転生傍観者~リリカルな人達~【改訂版】   作:マのつくお兄さん

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20.地味な剥離と狂人博士

 放課後、刹那と一緒にスーパーで食材を買い込んで家に帰る。

 念のため、お泊り会に関しては「週末に別の友達もお泊りしに来たいって言うんだけど泊めても良い?」とお父さんに電話で確認するとあっさりOK出たので安心して、居間で刹那とセイバー、僕の三人でお茶を飲んでいたら、刹那からいきなりジュエルシード探索に随伴するように言われた。

 

「なんでまた急に?」

「いや、だって君を放っておいてまたイレギュラーに巻き込まれたら、次も助けられるかはさすがに僕も分からないよ? 時間操作魔法は肉体の再生は出来ても、死んだら意識を取り戻すかは分からないから植物人間になるだけだと思うし」

「試したの?」

「一度だけだから確定かは分からないけど、車道で轢かれてた猫で試した。外見は完璧に治ってたし、心臓も動いて脈もあって呼吸もしてたけど、揺すっても何しても寝たきりだったよ……結局衰弱死しちゃってね……」

 

 少し寂しそうに言う刹那の顔に嘘はなさそうだったので、訊くべきでは無かったかと少し焦ったが、とりあえず今はそれが本当なんだろうと認めるだけに留めて思考を続ける。

 しかし、戦場について行くのか僕……大丈夫?

 

「それはなんていうか……ごめん。でも僕がついて行って邪魔じゃない?」

「それは大丈夫。元々戦力としてはなのはちゃんとユーノくんだけでもジュエルシード対策は可能な訳だし、虎次郎と悠馬、僕は他の転生者対策にいるだけだから、よほどのことが無ければ僕が護衛についてれば大丈夫だよ」

「いや、虎次郎くんと天ヶ崎くんが強いのは分かってるんだけど、あの二人がまたお互いに戦い始めた時に割り込まれたら余剰戦力が無いと危ないんじゃない?」

 

 前回だって一時共闘はしても結局その後は戦闘になってたんだし。

 

「いや、そうそう不意打ち如きでやられる二人じゃないし、なんだかんだで他の敵対する転生者が来たらそっち優先で共闘態勢に入るのはいつものことだから大丈夫だよ。それにあの二人がやられるようなら他の誰がいても対抗出来ないからね、その時は諦めて撤退するしかないしね」

 

 あ、そうなんだ。

 ……まぁ、敵対してはいるけど、日常生活はいつも通り一緒に送ってるわけだし、そこまで深刻な敵対関係じゃないのは分かってたけど。

 

「それに元々僕がいたところで……ユニゾンしても僕に使えるのは再現度の低い投影魔術と時間操作魔法、ついでに無駄に詠唱に時間のかかって魔力も喰う粗製の無限の剣製だけだから。

 投影した武器も細かい操作が難しくて焦ると制御できない時あって、下手すると前に佐藤くんに当たりそうだった時とか、お向かいの家を壊してしまった時みたいにむしろ被害が増してしまう可能性もあるしね……」

 

 あぁ、それ気にしてたんだ……。でも確かに、素手で(身体強化はしてるぽいけど)ギルくん性能のチートキャラ相手にタイマン出来る虎次郎くんと、ギルくん性能+ランスロットとか色々他にも能力ありそうな悠馬と見比べると、刹那の攻撃方法って明らかに力不足だもんな……時間操作も乱発は出来ないらしいし。

 あ、小刻み時間停止で生皮剥いだっていう方法で首狩りとか――ごめん。ちょっとグロいし主人公のする技じゃないね。

 

「え~っと、つまり?」

「正直、僕は事後処理担当した方が効率が良いことが今回判明したんだよ……」

 

 あぁ、そんなちょっと遠い目をしないで刹那!?

 いや、でも気持ちはなんとなく分かるけどね? うん、アレだね。刹那って主人公枠なのは間違いないけど、RPGで言うと前半で仲間になる万能タイプのキャラで、唯一の補助魔法と効果の高い回復魔法が使えるから重宝する筈なんだけど、火力は低いし耐久力も低いから下手に前線に出る訳にもいかなし、補助も回復もするまでも無く前衛だけですぐに戦闘片付けちゃう上、前衛も前衛で自力回復出来るから宝の持ち腐れというかいらない子、みたいな。

 

 ……下手にモブなだけの僕よりも酷い気がする!?

 

 あ、でも自衛手段あるからなぁ。逃走するだけなら多分誰よりも有利な魔法使える訳だし。勝てないけど負けないという点ではやっぱりチートじみてるのは変わりない。

 そういう意味ではやっぱり主人公だな、刹那。なにより日常では男女問わず友達多いし。

 

「え~っと、大丈夫だよ。むしろ女の子が荒事に参加しなくて済むならよかったじゃない?」

「まぁ、それはそうなのかもしれないんだけどね……」

 

 う~ん、まぁ、色々思うところはあるんだろうなぁ。わざわざ英霊エミヤの能力を転生特典にもらうくらいだから無双したかったんだろうし。

 

「まぁまぁ、とにかく良いではござりませぬか。某も主が危険な場所に行かなくて良いのは助かりますからな」

「そだね。僕も刹那が危ない目にあうのはちょっと嫌だよ」

「二人とも……ありがとう。そうだね。うん……」

 

 今まで黙っていたセイバーが、刹那が落ち込んだので苦笑しながら割って入ってきたので僕も同意すると、刹那は苦笑いしながらも少し顔を赤くしてお礼を述べてきた。

 

 くっそ、可愛いな。

 

「にゃ~」

 

 あ、ごめんね? アインが一番可愛いよ?

 

「にゃ」

 

 危ない危ない。膝に抱っこしたままの我が愛娘に嫉妬されちゃったぜ。HAHAHA。

 

「あ、あ~っと、とにかく、そういうことだから万が一に備えて君も傍にいたほうがいいと思うんだよ。どうかな、佐藤くん」

 

 おっと、思考を戻そう。

 う~ん、傍(そば)で観(み)ると書いて傍観(ぼうかん)な訳で、僕の目指すスタイルとしてはそこな訳だし、まぁ別に僕に被害が来ないならいいんだけどさ。

 悠馬には一度釘を刺されてちゃんと相手の覚悟をバカにするみたいにただ野次馬根性で見るのはいけないことだってのは分かったから、こっちも見る機会があったとしてもちゃんとした態度で観るつもりではあるし。

 いや、結局毒にも薬にもならない単なる野次馬なのには変わりないんだけど。

 

 でもなぁ、なんかこう、巻き込まれ介入原作改変フラグの香りがぷんぷんするんだよね。やめてほしいよねそういうフラグ。

 まぁ、現状すでに巻き込まれてるし、介入するだけの能力なんて無いから大丈夫だとは思うけどね。色々な意味で悲しくなるけど。

 

「む~……」

「佐藤殿、申し訳ないが某からもそうしていただけると助かる。やはり守るべき対象が別々にいるのでは某も守りきれる自信がありませぬし、万が一佐藤殿を失うようなことになれば我々は宿無しの身になりますからな……。これこの通り、伏してお願い申し上げ奉る」

「あぁいや、分かったよ。同行するから頭上げてセイバー。そこまで言われると逆にこっちも気まずいから」

「寛大なお言葉、誠にかたじけない」

 

 う~ん、刹那のこととなると色々危ない人にしか見えないけど、普通にしてれば普通に良い人だなセイバー。それとも警戒すべき相手じゃないって分かってくれたから素を見せてくれるようになっただけとか?

 会って一日やそこらでそこまで信頼してくれたんなら嬉しい限りだけど。

 

「まぁともかく、確か日が暮れ始める頃にはジュエルシードが公園の方で――嘘!? もう発動した!?」

「はい!?」

「主!!」

「うん!! セイバー、ユニゾン!!」

 

 うわわ!? 刹那とセイバーの服が消えていく!? 紳士な僕は見ませんよ!?

 

 ……あれ、別に見ても問題無かったんじゃね? 身体男なんだし。って、いや、そういう問題じゃないな。精神的に女の子なら気を使ってあげるべきだ。

 

 まぁなんにしても、僕は見て無いからね!!

 

 

 

 

「フゥハハハハハ!! こぉの世紀の大天才、ドクタァァァハーバートぅがこのジュエルシードは頂いたのであぁぁぁぁっる!!」

「ひざまづけ愚民共ロボ~!!」

 

 まだ日がある内から、公共の施設の最たる物ともいえる公園で、騒音で周辺住民から総スカンをくらいそうなほどの音量でエレキギターをかき鳴らしている変態達がいた。

 

 ドラム缶に増加装甲つけて無理やり四本足くっつけて、ドリルアームを搭載させたような外見の不恰好な2メートルほどのロボが飛び跳ねていて、それの上で器用にバランスを保ちながらエレキギターをかき鳴らしている緑色に若干のメッシュが入った髪と、白衣のくせにやけにガタイのよさそうな身体で、背中にはギターケースを所持する高校生くらいの外見のアホ毛男。

 ちなみにエレキギターのアンプとかスピーカーはドラム缶ロボにくっついているのか、そこから大音量が出ている。

 

 その傍らには緑髪ツインテールでおでこになんか青い痣みたいなマークが二つ眉毛の上に描かれている、中学生くらいの外見なんだけどやたら胸(大きい)が強調されているピッチリな服を着て、ロングスカートみたいなのつけてるんだけど前が完全に開いてるからふとももとか丸出しの美少女。

 尚、その前が完全に開いているスカートからは真っ白なパンツが見えている。隠す気ゼロにも程がある。それともアレは所謂見せパンという奴なのだろうか? ちなみに棺桶を背負っている。

 

 うん、こんな説明を聞いて、分かる人なら分かってくれるだろうか?

 

「……デモベから来やがったよ……」

「デモベ?」

「うん。デモンベイン……って、あれ? 佐々木さん知らない?」

「うん、ごめん。僕、アニメはそこまで詳しくないから」

「あ、そうなんだ……とりあえず変態なムキムキ科学者とだけ覚えておけば良いよ」

「あぁ、デモベが何か分からなかっただけで、彼のことは知ってるから大丈夫。変人だよね」

「知り合いだったんだ……」

 

 でもさ、デモンベインってあんた。結構マニアックな作品だよ? 元エロゲ作品とはいえ一般マンガ、小説、アニメ化もされてるしフィギュアもあるくらいだから、知名度ある方ではあるけど……。

 

 ……え? スパロボにも参戦したの?

 

 あれ、今なんか電波拾った。まぁ良いや。

 

「誰もいないのに、一人であんなに騒いで恥ずかしくないのかな……」

「佐藤くん。そこは気付いても言わないでおいてあげようね……」

 

 結界はまだ張られていないのだけれど、人っ子一人いない公園で、ドラム缶の上で仁王立ちしてギターをかき鳴らし、中学生と高笑いしている白衣の高校生。痛々しいにも程がある。

 

 しかしドクターハーバートって……あれか。まさかデモベ原作のドクターウェストの更に元ネタの死体蘇生者ハーバート・ウェストから取ったのか? どんだけマニアックなんだよ。ってことは、もしかしてエルザの方も名前はエルザじゃなくてランチェスター? でもハーバートはともかく、ランチェスターは名前向きじゃないよね。完全に苗字。

 ちなみにエルザの元ネタの元ネタは1935年アメリカのユニバーサル社が製作したホラー映画のフランケンシュタインの花嫁役のイギリス人女優、エルザ・ランチェスターね。

 ドクターウェストはともかくこっちの由来はラヴクラフト関係無いから知ってる人殆どいないと思うけど。

 

 ……あれ? そういえばエルザって完全に戦闘機人扱いになるんじゃないか? Sts編までまだ10年以上あるのに出てきていいのか?

 いや、アンドロイドだから大丈夫か? サイボーグじゃないし。でも確か小説版を考えるとエルザって一応人間の人格が転写されている筈の――。

 ……いや、深く考えるのはよそう。

 

「さてさて問題はジュエルシード保存のために無敵破壊ロボ2号に収納したらコントロールが乗っ取られたことなのであるが」

「博士ったらうっかり屋さんロボ!!(ゴスッ)」

「ギャース!! エルザ!! ツッコミが強すぎるのである!? 骨が、骨が折れたのであぁぁぁる!!」

 

 うるさい……。

 しかも乗っ取られたのか、破壊ロボ…なんで乗っ取られたのに乗ったままなんだよお前さん……。

 そして骨折れたとか言ってる割にエルザと一緒に暴れるままの破壊ロボの上でバランス保ったまま乗ってるし。っていうかエルザは普通にエルザだったんだね……。

 

「え~っと……どうしよっか、佐藤くん」

「なのはちゃん達は?」

「今向かってるって。虎次郎も」

 

 う~ん……結界張れる人間いないと困るね。無人なのだけが救いだよ本当。まぁもし見られてもあのロボに違和感持つ前に、あの高笑いする変態白衣見たら逃げることを選ぶだろうから大丈夫だろうけども……。

 

「あ、無限の剣製って固有結界だからイケるんじゃない?」

「ごめん。アレのためにそこまで魔力使いたくないし、あの人たち生身のままで騒ぎながらも銃弾避けたりするし、大怪我した筈なのに次の瞬間には完全回復してたりする人達だから僕一人だと勝てるか分からない」

 

 あぁ、ギャグ補正って怖いね…。マンガとかでもギャグキャラだと明らかに致命傷でもケロッとしてたりするもんね……。

 痛い目に会うのは嫌だけど、まず死ぬようなことが無いってちょっとずるいな。僕なんか痛い目に会った上に死にかけたというのに。

 

「刹那~! ヨッシー……ヨッシー!? まぁええわ、待たせてもうたな!!」

「ごめんね刹那くん! お待たせ――って本当だ、義嗣くんなんで!? と、とりあえず ユーノくん!」

「う、うん! 封時結界、展開!!」

 

 お~、呆れてる間になのはちゃん達到着だよ。視界に移る世界の色が薄くなっていくよ。

 

「おぉう? これは結界魔法であるか? ふむ。コレはしまったのである。術式を見ておきたかったのであるが……誰が張ったのであるか?」

「博士! あそこに虎と男の娘がいるロボ!! オマケ付きだからきっとあれのどっちかロボ!!」

「おぉでかしたのであるエルザ!! お~い結界魔法の術式を教えてほしいのであ~る!! あとついでに破壊ロボを止めてほしいのであ~る!!」

「……えっと、虎次郎くん、知り合い?」

「あ~……やっかましいギターの音する思っとったら西野かいな……まった傍迷惑なやっちゃでほんま……。あー、せや、なのはちゃん、アレ一応は知り合いや」

「そうなんだ……えっと、どうする? ジュエルシードの反応はあのドラム缶「無敵破壊ロボ2号なのである!!」……から出てるみたいなんだけど」

 

 どうにも、重々しいというよりも痛々しい空気が流れる。

 まぁ、気持ちは分かるよ。アレには関わりたくないと思うよね。僕原作じゃ嫌いというよりむしろ好きなキャラだったけど、どうせ中身は転生者なんだろうし、あのテンションは若干のウザさを感じるよ。

 って、あ、フェイトと悠馬発見。フェイトちゃんは向こうの謎のオブジェの上に、悠馬はその隣でふわふわ浮いてる。アルフは……その下で二人と何か喋ってるみたいだな。

 何言ってるかまではわからんけど、と思ったら来たよ、ガトリング掃射ならぬ魔力弾掃射。フォトンランサーだっけ?

 

「ギャー!! 破壊ロボ、バリア展開なのである!!」

「そしてその後にミサイルでカウンターロボー!!」

 

 あ、本当にバリア出た。そして本当にドラム缶の上が開いてミサイル出てきた。

 そしてミサイル発射口の上にいた二人は手を繋いで互いにドラム缶の端に立って互いに反対側に身体を傾けることでミサイル発射口に落ちないようにしてる。

 ……乗っ取られてないじゃんさ!? 思いっきりお前らの指示に従ってるぞ破壊ロボ!?

 

「おぉ、本当にバリア出たのである。搭載した覚えは無いし割と冗談だったのであるが」

「ミサイルも驚きの実弾ロボ。冗談だったのにロボ」

 

 ……もう何も言うまい。

 

「え~っと……こ、虎次郎くん? どうしよっか……?」

「多分、悠馬があのドラム缶破壊しに来るやろうから、ちょっと一緒に壊してくるわ。一応知り合いっちゅうか恩人やし、あの博士も悠馬の攻撃に巻き込まれんよう助けたらんとなぁ……あぁ面倒くさいわぁ……なのはちゃんとユーノくんはフェイトちゃんの方頼むわ」

「分かったの!」

「気をつけてね、虎次郎」

「アレ冗談みたいに頑丈なだけで大した戦闘能力無かった筈やから大丈夫や。そっちこそ気ぃつけるんやで? え~っと……ほんで刹那、なんでヨッシーがおるんかは後で訊かせてもらうけども、まぁとりあえずはそのまま護衛についたってや」

「元からそのつもりだから大丈夫だよ」

 

 刹那、今更だけどちゃんと二人に伝えてなかったんだね。独断で僕を連れてきたんだね。まぁ良いけども。

 

 あ、ミサイルが王の財宝庫に飲み込まれた。

 

「ッ!! これガチでミサイルじゃねぇかこのサイコ野郎がぁぁぁ!!」

「ひぃぃぃ!! 破壊ロボ、奴を止めるのである!! 無敵破壊ロボの名に恥じぬ戦いを見せ付けてやるのである!!」

「一号は虎に三分でやられたけど、今回は何分持つか見物(みもの)ロボ」

「エェェルザアァ!? そういう不吉なこと言わないで欲しいのであるぅぅ!! あの厨二病、割と容赦無いのであるぞ!?」

「厨二病とかテメェにだけは言われたくねぇよクソ野郎!!」

「やられるのは博士だけだから知ったこっちゃ無いロボ」

「エェェルザが冷たいのであぁぁぁる!!」

 

 うわ~、なんだよもう、カオスすぎるよ。大丈夫なのこの世界。色々と収拾つくの……?




 後書き
※EX編第3話更新しました。

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