふ。僕がそんなうじうじいつまでも悩んでいると思うなよ!! バカめ!! 僕の精神のタフさ(SAN値)は百八まであるぞ!! ガリガリ削られて現在デッドエンドが見えかけててちょっと涙目だけどねバーカ!!

 

 さてさて、もうね、ぶっちゃケどうしろと? 僕がこの事件解決して覚醒とか、ここで得た能力で原作介入、改変とかあると思った?

 

 あるわきゃないよネ。僕がモブだってこと忘れちゃいけなイよ? そもそも、ギリギリで発狂回避=覚醒フラグではなく、ガチのクトゥルフ存在説はむしろ薄くなったと考えられるよ。だってモブ一般人ごときが仮にも邪神の眷属からの精神汚染に耐え切れルわけないじゃない。

 そう、何事も諦めとポジティブシンキングが大事。とりあえず生命保険とか入っておけば、死んでもお父さんは割りと楽が出来る。問題はお父さんが保険金目当ての殺人でもしたんじゃないかとか疑われることだ。ついデに言うとこの歳で生命保険入れるかなんて知らん。それならいっそ臓器売買でも手を出して身体バラして売った方が建設的だ。なのでここはポジティブに、割と大丈夫そうだと思っておくのが正解。アレ、デも子供じャ一人では保険ニ入るコトすらデきないネ。残念。

 

 あ~、しかしアレだね。右足さんが突然喋り出して、実は地球外生命体で、本当は脳を乗っ取って人間の世界になじむはずダったけど、脳を乗っ取れなくて人間の身体の一部として共存して暮らす的なパターンなら良かったのにね~。丁度右足だし、ミギーって名前付けるよ。

 まぁ、最近の人でこのネタ知ってる人がいるのか分からんけどね。分かった貴方は「あぁ、アレね」とか思っておけば良イよ。結構名作だよね。もうあの作品ラストどうなったかとかあんまり覚えてないけど。

 さてさて、博士には話したことだけど、改めてまとメよう。クヒ。

 

 現状、僕の右足は魔性の存在の身体の一部でアる。

 感想。恐ろしいネ。

 

 疑問。右足はいつからそんなことに? 昔から?

 予測。昔からという事は無い。なぜならソレならば精神汚染はもっと早くに起きていて、僕は廃人になっていた。ならば、最近のはず。

 

 思考。右足ヲ失って、代替物が付くような状況がいつあったか。

 確信。この前の僕の家近辺でのジュエルシードに取り込マれた化物。

 

 仮定。ジュエルシードの破片、或いは化物の細胞の一部を取り込んだまま身体が再生してしまったのではなイか。

 証拠。他ニ右足で思いつく事故などはここ最近全く無いから。右肩であったのなら、ショゴスと会った時という可能性が高かったが。

 

 推測。あの時、ジュエルシードに取り込まれていたサラリーマンのおっサんに何かかかわりがあるのではないだろうか。

 証拠。他に思いつカないから。

 

 

 こんなトころだ。

 実際、博士がこの近辺で見かけていた魔の気配を持つ男というのもサラリーマン風の格好をした、草臥れた中年男だっタらしいし、可能性は高イ。

 寂しイな。誰かのぬくもりが欲しイ。

 

 今はそんなのどうでも良い。

 さて、そうなるととれる行動と言うのは限られてくる。

 

 一つ。博士に全部任せてこのまま引きこもり。ある意味、一番モブとして正しい行動。但し刹那達が家に居づらくなるのであまり家にはいないほうが良いだろう。

 一つ。博士に協力してもらって、一緒に怪異解決のため頑張る。ぶっちゃけ僕らしかラぬ主人公ッポイ考エでニアワナイ。ヒキコモロウ。トモダチがイルんだからイイジャナイか。いあいあだご――。

 え~っと、次、一人で怪異解決に向けて尽力。

 これは無理。どう考えても無理。デモヤッテミル価値ハあルわけが無い。自分の力量を考えてみよう。頭は並。力は並未満。戦闘能力は無し。下手したら小学一年生の体格良い子にすら負けそう。

 

 唯一の怪異への手札。僕の脚になっている誰かの右足。

 

 ……あれ、無理ゲーじゃね?

 

 いやいや、諦めるなって。僕ドウ考えてもマダマダいけるって。

 大丈夫だって、本当。とりあえず深き者共の仲間入りするくらいなら素直にこの命断つワ。死体を有効利用されないように自分に灯油かけて焼身自殺するわ。

 おーらいおーらい。心を強く持ってれば、割とドウニカナルトオモッテイルノカ?

 思ってますが何か? 僕の思考が飛び飛びなのはいつものことだから、要はいつもの変な電波にちょっとアブないんが混ざっちゃってるダケダト思えば問題ない。

 大体だね、なんだかんだで原作準拠で進んでいるっぽいこの世界で、そんな世界崩壊レベルの原作関連しないイベントが起きると思う? 無理無理。無いって。ソンナモノある訳がナイ。

 あ、そっちの思考が肯定したからありえるのカ? まぁでもなんとかなるだろ。こういうのはね、諦めたら負けよ。諦めも肝心だから、無理と判断したら死ぬことにするけど。

 しかしアレだね。後遺症とか怖いけど、やっぱり右足ザックリ斬ってみようかな。精神汚染と右足欠如なら、右足欠如のほうが楽だし、ドクターなら死なないようにうまいこと手術くらいできるだろうし、どのへんまで侵食されてて、どのへんまでが他人の足になってるのかが分からない以上は自分で切っても意味がないかもだから自分で切るのは最終手段だなぁ。

 

 ケタけタクフふ……。

 

「失礼するのである。ショタっ子、大丈夫であるか?」

「大丈夫ロボ?」

「あぁ、割かし回復シマシタ。全然余裕デス」

 

 クフ、と笑いが浮かぶのを止める。面倒くっさいなぁこの身体と精神。

 

「全く余裕には見えないのであるが……貴様がそういうのならばあまり深くは訊かないのである。で、まぁ怪異解決にあたって、我輩からショタっ子に一つ条件があるのであるが」

「ハイハイ、お金の問題じゃなければなンデもでうぞ」

「うむ。殊勝な心がけは良いことであるぞ? では早速だが、これに着替えるのである。エルザ」

「はいロボ!!」

「アイアイ……あい?」

 

 博士の言葉に、勢い良く背中に隠していた服を僕の前に広げるエルザと、あっさり快諾したものの目の前の物が理解出来なくて少し思考停止する僕。

 

「え~っと……え~っと? なんぞこれ?」

「うむん? 見て分からぬか? 女物の服である」

 

 広げられた服は、純度百パーセントまじりっけ無しの真っ白な甘ロリ服であった。一言で言えば、ネクロノミコンことアル・アジフがデモベで着ている衣装に似ていた。スカート部分は超ミニ。明らかにちょっト動くだけでパンツが見える。

 ついでにいうと、その見えるであろうパンツや、頭につけるのでアろうリボン、そしてつけたら腰元までありそうな黒髪のウィッグも一緒にエルザの手に握られテいた。

 黒髪ならエセルドレーダじゃね? と思っタけど、まぁ正直どっちも僕が着るには無理がある気がするですよ。ついでに言うと、アルが着ていたのよりもなんかロリっぽさが強いトイうか、なんともいえない服になっていて、アルのコスプレというにも微妙に違いソうだ。

 

「いや、それはこの如何にもな甘ロリといい、スカートといい、見れば分かるけどね? え~っと……? なして?」

「深き者共は人間の女、特に少女が性的な意味でも食事的な意味でも大好物なのである。よって、女の子の格好で囮になってもらうのであるが。うぬ? よもや嫌なのであるか?」

「嫌ロボ?」

 

 多分、ここで「いや、エルザちゃんがいるじゃないですか」とか言ったら「エルザにそんな危険なことさせられるわけないのである」とか怒られそうなので言わナイ。僕空気読める子。

 

「いや、別にイヤじゃないんですけどもね? いきなりだったカら、博士変な趣味に目覚めたのかと」

「貴様の中で我輩どんなキャラ付けなのであるか!?」

「ライバルのガチムチ君の女装姿に頬を染めて視線を逸らすキャラデス」

「当たりロボ」

「そういえばそんなこともあったであるな……」

 

 ふっ、あの頃の我輩は若かったのである。とか遠い目をして言ってるケレド、博士、今のアンタのほうが肉体年齢的には若いんだからね? っていうか、しかもそれは原作ウェストのことデあって、アンタじゃないからね?

 まぁ、大十字九郎の女装姿がありえない完成度であったことは僕も認めるが。九郎本人も鏡で自分の姿を見せられてあやうくそっちの道に目覚めそうになって、柱に頭ぶつけて血を流しても止めないほどの破壊力だし。

 

「まぁそう言うわけであるので、ちょいと面貸すのである。あぁ、昼飯は奢ってもらうので財布は持参するように、なのである」

「あ、そこはたかるんダ!?」

「そもそも友人でもなんでもない奴の命を救ってやれるかもしれなくもない? という状況であるわけであるからして、救ってもらえるかもしれなくもない貴様がそこに文句をつけるのは筋違いなのである。

 本当だったら何十万とかもらっても足らんくらいなのであるが? まぁ、そこは貴様が小学生であるという点から勘弁しておいてやろうと思うのである」

「そうロボ!! 博士にしては現実的判断ロボ!! 今回ばかりはエルザも博士の味方ロボ!!」

「え、エルザ!! 遂に我輩の愛に気付いてくれたのであるか!?」

「それとこれとは話が違うロボ。死ねロボ」

「エルザが冷たいのであぁぁぁぁるうううぅぅ!!」

 

 なんか博士が泣き始めたけど心底ドウデモイイ。っていうか、ご飯もおごりますし、注文どおり着替えるんで、部屋出て行ってもらえませんかね……? 流石に人前で着替えるのは僕ってば恥ずかしいお年頃ですよ? しかも女物。

 でもまぁ、あっさり却下されまして、エルザに全裸に剥かれてキッチリ着付けられまシた。

 うぅ、もうお婿にいけない……よもや年頃の女の子に全裸にひん剥かれることになろうとは……。

 その上、僕としてはちびっ子の化粧は肌を痛めるし反対派だったというノに薄く化粧までさせられて、えぇ、それはそれは完成度の高いロリっ子が完成したらしいけど、僕は刹那という真の男の娘を知っているのでそんな可愛いとは思えんでしたよ。

 

 ちなみに、刹那はモンスター○ールをセイバーに渡してあるし、目を離しても大丈夫だと判断したそウだ。

 確カに、刹那は襲われたら混乱して何もできないかもしれないが、セイバーならばいち早く混乱から立ち直って刹那の身を守ってくれるだろうから安心だ。

 

 かくして僕は、博士達と共に怪異の元凶の探索に出ることにしタ。

 

 

 

 

 やっほ~、皆元気? 私だよ私!! 義嗣ダヨ!!

 

 ……うん、すまない。女装中なんだ。割と似合ってるのが笑えるヨ。ショタっ子の異名は伊達じゃないね、女装もそれなりには似合う。男の娘として大人気になるほどではないと思うけども。やはり男の娘としての可愛さでは刹那ほど可愛のはソウソウいないだろうと僕は自慢するよ。

 

 で、怪異探索に来たはずなのに、何故かバッタリ出会ってシマって目の前には今日僕と会ってからずっとクスクス笑っているはやてちゃんの姿。

 我ながらはやくなんとか今の状況をなんとかしたいと気はあせっているのに、博士は何もアクション起こさないので、仕方なク焦りを隠して僕が車椅子を押しつつリーンちゃんが先導する形デ一緒にお散歩チュウだ。

 

「ヨッシー、そのまんまの格好しといた方がモテるんちゃうか?」

「いやいや、男の子にモテても嬉しくないカラ。僕は女の子が好きだから。ハヤテチャントカ」

「ふ~ん? まぁ私もヨッシーのことは割と好きやで? ちっこくてかわえぇし、何より予想通り女装が似合うのがポイントや」

「ごめん。全部男の子としては嬉しく無いポイントダネ」

 

 なんというか、最近博士が魔の匂いがするサラリーマン風の男を見たというのが公園だったコトから、そこから探索をスタートしたら、あっさり知り合いに見つかってしまっタ訳であるのだが、なにせ休日だ。むしろはやてちゃんで良かったというべきだろう。お互い話の種にできるのは良い事だ。

 

「しかしなんやな。まだ体調悪いんちゃうか? なんやカタコトっぽいで、喋り方」

「あ~ウン、喉がちょっと調子悪くてネ」

 

 ごめんね~、こればっかりは直しようがナクテ。ササゲロ。

 

「なんや大変やな~。しっかし、アレやな。ヨッシーって愛情表現とか結構ストレートな方なんやなぁ。風邪のときと言い、今といい、随分積極的やんか? おマセさんになってもうたんやなぁ。お姉さん悲しいでぇ~」

「好きな人に好きッテ言うのは普通のことじゃない? 割と恥ずかしかったりはするけど」

 

 メノマエノオンナヲササゲロ。

 はいはいワロスワロス。これマルチタスクの練習とかになりソうだな。僕魔法使えないけど、マルチタスクってあると便利そうダ。

 っていうか、やっぱり精神汚染にしては軽すぎる気がするよ。確かにキツいけど、耐え切れない程じゃないし。精神的に余裕があれば殆ど問題ガナイ。

 

「んふふ~、なるほどなぁ。逆に、幼いからこそ素直に言えるっちゅうやつやな!! ヨッシーは身長も性格もそのまんまおおきゅうなるとえぇで!!」

「身長は伸びてほしいな~。性格はこのママいきたいけど」

 

 オソエ、ウバエ。

 抱きつくのは有りだけど、唇奪うのは主人公格の仕事だと思うですヨ?

 

「あかんなぁヨッシー。ヨッシーは需要っちゅうもんをわかっとらんわ。えぇか? 需要と供給っちゅうんは中々釣りあわへんもんなんや。特にショタなんて貴重やで? 永遠のショタ、これはもう誰がどう考えても引く手数多のレアもん中のレアもんの属性やで? 絶対美人なおね~さんとかが言い寄ってくるおもうねんけど、きっとボインちゃんばっかりなんやで? おっぱいやでおっぱい。揉み放題やで?」

「女の子がおっぱいおっぱい連呼するのはどうカト思うよ僕。そしてそんな需要に応える気はサラサラ無いよ、僕は」

 

 はやてちゃんだって下半身不随の車椅子に乗った薄幸の美少女なんて需要にずっと応えたくないでしょ? 僕だってそんなはやてちゃんよりも、ニコニコ笑って皆に笑顔振りまいて、笑顔を伝播させていくはやてちゃんの方が好きだし。供給と需要が必ずしもつりあう必要なんてナイじゃない。

 まぁ、思っても口には出さないけどね。恥ずかしいし、こんなのは主人公とかが言うことだ。思いついただけで恥ずかしい。本音ではあるんだけども。

 

「せやかてヨッシー少年。女の子はおっぱいや。1に性格2におっぱい。3、4に家事スキルで5におっぱいなんやで?」

「なにソレ新しい。そして全国の貧乳少女に喧嘩売ってることに気付いてはやてちゃん」

「私も無いから許されるはずや」

「いや、今は身体自体が小さいんだから当たり前じゃない」

 

 まぁでも、貧乳だって別にいいじゃない。揉むなり鑑賞するなり抱きしめたりするなら大きいほうが良いだろうけど、無いなら無いで可愛いジャない。

 コレのような意見を前世で言ったら「やっぱりお前男色の気が……」とか言われた覚えがあるけど、言った奴は貧乳女性陣にフルボッコされていた。

 まぁ、全員、そいつとそういう関係持ってる女の人だったけどね。普段あんなでもベッドの上ではどうとかよく自慢されていた。知ったこっちゃねぇよって感じだったけど。リアルハーレム男っているからね~。

 

 まぁそれはさておき。

 

「ところではやてちゃん。最近このへんで、若干ハゲがかっててヅラをかぶった中年のサラリーマン風のおっさん見なかった? 草臥れた感じの」

「ぶふっ。い、いや、ヅラかどうかなんかちらっと見たことある程度じゃわからんと思うんやけど。っちゅうか、なんでそんな人探しとんのや? あまりにもいきなりな話題転換の上に本気で関係無い話やったから若干吹き出してしもたで?」

「あ~、ゴメンごめン。ちょっと探し人でね、覚えが無いなら良いよ」

「あ、いやちょいまってや。もしかしてその人って少し明るいグレイっぽい黒のスーツに水色のネクタイして、あごひげちょっと生やした中年の人やったりする?」

「お? お~……あごひげはちょっと覚えてないけど、そうだったかも。暗い顔してた?」

「しとったで。この世の終わりみたいな顔やったわ」

 

 おぉ、これはいきなり美味しい展開ですカ? すぐ事件解決ですか? んなわきゃナイですよね、ヤッパリ。

 その後、はやてちゃんからはそノ人がいつの何時ごろにいたかという話を訊いてから別れを告げると、こっそり遠くから双眼鏡で僕を眺めていた博士と合流シた。

 はやてちゃん曰く、そのサラリーマン風の男は普段から全く同じスーツを着テいて、そのせいでスーツがよれよれになっているためまさに草臥れた中年男性といった風体で、ネクタイもいルも水色の物。少しあごひげは生えているくらいで顔はどこにでもイるような普通の顔。中年というよりはもう少し若く見るが、いつも暗い顔をしていてぶつぶつ何かを言っているためにすごく老けて見えるらしい。

 

 また、翠屋のケーキの箱を持ってベンチでぼんやりしていルことが何回かあったとのことだったので、それを博士に報告しようとすると「音声は拾っていたので大体内容は分かっているのである。あの関西弁おっぱい魔人の言っていた、普段この公園にいるトいう時間帯からずれていることも考えて、翠屋に一度行くのであるが、問題あるであるか?」と訊かれたので当然「問題無し」と応えておいた。

 

 ぶっちゃけ現在の精神状況ではまともに思考を働かせるのも結構な重労働だし、博士の言に従っておくのが一番楽ナノダ。

 

 で、なのはちゃんが居ない翠屋で軽食を食ベて(昼時はケーキ以外も頼めば出してクれるのだ)昼飯とし、更にデザートに二人がプリンとエクレアを食べて夕方まで公園を中心に探索を続けたが、その日にサラリーマンと接触することも、発見すルことも出来なかった。トリアエズお昼だけで四千円以上の出費だったこトはそっと、記憶の中から消しておキたい悲しい過去ダ。

 ――そして、明日は月曜日。一度学校へと赴かなければなラない。

 一度宝物庫にあのおっさんを取り込んだ悠馬がもし学校に来たら話を訊いてみようと、少し怯えた様子ながらも夕食を作って待ってくれていた刹那に少し物悲しさを感じながら夕食を食べつつ思う。

 そんな刹那と僕ヲ。セイバーとエルザが悲しそうに見ていて、博士は呆れたようにしていたのが印象的だった。

 

 とコろで、明日も同じ格好で学校に行けととても良い笑顔で博士とエルザちゃんに言われたんだけど、どうしよう。「仕草は時折女子な貴様であるが、せっかくだから口調も女の子っぽくするのである」とか言い渡されたンだけども、やっぱり博士、女装男子に興奮する変な趣味でもあるんじゃないよね?

 今日エルザちゃんが僕の着替えをさせる時だって、エルザちゃんがやたら鼻息荒いし頬が紅潮してて、博士がニヤニヤして見てたのクらい気付いてるんだからね、僕も。

 

 いあいあ、参った物ダヨ。




 12月1日より、オリジナル版の義嗣と嗣深の物語、始まります。
(なろうにて)

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