オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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私はジルクニフが好きです。
原作準拠のシーンばっかりなので、場面とびとびです。


第5部
第43話:深読みは貴方の健康を損なう恐れありんす


帝国の皇帝が予定通りにカルネ=ダーシュ村に来ると聞いた時、対峙しなくてはならないモモンガはデミウルゴスに「これからどうすればいいの?」と婉曲的に聞いてみたが、「御身の想定通りに進んでおりますので、そのまま行動して下されば結構です」と返されただけだった。

 

(その想定って誰の想定なんだよ!)

 

などと言えたら、どんなにか楽な事か。

ナザリック地下大墳墓の絶対者として君臨するモモンガは、子供たちの望むような態度を取ってやりたい。その為に、毅然とした態度と王者の笑みで「そうか」と答えるのが精一杯だった。

デミウルゴスの提案に従い、訳が分からないままモモンガは走り回った。……駄犬(ジョン)は、いつの間にか消えていた。

 

後で殺すと、固く決意したモモンガだった。

 

 

/*/カルネ=ダーシュ村の広場

 

 

ジルクニフは苦笑いを浮かべる。

飲み物一つで、こんなに強く敗北感を抱かせられるとは―――。

 

(あー、心が安らぐ。ここに来て初めて、安らいだ感じがする。もう……帰っても良いかもなぁ)

 

日差しを避け、秋に向かう風の音を聞きながら、カルネ=ダーシュ村の広場から見える畑仕事をしている農民やゴブリン、オーガ、ゴーレムにアンデッドと言う混沌とした景色を眺め、ジルクニフは思った。

 

「……!」

「……!?」

 

一部の隙もなかったユリたちのざわつきを感じ、ジルクニフは視線をアインズ・ウール・ゴウン教会に戻した。見れば扉を押し開けて、大柄な人狼が出てくるところだった。

その毛並みは青と白で、鼻筋の長い狼の顔。逆立った毛がライオンのたてがみのように首周りに生えている。爪は獣のように長く伸び、足はイヌ科の動物と同様の踵が地面から離れて、指先だけで立つ構造の物になっている。尻には長くふさふさとした毛に覆われた尾が生えていた。その体躯に黒い帯の道着のズボンだけを穿いている。

 

「いよッ!俺はジョン・カルバイン。アインズ・ウール・ゴウンの盟友だ……そっちの――」

 

ぐるっと周囲を見回し、行き来した視線をジルクニフの上で止める。

 

「イケメンが皇帝陛下でいいのかな?」

 

恐らく周囲の者たちの視線や護衛の動きで当りを付けたのだろう。異形種と言う事で表情は読み難いが、油断のならない相手だとジルクニフは気を引き締める。

 

「かた苦しい皇帝などという呼び方はしていただかなくても結構だよ。単なる一人の人間として、この場合は親しみを込めてジルで結構だよ」

「ふーん。なるほど……それなら、俺の事もジョンで良い」

 

気さくな笑顔を浮かべ、ジョンの瞳を覗いて、反応を窺っていたジルクニフだったが、同じようにこちらを覗き込むジョンの視線にたじろいだ。

(なんだ?好意は受け取ってやったぞと言う事なのか?亜人などは、割と単純な思考をしているのではなかったのか?)

ジルクニフの様子に護衛の四騎士バジウッドとレイナースが近くに寄る。

 

その瞬間、ジョンを中心にぶわっと風が吹いたように感じられた。

 

先ほどフールーダが放った英雄のオーラに匹敵する圧力を持ったそれが吹き抜けると、ジルクニフの横に立ったバジウッドが震えながら口を開いた。その顔は死の騎士(デス・ナイト)の時よりも青白く、引き攣っている。

「へ、陛下。これ不味い。俺らが束になっても押さえきれない。やばい。まじでやばい。手がほら」

見ればバジウッドの手が震えている。武者震いではないのは彼の引き攣った顔が教えてくれる。

「これは……ストロノーフさんより絶対強いって」

もう一人の四騎士であるレイナースは、先ほどの位置から徐々に後ろに下がっている。一目散に逃げないのは相手の注意を集めない為と、敵意を示していないからだろう。

 

「これくらいなら分かるのか……ん?」

 

すんすんと鼻を鳴らしたジョンはレイナースに向かって歩を進める。レイナースはとっさに逃げようとしたが、不思議と歩いている筈のジョンの方が早くレイナースの元へたどり着くと、その腕を掴んだ。

 

「なんで怪我をそのままにしてるんだ?」

 

腕を掴まれたレイナースは当然、振りほどいて逃げようとするが金縛りにあったように身体を動かす事が出来ずに目を白黒させていた。

 

「ルプー。癒してやれ」

「はい」

 

ルプーと呼ばれて、先ほど紹介のあったメイドのルプスレギナと言う美女が何処からか黒い宝珠の嵌った巨大な聖杖を取り出し、二人の元に歩み寄る。

レイナースの顔へ手を伸ばしたルプスレギナは首を傾げると、〈人狼(ジョン)〉に確認した。

 

「……これは〈呪い(カース)〉ですね。〈解呪(リムーブ・カース)〉を?」

「許す」

 

次の瞬間、レイナースの顔右半分は、深い青の瞳、色つやの良い唇、真珠のような歯と、かつての美しさを取り戻していた。

 

「おお!?」「一瞬で……あの呪いを」

「ユリ、鏡を。良かったな。お嬢さん」

 

ユリから鏡を受け取ると、恐る恐るそれを覗き込むレイナースだったが、望み続けた美しさを取り戻したその顔に「おぉぉ」と声にならない声をあげ、鏡を抱いて膝をつくと、むせび泣いた。

 

「ジル。ここに来るまでに何か危険なモンスターにでも出会ったのか?」

「い、いや……彼女の顔は以前にモンスターから受けた呪いでね。恥ずかしながら、帝国は信仰系魔法詠唱者に乏しくてね。解呪してやれなかったのだよ」

 

(良く言う。まさかレイナースの呪いもこの時の為の布石だったのではないだろうな?いや、あり得る。この者たちはいつから網を張っていたのだ!?)

 

呪いを解く方法を探す事を代償に四騎士に迎え入れたレイナースだ。恐らくもう使い物にはなるまい。このままアインズ・ウール・ゴウンの軍門に下ってもおかしくない。

1本1本、丁寧にこちらの牙を、心を、折ってくるアインズ・ウール・ゴウンにジルクニフの心はもう一杯一杯だった。

 

 

/*/ナザリック地下大墳墓第10層、玉座の間

 

 

ナザリック地下大墳墓第10層、玉座の間。

天井の高いその壁は白を基調として、そこに金を基本とした細工が施されている。

天井から吊り下げられた複数の豪華なシャンデリアは七色の宝石で作り出され、幻想的な輝きを放っている。壁にはギルドメンバーの大きな旗が天井から床まで垂れ下がっていた。

 

中央に敷かれた真紅の絨毯。

 

その左右をデミウルゴスがナザリックの威を示すに相応しいと選んだ悪魔、竜、奇妙な人型生物、鎧騎士、二足歩行の昆虫、精霊。大きさも姿もまちまちな、ただ、内包する力は人間とは桁違いな存在が整列する中を、帝国からの使者たちはゆっくりと歩いてきている。

 

その歩みが恐怖から遅いのは見て明らかだった。

 

ジョンはその先頭を歩いてくるジルクニフの姿と、彼に従う帝国の近衛兵たちに内心で感心していた。彼らのレベルであれば、恐怖から動けなくなってもおかしくない中を、それでも意地で進んでくる。彼らの克己心に乾杯してやりたいくらいだった。

 

《人間は凄いですねぇ……あ、モモンガさん》

《なんですか、ジョンさん?》

《皇帝ですけど、さっき外で会った時に〈ESP〉で表層意識を覗けなかったから何か対策してると思います》

《それは面倒ですねぇ。まぁ……偵察、ありがとうございます》

《怒ってる?》

《怒ってません》

 

《ホントかなぁ》

 

水晶の玉座の少し後ろに立ちながら、モモンガとそんな事を《伝言》でやりとりする。

やがて、皇帝とモモンガ――アインズ・ウール・ゴウンのやりとりが始まった。

 

 

/*/

 

 

「友か……良いじゃないか。友となろう」

 

「感謝するよ、私の新たな友アインズよ」

「良いと言う事だ。私の新たな友ジルクニフよ。それよりは本題に入ろうじゃないか。私の寿命は長いが、君たち人間の寿命は泡沫の夢のようなものだろう?あまりくだらない話で時間を潰す必要も無かろう。さて、ここには何用で来たのかね?」

 

ここからが本番だ。

ジルクニフは今までの短い時間で無数に立てた計画のうち、最善と思われるものを用意する。

 

「君が素晴らしい力を持った人物であり、本当は私の部下にならないかと声をかけに来たつもりだったんだが、その代わり……同盟を結ぼうじゃないか。どうだろう?」

 

ある意味で傲慢な言葉に、玉座の間の空気が重くなったようだった。しかし、ジルクニフはその表情を変える事無く、ただアインズを見つめる。

それを受けて、玉座に腰掛けたアインズはゆっくりと姿勢を変える。その骨の指を頬に当て、しげしげとジルクニフを眺め返す。

 

「……同盟か」

 

モモンガの声にあるのは微かな笑い。それを受けて、その横に立つ者たちも微妙な表情を浮かべた。圧倒的弱者が圧倒的強者に対しての言葉ではないから。

 

「同盟!いいじゃないか!アインズ、同盟を結ぼうぜ」

 

玉座の後に立つ青と白の毛並みの人狼の言葉に、ナザリックの者たちは動揺し、ジルクニフたちは急な大声に驚いた。

 

「ジョン……君は」

「属国ばかりでは詰まんね。それに、彼は君の友なのだろう?なら、俺の友でもある訳だ」

「詰まらないか……良かろう。同盟を結ぼうじゃないか」

 

人狼(ジョン)〉の言葉を一考したアインズ・ウール・ゴウンの姿にジルクニフは驚いていた。人狼の盟友と言う言葉に偽りはなかった事に、これだけの絶対の支配者に盟友がいる事に。つまり、それはアインズ・ウール・ゴウンは力だけの存在では無いと言う事。彼が対等と認める存在がそこにいると言う事に。

 

人狼の一言であっさり承認され、ジルクニフは呆気にとられた。肩透かしを食らったようでもあった。

 

(従属を要求しない。詰まらない?圧倒的優位な立場からの驕りなのか?)

 

これまでの魔導国の行動から、従属を要求された場合、そこから無数の手段を取れるよう思案していた。言葉の通りなら、従属国ばかりでは詰まらないから歯応えを見せよ、と言ったところなのだが。これほどの者がそんな事を狙う訳がない。

 

(やはり、もしかしてこれもまた、全てが向こうの計画通りなのか。ありえるな。あまりにも割り込みから返答までの時間が短すぎる。この場の誰もが奴の想定通りの行動を選択しているというのか)

 

ジルクニフはアインズと言う存在の恐ろしさは、その内包する力のみならず、その叡智だと強く認識した。

乾いた唇を舌で濡らす。

 

「そ、そうか。それは良かった。で、では私たちに早速望むことがあったら聞かせてくれないかね?」

「即座には思いつかないな。ただ、こちらの使者を置かせてもらえる場所など、貴殿とすぐに連絡を取れる手段を確立したい」

 

もしここまでがアインズの思惑通りに進んでいるのであれば、何も思いつかない筈がない。だが、この話の流れ事態がブラフの可能性もある。

 

「ああ、言う通りだ。まさにその辺りについてすぐに思いつかなった私は馬鹿だな。流石はゴウン殿」

「……ああ」

 

お世辞は嫌いか。

気の無い返事を聞き、ジルクニフは心のメモ帳にそう記入する。

 

「それでは私は帰るが、秘書官を置いて行こう。その辺りのすり合わせを彼としてもらえるかな?……ロウネ・ヴァミリネン!」

「――はい!帝国の為に全身全霊を以って行わせて頂きます!」

 

後にいるロウネの表情は見えないが、その声から彼の覚悟を強く感じた。実際、ここでの打ち合わせは今後の帝国の運命を決定するものになりかねない。もし即座に帝国に帰って、対アインズ・ウール・ゴウンを前提としたチームを発足させる必要がないのであれば、ジルクニフ自身が残りたいぐらいだ。

 

「良い返事だな。皇帝への忠誠心の高さを感じさせてくれる。それではこちらからはデミウルゴスを出すとしよう。さきほどは少し無礼を働いたが、許してもらえると言う事なので、彼に任せる」

 

静かに一礼する蛙面の化け物を視界の端に収めながら(早くも一手打ってきたか!)、ジルクニフは優秀な部下を一人失うだろう事を予感した。その為、アインズを見つめる視線に憎悪の炎が宿らないように必死で堪えなければならなかった。

 

「デミウルゴスは私の信頼厚い側近。二人で話し合えば、すり合わせも上手くいくだろう」

 

蛙の化け物(デミウルゴス)の言葉には強制効果がある。確実に、それを使ってロウネを操り人形にするつもりだろう。

心の中の叫びをこれっぽちも出さずに、ジルクニフはアインズに微笑んだ。

 

「それは良かった」

 

/*/

 

ジルクニフがアインズに背を向けた瞬間、いままで平伏していた1人の男が立ち上がった。

 

「アインズ・ウール・ゴウン様!1つ、お願いが!」

 

血を吐きそうな真剣な叫びを上げたのは、フールーダだった。誰もが驚く展開の中、再び声を張り上げた。

 

「何卒!私を貴方様の弟子にして下さい!」

 

玉座の間が静まり返る。

初めて困惑したようにアインズがジルクニフを眺めた。流石にこの展開は予測してなかったのだろう。ジルクニフは僅かばかりに胸がすく思いだった。

 

多少のごたごたはあったが、結局のところジルクニフはフールーダの主席魔法使いの任を解き、彼は無事に望み通りアインズの弟子となった。

 

「え?そんなんでいいの?」ぽつりと零れたアインズの呟きは誰の耳にも入らず、中空に消えていったが。

 

帝国の主席魔法使いが死に、アインズ・ウール・ゴウンの熱狂的な弟子が生まれた。

アインズが人の扱い方も長けるという実例を見せられ、ジルクニフはアインズと言う存在に対する警戒心をより一層強めるのだった。

 

/*/

 

《やったね!モモンガさん、待望の男手だよ!》

《いや、私が欲しかったのはこういうのでは……と、言うか。どうして私のところにはおっさんばかり》

《まー、カジットも、フールーダも、おっさん言うよりは、おじいちゃんだけどね》

 

 

/*/ナザリック地下大墳墓、第9層モモンガの執務室

 

 

「モモンガ様。恐縮ながらご質問させてくんなまし。何ゆえ、人間の皇帝を協力者の地位につけられたでありんすかぇ? 帝国などさっさと支配してしまえば良いのじゃありんせんでありんすか?」

 

会談が終わり、守護者が集結したモモンガの執務室にシャルティアの疑問の声が響いた。

 

《それは駄犬が同盟が良いって言うからだよ!》

《はっはっは、この場は僕に任せたまえよ》

 

こいつもう馬鹿を隠す気もないなと、呆れ半分、羨ましさ半分でジョンを見るモモンガの視線につられ、守護者たちの視線もジョンに集中した。

 

「モモンガさんに代わって、俺が答えよう。いいかい、シャルティア?」

 

ちっちっちと人差し指を振りながら、シャルティアに問いかけるが、シャルティアに否などあるわけもなく。

 

「新婚旅行とは古来から海外旅行と相場が決まっているんだよ。属国じゃー国内視察になっちまうだろ?」

 

Ω ΩΩ< な、なんだってー!!と、全員がムンクの叫びになったようだった。

そして、久しぶりに〈火球(ファイヤーボール)〉の絨毯爆撃で執務室に朱の花が狂い咲いた。

 

「この色ボケ駄犬がぁぁぁッ!!」

「ギャアァァァァ―――――!!」

 

その時、アルベドに電流走る!

 

「なるほど……私とモモンガ様の新婚旅行の事までお心を砕いて下さっていたのですね。流石は慈悲深きカルバイン様」

「やだなー、アルベド様。私とジョン様の新婚旅行っすよー」

 

お茶の上げ下げと絨毯爆撃の跡を片付けながら、ルプスレギナがアルベドに突っ込みを入れている。

 

「―――くくくく」デミウルゴスの笑いが響く。「流石はモモンガ様、カルバイン様。至高の御方々の深き叡智。私の及ぶところではありません」

 

《やめろ!ハードル上げんな!つか、俺まで巻き込むな!》

《及んでる!及んでるから、止めて!私のライフはもうゼロよ!》

 

守護者全員の視線がモモンガの元に集まった。それは愚鈍なる自らに教えてほしいという、哀願の思いを込めた視線だ。

顔を見渡し、モモンガは一息、いや数度、必要のない呼吸を繰り返す。ジョンは気の毒そうにモモンガを見ていた。

モモンガはゆっくりと椅子から立ち上がる。そして守護者全員に背を向けると、デミウルゴスに肩越しに賞賛の言葉を贈った。

 

「……流石はデミウルゴス。私の狙いを全て看破するとは……な」

 

流れるような知ったかぶりである。

 

「いえ。モモンガ様の深謀遠慮。私の及ぶところではございません。さらに理解できたのは一部だけではないかと思っております」

賞賛に対して、敬意の一礼でデミウルゴスは答える。

「智謀の王なる言葉をメイドたちが話しているのを聞きましたが、まさにモモンガ様に相応しい二つ名だと思いました。モモンという冒険者を作ったころから、これほどの策を練っておられたとは。まさに廃墟の国を持たない為の方策です」

モモンガは自慢げに頷くが、《伝言》も止まらない。

 

《あれは冒険がしたかっただけなんですが……》

《ねーモモンガさん。どうして冒険者が出てくるんだろう?》

《私が知りたいです》

《なんか……皆、必死なんですが》

 

モモンガは背を向けたまま、片手で目の辺りを覆った。哀願してくる守護者たちへの罪悪感は無論ある。しかし、それ以上に彼らの期待に応えたいという思いもあった。

 

――御身にお仕えし、お役に立てる事こそ我々の喜びです。

 

幾人もの守護者たちが同じような意味の言葉を背中に投げかけてくる。その期待の声を裏切る事など出来ようか。不出来な自分ではあるが、彼らの期待に、彼らの希望になってやりたい。

仲間たちとの思い出の詰まった愛しい子供たちの期待と信頼を裏切るなど、モモンガには出来なかった。

 

……それに、この小芝居が楽しくなってきている自分もいる。

 

振り向きざまにギルド長の証のスタッフをデミウルゴスに突きつけた。

 

「デミウルゴス。お前が理解した事を皆に説明する事を許す」

「畏まりました」

 

デミウルゴスは頷くと、仲間たちに話し始めた。

 

 

/*/エ・ランテル

 

 

秋を迎えようとするエ・ランテルへの入城は予定通りに滞りなく行われた。

子供に石を投げさせ、それに対して入城の列に加えていたラナーとクライムが慈悲を乞う。モモン(パンドラ)、ジョジョン、レギナが住民の側にたち、住民を人質にとられて膝を屈するところまで予定通りだった。

 

エ・ランテルの太守には元王国第3王女「黄金」改め、その身を悪魔に堕とされた「黄昏の姫君(オレンジ・プリンセス)」ラナーを任命する。アインズはラナーへ、これまでの王国を改革する為だった多くの……その都度大貴族の横槍でほとんど廃案とされた……政策を再び実行していくよう命じる。

 

その手腕は、黄昏の姫君(オレンジ・プリンセス)の傍らに仕える黄昏の騎士(アーベントデンメルング・リッター)クライムの期待の眼差しもあり、存分に発揮されていくのであった。

 

また、大英雄モモンの市井での呼びかけもあり、それらの相乗効果でエ・ランテルは周辺国家が予想も出来ないほど、血を流さずに平和的に統治が進んでいく事になる。

 

/*/

 

《エーリッヒ擦弦楽団の〈上位二重の影(グレーター・ドッペルゲンガー)〉を使えば恥ずかしい神輿に乗らなくても良かったのでは!》

《今更遅いわ!!!……あと、モモンガさん。例の件よろしくね》

《私がやるわけではないので構いませんが……王女様も大変ですね》

 

/*/

 

また、エ・ランテルでは市井にお触れを出す際に太守自ら演説……ではなく、演説を歌にして都市民へ歌声で届けた。これは後の世において「演歌」と呼ばれ、ラナーの歌声の美しさもあり、都市民の心を大いに癒したと言う。

 




黄昏の姫君(オレンジ・プリンセス)って言ったら歌わないとね。え?知らない?アリア読め。

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