san値直葬? 何それ美味しいの?   作:koth3

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今回は発狂とかそんなのはないほんわかです。……ほんわか卓の人じゃないので、きちんとほんわかさせますよ。
今回はなのはの初恋の瞬間です。というより、きっかけですね。
作者だって恋愛に挑戦したいんだ!


外伝
外伝 1


 私は一人気になる人がいる。その人はいつも教室の隅で本を静かに読んでいる。そんな人。隣のクラスの最近噂になっている御崎君や七式君のような派手さはなく、目だないような人だけど優しい人。誰かが困っているとさりげなく助けてくれるような人。

 今日も、彼は困っていた人を助けていた。その子は偶々お弁当を忘れて困っていたけど、彼は他の人に声をかけて全員でお弁当を分けていた。他にも勉強が苦手な子には、勉強を教えてくれていたりしていた。なのに、何でだかは分からないけど、彼は他の子とあまりかかわらない。それが寂しいと思って私は皆と一緒に遊ぼうと言いかけて気が付いた。彼の眼には寂しさが無く、どこか温かみのある瞳だった。

 

 「何であんな目をしていられるんだろう?」

 

 だって、一人は寂しいよ。なのに彼は一人でいっつも周りの人を助けてくれている。それが如何しても気になる。

 

 「何か言った? なのは?」

 「う、ううん。何でもないよ」

 

 お母さんに聞かれていたみたい。気を付けないと。

 そろそろ明日の準備をしてから、ベッドに入らないと。

 

 「それじゃ、お休みなさい」

 「はい、お休みなさい」

 

 私はお母さんとテレビを見ているお父さんたちに挨拶をして、階段を上って自分の部屋に入る。

 明日の授業の準備をしながら、私はやっぱり彼の事を考え続けていた。

 

 

 

 

 今日は失敗しちゃった。授業中も彼の事を見ていたら、先生に指されちゃって答える事が出来なかった。でも、私が国語苦手なのを知っていて尋ねる先生も先生だよ。それになにより恥ずかしいのは、彼が微笑ましいものを見るような顔だったことだよ。私だって頑張ればあれくらい解けるんだから。きっと、たぶん……。

 

 「むぅ。九頭竜君が悪いんだ!」

 

 バスから降りて、お家まで帰っている最中に苛立ちを小石にぶつけて蹴っ飛ばそうとした。だけど、それで、

 

 「きゃあ!」

 

 小石にかすりもせず、逆に私は体勢を崩してしまった。

 

 「わ、わわ!」

 

 慌てて手をバタバタしたけど、何の意味なく倒れてしまった。しかもその時に足をくじいてしまったみたいで。

 

 「痛い!」

 

 少し動かすだけで足首が痛む。ずきりという鈍い痛みに、私は涙を流してしまう。如何しよう。ここから歩いていくには家はちょっと遠すぎる。

 恐る恐る怪我した足を前に出すと、さっきとは比べようにないほどの痛みが奔って、蹲っちゃう。だって、すごい痛いんだもん。

 

 「如何しよう!?」

 

 周りには大人の人はいなくって、誰かに助けてもらえそうにない。

 困り果てながら、三十分くらい立ち尽くしただろうか。

 

 「如何した、高町?」

 「ふぇ!?」

 

 そんな時に、突然彼の声がした。

 

 「く、九頭竜君? 何でこんな所に!?」

 「いや、買い物帰りなんだが」

 

 ほら。そう言って差し出した手には、スーパーで買った食材が詰められていた。

 

 「足でもくじいたのか?」

 「う、うん」

 「携帯か何かはもっていないのか?」

 「ま、まだ持っていない。だからお母さんにも連絡できなくって」

 

 そう告げると、少し考えてから彼は背中を見せて、私に乗るように言った。

 

 「ほら、背中に乗れ。お前の家までなら送ってやるから」

 「ええ! そ、そんな良いよ」

 「怪我している人間が言う事じゃないぞ」

 

 「無理やりにでも乗せるぞ?」そう言いながら、彼は私を背負って歩き始めた。

 恥ずかしくって、最初はじたばた暴れたけど、

 

 「危ないぞ、高町!」

 

 怒られてしまい、私は只々身を縮めるだけしかなかった。うう。は、恥ずかしいよ。

 カーブミラーに映っていた私は、まるで茹蛸のように顔を真っ赤にしていた。

 

 「痛みはないか?」

 「え?」

 「足のけがは」

 「い、今は大丈夫」

 

  強がりとかじゃなくて本当に今は大丈夫。足は動かないようにハンカチで固定されているし。さっき背中に乗る前に、軽く応急処置として縛ってもらったもの。

 

 「そうか」

 

 少し安心したような声で、彼は私にそう言った。

 

 

 

 

 夕日が沈んでいく中、私は九頭竜君の背中で黙り続けていた。

 彼が他の人と何で付き合おうとしないのかは分からないけど、でも九頭竜君にとっては如何でも良い事なのかもしれない。そう、だんだん思ってきた。上手く言葉にはできないけど。

 

 「次は?」

 「そこのお豆腐屋さんを曲がって。あとはずっと真っ直ぐ」

 

 九頭竜君に返しながら、私は彼の背中に頬を載せる。えへへ。あったかい。

 

 「高町?」

 「えっ? なに?」

 「……いや、何でもない」

 

 九頭竜君の顔が今、驚いていたような。でも、すぐに直ったから何でもなかったのかな?

 あったかくて、私と変わらないのに私より大きく感じる背中に乗せてもらいながら、揺られる心地よさに負けて、いつしかうとうとし始めていた。

 いけない、起きてな……き……ゃ。

 

 

 

 後ろでふと重心が移動したのを感じて、如何したのかと見て見たら、高町が眠っていた。疲れがたまっていたのだろうか?

 まあ、考えても分からないので、俺はそのまま高町の家に向かう。さっき高町に聞いた通りにすれば着けるだろう。

 

 「それにしても、ずいぶんと幸せそうに眠る子だな」

 

 俺のような存在の背中でも幸せになれるのだろうか? ……まぁ、良い。この子が起きないように歩くとしよう。

 

 

 

 

 起きたら、部屋の中だった。

 

 「ふぇ!?」

 

 あれ? 何で? さっきまで九頭竜君の背中……!

 思い出したら一気に顔が熱くなる!

 

 「うにゃああああああああ!!!!!?」

 

 ごろごろとベッドを回転しながら、私は悶える。

 私、九頭竜君の背中で眠っちゃの!? うわああ! だらしない子って思われた!? それは嫌だよ! でも今日の失敗も含まれば、そんな風に思われても仕方がないのかな?

 

 「うにゃあああ!!!」

 

 如何しよう如何しよう如何しよう!?

 

 「明日、九頭竜君にどんな顔をして合えば良いんだろう」

 

 枕に顔を埋めながら、私はぽつりとつぶやいた。

 

 

 

 けど、次の日あったら普通にあいさつされてお終いだった。何か納得いかない。




次回は人気のあった五番目、sts編です。
一応尋ねますと、クトゥルフ的発狂要素でstsか、それとも普通に主人公以外はまともに進む。どちらが良いですか?(ちなみに後者では主人公は六課の事務員です。なのはというお目付け役はいますが)

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