俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第46話

 

 

「さて、じゃあ行こうか慶?」

 

勝ち誇った笑みで慶に言う奏。だが、

 

「おう」

 

と、すんなり立ち上がった。

 

「あ、あれ?怖くないの?」

 

「本物のお化けは怖いけどここはお化け屋敷だろ?中身は人間って分かってんだ。怖かねーよ」

 

すると、「つまんねー」とでも言わんばかりに奏はため息をついて立ち上がった。

 

「そう。それなら行きましょう」

 

「カナちゃんは怖くねーのかよ」

 

「そんな子供じゃないわ」

 

「じゃあ先に悲鳴を上げた方が後でなんか奢りな」

 

「いいわよ」

 

で、二人はお化け屋敷へ向かった。

 

 

 

 

(って、何よこれ!外見より本格的じゃない!)

 

と、心の中で悲鳴を上げてるのが奏だ。モチーフは病院で、患者服のお化けやら何やらが出てきて中々にリアリティがある。一方の慶は、

 

「あっひゃっひゃっひゃっひゃっ!大腸はみ出てやがる!あっひゃっひゃっひゃっひゃっ!」

 

と、爆笑していた。

 

(あんたなんか地獄に落ちればいいのよ!)

 

心の中で呪う奏。その奏に慶はニヤリと笑って聞く。

 

「怖いか?奏」

 

「は、はぁ?全然怖くなんか……」

 

「………おい、おまえ後ろ」

 

「ひゃっ、なに?」

 

振り返るが何もない。

 

「いやなにもないけど」

 

「な、なによ!ビックリするじゃない!」

 

「ていうか、今『ひゃっ』って悲鳴上げたよね」

 

「はぁ?………あっ」

 

「はい、後で奢り〜」

 

「ち、ちょっとズルいわよ!そんな……」

 

と、言いかけた奏の手を慶は握った。

 

「やっぱり怖いんだろ」

 

「こ、怖くないわよ!」

 

「手汗がすごいけど」

 

「お、女の子に普通そんなこと言う⁉︎」

 

「怖いなら無理すんなよ」

 

言われて、奏は少しビクッとする。

 

「別に俺はお前の怖がってる姿見てどうしようとか思ってないから」

 

「……………」

 

「ちょっと弱みになればいいかなくらいにしか思ってないから」

 

「あんた最低だ!」

 

「さ、震えは止まったろ。行くぞ」

 

慶が手を引き、奏がついていく。

 

「ううっ……私がお姉ちゃんなのに……」

 

「そうかい。そりゃドンマイ」

 

いつの間にか手を繋ぐどころか腕に引っ付いてる奏。そして、そのままゴール付近まできたときだ。

 

「あん?」

 

「えっ、な、何⁉︎」

 

慶が声を上げた。視線の先には真っ白の着物を着た女が真っ直ぐこっちを見ていた。それになんとなく霊気のようなものを感じた慶。思わずゾクッとしてしまった。

 

「…………」

 

「ど、どうしたのよ?」

 

「なんでもねぇよ。ほらゴールだ」

 

そのままゴールした。お化け屋敷から出た瞬間、奏は胸を張っていった。

 

「ふんっ、まぁまぁだったわね」

 

「携帯みたいに震えてた癖に何言ってんだ」

 

「う、うるさいわね!大体、あんただって出口のところで震えてたじゃない!」

 

「あ?ああ、あそこにいた白い人はなんとなく雰囲気出てたからな」

 

「はぁ?そんなのいなかったわよ?」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

慶に嫌な汗が流れる。

 

「……………」

 

「慶?」

 

「う、うん。気のせいだなうん……。カナちゃん、飯にしよう」

 

「う、うん」

 

 

 

 

そのまま二人で飯を食ってその他諸々のアトラクションを乗った。で、なんやかんやで夕方。

 

「そろそろ帰ろうぜ」

 

「あ、待って」

 

「えー。まだなんか乗るのかよ……」

 

「いいから。次ラストだから」

 

「何乗るんだよ」

 

「観覧車」

 

「恋人かっての」

 

「んなっ……な、なわけないでしょ⁉︎自惚れんなバーカ!」

 

「お前がバカ」

 

なんて話しながらも二人は観覧車の中に入った。

 

「おお……おいおいおい、高ぇなおい」

 

慶は窓の外を眺める。

 

「ガンダムより高ぇんじゃねーの?」

 

はしゃぐ慶を見ながら奏は微笑んでいた。

 

「ねぇ、慶」

 

「あー?」

 

「今日は楽しかった?」

 

「まぁな。怖かったけど」

 

「そっか、良かった」

 

「それは俺の台詞だ。奢ったのは俺の方だからな」

 

言うと慶は座った。

 

「ねぇ、慶」

 

「あ?」

 

「二人きり、だね」

 

「そーだな」

 

奏は慶の隣に座る。

 

「………なんだよ」

 

「……………」

 

奏は何も言わない。そのまま慶に顔を近付けた。

 

「おい、近いぞ」

 

だが、奏は無視して慶に手を伸ばす。と、思ったら慶の頬のご飯粒をとった。

 

「あ?」

 

「お昼の時からずっとついてた」

 

「マッジかよ!え、なんで言ってくれなかったんだよ!」

 

「その方が面白いもん」

 

「うーわ!マジ恥ずかしい奴じゃん!」

 

と、慶が喚いてる時だ。ガタンッと観覧車が止まった。その結果、奏と慶の唇が重なった。

 

「っ」

 

「……………」

 

目を見開く二人。そして、慌てて離れた。そのまま気まずい沈黙が流れることしばし。動き出した。

 

「………………」

 

「………………」

 

奏は真っ赤な顔をしたまんま動けなかった。すると、ヴーッと携帯が震えた。櫻田家の家族LINEだ。

 

櫻田慶『姉に童貞取られたったお☆』

 

「変なこと送ってんじゃないわよ!」

 

 


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