嘘。何で?
「何であの化け物が!?」
「落ち着きなさい! 結界の分析を急いで!」
「は、はい」
アースラのクルーも恐慌状態になりかけている。
「エイミィー」
「……は、はい、艦長」
私も慌てていたのだろう。艦長に呼ばれても一瞬反応が出来なかった。
「事態のモニターリングを」
「分かりました」
すぐさまモニターを制御して画面を切り替える。フェイトちゃんになのはちゃんのデバイスを通じて、更に今急いできている七式君と統也君に渡してあるデバイスからも情報を習得してモニターに投影していく。
映ったモニターを見て思わず苦い顔になる。何故、何故此処に居る? あの少年が。
モニターに映っているのはあの少年。中央に突然現れたあの少年に襲撃者たちも警戒して一時的に戦いの手が止まっている。
顔を隠す面は狂気に染められた人間の苦痛の顔。着ている物は赤と黒が混じっている不気味な色合いのコート。そして背中にはあの不気味な、冒涜的な翼が広がっている。
「貴様!!!!!」
そんな中、フェイトちゃんが激昂しながら彼に突撃していく。拙い! 彼女は今だあの件の心の傷が治っていない。そんな中にプレシア・テスタロッサの仇が現れたらその復讐に出ても可笑しくはない。
「邪魔だ、異物」
翼が振るわれる。振るわれた翼の風にフェイトちゃんの動きが一瞬で無理やり止められた。それによってさらに警戒した襲撃者が彼を警戒して話しかけた。
「何者だ貴様」
「話しかけるな、異物」
ピンク色の髪の毛の剣を携えた襲撃者の言葉を彼は切り捨て、ただ真っ直ぐに襲撃者たちを睨んでいた。
「何?」
「黙れ、異物。本来ならこのままお前たちを滅ぼすが今回は違う。お前たちが壊れたら拙い」
何? 彼は何を知っているの? 彼らを知っているの?
クソ! 動きが鈍ったけどまだ動ける!
「母さんの仇!」
「黙れと言っているだろう。またお前は世界を危険にさらすのか」
翼が振るわれるけどそれは上に急上昇することでよける。あの不気味な風を避けて私は一気に接近して切りかかる。
「喰らえ!」
「意味が無い」
私の一撃はあの腕で防がれた。けれど、
「斬撃は防げても電気は防げない!」
「ぐぁあああああああ!!?」
心地良い悲鳴とともに充足感が体中を満たす。
「まだ、まだだ!」
更に魔力を振り絞り電気を強くして感電させていく。あの不気味な腕を通じて彼奴に電撃は確実に届いている。
「☆〇■♪!」
風に流れるせいで聞こえづらかったが何か言ったようだ。だけれど関係ない。魔法を使うのなら発動させない。命乞いならそんな事は無視する。
「ДТБঐఓ༃!!!」
「キャア!!?」
そんな! 魔力の流れなんてなかった! なのになんで!?
「貴様、テスタロッサに何をした!?」
何で私は此処まで遠距離に吹き飛ばされた!?
「グゥ!!」
焦げた肉の匂いが広がる中、彼奴はまた腕を振るう。だけどそれもさせない。
「バインド!」
バチリという音ともにバインドが発動される。振るわれた腕はしっかりと拘束されて電流を流す。
「!」
ビクッと彼奴の体が反応がした後に腕が止まる。バインドで縛られたためあの腕は動くこともできず本体は格好の餌食になっている。
「シュート!」
私が放った四つの雷球が彼奴を貫こうとする。之なら絶対に避けられない。
だけど、
「そんな!」
バリッとテープをはがすかのように簡単にバインドを力づくで引き裂いた!? しかも四つの雷球は腕に防がれてしまい、何故だか今度は電気で苦しんだ様子もなかった。
「そんなくだらないものでこの腕を止められると?」
っ、バリア!
「ぐっ、クッ、負けるか!」
バリアを腕が引き裂こうとしていく。だけどさすがにバインドを引きちぎった状態からは威力も速度が足りないのか破ることはできないようだ。
「ちっ、
「えっ?」
一瞬で拮抗していたバリアが引きちぎられた。
「キャア!?」
そんな、なんて力! バリアジャケットですら破られかけた!
「くっ!」
「もう一度言う。邪魔だ、異物。お前なぞ相手にしている暇はない」
「しまった!」
動きが止まった瞬間に腕が私を囲んで出られなくする。何度もバルディッシュで切り付けるがかすり傷ひとつ負わない。この檻から逃げられなくなってしまった。
何なんだよ、此奴。
「シグナム、此奴何だか分かるか?」
「……いや、分からない。少なくとも私は一度もこんな奇怪な生物と相対したことはない」
やっぱりそうか。私もこんな異常なやつはあったことはない。
「テメエ、何もんだ」
「ほう、さすがは騎士様とやらか。もう忘れたのか?」
? 忘れた? 此奴とは初対面のはずだが?
「忘れているか。なら、思い出すのだな。お前が笑いながら魔力を食い尽くして死にかけた一般人を笑いながらその槌で頭をつぶしたことをな!」
「なっ、ヴィ、ヴィータ!?」
「ふ、ふざけんな! 私がそんな事をするか! 鉄槌の騎士である私がそんな騎士道を恥じる事をするか!」
そんな事はしたことはない。確かに歴代の闇の書の中では大概魔力を食いつぶして募集した相手は死んでいた。だけど死んだ相手を辱めるような行為は一切したことはない。
「何?」
私の叫びを聞いた彼奴は一瞬訝しんだのか、仮面で分からなかったがそれでも動きが止まった。その様子は、困惑か?
「そういう事か。そういう事だな。すでに動くだけの力はアレによってこの星に放出されているということか!」
アレ? 動くだけの力? 急に何を言っているんだ?
そんな事を考えていたら異常なまでの魔力の高まりが発生して全員がそちらを振り向いてしまった。目の前にいる警戒しないといけない存在を忘れて。
あっ、がぁ!
痛い、痛い痛い痛い!
私の中にある魔力を奪われていく! 私という存在を奪われていく!
胸を貫くこの腕に!
「レ、レイジングハート、このまま! このまま放って!」
痛みで今自分が何をしているかも忘れそうになりながら私はスターライトブレイカーを放つ。この結界を破壊するために。
「いっけぇぇぇ!!」
スターライトブレイカーが放たれると同時に黒い何かが私の胸の中心を貫いた。
「えっ?」
「マスター!」
貫いた黒い何かは
「キャアアア!!」
何処からか聞こえる悲鳴をよそに私の意識は薄れていって消えてしまった。
san値チェック
フェイト・テスタロッサ 0/1D4
チェック 6 92%
san値減少 6-2=4 不定の狂気 (憎しみの発露 一部の人間に対する憎悪が何時までも何時までも胸にくすぶり続ける)
状態 邪神の行動の謎
分かる人には分かるでしょう。というより分からない人はいるのかな? 作者の独り言でした。