オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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第58話:俺の歌を聞けぇッ!

 

 

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「おお、魔導国の……ウルフ竜騎兵団の長だ」

「本当に狼人だ」

 

都市内を歩き回り、団員に指示を出し、食堂で民と一緒に飯を食い、建物の解体をし、歌で心を鼓舞する。ウルフ竜騎兵団長ジョン・カルバインの姿は解放された人々の目に嫌でもとまった。その精力的に活動する姿は人々の警戒心を解きほぐしていく。

 

人を食べないのか?と勇気ある民に問われて。

 

「亜人連合の連中こそなんで人間喰うんだろうな?不味いわけではないけど、人間って生まれて5年くらいは面倒みないと直ぐ死んじゃうし、15年くらいしないと子供産めないし、産んでも年1人だし……それなら、牛とか豚とか鶏で良くないか? 1年もしないで交配可能になるし……生まれて半年くらいで食用に出来るんだぜ。畜産動物として人間ってあんまり優秀じゃないだろう」

 

「それに言葉が通じる相手って食べ辛くないか? あんただって鶏絞める時に鶏が『やめて!助けて!殺さないで!』って言ったらやり難いだろ?」

 

「じゃあなんでアベリオン丘陵の亜人は人喰うのかって? ……なんでだろうな? そうだな。俺の想像だけど、悪魔の実験で人体に色々くっ付けて亜人っぽくしてたりとかしてたじゃん。その結果、生まれたのが亜人なら、元の姿に戻ろうとして、あるいは失った身体を取り戻そうとして、人間を食べる……とか? だから、人と違う姿をしてる獣身四足獣も亜人と呼ばれてる――のが、失われた歴史の一片とかだったら、興味深いな」

 

集まった民を前にそう答え、畜産にも造詣が深いのかとネイアを感心させた。

礼を言われれば、礼を返し、聖騎士にも言ってやれと聖騎士を気遣う。これが強者の余裕と言うものなのだろう。

 

そして、夜となればウルフ竜騎兵団の事務所テントの一室でジョンが悪魔のレポートを読み上げ、ネイアが聖王国の言語に書き起こすと言う作業。それが毎日2時間ほど行われる。

 

ウルフ竜騎兵団は交替で休憩を取っているようで、ウルフ竜騎兵団として完全に休止している時間が無い。

 

広場周辺は魔法の照明も灯されて、入浴施設も朝早くから深夜まで稼働しているので夜番を終えた民兵や聖騎士の評判も良い。食事も解放軍の分を用意してくれるので、数少ない従者たちも大助かりだ。無論、解放軍からその分の食料などを差し出しているが、どう考えても美味すぎて、提供した素材が使われているとは思えない。

 

建物も修復され日に日にテントの仮住まいから、一時でも建物で休める人数が増えて行っている。

 

それでも、頑丈な建物で過ごすよりもウルフ竜騎兵団の近くでテントで過ごす方が安心で快適だと思う人々は着実に増えていた。

 

朝昼晩の食事時など人が多く集まる時間に広場の片隅に作られたステージでジョンの歌が披露された。

聞きなれないメロディの曲ばかりだったが、愛と正義を歌い上げる曲、勇壮な騎士行進曲、静かな鎮魂歌。それらは人々の心を掴み、慰め、奮い立たせた。

 

 

世界を救うにはこうするしかない。

泣くな 涙を隠せ

新しい日が始まるのだから

 

お前の光は多くの心を暖めるだろう

 

さあ、今こそ立ち上がれ

 

 

そう歌うジョンだったが、今日はレメディオスに絡まれていた。

「世界を救うのに1つを切り捨てるのが、お前の正義なのか!」と。それにジョンはいつものように答えるのだ。あの日、ネイアに答えたのと同じ言葉で答えるのだ。

 

「いいや――俺は悪だよ。自分らの目的、理想、信仰、欲望の為に他人の犠牲を強いる悪だ。だからこそ、いつの日か、自らも同じ悪に滅ぼされる。その日その時を迎えても、俺はこう生きてやったと笑って胸を張って死ぬつもりだ」

 

「ならば、弱き民に幸せを、誰も泣かない国を、という聖王女様の願いに間違いなどないな」

 

無駄に大きい胸を張ってレメディオスは言う。

 

「……間違いはなくても、誰も救えなかったけどな」

「きさま――!」

自分が正しいと胸を張るレメディオスにジョンの言葉が突き刺さる。再び思わず掴み掛る。レメディオスは分かっていたはずなのに、また足を払われ地面に叩き付けられた。

 

「――レメディオス・カストディオが聖王女の願いに従うと自らの意思で決めたのなら、それはレメディオス・カストディオにとっての正義だろう。ただ、理想を現実にするのに力が足りなかっただけだ」

 

違うか?

 

「……違わない。確かに私が弱かった。私の剣が届かなかった。だが、それなら……私は、私はどうすれば良いのだ――どうすれば良かったのだ?」

 

血を吐くように吐き出されたレメディオスの弱音に、レメディオスの弱った心に、青い人狼が囁き掛ける。

 

「そんなん決まってる。お前(脳筋)に出来る事なんて1つだろう。……強くなれ。負ける度、心折れても、その度に泣きながら立ち上がり、ただ前に進む。レメディオス・カストディオに出来るのはそれだけだろう」

 

この手を取るなら鍛えてやろう。この手を取るなら導いてやろう。

その先にあるものが、暗闇でただ光を掲げ続けるだけのものであっても良いのなら、その徒労に生命を懸けられるなら。

 

差し出された手をレメディオス・カストディオは――

 

 

レメディオス・カストディオがジョン・カルバインに大衆の面前で師事し出したと報告を受け、グスターボ・モンタニェスの胃痛は一層ひどくなったのであった。

 

 

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ネイアのメイクセットはルプスレギナのそれを《物品作成》と《複製》でコピーして作った。

至高の御方の手ずからの一品。ナザリックの者からすれば垂涎の品である。ジョンに心酔してしまったネイアは当然、断った。受け取るなど畏れ多い、と。

 

「バラハ嬢の為に作ったものだからな。受け取ってもらえないのでは無駄になってしまう。受け取ってくれるね?」

 

その言い方はズルい。それでは受け取る以外ないではないか。

 

至高の御方と結ばれ、心に余裕の出来たルプスレギナとしてはジョンの決定に否は無い。以前であれば、嫉妬と羨望でぐぎぎとなっていただろうが、身も心もジョンと繋がった今は、ジョンに新たに仕えようとする者を受け入れる余裕があった。

 

「それじゃ使い方を教えるっすねー。水じゃ落ちないから、落とす時は注意っすよ」

 

それとどれだけ化粧しても、寝不足とかで肌の状態が悪いとダメっすからね。ジョン様に仕えるなら早寝早起き朝ごはんっすよ。

ぺたぺたとネイアの顔をコットンで拭き、綺麗に化粧を落とすと再びゆっくりと道具の使い方を教えながら、化粧を施していく。

 

「人間は一度で覚えられないっすから、優しいルプスレギナ姉さんは数日面倒を見てあげるっすよ」

「ルプスレギナ様は……〈人狼(ワーウルフ)〉なんでしょうか?」

 

ネイアの疑問にルプスレギナは不思議そうに答える。

 

「うん? そうっすよ? そうは見えないっすか?」

「今まで見た事もないとても綺麗な方だな、とは。それで大使閣下の奥方様なら同じ種族なのかな、とも」

 

うんうんと嬉し気に頷くルプスレギナ。至高の御方より賜った己の姿を褒められるのは何よりも嬉しい事だ。チョロいとか言ってはいけない。

 

「ジョン様、ジョン様ー。ネーちゃん良い子だから、何か上げたいっすー」

「お、奥様ッ!?」

 

大型テントの隣の部屋でウルフ竜騎兵団の事務処理をしているジョンへ突然おねだりを始めたルプスレギナにネイアは慌てる。

ルプスレギナの声の後、隣から報告書の束を整える音がする。そして「入るぞ」と一声かけてジョンがこちら側に入ってきた。

 

「ルプーが気に入るのは珍しいな」

 

そう言いながら、ずるりと言う感じで空中から驚くほど大きなアイテムが出てくる。レメディオスなど問題にしない強さを持ちながら魔法まで操るジョンには本当に驚かされる。

 

そこには緑の甲羅のような模様の巨大なブレストプレート。短剣、小手、指輪が2つ、ネックレス、ブーツがあった。

この中から1つ選べと言われるのかなーと思っていたネイアだったが、全部やると言われて魂消(たまげ)た。

 

「い、いやッ大使閣下!こ、これは多すぎです!(1つでも多すぎです!)」

 

巨大な緑の胸当ては〈亀の甲羅(タートルシェル)〉。〈矢守(ウォール・オブ・)りの(プロテクション)障壁(フロムアローズ)〉が付与された“豪王”バザーが使っていた鎧だと言う。

 

小手は〈射手の小手〉。射手としての能力を向上させてくれる。

 

ネックレスは魔力を消費して、〈中傷治癒(ミドルキュアウーンズ)〉と〈毒治療(キュア・ポイズン)〉が使える。ネイアの魔力では使えて2~3回だろうと言う事だ。

ブーツは〈速足(クイック・マーチ)〉が付与されており、移動速度が20%上昇すると言う。

 

指輪は〈回復の指輪〉と〈第二の眼の指輪〉。短剣は〈早業の短刀〉と言う。

 

これらの素晴らしいアイテムを前にネイアは首を横に振った。

 

「も、申し訳ありません、閣下。これらのアイテムをお借りする事は出来ません」

 

ジョンがくれると言うアイテムは恐らくどれも超のつく一級品。これらを装備して自分が討ち死にしたら、それらはどうなるのか。亜人たちの手に渡り、奴らを強化する結果に終わってしまう。そうでなくても戦乱の中、死体が埋もれたら紛失してしまう。それに弓を借り受けた身、これ以上の厚意に甘えて良い筈がない。

 

クレマンティーヌと言う傍仕えの侍女が来た以上、自分の魔導国大使の傍仕えの役割ももうすぐ終わるだろう。

 

と、なれば借りた弓だって返さねばならない。そして自分は従者として前線に行くのだ。そして、おそらく死ぬ。

ネイアは自分の不安を、これからの自分の身の振りを吐露する。

 

「くれてやるつもりで渡すんだが……そこまで言うのなら、必ず返すつもりでいってこい」

勿論、そのつもりだが、思いだけで状況を打破できるわけではない。そう答えても、青い人狼は鷹揚に手を振るのだ。

「いいから持っていけ。マジックアイテムがどこにいったか調べる魔法くらい俺も使える。もし帰ってこなかったら、それを使って探すさ」

「左様ですか?」

「ああ。……それにルプーが人を気に入るのは珍しいんだ。俺にも何かさせろ」

 

ああ、この方は奥方に甘々なんだなぁと独り身の自身を顧みながらネイアは思う。

 

「そうっすよ。ネーちゃん頑張って帰ってくるっす!」

 

親指を立てて笑顔で「生きて帰ってこい」と言うルプスレギナに思わず目が潤む。ここまでの優しさを与えてくれたのは、ネイアの人生においては両親以外にそういない。

こんな優しい人がいる魔導国は幸せだ。そう思いながらネイアはぐっと唇を噛み締め、頭を下げた。

 

「ありがとうございます! きっとお返しします!」

 

「うんうん」

 

顔を上げる際、瞳の端に浮かんだ涙を拭う。

 

だから、ネイアは気が付かなかった。

 

頭を下げている間、ルプスレギナが三日月のような裂けた笑みを浮かべていたのを。ルプスレギナが(ネーちゃんが死にそうになるところを〈完全不可視化〉で見学に行こうっと)などと考えていた事を。

 

 

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レメディオスの特訓は初回こそジョンが恐怖の洗礼を行ったが、その後はウルフ竜騎兵団の突撃隊の平隊員ワーウルフたちに任された。

平隊員とは言っても傭兵モンスターのワーウルフのレベルは50を越える上に戦闘特化だ。レベル30前後と思しきレメディオスが敵うものではない。ルプスレギナに治癒されながら、毎日ボロボロになるまで戦い続ける。

 

当然、聖騎士団の仕事は放りっぱなしになるが、どうせ今までも事務仕事はグスターボに丸投げだったのだ。それに現在進行中の(はかりごと)にはレメディオスは役に立たない。そう自分を慰め、グスターボは聖騎士団の仕事をこなしていた。

 

そんな訓練のある日、ジョンとネイアとクレマンティーヌが訓練所と化した拡張した広場に立ち寄るとちょうどレメディオスの訓練も一段落していた。

 

聖騎士団では出来なかった己の限界に挑む強度の訓練。レメディオスは荒い息をつきながら、どさりと座り込む。

そこに「お疲れ様です」とタオルが差し出される。

レメディオスは礼もそこそこにタオルを取って汗を拭うと、訓練に従者など連れてきていない事に気が付き、視線を上げた。

 

そこには凛々しい男装が似合いそうな、すっと目尻が上がった涼しげな美少女がいた。金色の髪は綺麗に整えられており、その背には立派な白い弓が背負われている。聖騎士団従者の制服を着ているが、その顔に見覚えがない。

 

「お前、誰だ?」

「……従者ネイア・バラハです」

 

ネイア・バラハ……あの目つきの悪い従者か。口の中で名前を転がし、レメディオスはもう一度、ネイアの顔をまじまじと見つめる。

綺麗に化粧されている顔。似ても似つかないが、それは親友でもあったカルカ・ベサーレス聖王女を思い出させ、胸が痛む。

 

「……大使閣下の奥様に、閣下の傍に仕えるなら、それに相応しい身嗜みを整えなさいと」

「化粧か」

 

カルカも……聖王女様も、化粧には随分と気を使っていたな。

そう失った人を思う遠い目をしたレメディオスだった。

 

その様子に道中散々パワハラしてきたレメディオスの苛立ちがおさまってきているように見えて、ネイアはジョンの采配に再び感服するのだった。

(大使閣下は団長の心を鎮める事まで考えて、このような事に付き合っていらっしゃるのか)と。

 

「随分と化けたが、素のままでいる方が聖騎士らしくないか?」

 

レメディオスにしては何の事もない。しかし、ネイアにすれば許せない余計な一言。

 

そりゃあ!武力、才能、美貌を天から授かった団長みたいな人には必要ないでしょうよ!――心の中でネイアは嫉妬混じりの嘆きをあげた。

自分のような凡人は化粧でもなんでもして、武装しないと偉大な方の傍に仕えるのにも憚られるのに。――持つ者は無自覚に弱者を踏み躙るのだ。

 

(あーもう。この人も大切な人をなくした痛みに耐えてるんだなーとか一瞬でもしんみりして損した!)

 

 

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レメディオスの訓練が一段落し、休憩している頃に民兵の代表と思しき男が視察に回っているジョンの下へやってきた。後ろには民兵たちもぞろぞろ付いてきている。

 

「カルバイン様。……俺たちにも訓練を付けてくれないか」

 

妻を、子を、自分の手で守りたい。己が生命を捨てても大切な者を守るのだとその瞳は語っていた。

弱さに負け、めそめそ泣いて死んでいく者たちの瞳ではなかった。

 

その瞳にむむむ、とジョンは考え込む。

 

今更だが、民兵の訓練は聖騎士団の仕事ではなかっただろうか?

しかし、聖騎士たちは何やら走り回っており、民兵の訓練までは手が回っていないようだった。

 

偵察隊からは何やら亜人をこっそり逃がしたりと、何やら(はかりごと)をしているようだと報告は受けている。

デミウルゴスの台本に、このタイミングで何か解放軍側で(はかりごと)をした結果、この小都市でもう1度くらい大規模戦闘をするとあったし、まあ良いかと割り切った。

 

「カストディオ団長、そちらの民兵の皆さんには〈密集陣形(ファランクス)〉で良いよな?」

「うむ。頼む」

 

悩む素振りを見せずジョンに丸投げするレメディオス。

おいおい、人質取られた時の優柔不断さは何処に行ったよ、とジョンは呆れる。

 

「……こいつ丸投げしやがった」

「私が強くなって、後ろに何も行かさなければ良いのだ。それに強者が弱者の面倒を見るのは当然だろう」

 

彼我の力の差は訓練の初日に思い知らされている。

この人狼はまったく強者のオーラを纏っていないのに、いざ戦いとなれば、こちらを身動きどころか呼吸すら止まるような殺気を叩き付けてきて、ゆっくりとした動きで指一本突きつけるだけで自分の意識を刈り取ったのだ。

 

人狼の行動は聖騎士としては決して許せるものではなかったが、それでもその強さは認めざるを得ない。

それだけの強さを持っているなら、弱き者の面倒をみるのは当然の事だ。

 

レメディオスの態度に対して、肩を竦めるだけにとどめたジョンだった。

民兵の中で弓が使えそうな者は〈密集陣形(ファランクス)〉の訓練ではなく弓を扱う訓練をさせる。

 

「そっちの弓を使う方は……そうだな。バラハ嬢、見てくれるか」

 

的と練習相手はこれで良いかな。

 

そう言ってジョンの魔法で召喚される簡易ゴーレム・オーク。

簡易ゴーレムは等身大の出来の悪い木製のデッサン人形のような外見だったが、手もあって武器も持たせられる。

難度30くらいだから、想定亜人ならちょうど良いんじゃないか。

 

「大使閣下は、なんでも出来るのですね」

「そうでもないが……引き出しは多く持っておくに越したことはないな」

 

例えば小都市攻城戦の時のように人質を取られた時、《魔法の矢》が使えれば人質を傷つけずにバフォルクだけを排除することも出来ただろう。武技〈空斬〉でも上手く当てられるなら良いだろうな。

 

まあ、一人でなんでもやろうとしても上手くいかないものだ。役割分担してやれば良い。簡単に言うと――

 

1.大志を抱け。

2.目標達成の為の努力を怠るな。

3.失敗しても気にするな。

4.常に組織で行動しろ。

5.どんな時でも笑っていろ。

 

――って、事だ。

 

レメディオス・カストディオ団長は3で躓いていただけさ。

 

 

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モモンガの執務室に呼び出された二人は入室すると同時に綺麗な土下座を決めた。

 

「「すみませんでしたーー!!」」

 

何が?

 

駄犬カップルを執務机から見下ろすモモンガは困惑した。

アルベドはまた何かやったのかと呆れ顔だ。

 

「二人とも顔を上げなさい。それで……今回は何をしたんだ?」

「え?何も心当たりはないけど?」

 

顔を上げて、きっぱりと言い切るジョンに頭痛を覚え、額を押さえながらモモンガは溜息をつく。

 

あ、立ってもいい?

 

どうぞ。と言うか遠いので、せめて応接セットまで来てください。

 

ジョンとルプスレギナの駄犬カップルだが、心当たりは無いが取り合えず先に土下座しとけば間違いないだろうの精神でやったそうだ。

もう一度、溜息をつく。

 

幸せが逃げる?

お前の所為だ。

 

ジョンと一緒にバカなコントがやれて嬉しいのか、丸っこい金の瞳をキラキラさせてるルプスレギナに三度目の溜息。

 

「……本題に入っても良いですか?」

「あっはい」

 

応接セットに腰を下ろしたジョンの隣に座るようルプスレギナに命じ、向いにモモンガとアルベドが腰を下ろした。

メイドの用意した紅茶の香りを楽しみ。一息ついたところで本題を切り出す。

 

 

「ルプスレギナのレベルアップですが……信仰系の第10位階魔法を習得するまでは、他のレベルを上げないようにして下さい」

 

 

コックとか上げないように注意してくださいね。そう続けたモモンガの言葉をアルベドが補足する。

 

「モモンガ様は先ずナザリックの戦力を拡充したいとお考えです。その為、ルプスレギナにもメイド長ペストーニャと同等の魔法能力を身に着けてもらいたいとの事です」

「あーそーゆー事か。……んー素で第8位階まで使えるようになったら、中間達成のご褒美で1つ別なのとっても良いかな?」

 

死の宝珠in聖杖で〈魔法上昇(オーバーマジック)〉を使えるようになったから、装備があれば効率は悪いけれど2つ上の位階魔法まで使えるのを考慮しての提案だろう。

ジョンの提案にモモンガは少し考え込む。

 

「報酬は必要ですね。良いでしょう」

 

ところで何を取るつもりなんですか? あまりに下らないものだったらどうしようと一抹の不安を抱えながらモモンガは尋ねた。

 

「バードかな。ルプーも加えてライブできたら楽しそうじゃない?」

 

 

 


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