転生傍観者~リリカルな人達~【改訂版】 作:マのつくお兄さん
いあいあ、くとぅるふだごん。
いあいあ、だごん。
てけり・り。てけり・り。
いあいあ。ぐちゅり。ずちゅり。
べちゃり。ごぼり。べたり。じゅるり。
ケタケタ、ケラケラ。カサカサ、ぐちゅぐちゅ。
オハヨウヨシツグアサダヨ。
オハヨウヨッシークンアサダヨ。
オハヨウ、セツナ、<××××>。
オハヨウオハヨウ、オハヨウケラケラ。
優しく微笑む君達の顔は、僕ノ何より望ム物。
5月1日、日曜日。黄金週間モ明日で一度途切れてカらの休みとなる今日。言うまでモ無いが、我が家は騒がシかった。
「そうだ。そういえば義嗣。アインちゃんの件だけどね。あの時私が言ってた猫の女神バーストなんだけど、ダーレスの創作じゃなくてロバート・ブロックの“ブバティスの子ら”が出典だったよ。今日落ち着いてからアインちゃん見てたら思い出したんだけど。ごめんね。間違った情報教えちゃって」
朝ごはんの準備をする刹那ヲ手伝っていたらそんなことを言われたが、僕は笑って済ませる。
そもそも何でも資料も見ずに覚えていて間違いを犯さないなんて人間はそうはいないだろうし、むしろ思い出してそうやって謝ってくれたことが嬉しいと言っテ頬にキスしておいた。
いきなりのことに若干慌てて顔を赤くする刹那が可愛かったよ。くすクス。なんだか、セイバーが怪訝な顔をしていたのが不思議だったけれど。なぁに? 君もキスしたいの? あはハ。
そうしている内に、博士達も起きてきたのでご飯を食べ始めた僕達。
「ヌゥハハハハ!! この甘く蕩けるような、まるで我が少年時代の甘い一時を凝縮したかの如き卵焼きの味!! そしてそんな甘い一時にある日降り注いだ塩辛い涙と苦い日々を思い出させるかのような、程よく塩見の効いた肉巻きアスパラガス!! そして極めつけは「博士、食事中に喋るのは下品ロボ」メメタァ!?」
なるほど、極めつけはメメタァ!? なのか。
あぁそうソう、これ言うのも久しぶリな気もするケど、皆さんおはようございますマス。今日も元気にSAN値減少なうなうな私こと義嗣デす。幸せな日々は一体いつになれば僕にやってくるのだろうカ。
――いや、待てよ? 刹那という愛らしい友人とセイバーという得難く優しい友人を得て、それが一時的とはいえ家族ナのダから割と幸せじゃないカ?
そうだな。うん、ごめん。ちょっと高望みが過ぎたね。僕、幸せです。ドクターハーバートが騒がしいけど、正面に座っている僕の顔に博士の口から飛び出したご飯粒がついてるけど、幸せです。いや、コレについては非常に腹立たしいけど、エルザがしっかり処理してくれたのデ気にしまセん。
ケラケラ。
僕は、幸せです。いあいあ、シアワセです。
「ところで博士、昨日は夜中随分静かだったけど、ティンダロスの猟犬対策はどうなったの?」
「あぁ、それについてはもう出来上がったのである。この程度の作品作るのに大騒ぎしていられないであるからな。というか、騒いだら追い出されるくらいのことは、我輩にだって分かるのである」
意外!! この博士常識人!!
いいコいイ子。頭を撫でテあげたいネ。
「おぉう、それは結構なことです。で、どんな感じになったの?」
「ふむん。聴きたいであるか?」
「そうだね。なんていうか、西――あ、いや、博士のいう事を信頼してない訳じゃないんだけど、不安を取り払う意味でも教えてもらえるかな。じゃないと私今日も義嗣くんやセイバーにしがみついてないとおちおち寝れもしないから……」
あぁ、そうそう、刹那が言うとおり、昨夜はまた三人で寝まシた。セイバーはなんか完全に僕に気を許しちゃってるのか、セイバー、刹那、僕、という並ビで、刹那に抱きしめられて寝ることになったんだけども、僕この調子で育っていくと男相手でも抵抗無くなる気がして若干怖くなってきタよ。
いや、割とガチで。怖いわ。慣れって怖いワ。刹那美少女外見なのがいけないんだわ。僕、女の子が好きなんだからね!! 虎次郎のヒロイン疑惑が晴れたと思ったら男版刹那といちゃいちゃするのに慣れたというか、むしろそれが落ち着くという状態は非常によろしくない気がします!!
とはイっても、所詮は精通が来る前のガキンチョだからこそだろうけどね。僕だって男の子として目覚めればちゃんとノーマル道を走れることだろう。
個人的にはカップリング相手がいないなのはちゃんとかはやてちゃん達とかに憧れるけど、きっと二人とも虎次郎か、これから出てくる新たな主人公枠転生者とかにハートを撃ち抜かれちゃったりするだろうから無理だろうね。フェイトは悠馬がついてるし。いや、でもアルフとくっつくのかアイツ?
まぁ、なんにしろ大人版の姿知ってるからそう思うだけであって、今のなのはちゃん達にそういう感情全然抱けないけども。性格は非常に良い子達だから、このまま真っ直ぐ育って欲しいところではあるけども。
だって、皆大好きなんだモの。
ふぅ。いいねぇ、クトゥルフ神話なんカよりも、僕はこういう日常的な友情や恋愛の心配とかしてのんびり暮らしたイよ。
「ふむ。まぁ隠すほどのことではないので見せてやるのである。エルザ」
「はいロボ!! 今日のびっくりどっきりメカはこちらロボ!!」
よいしょ、とエルザが料理の並んだちゃぶ台の上に無造作に置いたのは、赤と白で色分けされたガシャポン(或いはガチャガチャとも呼ぶ)のカプセルみたいな物である。白と赤で彩られたそれの丁度中央には黒い線が横切り、ボタンのような白いスイッチがついている。
一言で言おう。モ○スターボールである。形状がちょっと卵型に近くなっているけれど。
「版権大丈夫!? ねぇ、規制かからない!?」
いつもニコニコ平常運転の僕のツッコミ。
「いや、ちょっと貴様が何を言っているのか我輩には分からないのであるが」
「まぁ、モロパクリな一品なのは確かロボ」
「こういうのは様式美なのである!!」
ダメだコイツラ早くナんとかしないト。
さじを投げて諦めの溜め息をツきながら笑う僕の横で、刹那ガ肩を落とシた。
「……こういう時、どういう顔すればいいかわからないよ」
「笑えば良いんじゃないかナ……」
笑えよベ○ータ。
アハヒ。
「いや、しかしであるな? ぶっちゃけ角が無い空間であれば奴は出てこれない訳であるからして? 逆転の発想という奴なのである。丸い空間にいれば安全だというのなら、逆に丸い空間に閉じ込めておけば良いのである。
見た目はこんなんであるが、コレの中は外界との時間軸及び空間との断絶、言うなれば異空間化が成されているので、時間を越えてやってくるあやつらでもまず脱出は不可能なのである。当然、協力者たるサテュロスやドールなんかが手を出そうにも、このボールはそんじょそこらの衝撃で破壊できるような材質にはなっていないのである。戦車砲の直撃だろうが戦術核の熱波だろうが、収束魔力砲の一撃だろうが理論上は耐えられると出ているのである。レムリアインパクトもギリイケる!! と我輩は自負するのである」
ちなみにサテュロスはギリシャ神話やローマ神話にも登場する精霊の名前で、クトゥルフ神話においてはヤギのような下半身と小サな二本の角、尖った耳を持つ、悪戯好きで享楽的な妖精。ちなみにギリシャ神話やローマ神話でも似たよウな性格であり、成人すルと禿げて顎鬚が生えるラしい。刹那がこっソり耳打ちして教えてくれた。
エヘヘ、お返しに舐めテあげようカ?
あぁソウソウ、ついでに言うとワインと女性と美少年を愛するとのことだケど、頼むからコレには絡まれたくなイネ。いや、僕美少年じゃないケどさ、刹那あたりが絡まれたら全力で守ってあげねばなルまいよ。
ドールは全長百数十メートルにも及ぶ、巨大なミミズみたいな青白い触手だソうだ。粘液まみれとのことで、あぁ、そういウののサイズダウンバージョンがよくエロゲとかで出てタなとか思いつつ聞き流した。これも耳打ち刹那情報である。耳がこそばゆい。甘噛みして返シてあげようかな。クヒ。
なンでも地震を起こシてティンダロスの猟犬の獲物が隠れた空間を破壊してティンダロスの猟犬の侵入口を作ったりするらしいが、その程度の衝撃問題なし、という博士のありがたいお言葉を信ジるしかないだろう。原作においてダゴンを消し飛ばしたレムリアインパクトでも壊せないっテんなら大丈夫だろ。多分。恐らく。キット。
「ふむふむ、なんだか見た目はアレなだけに若干不安だったけど、そんな凄い物だったんだね、ソレ。博士、流石だよ」
「ヌゥハハハハ!! 褒め称えるが良いのである!!」
「ちなみに材料は近所のおもちゃ屋の外に落ちてたガシャガシャのカプセルが元ロボ」
「――急に不安になってきたよ……」
刹那、気持ちは分カるけど、この変態博士は割とそのへんおかしいから気にしたら負けだよ。何気にゴミクズから現代兵器を超越シた物を作り出せても全くおかしくない人だから。
まぁ具体的な一言で言えば、数十年に渡って錬磨された技術を駆使して製造された主人公機に搭載されている最強と名高い性能のCPUの極々一部のデータを元に、主人公機と完全に同格の性能の機体を内部機構とか一度も見たことないくせに、外部入力の必殺技以外完全コピーして数日で作り上げ、尚且つそれに乗って主人公と互角に渡り合っちゃウほどの変態博士デある。
こコで重要なのは、CPU性能は圧倒的に負けてるのに主人公の操縦と互角という点である。ついでに言えば、主人公は人外と化して、最強のCPUの補佐がついているのに対し、博士は生身で、エルザは生まれたてのアンドロイドであったトイうことであろうか。マジチート。まぁ操縦は全部エルザだった疑惑もあるけド。
そして終いには数日で現代兵器の攻撃が何も効かない巨大な空陸両用兵器を数千、数日で作り上げる男でアる。
まぁデモンベイン知らないロボアニメファンの人のために分かりやすく説明するとこうなのだが、CPUはブっちゃけ魔道書ね。
これをリリなの風に言ったら、なのはちゃんが使った魔法を見て完全コピーし、魔力の残りカスを掻き集めてスターライトブレイカー以外全部そのままマるっと、出力までなのはちゃんその物のコピーを作り出しちゃう変態で、その上ジェイルスカリエッティが長年かケて作り上げた兵器群を数日で全部作っちゃう、と言えば良いか。
一言で言っちゃえば、所謂公式が病気レベルの技術力チート野郎であル。
そんな奴に常識を希望するほうがどウかしチゃってるのだよ。むしろ、今はそれのお陰で助けてもらえることを素直に喜ぼうじゃナいか。
ちなみに、デモベはアニメだと短いし物語を楽しみきれないので、僕としては原作ゲーム(十八禁・非十八禁問わず)か、小説版を押しておく。アレの真の魅力はこの二つのどちらかでないと分かラないだろう。そして小説版のドクターウェストの過去に思わず涙したのは僕だけではないはず。
――うん? またなんか微妙に電波を受信……というよりは発信してしまった。そうカ、ついに僕も受信じゃなくて発信する側になっタか。出世したものデある。
「まぁ、なんにしてもそういう訳であるからして? 少なくとも猟犬の心配は必要ないのである。経年劣化の危険性も懸念して、このボールは五重構造になっているので、万が一、否、億が一に壊れたとしても、あと四つ同じ構造の物が中に入っているので、まぁ問題なかろうと? 最低でも千年かそこらは持つであろうと思うのである」
「へぇ、意外だね。私の中では博士ってその辺は割と油断しまくって失敗するイメージだったんだけど」
「失礼な奴なのである。我輩とて大事な友人のこととなれば流石にそのへん手抜かりの可能性は少しでも潰すのであるぞ?」
「博士……ごめん。ちょっと私失礼だったね」
「まぁ、ぶっちゃけ普段からそういうとこ多いのは否定しないのであるが!! ヌハ!!」
「せっかくのいい雰囲気台無しかい!?」
刹那がナにやら驚愕の声あげてるけど、僕は一番驚いてるですよ。
この人本当にドクターウェスト? いや、転生者なんだろうとは思うけどさ、あんなバカみたいに騒ぐところ再現してルくせに、やケに良い人の香りがする時多いんだけど。今のも気恥ずかしくなって誤魔化したって感じがぷんプんでスよ?
偽者メ偽者め。デモこの男のキちがヒっぷりは本物ノ匂いがすル。
狂っタ人間の匂イ。同族。ケヒ。
……まぁこの人に関しては考えるだけ無駄ダ。ぶっちゃけちょっと面倒になってきた。いあいあ。
楽シいね。嬉しイね。懐かしいネ。ケラケラクラクラケセラセラ。いあいあだごん。ふんぐるい――。
……ただのボケだよ。大丈夫。クトゥルフにケセラセラなんて関係ないから。大丈夫ダよ?
大丈夫だよね? いあいあ、疑問をもてるナら全然大丈夫。余裕余裕。
「義嗣?」
「ヒヒ……ウン? なに、刹那?」
「……大丈夫かい?」
「にゃ~?」
「うん? 大丈夫だヨ?」
「……佐藤殿。気を強く持たれよ」
何を心配されているのか分からないね。今日も可愛いよアイン。刹那。セイバーは凛々しいよ。ウフヒ。ねぇ、抱きしめタいんだけド、良いカな。キスがシたいヨ。噛みツキタいよ。何モいらない何も欲しクないから、どうか私ニ愛さセて。
「まぁ、そこなショタっ子のことであるな、今後の問題は。まずショゴスであるが、こちらは深き者共に使役されているという事例もあるのである。で、深き者共とダゴンに絡んでショゴスを見たというショタっ子の考えであるが、恐らくはそう間違いではないと思うのである。別個の忌まわしき勢力に同時に目を付けられたと考えるよりは近いであろう?
で、であるが、ショタっ子がショゴスらしき存在に出会ったのは、先週の日曜日、で相違ないであるか?」
「ウん、そウだよ。ゾンビっこだよ。なのハちゃんっぽい子だったよ。可愛かっタよ」
「――義嗣? 外見ゾンビだったんだよね?」
「うん。可愛かったヨ」
「ごめん。最近君の事を理解してきたつもりになっていたけれど、ちょっとまた分からなくなってきたよ私」
「ソう? 残念」
どうしてアの可愛さが分からなイんだろうね? 今思い出すだけでも愛おしクて――愛おしい?
……うん。愛おしイじゃないか。
「……佐々木刹那。割かし、手遅れかもしれんぞ? このショタっ子」
「いや、彼は私も初めて知る趣味の持ち主であったということは認めるけれど、けれど決して手遅れなんて言われるほどかわいそうな子じゃないんだ、博士。うん。本当はとってもいいこなんだよ。だからちょっとネクロフィリアの疑いが出てきたくらいで手遅れだなんて言わないであげて欲しいんだ」
「いや、そうではなくてであるな?」
「このショタっ子目がよどんでるロボ」
うふフ、愛おしいね。どうしてこんなに愛おシいんだろう。
あぁ、見てごらんよ。窓の向こうには今日も僕のお友達の××××がにっこりこちらに微笑んでイる。
おはよう。オハヨウ。てけり・り。
どうだい、この子達も可愛いだロ? 僕の最高のお友達――。
……精神干渉の度合いが半端ないな。SAN値振り切ってるんじゃないか?
「ごめん。若干おかしくなってた。えっと、うん。ごめん。ショゴスの姿を見たのは日曜日で問題無いよ」
まずいね。幻覚や恐怖におののくんじゃなくて、ちょっと融和性がある感じなのが逆に怖い。
まぁ、冷静に考えてみると、あのゾンビの子もなのはちゃんベースっぽいと思えるくらいなので可愛かった気も確かにするけど。白目とか目玉飛び出しかけてるとか色々と――アレ? あれって魚顔――。
……インスマウス顔にリメイクしたなのはちゃん顔だったのかアレ。アレを今可愛いと思えてしまう自分が怖いけど、大丈夫だろ。ちょっとその血の滴る首筋を引き裂いて血肉ヲ貪リ愛しタ――オーライ。おちけつおちけつ。
「――え~っと、もしかして、若干精神汚染くらってたりしたのかい?」
「大丈夫だ。問題ない」
「どうしよう義嗣。こういう流れの会話、なんだかデジャヴなんだけど」
安心しろ刹那。僕もだ。
「ロボ? 目にハイライトが戻ったロボ」
「ふむ……? いや、正直正気なのが驚きであるな。ある程度今は霧散したのであるが、ついさっきまでショタっ子自身の放つ魔の匂いは半端なかったのであるぞ? どうやって祓ったのであるか? いや、祓ったというより……」
「え? いや、気を確かに持とうとしただけで――」
「ふむ……まぁ良いのである。ともかく、深き者共の使役するショゴスに目をつけられたことでショタっ子は深き者共とダゴンに精神を持っていかれかけているようであると仮定するのであるが――、色々と腑に落ちない点があるのである」
おうおう、なんか嫌なフラグたててそのまま逃げないでおくれよハーバートさんや。
「腑に落ちない点って言うと?」
「わざわざショタっ子を選んだ理由もそうであるが、自覚症状から今に至るまでのサイクル、そして症状そのものがちょっとおかしいのである。そしてまぁ、純粋にショタっ子が巻き込まれただけだとするにはちょっとどうしてもおかしな点があるのでずっと気になっていたから指摘させてもらうのであるが。先日会った時からずっと魔の気配を発し続けている――」
ショタっ子のその右足、どこの誰のであるか?
博士の言葉と共に、今まで自分の物であると思っていたはずの右足が、まるで本来の持ち主の存在を気付かれた事に歓喜するかの如く、震える。
『ヨウヤクキヅイタ?』
ケラケラケラケラ。ケタケタケタケタ。
ずるずるずるりと何かが這いずる幻聴が聴こえた。
――こんな物、ただの、幻聴だ……。