俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第27話

 

 

 

「光」

 

慶は光に声をかけた。

 

「んー?何けーちゃん」

 

「お前、ライブに手を抜いてんだって?」

 

「えー?そんな事ないよー。普通だよー」

 

「や、さっちゃんが言ってたから。素人目にゃ分からんが、少なくともわかるやつにはわかったんだろ」

 

「待って、さっちゃんと知り合いなの?」

 

「友達みたいなもん。いいか、お前が手を抜くことによって迷惑だと思ってる奴もいるし、客も金を払って見に来てんだ。俺が言うことじゃないとは思うが、やるならちゃんとマジメにやれ。いいな」

 

「………はーい」

 

言うだけ言って慶はパズドラを開いた。

 

 

 

 

ある日の櫻田家。能力暴走期間となっていた。目の前から消えたりふわふわ浮いたり石をめちゃくちゃ精製したりして居る。

 

「カナちゃん。どうして石なんて精製してるの?」

 

「………石ころはタダだもの」

 

茜が聞くと、めちゃくちゃ神経を使っている奏が答えた。その横では遥の周りに数字がメチャクチャ光っていた。

 

「明日の天気は晴れの確率が85%……明後日は雷の確率が65%……」

 

と、思ったらソファーでは8人の岬がやりたい放題やっている。大人になった光が言った。

 

「岬ちゃん。分身邪魔」

 

「仕方ないでしょ!引っ込められないんだから!」

 

さらにリビングの別の場所。

 

「破壊しちゃダメだ……破壊しちゃダメだぁッ!うおおおおお!」

 

輝が必死に力を抑えている。

 

「机さん、熱いものを直接乗せられると嫌だよね。椅子さん、いつもみんなに座られて大変だね」

 

栞が机と椅子に話しかけていた。すると、葵が帰ってきた。

 

「ただいまー。あっ、やっぱりみんな始まってたんだ。能力暴走期間……」

 

その背後に現れる修。

 

「なんでこんな能力のぼ……」

 

が、すぐに消えた。そんな中、ゴロゴロしながら慶がポテチを齧りながら言った。

 

「辛そーだな」

 

『呑気なもんだなお前は!』

 

唯一能力のない慶は余裕そうにゲームをしている。すると、立ち上がった。で、まずは奏の横へ。

 

「な、なに?今集中してるんだけど……」

 

そして、耳元で言った。

 

「ジュアッグ」

 

「だからなによ!」

 

その瞬間、外で重低音がした。

 

「な、何⁉︎」

 

と、茜が外を見に行くとジュアッグが外に建てられていた。本物の。

 

「うわっ!ろ、ロボット!」

 

「な、なにするのよ!これいくらすると……!」

 

「集中しないと別の物作っちゃうけどいいの?」

 

「はっ!しまった!あー!なんで手錠なんて作ってんの私!」

 

で、慶は次に輝の元へ。

 

「膝カックン」

 

「ふあっ⁉︎」

 

その瞬間尻餅を着き、床に穴が空いた。

 

「ああああっ!床がぁ!」

 

そして、次は遥の元へ。

 

「な、なに……?」

 

「光が茜よりおっぱい大きくなる確率」

 

「へっ?ひ、100%……」

 

「「ちょっと何を予知させてるのよ!」」

 

突っかかってくる茜と光。だが慶は光を茜に押し付けた。その瞬間、光も一緒に茜と浮く。

 

「ひゃあっ!」

 

「茜ちゃん能力切って!」

 

「出来ないから浮いてるんだよ!」

 

で、ケラケラ笑う慶。その慶の左手にカシャッと何かが掛かった。さっき奏が作った手鎖だった。葵が笑顔で掛けている。もう片方は葵の腕に掛かっている。

 

「慶?能力暴走期間が終わるまでしばらく大人しくしてなさい」

 

「えっ?ちょっ……」

 

「お風呂とかの時は外してあげるから」

 

「あの、怒ってる?」

 

「いいわね?」

 

「……………はいっ」

 

怖くて何も言えなかった。

 

「あ、奏。鍵ある?」

 

「作ってないわよ」

 

「はっ?」

 

「いや、だって手錠しか作ってないもん……」

 

「つ、作って!手錠の鍵!」

 

「手錠の鍵ってどんなのかしら……こんな感じ?」

 

ポンっと出て来た鍵。だが、合わなかった。

 

「合わないわよ?」

 

「待って。今出すから」

 

「おいおい待てよ。勘弁してくれよ奏」

 

「はいはい、ちょっと待って。手錠の鍵……手錠の鍵……」

 

また鍵を生成した。だが、鍵穴には入ったものの開かない。

 

「ちょっ……奏?」

 

「おい輝!これ引き千切れ!」

 

慶が言うとめちゃくちゃ神経を使いながら輝が歩いてきた。として、葵と慶の手首をグッと掴んだ。

 

「行きますよ」

 

「待て待て待て!手錠の前に手首が千切れる!やめて!ストップ!」

 

「は、はぁ」

 

「……………葵」

 

「な、何?」

 

「どうすんのこれ」

 

「今日はこのまま一緒にいるしかないわね……。明日、開けてもらいに行きましょう」

 

「えっ」

 

最も長い夕方が始まった。

 

 


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