唐突だが、長瀬楓は忍者である。
モデルのような背丈とメリハリのある肉付き、糸目でいつも笑顔を絶やさない愛嬌のある顔は、街を歩けば人並み以上に人の目を惹きつけるほどの魅力を誇っている。だが当人はそんな自身の姿を自慢するでもなく、常に猫のように飄々としているため、クラスはおろかその他知り合いからの評判はすこぶるいい。皆からは頼れるお姉さんキャラとして慕われるような、そんな中学生らしからぬ大人びた少女だ。
だが、忍者である。
どういった経緯でそうなって、何故人里に降りて普通に暮らしているのか。諸々の事情は、その表情や態度からではつかめないし、そもそも本人は忍者っぽいことをしながら周囲にそのことを隠している。
何故彼女は忍者なのか。そもそもこの平和な日本で忍者に需要があるのかどうか。そこらへんの疑問は放置して、そんな彼女は週末には、修行の一環として学園外の山岳地帯に足を運んでキャンプを行っている。
忍者だからだ。
勿論、そんなことを誰かに言いふらすことはないのだけれど。
その日もいつも通り山篭りを行い、今日の夕食になる魚や山菜を集めながら、気分よく楓はニンニンと鼻歌を歌っていた。
両手に持つ籠一杯に、山の幸を溜め込んだ楓の表情はご機嫌そのものだ。
そして、いつも通りの修行風景が流れていく。いつも通り、ただただ静かな一日は──
唐突に山岳地帯を覆い尽くした気配によって終わりを告げた。
「……!」
楓がその気を感じたときに最初に覚えた感覚は、斬られるというシンプルな答えだった。
ただ、刃の如き冷たい気配。
それが楓を通り越し、山を丸ごと飲み込んでいた。
逃げようという気持ちや、ましてや戦おうとは思わなかった。相手は既にこちらの気配に気付いている。
だからこそなのか、絡みつく気配が自分に『逃げるな』と言っていているような気がした。
はたして時間にして数秒か、あるいは数時間か。時間の感覚すら定かではなくなった楓の耳が、わざとらしく鳴り響いた草の擦れる音に反応した。
「……突然、すまない」
そこに居たのは、げっそりと顔がこけた無表情の男だった。着ている着物はよれよれで、見た感じはまさに飢える直前の餓鬼のようだった。
これが本当にあの気配を放っていた男だというのか。楓は見た感じさして脅威とは思えぬ男の態度をじっと眺め、そんな自分の考えを即座に改める。
自然に紛れ込むような気配のなさ、すれ違えば意識すら出来ぬだろう雰囲気とは裏腹に、佇まいには一切の隙は存在しない。
擬態しているのだ。忍者である楓以上に、男は完璧に全てと溶け込んでいた。
警戒心を強める楓の気配を察したのか、男は困ったように頬を掻くと、敵意はないというのをアピールするように両手を挙げた。
「その、俺は、驚かせたことを……謝りに、きたんだ」
「謝りに?」
男は肯定するように頷くと、両手を挙げたまま言った。
「俺の、名は……青山、という」
もしよければ、俺の話を聞いてもらえないだろうか。
そう、表情を一切変えずに男、青山は告げた。
─
「つまり、必要な理由があって、武器の作成を行っていると」
「そういう、ことになる。作成に、夢中になって、しまい。君を、驚かせる、ことになった」
申し訳ない。青山は焚き火を挟んだ状態で楓に深く頭を下げた。
現在は場所を移して、楓のキャンプ地だ。とってきた魚を焼きながら、青山がどうしてあのような気配を放ったのかの説明と謝罪が行われていた。
「いやいや、そうかしこまらなくとも良いでござるよ。青山殿が拙者を倒そうと思えば、それこそいつでも出来たのでござるからな」
生殺与奪の権利は青山にある。そのことがわからないほど楓は馬鹿ではないし、そんな男が必要以上に下手に出たのだ。
ならばそれは信頼に値するし、そもそも、信頼しなかったとしてどうだという話である。
青山は楓の理解を得られたのに安堵しつつ顔を上げた。相変わらずの無表情のためその内心はわからないが、気配を穏やかなものに調整することで、敵意がないことをアピールする。
「長瀬さんも、随分と、出来るよう、じゃない、か」
「何の、拙者などまだまだでござるよ」
「そう、かな? 中学生で、あの気配の消し方は、俺には出来なかった」
青山の率直な評価に満更でもなさそうに楓は口元を緩めて、ふとその言葉に首を傾げる。
「はて、拙者。青山殿に中学生だと言ってなかったと思うでござるが?」
「すまない。もしかして、間違って、いたかい? 体つきから、そう解釈、したのだが」
人によっては誤解を招きそうな言葉だったが、楓は特に気にした素振りも見せずに、むしろ感嘆していた。
本人としては不服ではあるが、楓は年齢以上に見られることが多い。人によっては大学生と勘違いするほどだ。それも中学生らしからぬスタイルと身長があれば当然かもしれない。
しかし青山はそれを見ただけで見抜いた。勿論、彼女がネギのクラスの一人だということもあるが、それを知らなくとも青山は楓の肉体を見ただけでそう判断できただろう。
「いや、驚いた。気になさらずとも、拙者はおっしゃるとおり中学生のしがない学生でござる。よければ、青山殿も教えていただけるでござるか?」
「俺は、学生、では、ないな……少なくとも、君より、随分と、年上のおじさん、だ」
そう冗談でも言うように無表情で青山は呟いた。だが楓はそれを真に受ける。実際、その無表情と佇まいは、青山を実年齢以上に老けさせて見えた。三十路の半ばほどか、二十歳程度の青年である青山が聞けば少なからずショックを受けるだろうが、楓はそう解釈した。
「であれば、青山殿が相当な実力者であるのも納得でござる。ところで、ここにはどうして?」
「麻帆良で、清掃の、仕事をして、いる。姉が、放浪していた、俺を……哀れんで、職を、探してくれたんだ」
「ほぉ、では暫くはこちらに?」
「また迷惑を、かけると、思うが……よろしく、頼むよ」
青山はそう言って再び礼をした。
楓も慌てて頭を下げる。なんというか、最初の印象と違って素朴で、純朴。牧歌的な雰囲気がよく似合う男だなぁと思った。
どうにも調子を崩されている気がした楓を他所に、青山は焼けたのを確認して、川魚の刺さった串を取り出して楓に渡した。
「これはどうも」
「魚を分けて、いただくんだ。この程度、気にしないで、くれ」
青山は可能な限り柔らかい口調で言うと、自分の分の川魚を取り「いただきます」と言ってから口に運んだ。
どうにも、面白い隣人が現れたみたいだ。楓も川魚をむしゃむしゃと食べながら、あの気配を常に感じられるというスリルある修行を思い、内心で柄にもなくワクワクするのであった。
━
清掃の仕事は、始まりは汚さに辟易とするが、終わる頃には周りが綺麗になっていて清々しい気持ちになる。こういう気持ちが清掃には大切なんだろうなぁとかしみじみと思っていると、錦さんはそんな俺の横顔を見て何かを悟ったように笑っていた。
朝の清掃も一段落。現在は綺麗になった初等部の学び舎周りを見ながら、お昼休みを満喫中である。
「お前さんもこの仕事ってもんがわかってきたみたいだな。モップまで自分で持ってきて、やる気も充分じゃねぇか」
「いえ、まだまだ、奥が深く」
感心したような錦さんの言葉に、俺は謙遜でもなく、思ったままの事実を口にした。
清掃に限らず、何かを成すことの道は奥が深い。青山という肉体のおかげで、俺は道を一つ渡りきることが出来たが、恥ずかしい話、俺程度では青山という身体をその程度にしか扱えないのだ。
ままならぬものである。といっても、たかだか二十かそこらの子どもが、人生を達観した言い方をするのも、それはそれで自惚れにもほどがあるだろう。
難しいものである。
だから、奥が深いのだ。
「なぁに、兄ちゃんは上手くやってるよ」
錦さんは嬉しそうに、子どもの成長を喜ぶ親のように笑ってくれた。その期待がありがたく、人に認められるという、とても素晴らしい出来事を心に刻む。
今、俺はとても充実している。こうして同僚の人と話しながら仕事をして、そんな彼らの日常を守るために、警護の仕事もしっかりとする。
そして今日は、待ちに待った英雄の息子の到来だった。
「しかし、知ってるかい? 十程度の子どもが教師として赴任してくるんだってよ。兄ちゃんも大概だが、十歳の子どもが教師ってのは……時代が変わったのかねぇ」
話は変わって、というか、俺の考えを察したような話題に、僅かにドキリと緊張。まぁ偶然というのはあるもので、俺もその噂というか、護衛対象としてその子ども教師については知っている。
英雄の息子、ネギ・スプリングフィールド。頭のよさそうな、実際、十歳で教師として赴任するからには、頭がいいんだろう。
いやぁ、英雄の息子とは名だけではないわけだ。俺も俺自身を知っているから、自分が充分天才の身であるのはわかっている。だがスプリングフィールド君の天才ぶりは、前世の人格を持っている俺とは違う、本物の、天才が零から培った天才の才覚だろう。
俺はほら、天才だということを幼い頃から理解した凡才の精神ゆえ。その身体と必至に向き合わないとその実力を発揮できなかった凡才である。
「きっと、とてもいい子、なのでしょう」
「だろうなぁ。だが教師ってのはストレスがたまりやすい職業らしいし、その子ども先生が潰れちまわないか心配だよ、俺は」
錦さんの心配という言葉に、俺はちょっと目を丸くしてしまった。
なるほど、そう考えればそうだ。いい子だからといって教師が勤まるわけではない。そういう考えも出来るな。
これは不覚である。が、まぁそれに関しては俺の管轄外なので放置するほかあるまい。
あくまで、俺の任務は彼の警護である。命に危険がありそうなことが起きた場合は、彼の身を守ること、それが条件だ。
だがまぁ、今日この学園に入ってきたあの膨大な魔力の持ち主が彼である場合、そう心配する必要はないだろう。魔法使いであり、魔力もある。それにこの学園で活動している脅威といえば、満月時に学園内を妖魔っぽいのくらいだろう。
だがあれは別に気にするほどでもないだろう。
何かしょぼかったし。
彼から感じた魔力量があれば、あの程度は脅威ですらないはずだ。
まぁ、西洋の魔法使いの実力なんて、俺はあまり詳しくないのだけれど。夜の見回りのときに感じた魔法先生や、高畑さんの気や魔力の振り幅くらいでしか判断できない。魔力と気の大きさがわかっても、実際にその運用方法を見ないと実力はわからないからなぁ。今度こっそり彼らの戦いぶりを見てみるか。いやいや、そんな暇があるなら自分の出来ることをしなければ。
全く、自分本位な考えに自分で自分が嫌になる。
「兄ちゃんも心配かい?」
ちょっとため息を吐き出したのを、俺がスプリングフィールド君を心配していると勘違いしたらしい。まぁ説明する義理もないので、俺は首を縦に振っておく。
「……子ども、先生、か」
とりあえず、ちょっとだけ見に行こう。今日は早めに仕事を切り上げていくのであれば問題ないはず。
そうと決まれば、丁寧にかついつもよりも早く、清掃業務をこなしていこう。俄然、やる気を漲らせた俺は、食事を済ませてのんびり休憩をしながら、今日の清掃予定場所の最短距離を脳裏に思い描くのであった。
─
そんなこんなで放課後である。
正確には放課後の少し前くらいだ。
最後の授業が終わる直前、どうにか麻帆良女子中等部の清掃を最後に持ってきたおかげで、上手く時間を合わせてこの場所に来ることが出来た。錦さんとも先程別れて、現在はモップやらの清掃用具を手に一人である。
錦さんには、少し汚れが気になった部分があるので残っていきますと告げた。人のいい彼に嘘をつくのは心苦しかったが、一応建前がないと問題がありそうだからなのだが、別に嘘をつく必要はなかったかも。
まぁそういう細かいことは抜きにして。一応気を引き締めてスプリングフィールド君を見に行かないといけない。英雄の息子が居る区域ということもあってか、ここら辺の魔力やら気の反応は結構密度が濃い。気配だけなので詳細はわからないが、経験則と直感で、凄いとわかるのがちらほらと。
なお、一番凄いのは学園の地下から感じる者の気配だ。といっても、初めての警護任務のときに、この人は俺の存在に気付いたみたいなので、関わってこない以上気にすることもあるまい。
さてさて。
モップの気の遮断も完璧なので、特に気付かれる心配もなく、俺はするりと敷地内にいるスプリングフィールド君の下へと向かっていった。都合よく今は一人のようでもある。
しかし、なんだか緊張してきたな。初めての護衛任務だから、緊張しているのかもしれない。
なんて。
緊張を楽しみながら歩けば、遠目に件の少年を見つけた。
身の丈を超える大きな杖を持っているからとても目立っている。あぁやって堂々としていたほうが、逆に違和感がないのかもしれないな。俺みたいな小心者には出来ないやり口に感心してしまう。
流石は英雄の息子。発想が凡夫である俺には考えられない。だがまぁそれでもまだ少年、命の危険があったらちゃんとフォロー出来るようにしないと。
どうやら肩を落として歩いているのを見る限り、何か失敗でもしたのかもしれない。多感な時期に教師としての役割である。重圧はとてつもなくその小さな背中に圧し掛かっているはずだ。
そうして一定の距離を保ちながら彼の様子を見ていたら、視界の端に、大量の本を抱えながら階段を下りようとする少女が一人。
身体のバランスが悪すぎる。あれでは、ほぼ確実に階段を踏み外して落ちる。高さ的にぶつけどころが悪かったら最悪死ぬなぁ。
確か、名簿で確認したスプリングフィールド君の生徒の一人か。
「……あ」
そのまま死ぬなら仕方ないかと思った矢先、スプリングフィールド君も彼女に気付いたらしい。その直後、階段を踏み外した彼女が、まっさかさまに落ちて。
そして俺は、言葉を失った。
「危ない!」
少年が杖を構える。凛々しいような、幼いような、そんな印象の姿。膨れ上がる魔力は、その小さな身体には考えられないくらい膨大で。
全てが幼稚だ。所詮は子どもで、まだまだ彼の素質に技量がてんで追いついていないのは、魔法に疎い俺にだってわかる。
だけど、見えた。
俺には、見えたのだ。
「……」
スプリングフィールド君が風の魔法で、落ちた少女を救出する。それで新たに現れた少女に連れ去られていくその一連を見届けながら、しかしその全てが頭に入ってこない。
見えたのだ。あの一瞬。確かに俺は、彼の未来を見た。
天才の肉体を得て、その天才と一人で向き合い続けたからわかる。
あの身体は、青山と同じだ。
いやもしかしたら、青山すら越えているかもしれない。
「……ッ」
そう思うと、背筋に言いようのない震えが走った。
いや、わかっている。
この震えは、快感だった。
まさか、終わってからこれまで、素子姉さんにしか終ぞ感じることのなかった快感を、それ以上の震えを、未完成な少年から感じるとは思わなかったけど。でもこの快感は、性的な快感を遥かに上回る快感で、素子姉さんに感じた恋慕を遥かに上回っている。
気付けば、俺は腰砕けになりそうだった。その場で膝をつき、全身を駆け巡る快感に身をゆだねたくなった。
こんな。
まさか、こんなことが起きるなんて。
すでに終わっている俺の。
斬るというものに終わり、斬ることで完結していた俺の。
最強に君臨していた、あの素子姉さんですら届かなかった。
俺の答え。
斬ることの証明式。
そこに佇む、君を見た。
「……君、だ」
気付けば、俺は彼のことを呼んでいた。か細い声で、乙女のように頬を染めながら。
君なんだ。見えたのだ。やっと見つけた。君なら来ることが出来る。君だけが俺の君だ。俺の君を、俺は見つけたんだ。
君だけが、終われる。
「君だ……」
その日、俺は出会った。終わった俺が見つけた。これ以上何処にもいけない俺が唯一見つけた。
俺と同じ場所に到達できる君を。
人が行き着ける、本当の終わりの場所に来る君を。
「……あぁ」
持っているのがモップでよかった。
持っているのがモップで残念だった。
モップだから、君を斬らずにすんだ。
モップだから、君を斬れなかった。
久しぶりだった。終わりにたどり着いてから、初めて斬りたいと思った。
斬るのではなく。
斬りたいと思った。
そう思えたことが、感動的だった。
「スプリング……いや、ネギ君」
こんなにも素晴らしいことがあっていいのか。
まるで夢を見ているようであった。誰だって喜ぶ。今の俺の気持ちを知ったのならば、誰だってその奇跡に喜んでくれるはずだ。
だって、こんなにも素敵な感情なのだから。
「君に、惚れました」
君だから。
青山になれる、君だから。
この感情は、愛以外の何ものでもない。恥ずかしくも、二十歳になって一目惚れして、斬りたいと思えたことに、涙を流す。
君がいつかここに来て。終わってしまったそのときに。
あぁ恥ずかしい、夢物語。
乙女のように、夢想する。君と、俺のめくるめく──
修羅場で二人、斬りあう姿を、思い描いた。
─
時は過ぎ去りあれから随分と時間が流れた。一週間、二週間と、つつがなく何かが起きるでもなく時間は経過し、俺もここの生活にはすっかりなれて、順風満帆といった感じだ。
まぁ、恥ずかしい話、その一番の理由は彼の存在が大きいのだが。
愛の力は人を劇的に変えるという。今の俺はまさにそれというか、なんというか。
はっきり言えば浮かれていた。
「……」
といっても表情はそのままなので、代わりに素振りをして喜びを露にする。一閃ごとに願いを込めて、早く君が終わってくれと願うのは、やはりはしたない行為なのだろう。
うん。あまりはしたないのはよくないだろう。稽古用の木刀を、よどみなく振るいながら、そんな俗な願いを抱きながら刃を振るうのは、刀に対しても、君に対しても失礼だ。
でもなぁ。
仕方ないよなぁ。
「……」
なんとなしに取り出して、草場に置いておいた十一代目を掴むと、堪らず刃を抜き払った。
昼下がりの太陽の光を切り裂く鋼の煌き、その輝きにうっとりとしたのも束の間、目の前の大木に君の姿を思い描いた。
「……ッ!」
刹那、思うよりも早く刃が翻った。
反射的だった。思うだけで、見るだけで、たったそれだけで斬りたいと思ってしまう。
当然、大木は君ではないので、斬った直後、頭の妄想は元の木になって、俺の斬るという意思を叩きつけられた木は、斬られたことにも気付かないまま、左右に分かれて大地に沈んだ。
あー。
しまった。
自制というのが出来ないから、この様。
情けない。
恥ずかしい。
浮かれすぎだろと自粛する。
「……ハァ」
こんなのでは、隠れて彼の成長を見守るというのが出来ないではないか。せめて斬りたいという気持ちを押さえつけることから始めないと大変だ。
でないとまた彼女を驚かせてしまう。
ごめんなさいと、修行している彼女のいる方角を見て頭を下げる、情けない俺であった。
住居、変えたほうがいいかなぁ……