オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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駄犬がいなくなったら、シリアスしか出来ない!つらい!


第34話:横っ面を引っ叩くのは女神です。

 

 

「――おい、どうするんだ。これ?」

 

 

モモンガの絞り出す声が空しく響いた。

停滞空間丸ごとブラックホールに吸い込まれた為、球状に抉られた大地。その縁にモモンガとルプスレギナはいた。

 

二人きりだ。

 

騒がしい駄犬の姿はない。

夜明け前の最も暗い時間帯。穴の底は見通せない。いや闇を見通す死の超越者の眼ならば見通せるだろう。

だが、その暗闇の底に騒がしいジョンの姿はない。どこにも……ないのだ。

 

そのまま時間が過ぎ、モモンガの呆然とした意識が平常に戻ってくる。

「糞が!」

緊張感が落ち着いてくると、モモンガが感じたのは強烈な憤怒であった。アンデッドになってから強い感情は抑え込まれるようになった。しかし、抑え込まれても、瞬時に新しい憤怒がモモンガの元へと戻ってくる。

仲間を失った喪失感よりも、失った事に対する憤怒が次々と心の奥から湧き上がってくる。

「糞!糞!糞!」

モモンガは何度も大地を蹴り上げる。

尋常ではない肉体能力の高さから、大量の土が蹴り出される。周囲に凄まじい土煙があがる。それでもモモンガの憤怒は収まらなかった。

 

自分を諌める声が聞こえたような気がするが、気にもならなかった。

 

微かな振動が足元から響いてくる。やがて、それは徐々に大きくなり、巨大な魔獣が唸るような音となって、抉られた大地の底から巨大な魔樹が姿を表す。

それは高さは数百メートルに及び、金属的な灰色の木に似た触手をうねらせるの肉食性の異生物だ。

 

ザイクロトルからの怪物。

 

それは幹の中心にブラックホールを抱えていた。抱え込まれたブラックホールは飲み込んだ大地と大気を咀嚼し、降着円盤を形成し、クエーサー反応により高エネルギーの宇宙ジェットを噴出させていた。ブラックホールの無限の潮汐力により飲み込まれた大気と大地は素粒子にまで分解されながら、落ち込む際に摩擦によって1億度もの超高熱となるのだ。

停滞空間で減速された宇宙ジェットは十万度のプラズマジェットとなって、これまでザイクロトルからの怪物がエネルギーを吸収していた地脈、マグマ溜りへ逆に膨大なエネルギーを注ぎ込みながら、シャンの最後の命令に従いゴーツウッドの森にある神殿を目指し、大地を割って地表へ姿を現したのだった。

 

「糞!お前か!お前のせいでジョンさんは!」

 

眼窩の赤い光をさらに赤く光らせながら、モモンガは周囲を見回す。

いつの間にかアルベドをはじめ守護者達が揃っていた。モモンガの憤怒に当てられてか、アルベドたち守護者の表情には怯えの色が濃い。

モモンガは構わず手を上げた。この憤怒の原因を叩き潰してやるのだ。

 

「お前たち……命じる……こ……」

 

怒りのあまり途切れ途切れになる言葉でモモンガが命令を下そうとした時、すぱーんと小気味良い音が響いた。

 

 

 

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「モ、モモンガ様、お怒りを御静め下さいませ!」

史実ならばモモンガの憤怒に触れて怯えるだけだった。だが、いまのアルベドは『――お前は、俺達の誇りだよ』そう言ってくれた至高の御方の言葉。愛する人を愛する為に創造されたと知った喜びが、彼女を強くしていた。

初めて見る絶対の主人の憤怒に腰が引けないと言えば嘘になる。それでもなすべき事をなせるのだ。

怒りに我を忘れ、僕達へ命令を下そうとしている主人へ、アルベドは平手打ちをくらわせた。驚いたように、あるいはスイッチが切れたように、静かになった主人の姿に守護者たちが色めき立つ。

 

「アルベド!乱心したか!」

デミウルゴスの声に、コキュートスの斬神刀皇、シャルティアのスポイトランスがアルベドの首と胸に突き付けられ、アウラの鞭が腕に絡まり、マーレは杖を構えた。

「私は至高の御方々より、殺意叛意を含めた全てを許されています!」

責める言葉にアルベドはヘルメス・トリスメギストスに包まれた大きな胸をさらに大きく張り応えた。

「はぁッ!?」

なんだそれは?どういう……言葉通りの意味なのかと、呆れた声が上がった。

続いてデミウルゴスが言葉を発しようとしたところで、モモンガはようやく自分が絶対の主人らしくない言動をした事を悟る。冷静さが急速に戻り、出来もしない息を大きく吐き出す。心に宿った身を焼く炎を、吐き出すつもりで。

 

「……その通りだ。アルベドの全てを許すと言った私の言葉に間違いはない……すまないな。少しばかり我を忘れたようだ。今の失態は忘れてくれ」

「とんでもございません。それよりも私のお願いを聞いていただき、ありがとうございます!もしモモンガ様が忘れよと命じられるのであれば、全てを忘れます。ですが――ご覧下さい!」

 

 

喜色満面のアルベドの指さす先、ブラックホールの中心で赤く輝くクエーサー反応による宇宙ジェットとは別に、中心を外れた位置に緑がかかった青銀色の光があった。

 

 

「あれは……まさか……」

「カルバイン様の《天地合一》の光だと思われます!」

信じられない。信じたい。縋る様なモモンガの声に、背中を押すようにアルベドの声が続く。守護者統括は続ける。

「ブラックホール内部では空間が歪んで座標特定が難しいのでしょう。《大魔術師の魔除け/アミュレット・オブ・○ードナ》を使っての《転移門》での脱出こそ出来ないようですが、至高の御方の命脈はいまだ途切れておりません。

 

『泣くな、アルベド。何処にも行かないし、何処にも連れて行かない。

 俺はこれまで通り、モモンガさんとアインズ・ウール・ゴウンを守る』

 

そう仰って下さった方がどうしてこの程度(ブラックホール)でお隠れになりましょう」

 

光のドップラー効果で真っ赤に燃える抱え込まれたマイクロブラックホールのクエーサー反応とは別に青銀色に輝く光が見える。もっともそれもこれから青から緑、黄色を経て赤に染まってブラックホールに飲み干されるのだが。

それでもアルベドは、ジョンが戻ってくる事を疑っていなかった。

 

 

 

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《天地合一》の青銀色の光が巨大で空虚な虚空の孔へ飲み込まれ、呆気ないほどに簡単にそこには何もいなくなる。

その時にルプスレギナが感じたのは足元が崩れ落ちるような喪失感だった。

他の誰も何も浮かばなかった。ただ、ジョン・カルバインが失われた事だけが全てだったのだ。

 

「……ス……ルプスレギナ!」

「アルベド様ぁ……私、壊れ……」

 

だから、アルベドの声にも壊れそうな自分を訴えるので精一杯だったのだ。だというのに、アルベドは容赦なくルプスレギナの横っ面を引っ叩く。

 

「何を不抜けた事を言ってるの、この駄犬!顔を上げなさい!眼を開きなさい!いと高き至高の御方は……貴女の愛するカルバイン様はブラックホールに飲まれた程度で死ぬような御方ですか!?あの光はなんですか!?」

光のドップラー効果で真っ赤に燃える抱え込まれたマイクロブラックホールのクエーサー反応とは別に緑がかかった青銀色に輝く光が見える。

「貴方には僕としてやるべき事があります。立ちなさい。立って、女ならば愛する人を一番に考えなさい。

 僕として一番に創造して下さった方が消えない?

 そんなもの!消してしまいなさい!いと高き至高の御方々はそんな程度で貴女に失望しません。

 答えなさいルプスレギナ・ベータ!壊れようとした時、貴女の中に創造して下さった方がいたのか。創造して下さった方が去っても壊れなかった貴女が壊れようとしたのは何故か!」

 

それは天啓のようだった。

 

創造して下さった方が去っても自分は壊れなかった。なのに今、愛するジョン・カルバインが失われたと思った時、心は、精神は散り散りに乱れ、世界の何もかもが失われたように感じたのだ。

そこには一番も二番もない。

ジョン・カルバインが失われた事だけが全て、それ以外が入り込む余地は一切なかった。

 

(お許し下さい。獣王メコン川様。私、ルプスレギナ・ベータはジョン・カルバイン様を貴方様よりも愛しております)

 

不意に涙があふれ出た。

贖罪の、悲しみの涙なのか。それとも愛するものを愛していると思える喜びの涙なのか自分でも判らない。

ルプスレギナはアルベドの手に縋りつきながら、すすり泣いた。

 

 

 

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暗闇の中、巨大な狼が虚空を疾走していた。

青銀色に光るその狼は背後の暗黒、赤い光から逃れるように遥か彼方の光を目指して疾駆しているのだ。

 

《モモンガさーーん!アローアロー!……ダメだ。繋がらない》

 

誰であろう駄犬ことジョン・カルバインであった。

鼓動は早鐘の如くドクドクと耳に煩く、肺は焼けるばかりに呼吸を繰り返し、転移前の不自由な体のように全力を振り絞ってなお背後の暗黒からは逃れられない。

リング・オブ・サステナンスなどを装備しているから、疲労による苦痛は無視できる。この状況下でもそれを少し寂しく思う。

 

《クィック・マーチ/早足》《ヘイスト/加速》《レッサー・デクスタリティ/下級敏捷力増大》《呼吸法》《残影》

 

自らの持てる魔法と特殊技術で出来うる限りの身体強化を行い世界級(ワールド)アイテム大地を揺るがすもの(フローズヴィトニル)を発動し、サイズを最大化。100倍化された歩幅で虚空を蹴って駆ける。

呼吸する大気も薄くなり、最早、自分が本当に呼吸しているのかも分からない。

超位スキル《天地合一》で取り込む外気も色もなく、光もなく、ただ虚空のみを吸い込んでいるようだ。

 

自分の行いに本当に意味があるのか?確実な死に向かう中で無駄な足掻きをしているのではないのか?

 

そんな疑問が浮かび、心が不安に塗りつぶされそうになる暗闇を、ジョンは唯ひたすらに駆け続けていた。

 

 

 

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「ジョンさんの事で気が動転していた。もう大丈夫だ。この状況、タブラさんが以前語っていたものに酷似している」

そう言ってモモンガは守護者たちへと振り返った。内心では本当にそうなのか疑っていたが、それをおくびにも出さず言葉を続ける。

「あれはザイクロトルからの怪物。シャッガイからの昆虫の生体宇宙船だ。幹の中央に抱え込まれているブラックホールに飲み込まれた大地と大気は降着円盤を形成し、クエーサー反応により高エネルギーの宇宙ジェットとなって噴出する。潮汐力により素粒子にまで分解されながら、落ち込む際に摩擦によって1億度もの超高熱となる。それを停滞空間で減速し10万度のプラズマジェット推進で飛び立つんだったかな。ジョンさんが良かれと制御装置になっていた亜人を半分ほど解放してしまっているから、このまま飛び立てるか怪しいが、惑星上でこのブラックホールが解放されてはこの世界が無くなってしまうな。……デミウルゴスどう思う?」

 

まさかタブラGMによるTRPGシナリオそっくりだとは言えないが、ゲームが現実になっている今、それがモモンガには一番しっくりきたのだ。

 

「はッ!カルバイン様の《天地合一》の光が可視領域を外れておりませんので、いまだ事象の地平面(シュヴァルツシルト面)に落ち込んでいない故、救出は可能と判断いたします」

 

(本当に救出できるのか。100LvPC、NPCすげぇ。もう、タブラさんが本当にマインド・イーターでも驚かないぞ)

 

「現在、カルバイン様は《天地合一》を使っておられますが、これは周囲のエネルギーを自身に取り込むスキルであり、ブラックホールと内部でエネルギーを食いあってる状態であります」

「ふむ」

「ブラックホールが維持できない程にカルバイン様がエネルギーを喰らってしまうと、ブラックホールはホーキング輻射で加速度的に質量とエネルギーを失い、最後には爆発的にエネルギーを放出してブラックホールは消滅します。直接的な爆発もそうですが、ガンマ線バーストによって周辺の生態系は致命的なダメージを受けると予想されます。自然を愛するカルバイン様にとっては望まぬ結果かと。守護者の力を結集し、生体宇宙船を上空50万メートル以上へ誘導し、そこで殲滅するのが、最も最善かと考えます」

ホーキング輻射ってなんだっけ?ガンマ線バーストって何か強そうだな。

「……さすがはデミウルゴス。作戦を皆に説明してあげなさい」

「はッ!」

 

デミウルゴスの説明する作戦は一見難しいものではなかった。

アウラが周囲警戒を行い。

マーレのドルイド能力でザイクロトルからの怪物の幹を真っすぐに整える。シャルティアの《ゲート/転移門》で一気に上空へ転送するが、サイズが大きすぎるので出来るだけ真っ直ぐ打ち上げないと転送が難しくなりそうだからだ。

そして、出力不足から未だ飛び立てぬザイクロトルの怪物が飛び立てるよう幹を根本からコキュートスが切断する。

角度の計算などはデミウルゴス等の担当。連絡役としてルプスレギナも《精神結合》で参加。

 

最後に飛び立つ際の噴射炎からアルベドが特殊技術で全員をカバーして終わりだ。

 

《天地合一》の時間は数分間だが、停滞空間内部は時間が数十数百分の1にまで減速されているので、この場合は問題なし。

この作戦唯一の問題はジョンが自力でブラックホールを蒸発させられるかだけ。それを信じての作戦開始だ。

 

 

 

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100LvのPCによる《天地合一》はジョンの想像以上に外気を取り込む。

内気と外気の合一と言う事は内気に相応しい量の外気を吸い込むのではないだろうか。

外気が薄くなるなか、それをブラックホールとジョンは取り合っていたが、それすらなくなった時にはどうなるのだろうか?

 

単純な物理法則を超えて、ブラックホールからも外気を取り込むのだろうか?

 

内気と外気が入り混じり、ジョンと世界が入り混じり、それが体内を循環し始める中、転移して初めての発動にあったような。奇妙な手応えがあった。

体内で高速循環する気が更に大きな回転体に縁を接して強制的に回転数を上げられる感覚。

自分が一つの渦でありながら、更に大きな渦に属す。あるいは小さな渦の集合体になる感覚。

 

自分の纏う世界が大きく顎を開けて、渦を飲み込んでいく。

《それ》は何か巨大な存在の一部をあたかも伝説のフェンリルが飲み干していくかのような感覚だった。

 

その刹那、背後の赤い光が揺らめき、末期の叫びをあげるかのように一瞬の後に爆発する。

 

ジョンは自らの視界が白く染まるのを見た。次の瞬間、自らがどこにいるのかが理解できなくなる。

渦に飲み込まれた枝のように、揉みくちゃにされ、平衡感覚がうまく働かない。それが何かジョンも理解できなかった。ただ白い光の中、激痛が襲いかかってくる。

防御をしようとしても体が非常に重く、動かすのが難しい。だが、ジョンは全身全霊をかけて動かす。これは不味いと理解できたためだ。

全身を丸め、両腕で身を守るように庇う。

 

 

爆発の衝撃に上下左右揉みくちゃにされる。揺さぶられながら、爆発の衝撃は常人どころかシモベですら跡形もなくなる力でジョンを遥か彼方に見える外の光へ向かって押し出した。

 

 

それは極限の爆発。

白い閃光が世界を染め上げる。

ブラックホール内部でなければ、生み出された衝撃波が大地を吹き飛ばし、舞い上がった土砂がキノコの形を空に作っただろう。

超熱波による致死領域はキロメートル単位にも及び、その範囲内に存在し、動く影はなかっただろう。

 

 

生きる者がいるはずがない、そんな中、形を保っているものが一人いた。

 

 

凄まじい爆発によって生じた超高熱波の中にいたが、世界級(ワールド)アイテムの力を全身に受け、巨大化していたジョンはほぼ無傷でそこに存在してた。

 

 

(うぇぇぇ、なんだ今の爆発?)

空気が無かったか薄かった為か、ほとんど音のなかった爆発が通り過ぎた後、ジョンは頭を振って気を取り直す。

そして停滞空間独特の押しつけられるような時間停滞の感覚がなくなっている事に気がついた。

(……停滞空間から抜けた?脱出できたのか?)

 

 

そして視線を上げた先、そこには……

 

 

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視界一杯に惑星が広がる。

地平線は優美な曲線を描き、大陸は地図のように輪郭をあらわにしている。

雲を纏う惑星の大気の上、広大な範囲に渡ってオーロラが発生していた。それは蒸発したブラックホールから飛び出したプラズマ粒子によるものだったが、ジョンには自らを祝福する惑星の光に見えた。

上は赤、下は緑。その光のカーテンの東西の長さは数千km、厚さは約500m、下端は地上約100km、上端は約300から500kmはあるだろうか。この美しい光は大陸全土で観測できたと言う。

 

見上げる空も良いけれど、見下ろす世界も綺麗だ。

 

ほうと息をつくジョンの傍らに《ゲート/転移門》が開いた。同時に《ゲート/転移門》からアルベドとルプスレギナを従えたモモンガが現れる。

 

「ただいま、ルプー。

 ただいま、モモンガさん。

 ただいま、みんな(アルべド)。心配かけたな」

 

空には宝石をぶちまけたように無数の星々と月のような大きな惑星。

青く白い月と星の光に照らされた静かな美しい世界。転移してから何度も見ているが、夜毎にジョンが感動にうち震えている世界。

 

「あまり心配させないで下さい」

「いやー、さすがに今回はダメかと思ったね」

 

ジョンののんきな物言いに、モモンガのスタッフを握る手に力が込められる。《火球》で突っ込みを入れるか迷う。

そんなモモンガをよそに自分が落下しつつあることに事に気がついたジョンは、《飛行》の魔法を使って落下を食いとめていた。

モモンガはその変わらぬジョンの姿に強い安堵感がこみ上げてきた。胸をなで下ろし、精神が安定化されるのを感じる。

 

「……それより、ルプスレギナに言うべき事を言ったんですか」

「それな!」

 

そもそもの大本。この大騒ぎの原因となったのはなんだったのか思い出し、静かな声で問い詰めれば、「それな!」と明るく返してくる姿にモモンガは脱力した。その言葉にアルベドがこの駄犬様は!と言わんばかりに表情を崩す。

そんな至高の御方々の会話に意を決したルプスレギナが割り込んできた。

 

 

「ジョン様!私、ルプスレギナ・ベータは御身をお慕いしております。誰よりも……創造者たる獣王メコン川様よりも、愛しております。どうか、どうか、お傍に置いて下さいませ」

 

 

「……」

「……先に言われてやんの。このヘタレ。ぷっ」

 

思わず沈黙したジョンへ、唇がないので噴き出せないモモンガが言葉でぷっと吹き出し見せる

 

《いや、いやいやいや、友人の前で大告白会とか、どんな罰ゲーム!?》

《さぁ、駄犬(ジョン)さん。早く答えてあげたらどうですか?》

 

心配させた意趣返しか。内心溜息をつく。これから言うべき言葉を思うと赤面が止められない。

それでも獣毛に覆われた狼頭なら、赤面していることにも気がつかれまいと思い。努めて冷静な声でルプスレギナへ告げた。

 

「ルプー。俺もルプスレギナ・ベータを愛している。獣王メコン川さんに返せと言われても決して返さないぞ。お前は俺のものだ。俺の傍にいてくれ」

「はい!」

 

ぽろぽろと涙をこぼしながら、ジョンの胸に飛び込んで泣くルプスレギナ。

 

《あージョンさん》

《なんだよ。今いいトコなんだけど》

 

胸の中で泣きじゃくるルプスレギナに、自分をここまで真っ直ぐに愛してくれる人の姿に、感動し、彼女を抱きしめる腕に力がこもる。

自然とルプスレギナにキスをして……口の構造上、鼻先をちょんと触らせる程度だったが……その涙をなめ拭き取っているところだった。

 

《ルプスレギナですけど、守護者たちと《精神連結》したままですから、みんな筒抜けですよ》

《ちょッッッ!?謀ったな!モモンガさん謀ったな!!》

《ふふふ、君は良い友人だが駄犬なのがいけないのだよ》

 

 

何時だって物語はこう終わる。

二人は末永く幸せに過ごしましたとさ。

めでたしめでだし。

 

 

 

リア()爆発しろ!

 




これで私のジョン・カルバインとルプスレギナ・ベータの物語は一区切りになります。
一応、リザードマン編とか王国編とか帝国編も考えてはいるのですが、アニメ2期始まる前に一区切りつけられてほっとしています。
難しいこと考えないで開拓編をだらだらと書きたいですね。

ご閲覧ありがとうございました。<(_ _)>

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