転生傍観者~リリカルな人達~【改訂版】   作:マのつくお兄さん

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19.お泊りと虎さんの修羅場

 家も直ったことだし、怪我も治ったし、アインも無事で怪我人もいない(まぁフェイトがちょっと可哀想だけれども、確かアレ手を火傷してたと思ったし。まぁ僕にはどうしようもないんだけど)ので、とりあえず万々歳です。

 そういう訳で僕は広範囲に魔法使ってちょっと体調悪そうな刹那と、ついでにユニゾン解いて出てきたセイバーにねぎらいの言葉をかけた後お茶を淹れてあげて、一緒にちゃぶ台を囲みながらぼんやりしています。

 

「ふぅ……しかし、なんだか今日はごめんね、佐藤くん。原作知識もあまりアテにしすぎない方が良いって教訓だねこれは……そのせいで佐藤くんを巻き込んでしまったようなものだし。本当に申し訳ないよ」

「そうでござるな……少々、某らに油断があったのは事実。面目次第もござらぬ、佐藤殿。主共々お守りすると誓いを立てたばかりでありながらのこの体たらく……世が世であらば切腹も致し方なし。それほどの失態でござる」

「いやいや、良いって。気にしないで? どうしても原作知識あったらそう思うのも仕方ないよ。佐々木さんもセイバーも頭上げて?」

 

 ぼんやりしてるのは僕だけだったね、ごめんなさい。

 二人して正座をしたまま頭を下げる(特にセイバーなんか土下座である)刹那達に、僕はとりあえず頭を上げるようにお願いする。

 だってさぁ、仕方ないよね、今回のは。誰が予想したよこんな展開。僕だってビックリだよ? 想定外の事態を考えて、少しでも襲撃フラグを避けようとしたのに自宅近辺で戦闘だなんて。どう考えても悪意を感じるよ。

 

「しかし……」

「うん、ちょっと今回のは……佐藤くん気付いてなかったのかもしれないけど、怪我の状態は酷いもんだったんだよ? なんならセイバーが見た視覚情報として記録されてるから見るかい? 悠馬が気絶している君に気付いて処置しておいてくれて、それでもギリギリだったくらいだからね?」

 

 え~、マジか。っていうか悠馬、気付いて処置してくれてたんだ。意外だわ。アイツならモブなんて! って放置かと思ったんだけど。

 ……ん~……本当にアイツはわからん。やっぱなんか考えて行動してるだけで、根は良い奴なんだろうってのはわかるんだけどなぁ……。

 

「一応、見てみよっかな?」

「……えっと、ごめん。先に言っておくけど、グロ耐性あるかい?」

「あ、そこは大丈夫」

「なら見せるよ? セイバー」

「承知いたした」

 

 ……あ~、こりゃ酷い。

 左肩陥没して腕の骨が突き出てて、斬りおとされたっぽい触手生物の黒い肉みたいなのが右足に落ちたのか、膝から下ミンチになってて、右腕左足も変な方向曲がってたりしてる。一番痛いと思ってた右手の甲に刺さってたガラス片が一番の軽傷だったって感じ。

 

 あ、あとなんか血溜まりが凄かった。終わり。

 

「……正直ね、よく生きていてくれてたなって感じだったよ。悠馬が言うには瓦礫の一部がおなかに突き刺さってて、肝臓とかもやられてたらしいから。

 治癒用の宝具程度じゃ傷口塞ぐだけで五体バラバラや原型とどめない物は治せいから、むしろ僕が使う時間操作による治癒の妨げになるってことで使って無いんだけど、今回は出血の量が余りにも酷かったからEX級宝具の神酒(ソーマ)使って傷口塞いでくれたらしいし」

「ほへぇ……明日お礼言っとく」

「うん、そのほうが良いね。アレ資産価値に直したらコップ一杯で何億どころか何兆とかついてもおかしくない代物だし。効用は本物には遠く及ばない駄酒だって本人は言ってたけど……」

 

 ……なんぞソレ?

 EX宝具ってそんな高値付くの?

 

「コップ一杯で何兆って……マジ?」

「マジだよ。老人なら若返りの効果まである、どんな病や怪我も治す万能の霊薬だからね。ソレ使ってアメリカの某大富豪の不治の病を治してあげた時は、代金として年三千億ずつ十年間のローンという形で払わせてるって言ってたし……。

 年収五千億以上の人らしいし、即金でも払えるとも言われたけど、死んだらその時点で支払いしなくて良いって断ったってさ。自慢げに話してたよ」

 

 神酒(ソーマ)ってなんだか知らんけども、コップ一杯で何兆かもってどういうこと? ここはひとつ日本の経済建て直しにご協力してくださらんかね悠馬。

 ……っていうか、やっこさんマジでギルくんだなぁ。財力チートとか……いや、お陰で助かった訳で文句言うのも筋違いどころか恩知らずな行為だってのはわかってるんだけど。

 

「なんていうかさ……悠馬って、改めて確認したいんだけど、IT会社の敏腕社長な中学生とかだっけ? 金銭感覚おかしいよね?」

「ごめん。君がそう言いたい気持ちは分かるんだけど、ただの小学三年生だね。顔とか身長とかもう色々とアレだけど、彼。というか、もし社長だったとしても、年収三千億とかまず有り得ないから」

「文字通り次元が違う世界だね……」

 

 僕なんて新品じゃがいも単品28円か、古い売れ残りのじゃがいも5個セット105円どっち買うかで迷うほどの貧乏症なのに。

 ちなみに悩んだ末に新品買うけどね。せっかく安売りで28円なのに安いからって古いの買うのは逆に損だし。あ、でも安売りしてない時で、家に在庫が無い時は買うけど。

 

「まぁ、この話はこのくらいにしておこう。で、まぁ悠馬のお陰でお腹の傷と体力は回復したんだけど、なんか効きが悪かったとかで完全な回復では無かったから、とりあえずソレで命の繋がった佐藤くんを、僕が君の身体全体に時間逆行魔法をかけて怪我をする前の姿に戻したって訳。だから本当は記憶も健常時の物にまで戻るから怪我した時の記憶も無くなるはずなんだけど――」

「――何故か、僕には残ってる、と?」

「うん。ちょっと不思議なんだよね。もしかしたら佐藤くんの因果や能力に何か関係があるのかもしれない。

 ……けど、そんなピンポイントな因果や能力っていうのもあるのか分からないんだけどさ。それなら能力っていうほうがしっくり来るし。

 まぁ佐藤くんが自己申告した能力しか無いのなら違うんだろうけど」

「うん。他の能力は知らない。教えてもらってないしね。しかしそうなると、もし隠れた能力があったとしたら時間に干渉する系なのかな」

「そうだね……可能性としてはあると思うけど、時間に関する能力って、今までに発動した覚えある?」

「無いね」

「となると、正直その線も薄そうだ」

「そっか~……」

 

 う~ん……なんとも面倒くさい設定なもんだなぁ、転生者。神様もまたなんでそういうしちめんどくさい設定にするのかな。普通に皆で和気藹々してきゃっきゃうふふな能力でいいじゃない。

 

「――佐藤殿。歓談中のところ申し訳無いのでござるが、そろそろ我が主を休ませてもよろしいか?」

「え? いや、別に僕は大丈夫だよセイバー」

「あ、いや、ごめんセイバー。そうだよね。あんな大規模魔法使ったんだから、そりゃ疲れてるよね。佐々木さんちょっと顔色悪いし、今日は寝たほうがいいよ?」

「むぅ……そうかい?」

「うん。ただでさえ白かった肌が、なんだか死人みたいに青白くなってる」

 

 これはこれで薄幸の美少女って感じで儚げで綺麗なんだけどさ。

 実際、よくよく見てみると目の下にはうっすらと隈が出来てるし、唇の色もいつもの柔らかそうな桜色の唇から、ちょっと色素が抜けて紫っぽい色が混じってるように見える。

 正直、顔色は最悪だ。

 

 はぁ……刹那がつい普通に話してるもんだから、こっちもなんか普通に流してたよ。ごめんね、気付けなくて。セイバー言い出してくれてありがとう。

 

「死人みたいとはまた失礼だね。本当に死人になりかけてた人が」

 

 しかし、そんな顔色ながらくすりと笑う刹那は相変わらず可愛いです。かなうことなら撫で撫でしたいです。セイバーいるから出来ないけど。

 

「指一本いかれますかな?」

「心読まれた!?」

「顔を見れば分かりますな」

「……何を考えたのか興味あるところだね?」

「佐々木さんの頭撫で撫でしたいです」

 

 訊かれたので答えますよぼかぁ。だって撫で撫でしたいじゃない。可愛いんだもの。ばいよしつぐ。

 

「――えっと、これまた唐突というか、直球と言うか……」

「佐藤殿。気持ちは良く分かる。分かるのでござるが、とりあえず指一本いきますかな」

「あ、ごめんなさい嫌ならいいんです!? 訊かれたから答えただけだし!! だって可愛いんだもんさ!!」

 

 今、若干顔色だけで言ったら貞○さんみたいだけど、本気で可愛いんだよ!! アレも中の人可愛いって有名でしょ! 刹那のほうが可愛いけど!! だが、男だ(ここ強調)。

 

「いや、別に良いんだけどね? いきなりだからびっくりしたというか……むしろ僕は君を撫でる側ではないのかという疑問もあるというか」

「いや、ごめん。その疑問はどこかに放り投げてください。男の子として泣けます」

「確かに嬉しかろうな」

「嬉し涙じゃなくて悔し涙だよぅ!!」

 

 おない歳の女の子(いや、身体は男の子だけど)に撫で撫でされるとかファーブルスコしちゃうよ!!

 ところでファー○ーって今の世代の人たちって知ってるのかな。謎の宇宙外生命体なんだけど。ペットロボもどき。一時期なんでアレが流行ったのか分からない。声も甲高くて改めて聴くとあんまり可愛くないし、顔立ちだってあんま可愛くなかったし、もふもふもなんか中が機械だからゴツゴツだったし。

 まぁ、うち三匹いたんだけどね、アレ。クリスマス仕様の一匹と普通の二匹。貧乏なのになんであんなのは買ったんだ? それとも、子供の感性で今見ればまた可愛く思えるのか?

 つか、アレ最後に見たのいつだろうか。

 

 ――まぁ、その話は今果てしなくどうでもいいんだけど。

 

「えっと……、ご、ごめんね?」

「うぐぅ。僕は……僕は負けないよ。たとえ負けても、第二第三の佐藤さんが君を討ちとることになるよ?」

「ならばまず最初の佐藤殿から叩き斬らせていただこうか?」

「あ、僕は討ち取ろうともしないんで大丈夫です。むしろ討ち取ると敵討ちが出てきますんで、殺さないのが吉ですよセイバーさんや」

「では四肢を奪って転がしておくが上策、と」

「調子乗ってすいませんしたぁ!!」

 

 冗談で言ってるのは分かるけど、刀を微妙に刃見せながら笑うのはズルいよ!! 怖いよ!!

 

「セイバー?」

「ハハハ、冗談でござるよ。まぁなんというか、今日くらいは許してしんぜよう。某のせいであのような目にあっておられますし、一度我が主の美しき顔をお守りいただきましたからな。主が許すのであれば大概のことは目を瞑ってやることにいたしましょう」

「おぉ、セイバーが優しい! セイバー大好き!!」

「ハハハ、主の1那由他分の1程度は佐藤殿のことも好きですぞ?」

「おぉ!! ちなみに那由他ってなんぞ?」

「10の60乗ですな」

「ヒャッハー桁が違いすぎて理解できないぜぇ!!」

 

 そしてなんで古臭いサムライな外見で刀のデバイスのくせしてそんな単位知ってるんだお前さん!!

 

「まぁ、例えるならば、主を猫、佐藤殿をゴキブリと解釈すれば某が如何に佐藤殿のことを好きであるかを理解していただけよう?」

「わ~い泣いていいよね!!」

「ハハハ、そんなに嬉しいか」

「悲しい涙だよこんちくせう!!」

 

 それもう殆ど好きの要素無いよ!! 完全にいらない存在だとしか思ってないよ!!

 

「首をもいでも餓死するまで死ななそうなところなどそっくりだとは思われぬか?」

「せつえも~ん!! セャイアンがいじめるよぉ~!!」

「今どうやってそれ発音したの!? あとセイバーはいい加減にしなさい」

「おっと、あまりにも反応が楽しかったもので。これは失敬」 

 

 くっそう。いつかお前の袴裏返しにして置いておいて、気付かずに穿いたところを「あれ~? セイバーそれ裏表逆だよ~? 変なの~」って言ってやる!!

 え? やることが小さい? うるさいよ! こちとら小市民なんです~! 刀持ったガチのお侍さんに正面から刃向かったり出来ないんです~!!

 

「全く……あ、そうだ佐藤くん。せっかくだから今日は一緒にお風呂入って同じ布団で寝るかい?」

 

 あ、ちょっと刹那の顔が悪い人の顔なんだけど。お前顔色悪いままそういう笑いするとヤンデレっぽく見えるよ。

 

「さて、首が一本か」

「待って!? 首はおかしい! あと首は数え方一本じゃないから! 一個だから! その上一個とられたらその場で死ぬから!!」

「おや、コレは一本とられましたな。一本と一個の間違えなだけに」

「誰も上手いと思わないからねその駄洒落!? っていうか駄洒落にすらなってないんじゃないかな!?」

 

 ダメだこいつ早くなんとかしないと!!

 

 そんな訳で、今夜は一緒にお風呂は入れませんでしたが、一緒の布団で寝ました。

 え? マジで受けたのかって? いや、だって一人って寂しいじゃない。実は前から誰かと一緒に寝るの夢だったんだよね。お父さんとは何回かあるけど、本当に数えるほどだし。

 お泊り会みたいに近くで人が寝てるっていうのとも違うじゃない。一緒の布団で寝るのって。虎次郎が泊まった時も別々の布団だったしなぁ……。

 

 そしてついでですがセイバーも一緒の布団で寝ました。三人で川の字。二人で寝かせるなどどうたらこうたらってずっと文句言うから、僕、セイバー、刹那の順で。

 あ、身長的に川って言うより小の字か。最初は刹那セイバーに抱きつかれて嫌がってけど、僕がセイバーの背中に抱きついて手を握ったらすぐに眠ったっぽかった。やっぱ疲れてたんだねぇ……。

 

「おやすみ、セイバー」

「うむ。良き夢を見られよ、佐藤殿」

 

 おやすみの言葉を告げるセイバーの表情は、やたら優しかった。

 くそぅ、普段からそういう表情してくれればこっちも助かるのに。

 

 

 

 

 朝だよ朝ですおはようですよ?

 

 う~ん、なんだろう。なんだか僕を見ている人たちの視線の温度がね、ちょっと下がってる気がする。うん、僕の思考を読んでいる君、君だよ!!

 なんだよぅ、お前らそんなに女の子がいいのかよぅ。いいじゃないか男だって。それとも男主人公なら恋愛しやがれってかい? うるへ~ちくそ~、きっと中学生くらいになったら僕だって恋愛の一つや二つするやい!!

 大体なんでたった一回出てきただけで、今までに入った人気票、刹那に迫る勢いで増えたの!? どういうこと!? ねえ!?

 

 ……ハッ、いけない。なんか変な電波入った。なんなんだろうね。もう本当。僕大丈夫? 頭。ちょっと病院いったほうがいいかもしんない。お金もったいないから行かないけど。

 

 そんな訳で、ヤッホー皆さん佐藤くんです。

 

 さて、朝は食材が少ないので冷凍食品だけでとりあえずはお昼のお弁当を作って、朝ご飯は前に作ったカレーの残りを食べました。カレー臭くないのかって? ちゃんと歯を磨いたし、お互い口臭チェックもしたから大丈夫。セイバーになんか睨まれたけど。

 で、一応セイバーともやったら、刹那の口臭チェックの時にすっごい表情がデレてた。ダメだあいつ。

 

 で、でだよ?

 

 昨日助けてもらったって言うし、悠馬にお礼を言おうと思って姿を探していたらですね? 何故かアリサちゃんとすずかちゃんに誘拐されました。

 

「さぁ、チャキチャキ答えてもらうわよ!!」

「アリサちゃん。それ多分ハキハキ」

「――ハキハキ答えてもらうわよ!!」

「流した!?」

「そ、そうだよヨッシーくん!! なんで刹那くんが君の家に泊まってるのか教えてもらうからね!!」

 

 あ、あ~。なるほど、そういうことか。

 

「えっとねぇ、僕もよくわかんないんだけどね? なんか虎次郎くんに頼まれてうちにおいてあげることになったんだけど」

「や、やっぱり……やっぱりアンタ達そういう関係だったのね……ッ!!」

「あ、アリサちゃん、まだそうと決まった訳じゃないよ!! か、確認をとらなきゃ……ッ!!」

 

 え~っと、え? ごめんね? なんの話し?

 

「ズバリ訊くわよ? き、昨日は虎次郎は泊まったのかしら?」

「え? 虎次郎なら昨日はなのはちゃんと仲良く帰ったけど」

「虎次郎あとでシメるわ……」

 

 怖ッ!? アリサちゃん怖いよ!? あとなんか虎次郎ごめん!?

 

「じゃ、じゃあ、えっと……せ、刹那くんは……?」

「う~んと、昨日一緒の布団で寝たよ」

「「アウトォォ!!」」

「えぇ!?」

 

 なにこの子達!? キャラ崩壊してない!? 落ち着いて!?

 

「ほ、ほらやっぱりすずか!! 虎次郎はセーフだったけどこの二人はアウトだったのよ!!」

「ち、違うよアリサちゃん!! まだ分からないよ!! これは、そう、これは孔明の罠なんだよ!!」

「な、なるほど!! 孔明の罠ね!! 虎次郎がよく言っていたわ。この世には人智を超えた策略、通称孔明の罠が仕掛けられていると……つまり、つまりヨッシーの存在自体が孔明の罠だったのね!?」

 

 ジャーン! ジャーン! ジャーン!! げぇっ!? 孔明!?

 

 あ、違った。コレは関羽だ。っていうか虎次郎くんおいコラ、お前は小学三年生になんてサブカルネタぶちこんでんだ。まぁ横○三国志読んでれば通じてしまうネタだから一概にただのサブカルネタとも言えないけどさ。あの漫画は小学生とかが三国志の勉強するのに丁度良いし。

 

 って、そうじゃないよ!! なんで二人ともそんな全力でキャラ崩壊に走ってるの!? そもそもアウトって、僕達をBLかなんかしてると思ってるわけ!? 違うからね!?

 

「っていうか、僕の存在が孔明の罠って何さ!?」

「「人智を超えた何かってこと(だ)よ!!」」

「僕の存在人智超えてたの!?」

 

 どちらかと言ったら、僕ほど人智超えてない存在いないよ!? 虎次郎くんも刹那も悠馬も、ついでにすずかちゃんも地味に人智超えてる存在だよね!? 僕、一応月村の家系がどんなのかくらいは知ってるんだからね!?

 

 で、二人がようやく落ち着いたのは、朝の自由時間が終わる頃だったので、お昼休みに尋問を行う、という判決をアリサ裁判長から言い渡されたので、せっかくだから当事者の刹那を捕まえて一緒に屋上で会うことになりました。

 あ、悠馬にお礼? いや、ちゃんとしたよ? 「昨日は貴重な物まで使って助けてくれたみたいでありがとう」って。そしたら「あ゛? しらねぇよ。あの女装野郎がなんかしたんだろ。つかこっちは苛々してんだよ。寄るんじゃねぇ」ってつっけんどんでした。

 でもね悠馬? 行動から考えると、その態度明らかにツンデレだよね? どうすんの? 僕ちょっとお前に萌えちゃったよ? 不良が捨て猫を拾い上げて家に連れて帰るのを見ちゃった同級生の女の子の気持ちだよ?

 

 もうね、ちょっと胸キュンしちゃった自分が憎いね。あいつ外見完全に中学生か高校生なんだけど。まぁ可愛いのに男女なんて関係ないよね。

 前世でも藤堂さんとこのケンさんが弟達に隠れてパフェ食べてるの発見しちゃって、見られてるのに気付いてあわてて「よ、よぅ藤原のガキじゃねぇか。あ、コレはアレだ。さっきまで居た俺のツレの女がだな?」とか必死に弁明しているのを見た時に近いね。

 あ、可哀想だからその場は「へ~、あ、でもそれ勿体無いですよね? 丁度自分もパフェ食べたかったんですけど、一人じゃ恥ずかしいので一緒に食べてもらっていいです?」って言って相席で一緒にパフェ食べたよ。恥ずかしそうにしながらもパフェを口に運んだ時のちょっとデレってした顔可愛かったよケンさん。ついでに僕の分のパフェ代も払ってくれた男前でした。

 

 ……うん? ごめん。全く関係なかったね。でもたまに前世思い出すと結構懐かしい人多いな。元気かなぁ美夜(みや)ちゃんとか加奈子(かなこ)さんとか。

 あ、この二人ともオカマバーの人ね。ちゃん付けかさん付けじゃないと怒るの。加奈子さんがママさん。たまに誘われてお店でタダ酒やらタダ飯ゴチになりました。

 まぁお酒作るのは良いけど飲むのは正直得意じゃないから、何故かママさんに僕がお酒作ったりして、そのまま流れで他のお客さんのお酒も僕が入れたりしてどっちが店の従業員なんだか分からなかったけど。

 うん、そんな感じでお酒作ったり食べ物よそったり、カラオケのデュエットに巻き込まれたりしてたなぁ、懐かしい。元気かな~。でも会う度に僕を店のホステスに雇おうとするのは辞めてほしいよな~。僕は別にそういう趣味はないのに。

 給料良いって言うからバイトで一ヶ月ほどやったらその後何度か指名あったらしくて勧誘しつこかったんだよなぁ。いや、まぁどっちにしろあの世界じゃもう僕死んでるんだけどさ。

 

 ……って、いやいや、だから今まったく関係ないよ。ダメだな。どうも一度思い出すと連鎖的に思い出していくな。ちょっと記憶に蓋しとこう。

 

 え~っと? あ、そうそう。アリサちゃん達に呼び出されて、お弁当持ったまま刹那と一緒に屋上に来たんだった。

 

「――で、なんで刹那まで一緒なわけ? ヨッシー?」

 

 どうして仁王立ちする必要があるのか分からないけれど、というかこれは仁王立ちというよりガ○ナ立ちとか呼ばれていたポーズとも言える気もするけれど、いや、ガ○ナ立ち=仁王立ちだからどっちでも良いか。どっちでも良いな。

 え~、仁王立ちしていたアリサちゃんににらまれました。

 

「へ? ダメだった?」

「おや? 僕はお邪魔虫だったかい? アリサちゃん」

「あ、いやそういうわけじゃないんだけど……」

「う、うんうん。全然そんなことないよ刹那くん。大歓迎だよ?」

 

 う~、この扱いの違い。モブと主人公枠の違いが分かるなぁ……もし万が一僕にアニメとかで立ち位置与えられるとしても、三枚目な奴で好きだったヒロインを主人公にとられちゃって友情に亀裂が入った、昔の同級生みたいな立ち位置なんだろうなぁ。この扱いの差はそれを如実に表しているよ。

 

「ヒャッホー!! 最高やなこの卵焼き!! 流石はマリちゃんや! 卵焼き焼かせたらクラスで並ぶもんはおらんで!!」

「そ、そうかな? ありがとう虎次郎くん……」

 

 そして扱いの違いに心中涙を流している僕のことなんて関係無く、今日も今日とて虎次郎くんは他のグループの女子からお弁当のおかず恵んでもらってるよ……。くっそー、リア充め。

 ほら、見てみなよ。アリサちゃんと刹那の冷たいんだけど悲しみの混ざった眼差し。お前のこと見てるよ? 虎次郎くん。

 

「ヨッシー、あの虎次郎(バカ)も連れてきて」

「イエスマム!!」

 

 ベストタイミングで出たアリサちゃんの命令に、これ幸いと走り出す僕。

 

 いいかい? コレは決して、なんか虎次郎だけ健やかに青春しているのがねたましく思っているからじゃないんだ。ただ、ただアリサちゃんの恋路を応援しようと思っているだけの事なんだ。本当だよ?

 ただ、ほんのちょっと、ほんのちょっとね? お前さんはちょっと修羅場を体験すべきだよ、って思ったのは否定しないけどね?

 

 で、アリサちゃんが頬を赤く染めながら虎次郎くんを呼んでいたと言って連れ出してきた。嘘は言ってないよ。怒りなのかなんなのかでちょっと顔赤くなってたから。

 

「虎次郎。ちょっとそこに正座なさい」

「え? あれ? ヨッシー。アリサなんで怒っとるんや? 頬を赤く染めとるんやなかったんか?」

「え? ちゃんと頬染めてるじゃない。――怒りで」

「――自由への逃走!!」

「刹那!! 確保!!」

「任せて!!」

「ギャー!! 後生や!! 後生やから逃がしてくれや刹那!! ワイはまだ、ワイはまだハーレムを作ってないんやぁぁぁ!!」

「「「「その願望はそろそろ諦めな(さい)よ」」」」

 

 思わず僕まで口を揃えて、四人でツッコミを入れるのであった。

 いや、要員の全員が許容してるなら良いけど、虎次郎くんの現在の正妻たるアリサちゃんが嫌がってるし、ねぇ?

 

 

 

 

「――と、いうわけなんや」

「虎次郎、バリカンって刃が悪いと相当痛いらしいんだけど、ちょっと剃ってみる?」

「まだワイ生えとらんで?」

「は? 髪の毛ふさふさじゃない。なに言ってんの?」

「……なんやろ、なんか、すまん」

「「うん、今のは虎次郎くんが最低だった」」

 

 刹那の件の事情を説明しろと言われて、「――と、いうわけなんや」の一言で済ませようとした虎次郎が頭刈るぞって脅されたのに最低な返しをなさりました。

 小学三年生の女子になんつう下ネタを振るんだ、と僕と刹那が虎次郎を見る目が若干冷たくなる。というか僕はともかく刹那も分かったのだね、今の意味。

 

「ぐっ……そこに関しては否定できんわ……ついついヨッシーや刹那に対するのと同じようなボケを……」

「そう、芸人魂が騒いだっていうなら、ここはリアクション芸人として髪の毛刈られたいってことね?」

「刹那のおうちの事情や!!」

 

 どこからか現れていた老執事さんが、そっとバリカンを差し出して、それが当然であるかのようにアリサちゃんが受け取ると正座する虎次郎くんの頭に添えたけど、虎次郎くんがちゃんと言うつもりになったみたいなので丸刈りは免れた。

 なんかアリサちゃん舌打ちした気がしたけど気のせいだよね?

 

「そうなの? 刹那くん」

「あ、あぁ……うん。実はね。ちょっと……」

「何かあったの? 家出なんてダメよ? ちゃんと家の人には言ってあるの?」

「あ、いや……その、えっと……」

「おう、言うてあるにきまっとるやんか。ちゅうか言うてなかったら今頃捜索願出されとるやろうし、刹那が学校来た時点で呼び出しくらっとるやろ?」

「あぁ、それもそうね」

 

 何故か口ごもった刹那をフォローするように虎次郎くんが割り込んできたが、なにか隠すようなことがあるんだろうか。魔法関連にしたってもうちょっと不審に思われないような言い回しとか考えておかなかったのかな。

 

「で? なんでヨッシーの家なの?」

「いや、男の子同士やしな? 女の子の家泊まる訳にもいかないやんか」

 

 ちょっと困ったように笑う虎次郎くん。多分、それだけじゃなくて僕が転生者だって分かったから、事情わかってくれると思ったからかな?

 いや、でも転生者だってこっちが肯定したのは頼まれた後だったな。じゃあなんで? 本当に男同士だから?

 でも刹那も外見は美少女だし、万が一とか考えなかったのかな。下手に思考が大人っぽいせいで僕も何やらかすか分かったもんじゃないと思うんだけど。――あぁいや、なるほど、それら全部含めて、信頼してくれてるってことか。ちょっと嬉しいじゃないか。

 

「刹那が襲われたらどうすんのよ!!」

「「いや、佐藤くん(ヨッシー)へたれだ(や)し大丈夫だ(や)と」」

 

 へたれの方向で信頼してもらえてたんだね!! 嬉しい!! 泣けるね!! ちょっと泣いてきていいかな!!

 ちくせう虎次郎くんェ……刹那はまぁ許す。当事者だし。

 

「あぁ……まぁ確かに」

「待って!? そもそも小学校三年生の頭でそういう思考が浮かんでくる君達はちょっとおかしい!!」

「「「「え? どこが(や)?」」」」

「自覚が無いって怖い――ッ!!」

 

 何気にすずかちゃんまで首を傾げてるのがまた……ッ!! おのれすずかちゃん可愛いよすずかちゃん!! っていうか、どうでも良いけど個人的には、美少女度で言うとなのはちゃんや刹那よりもアリサちゃんとすずかちゃんの二人の外見のレベルの方が高いと思うんだよね。フェイトも凛々しい感じに顔立ちも整ってるからこの三強。

 なのはちゃんは小動物系の可愛さ? なんか、普通に可愛いんだけど、特筆して誰もが振り返る美少女って感じではない。可愛いのは違いないんだけどね?

 たまに見せる大人びた表情とかで急に女性らしく見える瞬間とかもあるから油断できないけど。なんだろうね、三強としてあげた三人に比べると、一般人でも頑張れば振り返ってもらえそう、と思える美少女って感じ?

 三強の方は大富豪とかのお嫁さんに貰われていきそうな感じで一般人からは畏れ多くて自分から近づくなんて出来ない気がする。

 

 すずかちゃんも小動物っぽさはあるんだけど、どこか大人っぽい色気みたいなものが顔立ちにも出ているというか……。

 

 ちなみにはやてちゃんはなのはちゃん同様だね。そんでもって僕の中で最近たぬきさんに変換されてきていてとても可愛いです。

 たぬき耳とたぬき尻尾少女ってアリだと思う。リアルたぬきさんって可愛いんだよ。間抜けだし。僕の中では、虎次郎と並んでいると義嗣フィルターを介することによってキツネ耳と尻尾を生やした虎次郎と、たぬき耳と尻尾を生やしたはやてちゃんが二人で悪巧みして「ニシシ」とか笑ってるのがとてもファンシーに見えます。

 

 って、また思考が飛んだ!

 

「ん~……そう、そうよ。折角だからすずかの家にもお泊りしたら?」

「え? わ、私の家!?」

 

 そうよ、これは名案ね! と拳を握り締めるアリサちゃんだけど、すずかちゃんは滅茶苦茶うろたえてるよ? アリサちゃん気付いてあげて?

 

「いや、ごめんね? 流石に女の人しかいないところっていうのはちょっと息が詰まりそうかな」

 

 そして刹那はそういうの関係無しに苦笑しながら返す。

 あ~、刹那も大変だねぇ。基本、転生者組以外の人相手には自分のこと男の子として接してるもんなぁ……。いや、今回の場合は、単純に断る体面的な理由で言ったのか。

 

「そ、そうなんだ……うん。私の家も、ちょっと誰かを泊めるのは難しいかもしれないし、大丈夫だよ。気にしないで? ごめんね?」

「あれ? そうなの? ……っていうか、よく考えたら私もすずかのおうちにお泊りってしたことなかったわね」

「まぁまぁ。とりあえず刹那もヨッシーも同意の上でのお泊りなんやし、ワイらが首突っ込む問題や無いやろ? あ、せやヨッシー。今週の土曜あたりにヨッシーの家にお泊りとかってできへん? せっかくやからアリサやすずにゃん、なのはちゃんにはやても誘ってお泊り会。ヨッシーの家それなりに広かったやろ?」

「おぉ? なんかいきなりだね。いや、別に人数的にはそこまでの問題は無いと思うけど。一般的な二階建ての家だから子供7~8人くらいなら問題無く泊まれるとは思うし」

 

 書斎はまずいし、お父さんの寝室も何が隠してあるか分からないから下手に入れられないけど、居間はちゃぶ台どかせば子供8人分程度の布団を敷けるスペースはあるし、僕の部屋もある。それと普段使ってないけど掃除はしてある客室があるから、そこに来客用の布団もあるし宿泊スペースに問題は無いはずだ。

 セイバーには僕の部屋で寝てもらえば良いだろう。いや、でも多分僕の部屋来るよな。お泊りとかになると。

 そうなるとセイバーが僕の部屋はマズいか。アリサちゃんとすずかちゃんがセイバーのこと知ってるか分からないし、となると、絶対に勝手に物をいじらないようにお願いして、お父さんの寝室使ってもらう?

 まぁセイバーも男なんだし、もし別の禁断(ろり)の書が見つかってもきっと同好の士としてお父さんを認識するだけのことだろう。

 

 うむ。問題無いな。ただ食費が問題だ。そこは各員に食材を持ち込んでもらうか。人数多いんだし皆でカレーでも作れば良いだろう。

 あ、お菓子作りとかやっても楽しいかも。折角女の子多いんだし。僕カップケーキとかホットケーキくらいなら作れるよ!!

 

「……なんか、ヨッシーすごいニヤニヤしてるけど、そんなに嬉しかったの? お泊り言い出されたの」

「うん。僕も一緒にお菓子作りに参加するからね!!」

「え、なんの話!?」

「あ、お菓子作りかぁ……うん、良いかもね。せっかく女の子が一杯集まるんだし、男の子達に作ってあげるのも」

「でしょ!!」

「え、あ、いや、えっと、そういうお菓子作りとかお料理は私……」

「お? なんやバーニング、バーニングはやっぱりバーニングなだけに丸焦げ料理しか作れないんか?」

「やったろうじゃないのよ!! 分かったわ!! じゃあ今週の土曜ね!! 絶対だからね!! 見てなさいよ虎次郎!! アンタが泣いてこの私に土下座して謝るのが今から目に見えるようだわ!!」

「アリサちゃんが燃えてる!! まさにバーニングだね!!」

「あ゛? なんか言った? ヨッシー」

「なにも言ってないよ!! じゃあそういうことで決定!!」

「え、えっと……う、うん。いきなり決まったから私もちょっとびっくりだけど、大丈夫だと思う。よろしくね?」

「同じくいきなりの展開すぎてビックリだけど、居候の僕が何か言える立場じゃないしね。良いと思う」

「ニシシ。ほならワイはその時に備えて手品の練習でもしとくわ」

「じゃあ土曜何時からにする?」

 

 あ~、なんか良いねぇこういうの。そうだよ、こういう和気藹々友情物こそが小学生の本分だよ。そうは思わないかい? みんな。

 

 まぁラブコメも大好物なんだけどね、僕も!!

 見てる分にはだけども。ラッキースケベでビンタされるとか僕はごめんです。




 後書き
※佐藤嗣深が主人公のEX編、開始しました。
http://novel.syosetu.org/12508/

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