光と別れ、慶はまた体育館で漫才を見ながらボンヤリしていた。すると、
「けーくん」
声がした。振り返ると紗千子が立っている。
「おー。さっちゃん。いいのか?こんなとこにいて」
「平気よ。まだ時間あるもん。それより、こんな所でどうしたの?」
「暇してただけ」
「暇なんだ?」
「おー」
それを好機と見た紗千子は目を光らせた。
「その、よかったら一緒に回らない?」
「ん?おお、いいよ」
そのまま二人は体育館を出た。
*
「……なんか今日1日でメチャクチャここにきてる気がする」
「? どうしたの?」
「なんでもない」
軽くつまらないことをボヤいた慶。二人でそのまま進む。
「なんか食いたいものあるか?ありゃ奢ってやるよ」
「ほんと⁉︎じゃあねぇ、たい焼き食べたいな」
「OK、じゃあ並ぶか」
そんなわけで、二人は列に並ぶ。その後も二人で周り尽くして30分くらい経ったところで、紗千子の携帯に連絡が入った。
「あっ、そろそろ戻って打ち合わせだって……」
「マジかー。じゃあまたな」
慶が去ろうとした時だ。
「ま、待って!」
「あん?」
声を掛けられた。振り返ると、紗千子が顔を赤らめていた。
「何」
「ライブ。来てくれる?」
「あ?あーまぁな。可愛い妹のためだし。ライブステージに乗り込んで抱きつこうとするゴミがいたらブチ殺す予定だ」
「そ、そっか……。その、せっかくだからさ。私のために来てくれない?」
「あ?どゆこと?」
「………こんのクソ鈍感………。と、とにかくそういう事だから!絶対来てよね!」
「おう。約束な」
「…………うん!約束!」
そのまま紗千子は体育館へと戻って行った。
「ふぅ……さて、俺も暇潰しに体育館に……」
と、思った時だ。地面に何か落ちてるのを見つけた。
「あん?」
財布だった。早速中を抜こうと中身を見ると空だった。
「なんだよ……」
とりあえず預けようと、慶は生徒会室に向かった。
*
生徒会室。奏と茜はとある女の子から話を聞いていた。
「これで三件目ね……」
奏は顎に手を当てて考える。さっきのように、スリにあった生徒が他に2人もいたのだ。
「まったく……誰だか知らないけどふざけたヤツね……」
「ねぇ、カナちゃん。けーちゃんじゃないよね?けーちゃん、こんな事しないよね?」
「そんなのわかんないわよ。でも、慶が黒いガンダムの財布を持ってるとわかった以上は話を聞かないわけにはいかないわ。ていうか、仕事サボった件もあるし」
そう言って奏はおデコに手を当て、不安げに目を閉じた。すると、ガララッとドアが開いた。
「おーい、奏」
「! け、慶!」
「あ?なんだよ」
「よくもオメオメと顔出せたものね!仕事サボっておきながら!」
「あっ……。いや、財布拾ったから届けに来たんだけど。これは立派な仕事だよねうん」
「はぁ?」
すると、慶は拾った財布を奏に放った。すると、被害者の女の子が立ち上がった。
「あっ!それ私のお財布!」
「えっ?そーなの?てか誰?」
と、リアクションする慶に茜は触れた。そして、重力を掛けて思いっきり地面に叩きつけた。
「うごっ⁉︎あ、茜!てめっ、何すんだよ!」
「カナちゃん、捉えたよ」
「おい!てめぇ!」
そして、茜は慶のポケットから財布を出す。絵柄はさっき見た通りバンシィだった。
「あっ!それ俺の財布!」
「なるほど……バンシィね。確かに黒いガンダムだわ」
で、奏は慶を見下ろす。
「慶、あなたの事を疑ってないからこそ聞かせてもらうわよ?あなた今まで何処で何してたの?」
「ああ?栞と光とさっちゃんとデートしてたんだよ」
その返答に奏は少なからずイラッとした。
「三股……有罪ね。別件で」
「ああ⁉︎」
「茜、私は黒いガンダムの財布の子を呼んで来るから、そのままにしてて」
「了解!」
「お、おい待てって!マジでなんの話だよ!おい!」
慶の台詞も聞かずに奏は生徒会室から出た。