オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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今日は意地でも爆発する話をアップしないといけない気がした。
社会人はプレゼントを贈る側であって、贈られる側ではないんだぜ。



第27話+1:如何にして料理特訓が爆発に至ったか?

 

ルプスレギナが料理の特訓を始めたと聞き、モモンガも料理を試してみるとやはり出来上がったのは黒焦げ肉。肉を焼き始めてからの記憶すら漠然としていた。それはぞっとする体験だった。だが、それをルプスレギナは自らの意志で日々何度も繰り返していると言う。

 

あの明るく社交的であるが、仕事ぶりに一抹の不安が残るルプスレギナが、そこまで一途になる時があるのかとモモンガは感心すると共に、小鬼将軍の角笛で呼び出されたゴブリン達も料理が出来ず、薬草の採取が出来ないなど、クラス、スキル、設定などで出来る事、出来ない事が定められているようだと結論づけた。

 

 

一般メイド達にも同じように料理をやらせてみたが、同じように黒焦げ肉が出来ただけであった。

 

 

ルプスレギナが試している事もあり、現在は修練をさせていないが、レベルがカンストしていない一般メイドやゴブリン、プレアデス達はレベルアップすれば、新たなスキル、クラスを身につけられる可能性もあり、レベリングさせて見るのも一つの方法でだろうとモモンガは考えていた。

 

 

「はぁ、それで料理特訓がいつの間にか戦闘訓練に」

「なんですか、ジョンさん? その駄目だコイツ、早くなんとかしないとって顔は」

 

 

モモンガは、呆れたように溜息をついてみせるジョンへ不満気な視線を向けた。

第六階層闘技場へ呼び出されたジョンの見たものは、召喚されたモンスターと戦うルプスレギナの姿。

召喚されたモンスター達は反撃禁止を命令されているのか、ルプスレギナに一切の反撃をしない。

 

「……だって、これは経験値稼ぎで、戦闘訓練じゃないよ?」

「レベルを上げたいのですから、別に良いでしょう。そう言うのは漆黒の剣を相手にやって下さい」

「はーい。……で、上がりそうなの?」

「ルプスレギナは59Lvですからね。60Lv以上の召喚モンスターをスキルで1日に何百体も用意できれば簡単なのですが……」

「ウルベルトさんが作ってた魔神像は? 《最終戦争・悪》を六重展開する奴。……でも。そもそもレベリングなら、シズ(46Lv)とか恐怖公(30Lv)の方が良かったんじゃ?」

「ああ、それはルプスレギナが新たなスキル(料理)を身につけたいと自分から努力していたからですよ。あと、暇そうに村の中をうろうろしていたので。……魔神像、使えるかもしれませんね」

 

執務の息抜きに村へ抜け出したモモンガが、村の中をうろついているルプスレギナを見つけて、そのまま検証になったのだろうか。

このペースなら数日でレベルが上がるか確認できるだろうとは思う。拠点NPC達の総合レベル制限などがどうなっているのかも非常に興味がある。

だが、レベルを上げるなら、もっと、こう血反吐を吐く様な経験をしてこそだと思う自分は異端なのだろうか。

 

 

「良し、今日のところは終わりにしよう」

 

 

ジョンがそう思っている間に今日のノルマが終わったらしい。

相手が反撃してこないとは言っても、格上相手に連戦していたのは結構な重労働だったようだ。

しなやかでメリハリのあるルプスレギナの肢体は、激しい運動にぐっしょりと汗に濡れ、全身がほんのりとピンク色に染まっていた。

 

汗を搾り取れそうな濡れ具合だったが、ホワイトブリムの拘りにより胸元の白い部分は決して濡れ透けする事は無く。ジョンを失望させた。

 

(ホワイトブリムさん、あなたには失望したッ!!)

筋違いな怨嗟の声を内心で上げるジョンだったが、自分に気づいたルプスレギナが汗に塗れた自身を恥じて顔を俯かせながら、身体を隠すように抱きしめた仕草に喝采をあげた。

(ヘロヘロさん、GJ!! そうだよ、普段とのギャップで恥じらいが無いと萌えないよねッ!!)

 

腕に寄せて上げられた見事な双丘をガン見する(本人はチラ見のつもり)ジョンだが、その視線に恥じらいを一層強めるルプスレギナにモモンガは「おや?」と首を傾げた。

先日、エ・ランテルに出た時にはジョンがそれ(胸の谷間)を見るのも、ルプスレギナのそれ(胸の谷間)を見た周囲をジョンが無言で威圧するのも、ルプスレギナ的にはありのようで上機嫌だったのだが、今日は何時に無く恥らっている。

 

自分も生身であればドキッとしたかもしれないが、生憎とこの身はアンデッド。

 

アルベドほどに自分の好みを踏襲した存在でなければ、精神作用効果無効を超えて自分を動揺させる事は出来ない。

なので、冷静にこの二人に何かあったのだろうかと考える事がモモンガには出来た。だが、ルプスレギナに思慕の念から、自分を創造していないジョンに対しての恥じらいが生まれているなど、モモンガの想像を遥かに超えていた。

 

これがアルベドvsモモンガ、シャルティアvsペロロンチーノならば、二人の側(アルベドとシャルティア)には100%至高の御方の理想にそった姿である確信があるので、恥らうよりも、如何にして至高の御方に悦んで頂くかを考え始めるのだが、ある意味で非常に恋する乙女になってしまったルプスレギナの心境の変化は、ヘタレ童貞であるモモンガやジョンには推し量れないものだった。

 

 

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(ひいいいいい! 臭いを嗅がないで欲しいっすー!!)

 

すぴすぴとジョンの鼻が鳴る音を聞いてしまいルプスレギナは内心でテンパっていた。

わざわざ嗅ぐまでも無くジョンのステータスならば、もともと個別判断が出来るほど普段から個々の匂いを嗅いでいるのだが、だからと言って汗だくになった自分の臭いを嗅がれたいとはルプスレギナも思わない。

 

ジョンとしては女の子っぽい良い匂いがする程度にしか思っていないのだが、それは流石にルプスレギナには分からない。分かったところでルプスレギナの救いにはならない。

だが、至高の御方を待たせたままには出来ず。羞恥に全身を染めながら、ルプスレギナは処刑場へ向かう罪人のような足取りで二人の側へ足を進めていった。

 

悲壮感溢れるその姿にジョンは狼頭を傾げ、何か気づいたのか一つ頷くと、インベントリから大きなタオルを取り出してルプスレギナに頭から掛けてやった。

同時に指を鳴らして、《小さな願い》を発動させるとルプスレギナの全身を清めてやる。

 

「……あ」

 

不意のジョンの気遣いに安堵の息をついたルプスレギナが、潤んだ金の瞳でジョンを見上げる。

見上げられた至高の御方は、シモベ(ルプスレギナ)の感謝も余所に(ヤバイ! いつもの強気な表情(かお)からの落差にクラクラする! 抱き寄せたい!)などと思っているのだが。

誤魔化すようにジョンは口を開いて、赤毛のメイド(ルプスレギナ)に問いかける。

 

「ルプーは新たな能力を身につけるなら、何がしたい?」

「料理を……ジョン様に食べて頂きたいです」

 

囁くように、けれども直球で返された言葉にジョンは沈黙した。

照れたように長い鼻面を掻きながら、困ったように沈黙するジョンの様子を、頭からタオルを被ったルプスレギナが不安気な表情で見上げている。

 

そして、その脇ではすっかり二人に忘れられた御骨様(モモンガ)が。

 

 

(え? なにこの雰囲気。俺、まるっきりお邪魔虫じゃない?)

 

 

リア()爆発しろと火球の爆撃が出来る空気でもなく……モモンガは心底、困ってしまった。

 

 




ちなみに今話は没になった第28話の3分の1ぐらいを多少手直ししたものになります。
見直ししたら、後半戦の為の伏線があったので後で残りも割り込み投稿する予定です。

あ、これは予約投稿で書いてる奴は今週出張中です。
誤字修正などは週末か週明けにまとめて対応の予定です。

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