転生傍観者~リリカルな人達~【改訂版】 作:マのつくお兄さん
原作の話しとかどうでもいいよ、どうせ僕絡まないんだし。
大体だね、一般ピーポーで戦闘能力皆無な僕が戦場を覗きに行ったら、死ぬしかないじゃない? いや、非殺傷だけども、もう悠馬にヌッコロ宣言されちゃったしさ……。
原作組めっちゃ可愛いから眺めてるのすっごい目の保養になるんだけどね!!
まぁ僕の意思なんて関係なく物語は進むんだろうけど!!
僕、もうわざわざ戦場に首を突っ込んだりしないと決めたよ!!
そんなわけで、僕は今の時間を楽しむ!!
ということでどうも佐藤です。
最近とみに思うんだけど、僕は一体誰に向かって話しかけているんだろうか。もしかしてこの世界に僕を送った神様的存在が僕の思考覗いてる? ヤッホー神様。元気? 僕超元気。とりあえず平和です。
さて、今はお風呂入ろうかというところなんだけど、お約束だからここまでの時間の流れをダイジェストにお送りしちゃうぞ☆
……ふぅ、僕脳内でこんなにテンパってどうするんだろうね。他人にこのノリで話しかけたら気持ち悪がられるのは確定とはいえ、脳内で一人バカ騒ぎしてる僕って……あぁ、なんでもない。なんでもないよ。ごめんね、ちょっと僕今色々情緒不安定だから。やっぱ悠馬からのガチ脅しが地味に効いてるみたい。あ、ダイジェストね、はいはい。
昼食、それは憂鬱な時間の始まり。朝の繰り返しでしかない。
そう思っていた時期が僕にもありました! 今ではなのはちゃんとはやてちゃんが自分達で僕を挟み込む形に席移動を提案してくれたお陰で、二人とお話して楽しくご飯できました!
聖詳大学付属小学校三年生、佐藤義嗣(8)
……えっと、まぁ、僕の席が虎次郎くんの隣から、なのはちゃんとはやてちゃんの間に移動したっていうだけの話なんだけどね。
丁度皆の真ん中の位置。朝方三人でお散歩したお陰で気にかけてくれたらしい。こういうフラグなら僕は大歓迎です。ちなみにアリサちゃんは口には出さなかったけど、僕が移動することで虎次郎くんが独占できるからかなのかとても良い笑顔で僕に「良かったね」って言ってくれたよ。
うん、アリサちゃんも頑張ってね、と心の中で思いながら「ありがとう」って返しておいた。
で、まぁなのはちゃんとはやてちゃんに囲まれた訳ですよ。もうね、この時点で「僕って実は主人公なんじゃないだろうか」という妄想が一瞬浮かんでしまったのは、責められることではないよね。
だって原作主人公の内二人に挟まれてるんだよ? 僕なにかフラグを建ててしまったのではないかと思ってしまうのも仕方の無いことだよね。
まぁ、普通にお話しただけなんだけどね。アインとユーノくんとリーンちゃんが周囲にいることのほうが、僕には二人に挟まれた事実より嬉しかったし。
だってね? アインは僕の膝の上で「コレ食べたいお」って言わんばかりに僕とお膳の上の刺身を交互に見ながら耳をピクピクさせて、尻尾をピンピン立たせているわけですよ。もうね、なにこの天使って状態。本当は猫用の餌以外は与えない方が良いんだろうけど、最後の一枚だけあげておいた。贅沢覚えたらどうしようかしら。
あとね、僕の肩にユーノくんが乗って、昨日の夕食とは違う具材の茶碗蒸し冷やした奴をなのはちゃんにスプーンで差し出されてちゅるちゅる吸ったりしているわけですよ。もうね、かわいらしいのなんのって。なのはちゃんが僕の肩にちょっと茶碗蒸しこぼして慌てて謝って来たけど、別に熱い奴じゃないしユーノくんのラブリーさにもうメロメロなわけですよ。だから僕も「大丈夫。熱くないし、ユーノくん貸してもらってるし気にしないで」とにこやかに返しておいたよ。
それでも「ごめんね?」って謝るなのはちゃんマジ天使。でもユーノくんはもっと天使。尻尾がね、僕の頬にふわふわふさふさ当たるの。くすぐったいんだけどね、もうね、それが最高なの。
で、でだよ? なんとね、リーンちゃんが僕の隣でぺたりと伏せてるの。分かる? 隣にはレトリバーさんが伏せてるの。わんこさんだよ? わんこ派にゃんこ派の二大派閥プラスアルファ相手に、僕は今盛大に喧嘩を売っているのではないかと思える動物天国。
ちなみに最初ははやてちゃんの後ろに騎士のようにビシッと控えていたリーンちゃんだったんだけど、追加のお料理持ってくる仲居さんの邪魔になってたので僕とはやてちゃんの間に来た訳である。
見てごらん? リーンちゃんが尻尾を左右にのんびりもふもふ動かしているね? さっきから僕の腰のところにそれが当たっているね?
非常に素晴らしいよね!! わんこのしっぽ!! ふっさふさやぞ!! ちなみににゃんこの尻尾は触ると怒るから、アインのは触らないようにしてるんだけどね!
あ、でもアインって尻尾の付け根の方撫でてあげると喜んでるのか尻尾を立ててすりすりしてくるのでもふもふついでに撫でたりしてるんだけどね。アレって大丈夫なんだろうか。まぁ嫌がってなかったし大丈夫か。
そして、はやてちゃんとも如何にリーンちゃんが可愛いか、如何にアインが可愛いかで議論して、お互いに「わんこもにゃんこも可愛い」という結論で落ち着いた。最初からお互いにどっちもべた褒めだったから議論にすらなってなかったけど。
「アインちゃんもリーンちゃんもいいけど、ユーノくんも可愛いと思うの!!」
「「異議なし」」
『いや、僕としては大いに異議有りなんだけど……』
結論出る頃になのはちゃんが割り込んできたけど、その点については僕も激しく同意しちゃうよね。ユーノくんには悪いけど。
そしてその後は露骨にカップルで分かれたりしないで皆で動くことになり、卓球台があると聴いたので虎次郎くんとやろうと思ったら(卓球は僕が前世で唯一得意だったスポーツなのだ)身長的に無理があってそれを仲居さんに苦笑しながら言われて悲しくなってたら皆に慰められたり、外に出かけて童心に帰り(っていうかリアルでガキンチョだけど、僕達)かくれんぼをしたら虎次郎くんが鬼の時以外僕を見つけられる人がいなかったり(ずっと隠れながら待ってるの切なかった)、すずかちゃんと刹那が朝発見したというお花畑を皆で見に行ったりして、夕方となった。
え? そこもっと語れよって? そこかなり萌えポイント多かったんじゃなかったのかって?
あぁ、アインとユーノくんの二人もとい二匹を延々ともふもふして、たまに虎次郎くんや刹那、はやてちゃんと会話したくらいだったけど、巻きで行けって声がどこからか聴こえてくるんだけど、どっちに従うべきなんだろうか……。
まぁ、今はとりあえず巻きの声に従っておこう。僕も全員の会話内容をしっかり思い出して描写できるか自信ないし。
――だから誰に向かって僕は喋っているのだろうか。脳内とはいえ。
いや、まぁ脳内の聴衆に向かって語りかけているのは事実なのだけれどね。
実に痛々しいな、僕。
夕食はお昼の時とほぼ同じ状況で、とりあえず天国だったということだけ言っておく。もうね……もうね、僕今日は一生の思い出になると思う。四六時中動物に囲まれてご飯食べたという思い出に。あとついでに原作主人公の二人に挟まれた記憶として。
とりあえずリーンちゃんの尻尾は魅惑の尻尾。ユーノくんの尻尾は癒しの尻尾。アインの尻尾は元気の出る尻尾。
あとね、なんかなのはちゃんもはやてちゃんも妙に気を使ってくれるんだよね。かくれんぼの時に虎次郎くん以外見つけてくれなかったことで涙目だったのを気にしてくれたみたいなんだけど、僕はわんにゃんフェレット軍団に癒されたので大丈夫です。
で、ようやくお風呂に入る今に至る、と。
ちなみに今回はアインはお部屋でおねむ中。ちょっと残念だけど、まぁ今回は友人二人と共に入るわけで、寂しくはないのですよ。
……とか油断していたのが悪かったのだろう。全部脱いで腰にタオルを巻きつけた僕の背後からは忍び寄る虎次郎くんの声が。
「おうおう、なんやヨッシー、タオルで隠すなんてそない女の子みたいなことしたらあかんで! 男なら堂々と晒すんや!」
予想通りと言うべきか、ニヤニヤした虎次郎くんは背後から僕が腰に巻いていたタオルを、思いっきりめくりあげてきやがりましたよ! っていうか何すんだよ!?
思わず股間を押さえる僕。
「ギャー! 虎次郎くんやめろ! 僕は人と入る時はタオルつける派なんだ!!」
「虎次郎、佐藤くん本気で嫌っぽいからやめてあげなよ」
「いや、コレは嫌よ嫌よも好きのうちや。大丈夫。任せとき!」
「何いってんだアホー! やーめーろーよー!!」
「ごめん、佐藤くん泣いてるようにしか見えないんだけど。そして何を任せるのかさっぱりわからないよ……あと、正直僕も見たくないんだけど……」
「あぁ、そか? ……いやいや、ダメやって、そんなんではダメやって刹那。男の子なんやからコレからはこういう機会絶対増えるで? 今のうちに慣れとかな。少なくとも、ワイらの見て気持ち悪いとは思わへんやろ?」
「……まぁ、そう……だけど」
「せやから刹那もそんな隠さへんでええんよ? ちゅうか、バスタオルで胸元から隠すのやめへん? 正直女の子にしか見えへんからなんとも反応に困るんやけど」
「いや、これはなんていうか、ごめん。僕のアイデンティティーに関わることだから」
「さよか……まぁ、ちぃっとずつ慣れていくしかあらへんのかな……いやでも……って、あれ? ヨッシーどないしたんや?」
「あ~……泣いてるね」
「うぐぅ……もう……もうお婿にいけないよ僕……」
畜生、刹那と会話しながら僕のタオルを器用に解くなよ。おかげで僕尻丸出し状態で友人が半分以上掴んでるタオルで股間を頑張って隠してるなんか可哀想な子だよ……。
泣くよ? っていうか泣いてるよ? こんちくせう。
「あ~……いや、すまんなヨッシー。そこまで嫌なようには見えへんかったっちゅうか。よもや男同士で見せるのをそこまで嫌がるとは思わへんかったっちゅうか」
「うぅ……一応、精神的には女の子な人がいるわけで、僕だって恥じらいくらい持つよぅ」
「……嬉しいこと言ってくれるね、佐藤くん」
「あ~もうヨッシーの阿呆。刹那とのフラグ建てたいんやったらえぇけど、ワイがせっかく刹那を一人前の男にしてやろうと画策しとるんに、そういうこと言ったらあかんで?」
「虎次郎くん、それは地味に僕に対する嫌がらせにしか感じないんだけど?」
「前から言っとるやろ。刹那はもう男なんや、自覚しぃや? せやないと大人になってから大変やで?」
「……むぅ」
なんか二人で言い合ってるけど、いい加減タオルから手を離してくれないかな虎次郎くん。僕そこの鏡台見たんだけど、なんだかすっごい不憫な子が写ってたから。当然それ僕のことだから。なんか一瞬誰だコレって思うくらいショタ臭のする半泣きっ子がいたから。
「あの……虎次郎くん、そろそろ……そろそろタオルから手を離してくれない?」
「あぁ、すまんかったな。まぁ……刹那に比べたらヨッシーはマシなほうやしええんやけど」
「いいんだったら初めから剥ぎ取ろうとしないでよ!?」
返して!? 今の一連のやり取りで傷ついて欠けて一部どっかいっちゃった僕のガラスのハートの欠片を返して!?
「そうだよ虎次郎。個人の趣向に口出しするのはよくないよ」
「刹那はダメや。えぇ子やから脱ぐんや」
「……僕を脱がして、どうするつもり……?」
おうふ、刹那さんったら涙目上目遣いなんてどこで覚えてきたのかしら。流石は元女の子。男の子のツボを心得ていらっしゃる。
「ぐふっ……そ、そない涙目の上目遣いはズルいで!? 不覚にもドキッと……あいや、えぇから脱げっちゅうんや」
しかし、一瞬虎次郎くんをたじろがせることに成功したものの、すぐに立ち直って命令する虎次郎くん。
っていうか、僕にやったみたいに無理やり脱がしたりしないんだね。男女差別だよ男女差別。どっちも身体的な意味では男な上に虎次郎くんはその事実を分からせようとしてるのは間違いないんだけど、でも刹那には実力行使に出ないならやっぱり男女差別と言わざるを得ないよ!
「仕方ないね。じゃあ脱いだら虎次郎の背中で身体を隠すけどいいよね?」
「ダメや。男にくっつかれるとかワイに何の得があんねん」
「……いけずだね」
あ~、平行線だね~。このぶつかり合い。
「まぁいいじゃない虎次郎くん。佐々木さんだって嫌がってるんだし、虎次郎くんが譲歩しないなら佐々木さんだって譲歩できないと思うよ?」
「そら……せやろうけどなぁ……どうせ中では脱ぐんやで? 身体洗うんやし」
「あ~……それはそうだけど、それなら余計に今着てることくらい見逃してあげなよ」
「……はぁぁ~。ヨッシーは刹那に甘すぎるで? 男の身体で自分を女やって思って生きていくんは絶対苦労するんやぞ? 早めに矯正したらんと刹那のためにもならへんし、なんちゅうか……色々可哀想な子もおるやん」
「あ~……あ~……うん……なるほど……」
虎次郎くんがやけに刹那を男だって言う理由がちょっと分かった。すずかちゃんね? はいはい。確かに刹那が「自分は女だ」ってずっと思ってたらすずかちゃんの恋実らないもんね。
……でも、それはちょっとおせっかいにすぎるんでない?
「……ん~……でも、それはそれで仕方ないんじゃない? っていうか、最近は性転換手術とかも結構安全になってるらしいし、早いうちにやれば子供は出来ない身体ではあるけど、殆ど女の子の身体にはなれるみたいだし、刹那の意思に任せれば?」
「実に良いことを言うね佐藤くん! そう、その通りだよ虎次郎くん!! だから僕は女の子で全然問題がないんだよ!!」
「いや……せやけどな? えっと、アレやで? 性転換手術なんてなんぼかかる思うとるんや? 早いうちにってヨッシー言うとるけど、この歳でそない金あるわけないで? 家の人かて……承知せぇへんな。絶対に。あの腐れジジィ」
あれ、なんか最初は焦りながらも説得しようって感じに喋ってたのに、最後なんかガチでぞくっと来たんだけど。悠馬に脅された時ばりになんか来たんだけど。やめてね? あんまり変なフラグたてないでね?
「いいよ。家の人なんて元からあてにしてないし、僕は手術代くらい自力で貯めるから。最悪借金してでもする。そうするよ」
「借金ちゅうんはそない気楽に決められる問題やないんやで、刹那……」
あ、あれぇ……なんか……なんか、暗いんだけど……おかしいな。僕男三人でわいわいお風呂でおしゃべりできる感じだと思ってたんだけど……。
「え、えぇっと……と、とりあえずお風呂入ろう? ね?」
「ん……そうだね。行こう、虎次郎、佐藤くん」
「はぁ……わかったわ。確かにこうしててもしゃあないしな。ホンマに風邪ひいたりしたら笑い話にもならへんし、行こか」
あ~良かった。やっと空気が柔らかくなった。
うぅ……僕ああいうシリアスとまではいかなくてもなんか暗いというか緊迫した空気というか、そういうの息が詰まって苦手だからやめてよね……。
『義嗣! 助けて! 可及的速やかに、でも事前に僕を連れ出す口実を考えた上で助けて!』
と考えてたら、あっさり登場ですよ! エアーブレイカーユーノくんが!
……そういえば忘れてたよ。ごめん、相棒。今助けに行くからね!
「呼ばれとるで、ヨッシー」
「うん、わかってるよ! 待っててねユーノくん! 今浴衣着たら行くからね!」
「佐藤くん……」
なんか虎次郎くんと刹那の微妙な視線を感じるけれど、気にしない! 我が相棒(ゆーのくん)の危機なんだぜ! 具体的には貞操の、というか貞操観念の。
そういう訳で風呂上りに着るつもりで持ってきた新しい浴衣をパパッと着て、いざ男湯を出る。そして目指す目標はあやうく男子禁制の聖域(サンクチュアリ)に連れ去られる寸前!!
「ちょ、まって! ユーノくん今回も預かっていいかな!」
「「「「だめ(なの)」」」」
おうふ!? なのはちゃんとアリサちゃんと美由希さんと桃子の四人で声を揃えてお答えなされた!
ちなみに女湯に今まさに入ろうとしていたのは、女性陣フルメンバーである。リーンちゃん含む。やべぇちょっとリーンちゃんとお風呂入れるなら僕も女湯入りたいとか思えてしまう。
って、今はそんな問題じゃないね! ユーノくん! ユーノくんを助けるんだ!
『義嗣! お願いだよ! 頼んだよ!!』
任せてユーノくん!
「え、えっと、ほら、僕寂しいからユーノくんと入りたいなって!」
「何言ってんのよ。アンタには昨日貸してあげたし、今から三人で入るんでしょ? 今日くらいしかユーノとお風呂入る機会無いんだからダーメ」
「む、むむむぅ」
『頑張って! がんばって義嗣! 僕の色々な沽券とか全部今君の手腕にかかってるから!』
オッケー! がんばる!!
「異議あり! ユーノくんは男の子なんだから僕達男の子と入るべきだと思います!!」
『そうだよその通りだよ! なのはもそういうことだから逃がしてくれないかな?』
『……もしかしてユーノくん、私のこと嫌いになったの……?』
『えぇ!? ち、違うよなのは!? そんなことはないよ!!』
あ、しまった。ユーノくんこれ押し切られるフラグだ。僕ががんばんないと。
「残念でした。それを言ったら昨日アンタがアインちゃんを連れてお風呂に入ったのはどうしてかしら? アインちゃんは女の子じゃなかったのかしらね?」
「ぐぬぅっ」
おのれアリサちゃん。手ごわいな!
『あの、アレだよなのは! むしろ好きだからこそ、男の子として僕は女の子の着替えとか裸とか、そういうのをこういう形で見るのはどうかと思うんだ!』
おぉ、意外と押し切られなかったなユーノくん!! そうだ、その通りだよ! 僕達にはまだ早いよ! っていうか、男の子としての自覚が芽生えているときの男の子を女湯に連れてっちゃダメだよ! 性の目覚めを起こして将来的にエロガッパさんになるよ!
『え? 着替えとかならいっつもユーノくんの前でしてたし、いつも家では一緒にお風呂入ったりしてるじゃない』
『あ、いや、えっと、それはその……』
裁判長、判決をどうぞ。
有罪(ギルティ)。
ですよね~。
「残念だ……残念だが僕はここまでのようだよユーノくん! なのはちゃんと……なのはちゃんとお幸せにね……ッ!!」
『ちょ、義嗣!! 義嗣ーー!! 僕を見捨てないでぇぇ!!』
『はいはい、じゃあ一緒に入ろうねユーノくん』
『うわぁぁん!! こんなことなら昨日のうちに人間形態見せておくべきだったよぉぉ!!』
ごめんねユーノくん。でも君の父上がじゃなかった。君がなのはちゃんと同棲してるのが悪いんだからね!! そんな嬉し恥ずかしラッキースケベイベントを多発する君が悪いんだから!!
「なんだったのかしらアイツ」
「うふふ、ユーノくん可愛いからね。きっと気に入ったんだよ」
「確かにかわいいものねぇ。でも、だからこそ独り占めはさせちゃだめよね?」
「賛成~」
背後に聴こえる女性陣の声を尻目に、さっさと浴衣を脱いで浴場へ突入。さらばユーノくん。達者でな。
ということで、頭洗ってる虎次郎くんの隣に座って僕も頭を洗い始める。どうでも良いけど虎次郎くん、お前風呂入る時くらい、っていうかシャワー浴びてる時くらいメガネ外そうぜ? レンズ曇ったりフレーム歪んだりしないの?
あ、ちなみに刹那はあわ立てたスポンジで身体をくしくしと丁寧に洗っていた。なんというか、泡で身体の色々な箇所が隠れているせいで本当に女の子がいるみたいで若干ビビる。ドキッともするけど、どちらかといったらなんかイケないことしてる気がしてビクビクする。
とか考えつつ、頭も身体もリフレッシュしたところで虎次郎くんと共にお風呂にドボンである。士郎さんと恭也さんはちょっと走りこみに行ってくるとのことだったので暫くは僕達子供組の天下だ。ひゃっふぅ。
「んで、ヨッシー、早速やけどなんでユーノの声が聴こえたんか、っていうか何でヨッシーの名前が呼ばれたんか、説明してもらって、えぇやんな?」
おうふ!? わいわい普通に盛り上がろうと思ってたのに、いきなりそこから来るのかい虎次郎くん!!
……まぁ、それに関してはやましいことないし言えるんだけどさ。
「あ……そういえば二人は昨日いなかったから知らないんだっけ。昨日ユーノくんに念話で話しかけられて、お話しして友達になったんだよ」
「ユーノが? なんでや?」
「あ~……いや……えっと……」
しまった! 理由に関してはバリバリ後ろめたかったよ! まぁ隠しても仕方ないから言うけどさ。
「あの~……巨大にゃんこ事件の時に近くの茂みで隠れて見てたの。なんかユーノくんの張った結界とかいうのに取り残されて、で、そこをユーノくんに見つかったから、前から声かけようとしてたんだって。っていうか、ごめんね? シラを切ってずっと見てなかったフリしてて」
「ん、ちゃんと謝ったから許したるわ。ちゅうかあの時ヨッシーが隠れとるんは初めっから気付いとったしな。その後にユーノからもヨッシーのこと訊かれたから見つかったんやな~、とは思ってたし。ここでしらばっくれてたら、ワイちょっとおかんむりになるとこやったで」
「おうふ、正直に言ってよかった!」
虎次郎くんと険悪な仲になりたくないもの!
「そうだね、自分から言ってくれたのは素直に褒めてあげるよ佐藤くん」
あ、もう洗い終わったの? 刹那。女の子ってもっと身体とか髪の毛洗うのに時間かけると思ってたんだけど。いや、別に良いけどさ。
「で、ヨッシーはこれからどないするんや? ワイらと一緒に戦いたいんか? それとも、参加せぇへんで、これからも平凡に暮らしていきたいんか?」
「平凡一択で」
「……即答だね。理由を訊いても?」
「物騒なのマジ怖い。昨日も野次馬根性で見に行った僕が悪いんだけど、半端な気持ちで介入してきたら殺すって怒られた」
「「あぁ、悠馬 (くん)か」」
うん、悠馬です。
まぁ、別に介入する気は毛頭無かったんだけどね。介入できるような能力も無いし、あくまでアイン追っていったらやってたから見物しただけで。
とはいえ、あの時は完全に遊園地のアトラクション見に行くくらいの気軽さだった。あの時の自分を殴りたい。
「あ~……なんちゅうか、怖かったやろうけど、堪忍したってや? 色々あんねん。悠馬も」
「下手したら僕らより悲惨だからね彼……気持ち悪いけど」
え、何? やっぱり無駄な裏設定みたいなのあるの? アイツ。普通にかませ犬ポジで良いと思うんだけど。そして悲惨だと思ってるって言うけど、そう思うなら気持ち悪いって言うのはやめてあげたほうがいんでない? 君が悠馬の生皮剥いだという事実を知っていることを忘れてもらっちゃ困るよ。君は意外と猟奇的なんだから割と人のこと言えないよ?
可愛いから許されちゃうかもだけど。
「で、まぁコレが一番確認取りたいっちゅうか、出来ればヨッシーには自分から認めてもらいたいんやけど」
「なに?」
「自分、前世の記憶があるっちゅうか……一言で言えば転生者ちゃうか? 転生特典として何か願い叶えてもらわへんかった?」
……どストレートぉ!!
え~……待って、これってどうしたらいいの? やっぱり隠してた方が良いのかな。でも虎次郎くんがわざわざ訊くってことは悪い意味で訊いてるんじゃないと思うんだよなぁ……そもそも、虎次郎くんが真剣な顔で問いかけてくるなんて今までそうあることじゃなかったし、ここで隠したら後々申し訳なさが酷くなる気がする。
……隠して生活するのも潮時かなぁ。まぁ、僕の能力じゃ結局平凡に生きるしか無いから、別に事情わかってくれてる人が出来るってのはむしろ気が楽でいいんだけど。
「……あ~あ、僕できれば言いたくなかったんだけど。うん、他ならぬ虎次郎くんの真剣な質問だもんね。言うよ」
「ちゅうことは」
「うん、転生者。とはいっても原作知識なんて一期アニメ分だけだし、二次創作の改変された知識が主体の物を全部うろ覚えで覚えてるだけだから、原作の設定なんて殆ど知らない。それにチート能力なんてのも無いよ」
「……やっぱり、転生者だったんだね」
「うん。ごめんね佐々木さん。今まではぐらかしてて」
う~、言ってしまった。刹那の微妙な表情がなんともいえない感情を胸の内から押し出してくるよ。
「っていうか、なんでバレたの? っていうからいつからバレてたの?」
「ワイは普段からヨッシーが会話で前世のサブカルネタ入れてきとったし、ワイの言ったネタにも反応しとったからな。割と前からやで」
あれ~! 僕ってば不用意にも程があるんじゃないのかしら!? 言われてみれば僕、虎次郎くんとの会話で時折ジャ○プマンガネタとか挟んでた覚えあるよ!! こっちの世界にあれらのマンガ無いのに! 似たようなのならあるけど!
「ちなみに僕は図書館で君がいつの間にか近くにいた時からかな。ステルス性の高い気配隠蔽魔法でも使ってたのかと思ったのが始まりで、そこからは普段の君の言動からだね。まぁ僕の場合は確証無かったんだけど」
あ~……僕そんな魔法でも使ってるように思われるほど存在感ないんだ……。
なんていうか、若干へこむ。
「ヨッシー、ほんなら……一番大事なことやからちゃんと答えてくれると助かるんやけど、えぇか?」
「うん。いいよ」
「転生の時にどんな願いをしたか……は嫌だったら言わんくてもえぇけど、どんな能力やレアスキルを得て、どんな因果を背負ったか、分かるか?」
「へ? 願い? 因果?」
え、なにそれ、もしかしてお願いしてたら自分の望んだ能力やら設定ゲット出来てたの? あのカードってもしかしてフェイク? 特典はカード引いて決めろって思わせておいて、お願いして大丈夫だったってやつ?
うわ、何それ酷い。
「……なんも、願わんかったんか? 何か能力もらったりは?」
「え~……なんかカード引かされて、好意を持った相手が少しだけ幸福になれるみたいな能力はもらったけど」
「なんやそれ」
「地味というか……まぁ、下手に他人を不幸にする能力よりはいいね。むしろ君からしたら佐藤くんが持ってるのは嬉しい能力じゃないかい? 虎次郎くん」
「アホ抜かせ。どうせなんか変な因果持っとる能力なのは間違いないんや。せやないとヨッシーの存在感があんまりにも希薄なんが理解できへん」
「ごめん、虎次郎くん、それは僕泣いていいのかな? 存在感無くて空気みたいな奴だって言いたいのかな?」
「あ、いや、そういう意味やないねん。いや、ある意味ワイにとってはいなくてはならない存在っちゅう意味では空気でも正解なんやけどな? えっと……あ~……なんちゅったらえぇんかな」
「まぁ、文字通り存在感が無くて気配が薄いって言うことなんだろう? それは僕もずっと佐藤くんから感じてたことだし、実際、魔法ではないかと疑ってたくらいだからね」
「よ~し泣いちゃうぞ僕!! 全力で泣いちゃうぞ!! 割かし親友ポジだと思ってた二人にあっさりモブ認定されて泣いちゃうぞ!!」
自分で言うのと、相手に言われるのってダメージ全然違うんだからね!! 皆も注意しようね!! 私ブスだから、とか、僕頭悪いから、とか言ってる人に「そうだね~。ブス(バカ)だもんね~」とか言ったら本気で傷付くアレだからね!!
「あ~、もう……そういう笑い話に出来る類の話やないんよ、ヨッシー」
「僕にとっては元から全然笑い話じゃないよ虎次郎くん……」
「まぁ、どっちにしろ本人にはそうかもね……」
ちくしょ~。っていうか、僕のモブっぷりは能力のせいだったのか。なんてことだい。アレか。じゃあ僕が割と放置されてハブられてたことが多いのってそのせいか。自分から話し掛けた時とか、アインとか虎次郎くん経由でしか殆ど会話出来なかったのってそのせいか。
道理で友達できないわけだよ僕……ただでさえ消極的なのに、積極的に友達作るタイプの奴の認識から外れちゃってたら、そらそうだよ……よく虎次郎くんは僕に気付いて友達になろうなんて思ったな。
「ん~……しかし何の因果やろな。誰かを幸福にするっちゅうんならその分、自分が不幸になる気がするんやけど、ヨッシー自覚は?」
「ふっ……この前スーパーで買ったアイスが二本連続で当たった、と言ったら?」
「なん……だと……って、やかましわ。んー、身内が不幸になったとか、自分が嫌な目にあったとかはどうや?」
「両親は知らない内に居なくなってたけど、引き取ってくれた今のお父さんは良い人だから何も不幸だと思えないし、事故にあったりしたことも無いからなぁ……幼稚園の時はいじめられたりしてたけど、幸福分け与えるような好感を持ってる相手なんてその時に僕を庇ってくれてた保母さんくらいしかいないから、それに関しては運が悪くなったからイジメにあったって訳じゃないと思うし」
「あ~……そうすると、“他人に認識されにくくなる”とかの因果が一番候補としては高いか。恐らくヨッシーが誰でも彼でも好感抱いて、周囲に幸福ばら撒かんように、そもそもとして周囲から興味を抱かれんように設定されたんやろか」
「それなら図書館で僕が佐藤くんに気付かなかったのもうなずけるね」
「佐々木さん? 一応、僕あの時のこと未だに恨んでるからね……?」
「安心していいよ。アレ嘘だから」
「え? マジで?」
「うん。大体舐めようとしてるのに気付いてリコーダー入れ替えるなんてこと出来るわけ無いじゃないか。僕は人の心なんて読めないんだから」
「おぉぉ!! 本当に!?」
「うん、君のを舐めてたのは君の隣の席の鈴木くんだよ」
「お、おぉぉぉぉ……?」
す、鈴木くん?
え、鈴木太郎くん? 僕が頑張って作り上げた、転生者でも原作キャラでも無い友人一号の鈴木くん!? 台詞一回も喋ってない気がするけど、そんなどうでも良い伏線のために現れたの彼は!?
「どっちにしろ嫌だよぉぉぉ!! 何!? 僕明後日学校で鈴木くんにどんな顔すればいいの!? っていうか鈴木くんそういう趣味があったの!?」
「それは僕の知ったことじゃないね」
「持ち上げて落とすの上手すぎるよ佐々木さぁぁぁん!!」
ちくしょう滅茶苦茶ニヤニヤしやがって!!
「なんや……災難やったな、ヨッシー」
「うぅ……結局僕に被害が出ていることには違いないじゃないか……」
とりあえず、悠馬の犯罪歴から“リコーダーペロペロ事件”が消えただけだよ……。何気に悠馬に可哀想なことしたよ……完全に悠馬に対する刹那の嫌がらせだったんじゃないか……そういえばあいつ一回も自分がやったとは認めなかったよ……反応は滅茶苦茶怪しかったけどさ……どうすんのさ、僕の中で悠馬の株が回復した代わりに刹那の株が急暴落なんだけど。
「あ、ところで二人のもらった能力とその因果とかいうのってどんなの? っていうか、そもそも因果って何?」
「あ、そこから説明が必要やったか……ええと、とりあえずワイの願いと貰った能力は優しい世界で生きたい、他人を笑かせるような魔法や技術が欲しい、大事な物を守ったり癒したりできるような力が欲しい、とかやな。んで、因果っちゅうのはやな……」
どう説明するのか少し悩んだらしく、少しの間顎に手を当てて唸った後、頷いて語りだした。
「まぁ一言で言えば、例えば自分が得たプラスの能力に関係する不幸を呼び込む、マイナスのパッシブスキルみたいなもんやな」
「ふむふむ?」
「例えばやけど、衛宮切嗣の能力を丸々引き継いで転生した場合は、その足跡をなぞるように人生が進んでいくとかやな」
「……あれ!? それ割と凄い悲惨じゃない!?」
「おう、つっても例えやからな? 本物と同等ないし上回る能力でも無い限り、似たようなことは起きてもそこまで悲惨な結末にはならへん。固有時制御は取得しても、起源は違う場合もこの因果も大分弱まるやろうし。なんちゅうか、得た能力がどれだけオリジナルに近いか、或いはそれを超えるほどの物かによってこの因果も大分変わるみたいやから、ヨッシーのはそこまで心配せんでも大丈夫やろ。」
「ほへー……」
色々あるのだね、転生にも。
「まぁ、ワイも又聞きやから実際のところどうなのかは分からんのやけどな」
「そうなの?」
「おう、ワイにはその因果とかについて調べる能力なんてあらへんからな」
「あ、そんな能力もあるんだ。ありがと、まぁ大体理解したよ。……しかし虎次郎くんはなんていうか、君の性格そのまんまな物望んだんだね」
「そうだね、虎次郎らしい願いだと思うよ」
「ふふん、せやろ。正義の味方っぽいやろ」
「うん!」
「ハーハッハッハッ! せやろせやろ!」
「でもすぐそうやって調子に乗るところは三下っぽいよ」
「阿呆な!?」
うん、実に良い三枚目主人公です。
「で、因果はどんなのなの? やっぱりその……結構重い感じ……?」
「いや、他人を笑かしたり、大事な物守ったりのための力やから攻撃魔法はからっきし、とかやな。まぁ身体強化は普通に出来とるし、宴会芸じみた魔法も面白いから全く問題ないんやけど」
なるほど、あの三頭身のにゃんこと狐さんはその宴会芸のひとつか。そりゃあ戦闘能力無い訳だ。フェイトの攻撃あんなひょいひょい避けてたのも、身体強化の恩恵なのね。
っていうか、おい、僕の能力なんかより圧倒的に良い物なのにデメリットらしいデメリットじゃないじゃないか。
「デメリットほぼ皆無じゃないか! チートだチート!」
「ふふん、最強系チート主人公と呼んでくれや」
「よっ、最強系チート主人公!」
「ハッハッハッ、せやろせやろ! ワイこそは海鳴市四天王が最強の一人、虎次郎様やからな!」
「で、佐々木さんは?」
「なんかツッコミ入れてや!?」
「天丼ばっかりなのはどうかと思うんだ、僕」
「それもせやな」
最強の一人って、最強が何人もいたら最強じゃないだろうとか、四天王って、あと三人誰だよとかツッコミ入れたら負けである。
「あー……良いかな?」
「うん、どうぞどうぞ」
「僕は、誰からも愛されるような美少女の容姿と、Fateのアーチャー……英霊エミヤの能力。あとは虎次郎くんと同じで優しい世界で生きたい、とかかな」
「あぁうん、君のデメリットはなんとなく分かったよ。美少女の姿にはなったけど男の娘になった。アーチャーの能力は得たけど普段ニヒルなキャラの割にいじられキャラになったって、とこだね?」
「否定したいけど、大よそ合ってるのが切ないね……って待って、後半はなんか違うんじゃないかい……?」
「いじられキャラやろ」
「いじられキャラだよね」
「えー……」
ふむー、しかしパッと聴いた感じじゃそこまでのデメリットには感じないけど、よくよく考えたら性別変わっちゃうのって割かし悲惨だよね。僕なんかは自分がTSしちゃっても特に気にしない自信があるけどそういうのは少数派だろうし、なんかアーチャーの魔術も粗製になってて滅茶苦茶弱体化してるみたいだし、刹那ってもしかして割と苦労人?
「って、時間操作できるんじゃなかったっけ。それは?」
「あぁ……アレだよ。時間を操作する魔法をくださいってお願いしたんだ」
「直球だね~。まぁ確かに便利そうだもんね。時間操作」
「魔力の消費が酷いのが欠点だけどね」
「それでも何年分も人間の成長を巻き戻したり出来る時点でかなり凄いから良いじゃない。佐々木さんそれ自分に使ったら人類の夢である不老を達成してるようなもんだよ?」
「……なんで知ってるんだい? 僕がそこまで出来ることを」
あ、なんか睨まれた。
「天ヶ崎くんが洩らしてました。二年間前になんか自殺紛いに街ごと破壊しようとした転生者がいたって」
「あぁ……アレか……」
おぉう、すっごい苦々しげな顔だね。そんなに嫌だったのか。
「アレは……なんちゅうか、もう二度とああいうんには会いたく無いおもたな……刹那おらんかったら、勝てはしても被害どんだけになってたか想像もつかへんで……下手したら日本が核兵器を秘密で所持していた、とか言い出されて国内世論ガタ落ち且つ国際批難轟々で日本終了のお知らせの可能性もあってん」
「……言われてみれば、戦術核級の核爆発が起きたらそりゃあ疑われれるよね。何気にこの街どころか日本国丸々救ってたんだね君たち……」
とんでもないな……どうしてそんな能力もらったんだその転生者……本気で疑問なんだけど。
「まぁ、でもそらまた置いておくとして、言われてみればせやな。刹那おったら不老の夢あっさり叶うやん。ガンとかやて肉体を若返らせることで細胞自体存在消せるやろし、何気に人間の世界国宝レベルやぞ刹那」
「い、言われて見ればそうだね……補助としてはせいぜい戦闘後の後始末と、治癒魔法代わり程度にしか見て無くて、メインの戦闘能力ばっかり注目してたから気付かなかったけど、僕そういうメリットあったんだ……」
いいな~。老化による死亡が無いなら、突発的事故とかで即死しない限り死ぬこと無いって、ある意味一番チートだよね。まぁデバイス持ってなかったら使えないみたいだけど。
「あ~、まぁ、能力に関してはこんなもんでえぇやろ。ヨッシー原作に関わる気ないんやろ?」
「あぁうん。お友達として一緒に遊べればそれで良いかなって。管理局入らないつもりだから将来のビジョンとか殆ど決まってなくて、この歳ながら心配ではあるんだけど。まぁ前世の経験生かして、ブラックじゃない会社でサービス業あたり勤めようかとは思ってるけど」
「……なんていうか、堅実だね」
「一般人だからね。原作知識とかすらうろ覚えの」
「ま、それならえぇやろ。……あ、でも一応A's編始まったらリンカーコア蒐集の可能性もあるから、注意するんやで? 存在感あらへん言うても、意識して探せば簡単に見つけられる程度のステルス性なんやから」
「なんかアレだよね。僕だけ能力の割にデメリットでかいよね。周囲の人から認識され辛いわ、自衛手段すらないのに巻き込まれる要素含ませられるわで、ちょっと酷くない?」
「いや、そのステルス性は逆にメリットでもあるんやから、あって困るもんや無いと思うで? 少なくとも他の転生者連中に何かされることも無いやろ」
「でも友達作りづらいよ……」
「おや? 僕達じゃ不満があるのかい? 佐藤くん」
「あ~……その言い方はずるいよね。不満なんかないよ。あ、でも佐々木さんはちょっと意地悪なところを直して欲しいとは思うよ」
「これは僕の持ち味だからね。そればかりは聴けないかな」
「ま、ワイも見てる分にはおもろいからえぇと思っとるしな。刹那の性格」
くすくす笑う刹那と、カラカラ笑う虎次郎くんに、僕はなんだかなぁ、とため息を吐く。
そして、後は普通にバカ話をして盛り上がってからお風呂を上がり、女性陣と合流したところで悠馬がなんでフェイト側についてるのかとか、アルフと仲良さげだったのかとか聴きそびれたことに気付いて、またため息を吐くのだった。
☆
諸君、肝試しと言うものを知っているだろうか? ……そう、夏の風物詩である。
大事なことなのでもう一回言っておく。夏の、風物詩である。
じゃあなんで今、僕達は泊まっている旅館から少し離れたところにある、今は使われていないという旧館の前で子供組だけでアインやリーンちゃん抜きで懐中電灯片手に立っているのか? 割と、春とはいえまだ夜は結構冷えるこの時期に、上着を羽織って集まっているのか?
分かるだろう。この子達マセてるんだよ。カップルをくっつけようと必死なんだよ。アリ虎とすず刹をくっつけようという魂胆なんだよ。女性陣が風呂で何やら画策したらしく、肝試しが開催される運びとなったのだよ。もっと季節感考えようぜと思ったのは言うまでも無い。
まぁ、確かに大人数で男女混合お泊りとなれば定番ではあるけどさ、肝試し。
しっかし発起人がはやてちゃんと桃子さんだというのだから恐ろしい。はやてちゃんはともかく、桃子さんは「アンタ大人なんだから小学三年生を夜の廃屋に行くの反対する立場じゃないのか」と小一時間は問い詰めたい。
ちなみにアインとリーンちゃんは、流石に脅かす系の行事なので動物にはちょっとよろしくないということでお留守番と相成った。ユーノくんは当然ながらついてきたけど。
幸い、伏せているリーンちゃんが片目を開けてアインを見ながら動かすもふもふ尻尾を、アインがねこじゃらしを追うみたいに飛び跳ねて追いかけるという遊びをしていたのでアインは退屈していないことだろう。あぁでもあそこでずっと見ていたかったといえば見ていたかった……流石に空気を読む僕は不参加を言い出したりはしなかったけど。
で、くじ引きの際には司会進行を務めるはやての指示によって虎次郎くんの手品による裏工作があったらしく、アリ虎、すず刹、余り物の僕となのはちゃん、はやてちゃんの三組が出来上がった。
ちなみに、またなのはちゃんとはやてちゃんに両方から「「わかって(と)るよね?」」って言われたのは余談である。ユーノくんはお風呂で色々あったのか、なのはちゃんの肩に乗ったまま遠い目をして何も言わないのがちょっと気に掛かる。
それにしても、もうね、大人組も止めるのかと思いきや、むしろ桃子さんが張り切っちゃってるせいか皆してノリノリだったよ。あの人たちちょっとどうかしてるよ。そして相変わらずなんか一人切なく見える美由希さんが「那美も呼べばよかった……」とかなんか黄昏れてたよ。那美さんって誰か知らんけど、とりあえず美由希さんにシンパシーを感じた僕である。
で、あれよあれよという間に、随所に大人組が隠れてスタンバっているから安心してまわって良いという桃子さんの笑顔を受けた僕達だが、いつの間にか現れて大人組みに紛れ込んでいた老執事さんに、アリサちゃんが「鮫島、分かってるわね?」「勿論です」という会話を繰り広げていたことがなにかのフラグでないことを祈りたい。
バニングス家の財力と行動力によって、温泉旅館の旧館は今や一大お化け屋敷とでも言える状態らしいので、なんかもう、お前らはもう少しこう……自重しろとか季節考えろとか、色々ツッコミを入れたくなって嘆かわしくなった。
あと、元気に見えるけど、刹那一応病み上がり……いや、待てよ? もしかして昨日って他の転生者関係に巻き込まれててこれなかったとかで仮病か?
いや、まぁどっちにしろ刹那は対外的には病み上がりってことになってるのに、風呂上りにこんなことさせるってどうなの? とか色々思うけど、言わない言えない言いたくない。
もし言って空気ぶち壊してごらん? なんかすっごいアレな空気になるよ?
「ほな、刹那~、ヨッシー先行くで~」
「こ、虎次郎!? い、いきなり手繋ぐの!?」
「ん? なんや? 嫌やったか? あ、それとも肩組んでカバディしたほうがよかったんかいな」
「い、いや、良いわよ! このままで! アンタがはぐれたら嫌……困るしね!! いくわよ!!」
「任せとき。可愛らしいお姫さんの護衛するんは男の華やからな!」
「だ、だだっだ誰がかわ、可愛……だ~! 良いから行くって行ってんでしょこの駄犬!!」
「駄犬いただきました!! 全国のアリサファンの皆! 今、アリサから駄犬発言いただいたで~!」
「アンタ甘い空気作るのかコメディにするのかどっちかにしてよ!?」
「わい純愛もえぇけど、ラブコメが大好物やから」
「キー!!」
すっげぇ、なんか如何にもツンデレ彼女とそれを理解して怒らせない程度にからかう彼氏の図、である。いや、怒ってるけど、アリサちゃん。でもアレ顔真っ赤になって頬もちょっと緩んでるから喜んでんだろうな。
なんていうか、頑張れアリサちゃん。ぶっちゃけ虎次郎くんもアリサちゃんのこと好きなのは間違いないから、今後増える可能性が高いハーレム要員達に勝って正妻の座を手に入れるために。
「せ、刹那くん。ちょっと怖いね」
「ん、大丈夫だよ。ちゃんと守るから」
「お、驚いて抱きついちゃったらごめんね?」
「良いよ、全然気にしないから」
「……ちょっとは……気にしてほしい……かな……」
「ん? なんだい?」
「な、なんでもないよ刹那くん!」
そしてすず刹コンビは、まぁなんていうか、鈍感な主人公に健気にアタックする女の子の図である。うん、実に微笑ましい。刹那の外見が女の子なだけになんかイケない香りがするという点が若干危険な気もするけど。そして多分、刹那はわかっててすずかちゃんと距離置こうとしてるんだろう。
今も手を握ってあげたみたいだけど、虎次郎くんみたいにイチャイチャって感じじゃない。仲の良い女の子同士がする感じの距離がある。
う~ん、すずかちゃん、応援したいんだけど刹那のこと知ってると素直に応援できない。刹那もちょっと心苦しそうな感じだし。精神面女の子だから女の子と話してると気が楽で、でも身体は男の子だから女の子に惚れられてしまうというなんとも苦しい状態なんだろうね。
なんというか、頑張れとしか言えない。お風呂でも思ったけれど、僕みたいに性別変わったらそれはそれでまぁそうやって生きていこうかなとか思うのは難しいだろうしね。まぁ、僕も実際女の子になったら、生理とか始まった時に「男の子に生まれたかった!」とか言いそうだけど。
元々性別に関する意識が希薄で、お陰で前世でもそっち系の男の人達に割と狙われていた覚えがあるけれど、うん、そこは忘れよう。ただ、誰かを慰める時に「自分が女の子だったらなぁ」と思うことはよくあったなぁ。
ほら、なんていうか女の子だったら落ち込んでる人とかを抱きしめても問題ないだろうけど、男がそれやると結構世間体悪いからね。結構してた覚えもあるけど。
とはいえ、現世では男に生まれたわけだし出来れば女の子といちゃいちゃしたいけどね。今はそんなに思えないけど、それは単純に身体が性的な成長をしていないからそういう欲が起きにくいだけだと思うし。そういう意味では刹那の悩みを本当に理解出来てるとは言いがたい僕である。
「さて、じゃあ次は僕達の番だね。サクっとクリアして虎次郎くん達の先回りして驚かせてこようか」
「ふふ、良いかもね。……手、離さないでね?」
「はぐれたら困るものね。分かってるよ」
あ~、頑張ってねアリサちゃん。色んな意味で。刹那もね。
「さて、またこの三人やな」
「そうだね~。あ、ユーノくんもいるから四人だね」
『そうだね……』
「ユーノくん、なんか……えっと、強く生きてね?」
『ありがとう、同志(よしつぐ)……』
あぁ、ユーノくんこれ復帰遅そうだわ。
「ん~、でも三……いや、四人もおると緊張感あらへんなぁやっぱり」
「それは仕方ないよ。あの二組をくっつけるのが元々の目的なんだし」
「まぁわかっとるんやけどね? かと言うても、やっぱせっかくの肝試しなんやから、こうキャーって言うて女の子が男の子に抱きつくのが定番やんか?」
「あ~、そうだね……私達相手いないもんね……」
「うんっと、一応、僕も男だということを君たちはそろそろ意識してくれても良いと思うんだけど」
「「ごめん、それは無理か(や)な」」
「ですよね~」
『……強く生きようね、義嗣』
「ありがとよ相棒……」
ごめんね、ユーノくんお風呂で見捨ててごめんね? これ結構クルね? 男の沽券とか色々木っ端微塵にされるね?
「おっと、そろそろええんやないか?」
「あ、そうだね。じゃあいこっか」
「ん、お~きにな。車椅子押すん結構疲れるやろ?」
「にゃはは、大丈夫。これでも私魔法少女だからね!」
「なのはちゃん、車椅子押す力と魔法少女は全く関係ないと思う」
「悪くは無いツッコミやけど、勢いが足りへんなヨッシー。ツッコミはもっと元気良く、威勢よくや」
「なんでやねん」
「ヨッシー、関西弁バカにしとるん?」
「滅相もありません軍曹殿!!」
思わず敬礼しちゃったよ。でも別に威圧感とか感じたわけじゃないよ。はやてちゃんが頬を膨らませている姿が可愛かったよ。
「バカなことやってないで行こうね、二人とも」
「「はいはい」」
さて、どうせ僕達にはあんまり仕掛けは無いだろうけど行きますかね。
まず一階、元玄関ロビー。廃墟の割に意外とこまめに掃除されてたのか(或いはバニングス家メイド軍団でも来て綺麗にしていったか)、あんまり薄汚い感じは無い。
自家用車が三台くらい入りそうなロビーには、足元には緑色の絨毯のような床が広がっている。
正面左手には木製のカウンターがあり、昔はそこにフロントがあったのだなと思わせる形になっており、正面右手には仲居さんの案内が来るまでお客さんが待つために使われていたと思われるテーブルと椅子。しかしそれらはどれも一部が如何にも古くなってしまって壊れたのだと言わんばかりにどこかが欠けていて、不吉な空気をかもし出している。
で、左手には道は無く、壁紙が一部はがれた壁があるだけ。右手奥の方には道が繋がっていて、そこから先は真っ暗で懐中電灯を照らしてもここからでは何も見えない。まさに肝試し向けの廃墟(?)。
……ただね、妙に小奇麗なせいかあんまり怖くない。いや、なんていうか……こう、如何にも「作りました」って感じの壊れ方や汚れ方なのもちょっと気になる。なにより絨毯がね、じゃりじゃりしたりしてないし、空気も埃っぽくないから余計に。
「うにゃああぁぁぁ!?」
「「『うわっ!?』」」」
「な、ななななんやなのはちゃん急に大声出して!!」
「い、今あそこ、あそこにお化けが!! なんか青白い顔の人が!!」
「え? なんか見えた?」
「はぁ? ……いや、なんも見えへんかったけど……」
『うん……僕もそういう気配みたいなのは無かったと思うけど……』
「い~ま~い~た~の~!! 本当なの~!! 信じてぇ~!!」
「いや、ちょま、ちょまってなのはちゃ、ゆ、揺れ……酔う……」
ちょ、待って、洒落にならないよなのはちゃん!! 肩、肩本気でがっくんがっくん揺すらないで!? 死んじゃうから!! 僕死んじゃうから!? いや、死ななくてもこのままだと酔うから!!
「あ~、ちょいちょい、なのはちゃん落ち着きや?」
『そ、そうだよなのは、そのままだと義嗣が死ぬよ! いや死なないかもだけど、目が若干危なくなってるから今の義嗣!!』
「え? あ、ご、ごめんね? で、でも本当にいたの!! 本当なの!!」
うぐぅ……助かったよユーノくん、はやてちゃん。危うくほぼイキかけたよ……イチ○ーのネタ画像的意味で……。
で、結局なのはちゃんが見たという幽霊のいた場所はフロントらしき場所だったので近づいてみると、プロジェクターが置いてあっただけなので拍子抜けした。要はなのはちゃんが丁度ここを見ている時に一瞬プロジェクターを起動したのだろう。
しかし何故かなのはちゃんがそのプロジェクターを懐中電灯で照らして様々な角度から確認すると、鼻息を荒くして何やらぶつぶつ言い始めた。
「こ、これはエブリヌのEMP-7950!? 液晶パネル技術3LCD方式採用の、目に優しい映像を売りにする最新のプロジェクター……ッ!! こんな入り口の一瞬の仕掛けに、なんて贅沢な使い方をするのアリサちゃん……ッ!!」
「え、え~っと?」
「……なにごと?」
『あぁ……そういえばなのはって家電マニアだったね……』
「「そうなん(なの)!?」」
何気に新事実である。
っていうか、プロジェクターのそんな情報を誰も知りたいとは思ってなかったんだけど、なのはちゃんは僕達の反応に気を悪くしたのか、暫くの間はその場で如何にそのプロジェクターが素晴らしいかを力説していた。
すっげぇどうでも良い雑学をありがとうなのはちゃん……。
☆
お化け屋敷もようやく終盤に差し掛かっていた。
いや、もう本当、駄目。無理。ここはお化け屋敷なんてレベルじゃない。まずね、まず一番怖かったのから言っておくよ?
暫く何もないな~って思ってなのはちゃんがはやてちゃんの車椅子押しながら会話してるのをのんびり眺めながら、僕の左肩にはユーノくんが乗って僕とおしゃべりしてっていう状況だったのね?
で、急に右肩をたたかれて「ヨッシーくん」ってなのはちゃんの声がしたから、あれ、また呼び方戻った? とか思って振り返る瞬間に、なのはちゃんは自分の前を歩いているのにすぐに思い出したんだけど遅くて、振り返って目に入ったのは、僕の肩に手を置くゾンビさんですよ。リアルなやつ。
思わず叫んで涙目になってなのはちゃんに後ろから抱きつくのも仕方ないよね。僕の肩に移ってくれてたユーノくんも思わず念話にするのも忘れて絶叫してたよ?
大体酷いよね、あんな仕打ち。なに考えてんの? どんだけリアルなの作ってんの?
パッと見はなのはちゃんに似てるんだけど、なんか目は白くにごってる上になんか飛び出しかけてるし、顔の血の気の抜けた感じとか、微笑んだままの形で固まっている口元とか、首からダラダラ垂れてる血のどす黒さとか、もうなんか色々リアルすぎて滅茶苦茶グロかったんだけど。
あれ前世で精神的ブラクラを数々踏んでいた僕だから絶叫で済んだけど、なのはちゃんとかが見てたら卒倒するよ? っていうか、ユーノくんあれトラウマになったんじゃないのってくらいプルプルしてたからね?
その後なのはちゃんたちと振り返った時には誰もいなかったんだけどさ、本気で怖かった。どういうトリックなんだアレ。虎次郎くんの悪戯か?
で、まぁ他にもまたもやプロジェクターを利用したと思われる一瞬現れる幽霊だったり、足元に煙みたいのが蔓延して足元が寒かったり、突然ガラスの割れる音や女性の高笑いの声が聴こえてきたり、かと思えば誰かの悲鳴やうめき声が聞こえてきたり、開け放たれていた客室のドアの向こうに、表情が見えないくらい長く伸びた髪の女の人が「ひひひひひひひ……」とか言いながら包丁研いでたりと色々あったんだけれど、ゾンビでインパクト全部もってかれてた僕にはもうまったく怖く感じなかった。
まぁ、はやてちゃんは楽しそうにキャーキャー言ってて、なのはちゃんはニャーギャー涙目で叫んで僕に抱きついてたけど。
うん、あれだよね。女の子に抱きつかれるのってなんだかほんわりするっていうか、落ち着くって言うか、いいものだね、と思った。力強く抱きしめられるものだから呼吸が困難になったり、サバ折りみたいな状況になって背中やら腕やらが痛くなったりしたけど。
終いには若干ウザったく思ってきたので「はやてちゃんに抱きつきなよ」と言ってやろうかと思ったけど、はやてちゃん車椅子だから抱きつくに抱きつけないんだということに気付いて言わないでおいた。気にしないかもしれないけど、はやてちゃんが気にしたら悪いし。
一応、役得ではあるんだろうと自分を納得させておいたけど、正直微妙な気持ちになったのは言うまでも無い。
せめて、これが中学とか上がってからならなぁというのは、まぁ言わない約束なんだろうね。
で、そろそろ終わりかな~って感じでなのはちゃんとはやてちゃんも気の抜けたところで、滅茶苦茶焦った顔で出口として設定してあった従業員用玄関の方から士郎さん、桃子さん、恭也さん、美由希さん……まぁつまるところ高町一家が駆けてきた。
「なのは!! 大丈夫だったか!?」
「はやてちゃんとユーノくんと佐藤くんは!?」
あ、僕ユーノくんの後なんですね。いや、家族なんですからそらそうでしょうけども。
「どこか怪我はないか!?」
「え、ちょ、ちょっとお父さんもお兄ちゃんもどうしたの!?」
「せ、せやで? 私ら別になんともあらへんけど……どないしたん?」
もう、この流れでなんとなく読めてきたよ僕。
「どうしたもこうしたも!!」
「いきなりなのは達の姿が消えたっていうから騒いでたのよ!?」
「どこに行ってたんだ!?」
「本当に怪我はないのね!?」
あ~……やっぱり……コレってあれでしょ? 一時的になんか別の空間に閉じ込められてた的な話しなんでしょ? はいはい……。
ん? つまり、あのゾンビの子ってガチ?
……、……やめよう。忘れよう。
『よ、よよっよよよよよ義嗣? も、もしもしもしかして……』
「忘れよう、ユーノくん。僕達は悪い夢を見ていたんだ……」
「「『本当にオバケだったの(んか)~!?』」」
……拝啓、出張中のお父さん。僕は相変わらず変なことに巻き込まれたり観戦しに行ったりしてますが、割かし元気です。
「……さ、佐藤くん、ところでその右肩についている手の形をした血の痕は……?」
「気にしてはいけません。きっと、きっとこれは夢だったんです」
お父さん、僕呪われたかもしれないです。割と元気じゃないかもしれません。