ひゅうひゅうと周りの奴らの息の漏れる音が聞こえる。ああ、感覚が研ぎ澄まされる。視界はこれまでにないほどクリアとなり360°全体を認識できる。把握できる。聴力に至っては此処からでも太陽が燃える音が聞こえそうなくらいだ。そんな感覚だけではない思考も加速していて世界が止まって見える。
「な、何だよ、ソレ」
震えながらオレンジ色の異物は俺の腕を指して恐怖に染まった声を上げる。
「化け物がッ!」
感情をただ辺りにぶちまけて精神を守ろうと統也が喚きだす。
「ひっ!?」
俺の姿を見た少年の姿を取った異物が悲鳴を漏らす。
「何だこの異形は!」
七式が油断なく構えを取りながらも恐怖に獲物を持つ手に力が入っていない。
「あ、あははは! あはははは!」
金髪の異物は恐怖に耐えきれなくなったのか乾いた笑いを上げ続ける。
そして、俺の目の前には、
「何で? なんで貴方はそんなに話もせずに人を襲うの!?」
高町なのはが叫んでいた。心の底から、何でと。その小さい矮躯でありながら何処までも強い魂と心で彼女は
「お前はアレが何のために作られたか知っているか?」
「え?」
答えが返ってくるとは思っていなかったのだろうか。突然答えを返した俺の言葉に動きを止めて彼女は驚いた瞳をこちらに向けてくる。
「それが分からないお前たちには俺のこの体を燃やし尽くす焦燥など分かるはずがない。分かってたまるか!」
その言葉に高町は何かを覚悟して、俺に問い詰める。
「分かるはずがない! 言葉で伝えなくっちゃ何も伝わらない。貴方が言う危険って何? それはジュエルシードが本当に巻き起こすの?」
「そうだ。アレがこの世界の人類の文明を滅ぼす」
俺の話した内容に信じられないのか統也と七式が反論してくる。しかしあの二人には何が分かる? 何故アレが安全なものと
「ふざけるな! ジュエルシードがそんな事を起こす訳が無いだろう!」
「確かに正しく管理されれば人類を滅ぼすことなどはない」
何故分からない! 何故此処まで言って分からない! それが
「何故そんな事を言いきれる!? まだ分からないか! アレが何故作られたのかを知れば
「何故作られたか?」
あの民族衣装の異物が尋ねてくる。知らないで発掘したのかこの異物は。
「無知は罪と良く言ったものだ」
「何?」
「アレはな、学術的価値など一つもない。発掘してはならない道具だ」
「如何いう意味?」
高町の疑問に絶望の答えで教えてやる。お前たちを
「アレは知的生命体を滅ぼすために、戦争の道具として作られたものだ」
「そんな! 嘘だ!!」
悲痛な声で少年の異物が叫ぶ。だがそれが事実。
「だとしたら遺跡にあんなふうに大切に保存されることなんてないはずだ!」
「其れの答えは簡単だ。アレを作ったのは一人の科学者であり、その科学者の独断だからだ。アレはその国でも使用を不可能と判断して封印された兵器だ」
そう、たった一人の科学者が呪詛を込めて作りだしたもの。それがアレだ。
「そんな事はあり得ない! ならばジュエルシードの願いをかなえるという機能に説明がつかなくなる!」
「そんなもの決まっているだろう? 願いを叶える
「そ、そんな、莫迦な……」
「アレを作った科学者は狂気とともに破壊願望を叶えるためだけにアレを作成した。そんなものを集めてもし本格的に起動したら何が起きるかわからない」
そうして俺はあの二人の方へ向く。
「まだ分からないか?
「はん! その話が本当だという理由が無い」
「それに、だ。敵のいう事を信用するのは愚か者さ」
まだ、まだ理解しないのか? 此奴らは。
「お前の妄言に付き合ってられるか」
「さあ、悪いがお前のような異形は死んでもらうぞ」
もう、もう良い。もう分かった。
「ダメェ!!」
「地球に生きる多くの人間の為だ。死んでくれ」
腕を振るう。邪神の腕を。邪神という知覚することはできても理解することは不可能なその腕を振るう。巨大な二つの腕は竜巻のように回転しながら彼らを切り刻もうとする。
「クッ、オハン!」
「この程度当たりはしない!」
片腕は黄金に輝く神秘的で強固な盾に防がれる。もう片方の一撃は先ほどよりも青く輝く瞳に軌道を見破られて避けられる。
「オハンが!?」
「死が見えない!?」
しかしだ。しかし、矮小な人間程度で邪神の攻撃を防げるとでも?
片腕はそのまま黄金色の盾を汚染して、力尽くで粉砕する。もう片方の腕を理解しようとした愚者にはそのままその腕で一撃を与えてやる。
「何だこの軌道は!?」
直線に伸びた腕はあるところからいきなり折れ曲がる。それを何度も繰り返して一瞬で腕が材料の檻を作る。
「畜生! 壊れない!」
腕を斬ろうとしているのだろうが無駄だ。この宇宙に所属するのならその腕は切れない。そういう作りなのだ。邪神の中でもさらに規格外。それが外なる神。
「潰れろ」
檻を急速的に縮めて握りつぶす。絶対に回避できず止めをさせる技。あと少しで終わりを迎えさせられる。
「きゃあああああああ!!!!!!」
そんな時だった。高町に紫色の雷が降り注いだのは。
san値チェック
ユーノ・スクライア 1D10/2D10
チェック 72% 86
san値減少 72-11=61 一時的狂気(何かをぶつぶつとつぶやき続けていて行動不能)
状態 邪神の諦め
因みに二人は原作知識があるために主人公の言葉をでまかせと判断していました。本当にその知識があっているかなんて誰にもわからないといいうのに。
ユーノ君。一時的狂気で防御魔法など何もできなかったのでなのはを助ける事すら不可能でした。