朝。慶と茜の部屋。慶というのは茜の双子の弟で、ぶっちゃければオリ主だ。布団に包まった慶をめちゃくちゃゆすってくる茜。
「慶ちゃん、起きてよ!遅刻しちゃうよ!」
言われても慶は被った布団から出ない。
「起きてるよ。寝たふりしてんだよ」
「寝たふりしてるのに返事しちゃうの⁉︎」
愕然とした様子でツッコム茜。それを無視して慶は布団から出て来ない。
「ほら起きてよ!私も遅刻しちゃうでしょ⁉︎」
「別に待ってる必要なんてねーぞ。先に行けよ。俺は気が向いたら行くから」
「それやられると怒られるの私なんだよ⁉︎なんでか知らないけど!お願いだから起きて!」
「うるせーな。ぶっちゃけ今日の15時からゴッドフェスだから石回収に忙しいんだよ。学校行く暇なんかねーよ」
「ええっ⁉︎それ超暇だよね⁉︎」
「だからお前先に行け」
「あーもうっ!てか私もぶっちゃけるよ!みんなもう学校行っちゃってここにいるの私達だけなんだよ!私、一人じゃ学校行けないよ!」
そう、茜は極度の恥ずかしがり屋で一人で表を歩けない。
「………お前いい加減慣れろよ」
「だって監視カメラがあちこちにあるんだよ⁉︎やだよ!」
「確かにプライバシーは全く守られてねぇけども……」
いい加減めんどくさくなった慶は起き上がった。
「分かったよ。今着替えるから待ってろ」
「ほんと⁉︎ありがと」
で、自分の上のパジャマを脱ぎ捨てる。その瞬間、茜は顔を真っ赤にした。
「って、ここで着替えるの⁉︎私まだ部屋の中だよ⁉︎」
「姉弟で何言ってんの」
「そ、それはそうだけどさぁ……」
「見たくなきゃ出て行けばいいだろ。あ、もしかして見たいんだ。茜エロイー」
「そ、そんなわけないでしょ⁉︎わ、分かったよ出て行くよ!」
で、着替え終わって歯を磨いて、朝飯用のカロリーメイトを二箱持って家を出た。あと5分か。
「茜。これ」
慶は自分のバイクに跨ると、ヘルメットを茜に投げた。それを危なっかしい手付きながらもなんとかキャッチする茜。で、バイクの後ろに跨った。
「しっかり掴まってろよ」
「う、うん!」
「………背中にオッパイの感触がねーな。本当にペチャパイだなお前」
「う、うるさい!ぶっ叩くよ⁉︎」
「叩いたら事故るぞ」
「ひ、卑劣!」
「褒め言葉だ。行くぞ」
出発した。ちなみに二人の通う学校はバイク禁止である。茜は校則や普通に人間としてのルールは守るタイプの人種だが、毎回バイクに乗るのをねだって来る。理由は、メットで顔を隠せるからだ。
「ち、ちょっと速いよ慶!スピード違反!」
「分かってる。だから人通りのない道を選んでんだろ」
「警察にバレなきゃいいってもんじゃないんだよ⁉︎」
「ちげーよ。家から学校までの行き方は約540通り。今日みたいに急いでる時に一番避けるべきものは交通事故だ。なら一番人が少なく、尚且つ最短ルートをえらぶべきだろ。そこを進んでるんだ。文句言うな」
「相変わらず頭良いね。運動も出来るし器用だし優しいし……なのになんで選挙やらないの?」
「するわけないだろ。俺だけ能力ないし、なんなら友達もないし人望もない。そんな奴が国を引っ張っていけるかよ」
「そもそもそこがおかしいよ!なんで慶ちゃんに友達が出来ないのか……」
「着いたぞ」
「はやっ!」
「じゃ、俺は帰るから」
「ダメ!慶ちゃんも来なさい!」
「やだって言ってんだろ。じゃあな」
「もう、慶ちゃんめんどくさいなぁ……えいっ」
「あ?」
気が付けば慶の体は浮いていた。飛行能力に目覚めたのかと思ったが、茜が浮かせてるのだった。
「おまっ!離せよ!」
「ダーメ。すぐ逃げちゃうもん」
そのまま学校に引きずられていった。