あの襲撃者たちから辛くもなのはのお蔭で救出する事が出来、幾日か経って本局の会議室にて彼らを呼び出し、闇の書を伝えていた。
さて、ここからが本番だ。
「エイミィ」
「分かっているよ、クロノ君」
空中に投影されたディスプレイには数日前の戦いの場面が出てきている。
「なのはにフェイト、君たちの行動である程度あの少年の行動や思考が分かりつつある。
唯、少し見て欲しい部分がある。これはもしかしたら七式と御崎の方が分かるかもしれない。君たちと同じように、魔法陣が現れない魔法のような攻撃だ」
そう僕が言うとエイミィが問題の部分を再生させる。
「この時、フェイトの一撃は確かに通用していた」
フェイトの魔力変換資質の雷によってバルディッシュの魔力鎌は電撃を帯びている。喰らえば感電することは間違いない。
「なのはや僕、それに七式や御崎のデバイスにはそう言った電撃に対する対策はされている。だが、彼の腕はそういった機能はなかったのだろう。電撃が付随していることを知らなかったからかそのままあの腕で防ぎ、感電している」
丁度、ディスプレイでは少年が悲鳴を挙げている。
「この時点までは本体と思われる少年には電撃が通じていた。おそらくはあの腕には通用しなかったが、本体であると思われる少年にはこれで攻撃が通用する可能性が出てきた。実際に感電のダメージはあったようだしね」
そして次の場面へ移る。
「だが、今度は違った。フェイトのライトニングバインドは拘束した相手を感電させる効力もある。バリアジャケットが有れば十分簡単に防げる範囲だが、この少年にはそういった守りが無い。それは先ほどの映像からそう推測されている」
バリアジャケットがあればそれこそFランクの魔力量でも防げるほど微量の電撃だからな。
「だが、先ほどとは違い彼にはこの電撃が通じていない」
「一寸待って! 確かに私のバインドで彼奴は反応していたよ!」
「それについてだが恐らくは唯引っかかったのが気になったのではないか? 少年の体の反応は電撃が流れたというより、どちらかというと止まったことに対する疑問で反応してしまったような気がする」
そう言うとフェイトは不満そうな顔で渋々引き下がった。やれやれ、説教はしたのだがそれでも止まらないか。気持ちは分からないでもないがそれでも危険すぎる。少年と戦わないようにさせないと。
「さらに、次にフェイトの一撃をあの腕で防いだときには完全に電撃が流れていない事が分かる」
「確かにな。俺は直接現場を見ていないから分からなかったが、これは見る限りダメージはないな」
「そうだ。そしてこの少年はおそらくだが、何らかの魔法技術を所持している可能性が高い」
「何らかの魔法技術? 如何いう事、クロノ君?」
「それに関しては――」
「それに関しては僕から説明するよ、なのは」
ユーノが説明したほうが分かり易いだろう。
「良いかい? 僕たちが普段使う魔法はミッド式と呼ばれるんだ。ミッドチルダ周辺で発達したこの魔法は非常に使いやすく、習得もしやすい。特に中距離から遠距離魔法。それと、補助術式に優れている。だけど、魔法技術はそれだけじゃない。中には逆に攻撃的な魔法で近距離が強く対人戦に強い魔法もある。
その事から考えるに彼の魔法技術は、管理局が知らない魔法技術なのではないかってクロノ達は判断したんだよ」
実際彼の使ったのは魔法以外にはありえないだろう。
「でも、そんな魔法の兆候なんてあったの?」
「あった。フェイトが言っていたことだが、少年は何かをぶつぶつ呟いていたようだ」
恐らくはそれが少年の魔法だろう。
「二言少年は言っていた。間違いないな、フェイト?」
「うん。確かに彼奴は二言呟いていたよ」
「そのうち最初の言葉が電撃に対する防御魔法だろう。そして次の言語が攻撃、或いは何らかの効果を及ぼす魔法と推測される」
「推測? 攻撃だったらもっとはっきりと分かるだろうし、それ以外の効果をもたらすとしても、どんな効果が及ぶかくらいは分かるだろう?」
御崎が言った言葉通りなのだが今回それは通用しない。
「本来はな。だが、今回は違う。相手の魔法技術のあたりもなく、さらにあんな訳の分からない相手だ。決めつけてかかると危険だ」
僕の説明に納得がいったのか御崎は下がったが、今度は七式が質問をしてきた。
「なら次だ。彼奴の腕について解析は進んでいるのか?」
「それについてだが――」
「それは私から説明しましょう」
かあ、艦長が会議の中に判明した事実を伝える。
「あの『腕』ですがフェイトのバルディッシュに付着した遺伝子を調べた結果、たった一つだけ分かったわ」
「一つ? ミッドの技術ならもっと分かっても?」
「そうね。それが普通の物質ならね」
そう、あの腕は
「あの腕は科学的に言うと『
「え?」
「言葉通りよ。解析したクルーが激昂していたわ。こんな物質が、成分などあるはずがない! って。そうね、専門家ではないから詳しくは説明出来ないけど」
そこで一旦口を閉じてお茶を飲む。誰もが余りの内容に口がふさがらないようだ。
えっ?
「この世のものじゃない?」
私の疑問にリンディさんは言葉を選んで答えてくれた。
「厳密に言うとそこに存在しているから間違いなく存在しているわ。けれど、この成分と同じ成分は検出されることはないでしょうね」
「如何いう意味ですか?」
「そうね。この腕は有機物であり、無機物よ」
「ゆ、有機物? 無機物?」
いきなり言われたことがさっぱり分からない。
「簡単に言えば生物であると同時に生物ではないということよ」
「えっ? でもそれって矛盾してません?」
「そう。矛盾よ。でも、それが現実。あの腕はそう言った両極端の性質を持っている。通電性はあるくせに絶縁体でもある。異常なまでに剛性があるくせに軟性もある。もはや意味の分からない存在よ」
それは、そんな物が本当にこの世にあるの?
話が難しかったから分からない部分はある。でも、幾らなんでも両極端の性質何て。
「だからこそクルーは激昂しているの。科学では絶対にありえない。でも、そこに存在する異様な物。
だけど、そこが最大の問題じゃないわ」
最大の問題じゃない?
「なのはさんは分かっていなさそうね。結論から考えるとあの少年。彼が生やしたこの腕の成分から考えると彼は人間とは言えないわ。化け物と呼ばれる存在よ。あんまりこういった言い方は好きじゃないけど、此処まで証拠がそろってしまえばそう言わざるを得ないわ」
化け物。
「下手をすれば彼自身がこの腕のようになる可能性もある」
リンディさんの話した内容は私の心を凍りつかせるには十分すぎた。心の中に何かが這い寄って締め付けるようにジワジワと恐怖が浮かんでくる。それが私の意志を鈍らせようとする。
san値チェック
高町なのは 1D6/1D10
チェック 98% 59 成功
san値減少 98-4=94
状態 邪神に迫る