俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第1話

朝。慶と茜の部屋。慶というのは茜の双子の弟で、ぶっちゃければオリ主だ。布団に包まった慶をめちゃくちゃゆすってくる茜。

 

「慶ちゃん、起きてよ!遅刻しちゃうよ!」

 

言われても慶は被った布団から出ない。

 

「起きてるよ。寝たふりしてんだよ」

 

「寝たふりしてるのに返事しちゃうの⁉︎」

 

愕然とした様子でツッコム茜。それを無視して慶は布団から出て来ない。

 

「ほら起きてよ!私も遅刻しちゃうでしょ⁉︎」

 

「別に待ってる必要なんてねーぞ。先に行けよ。俺は気が向いたら行くから」

 

「それやられると怒られるの私なんだよ⁉︎なんでか知らないけど!お願いだから起きて!」

 

「うるせーな。ぶっちゃけ今日の15時からゴッドフェスだから石回収に忙しいんだよ。学校行く暇なんかねーよ」

 

「ええっ⁉︎それ超暇だよね⁉︎」

 

「だからお前先に行け」

 

「あーもうっ!てか私もぶっちゃけるよ!みんなもう学校行っちゃってここにいるの私達だけなんだよ!私、一人じゃ学校行けないよ!」

 

そう、茜は極度の恥ずかしがり屋で一人で表を歩けない。

 

「………お前いい加減慣れろよ」

 

「だって監視カメラがあちこちにあるんだよ⁉︎やだよ!」

 

「確かにプライバシーは全く守られてねぇけども……」

 

いい加減めんどくさくなった慶は起き上がった。

 

「分かったよ。今着替えるから待ってろ」

 

「ほんと⁉︎ありがと」

 

で、自分の上のパジャマを脱ぎ捨てる。その瞬間、茜は顔を真っ赤にした。

 

「って、ここで着替えるの⁉︎私まだ部屋の中だよ⁉︎」

 

「姉弟で何言ってんの」

 

「そ、それはそうだけどさぁ……」

 

「見たくなきゃ出て行けばいいだろ。あ、もしかして見たいんだ。茜エロイー」

 

「そ、そんなわけないでしょ⁉︎わ、分かったよ出て行くよ!」

 

で、着替え終わって歯を磨いて、朝飯用のカロリーメイトを二箱持って家を出た。あと5分か。

 

「茜。これ」

 

慶は自分のバイクに跨ると、ヘルメットを茜に投げた。それを危なっかしい手付きながらもなんとかキャッチする茜。で、バイクの後ろに跨った。

 

「しっかり掴まってろよ」

 

「う、うん!」

 

「………背中にオッパイの感触がねーな。本当にペチャパイだなお前」

 

「う、うるさい!ぶっ叩くよ⁉︎」

 

「叩いたら事故るぞ」

 

「ひ、卑劣!」

 

「褒め言葉だ。行くぞ」

 

出発した。ちなみに二人の通う学校はバイク禁止である。茜は校則や普通に人間としてのルールは守るタイプの人種だが、毎回バイクに乗るのをねだって来る。理由は、メットで顔を隠せるからだ。

 

「ち、ちょっと速いよ慶!スピード違反!」

 

「分かってる。だから人通りのない道を選んでんだろ」

 

「警察にバレなきゃいいってもんじゃないんだよ⁉︎」

 

「ちげーよ。家から学校までの行き方は約540通り。今日みたいに急いでる時に一番避けるべきものは交通事故だ。なら一番人が少なく、尚且つ最短ルートをえらぶべきだろ。そこを進んでるんだ。文句言うな」

 

「相変わらず頭良いね。運動も出来るし器用だし優しいし……なのになんで選挙やらないの?」

 

「するわけないだろ。俺だけ能力ないし、なんなら友達もないし人望もない。そんな奴が国を引っ張っていけるかよ」

 

「そもそもそこがおかしいよ!なんで慶ちゃんに友達が出来ないのか……」

 

「着いたぞ」

 

「はやっ!」

 

「じゃ、俺は帰るから」

 

「ダメ!慶ちゃんも来なさい!」

 

「やだって言ってんだろ。じゃあな」

 

「もう、慶ちゃんめんどくさいなぁ……えいっ」

 

「あ?」

 

気が付けば慶の体は浮いていた。飛行能力に目覚めたのかと思ったが、茜が浮かせてるのだった。

 

「おまっ!離せよ!」

 

「ダーメ。すぐ逃げちゃうもん」

 

そのまま学校に引きずられていった。

 

 


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