中編からは以下の留意事項があります。
・まきちゃんの正体はμ'sメンバーにばれていない
・秀平くんはメンバー全員と既に知り合いである。 以上
では中編投下!
しばらくすると、リビングが再び賑やかな雰囲気に包まれる。
今西木野家のリビングには、μ'sのメンバーが勢揃いしているのだ。
「ふぃ~危うく見つかっちゃうかと思ったよ~」
「そうですね。特に秀平さんは勘が鋭い方なので、見つかっていたとしてもおかしくなかったはずです。私も見つかってしまうんじゃないかと内心ドキドキしていました…」
「私もずっとドキドキしてたんだ。バレちゃうんじゃないかなって」
そうまず口を開くのは、μ'sの原点ともなった2年生である3人。
穂乃果に海未、ことりだ。
「でもかくれんぼしてるみたいで、楽しかったにゃー!」
「わ、私も見つかるんじゃないかと思ってました…。そういえば真姫ちゃん、秀平さんからお菓子貰ったんだよね?」
続いて、口を開くのが私と同じ学年の凛と花陽。
「そういえばそうだったわね、何貰ったの?」
「…これよ」
3年生で生徒会長を務めている絵里。
絵里に聞かれて、私はポケットから貰ったお菓子を出す。そう、サラダおかきだ。
「「「「「「「「…………………」」」」」」」」
「あと、受け取ってないけど茎わかめね」
「く、くきわかめ…」
「「「あはは…」」」
「それは、変わってますね…」
「おじいちゃんみたいだにゃー」
「ねぇ希?茎わかめって私聞いたことはあるんだけど、食べたことがなくて…どういうものなの?」
「一口サイズに切られている小さいわかめなんよ。けど、今日みたいな日にそんなものを出すなんて、相変わらず面白い人やっ、秀平さん」
にこちゃんが抜けた声で復唱して、穂乃果とことりに花陽は誰が見てもわかるような引き笑い。
海未は逆に感慨深そうにしている。凛は私と同じ感想を持ち、相も変わらずストレートに口にする。
絵里は茎わかめがどういったものか分からず希に聞いて、その希は面白そうにお兄ちゃんを評価する。…評価されてるのかしら?
さて、にこちゃんは絵里と同じく3年生でありアイドル研究部の部長。
希も3年生であり生徒会副会長を務めている。穂乃果たちを原点とするなら、希は『μ's』というグループの生みの親、といったところね。
「それからもう食べちゃったけど、後は落雁を貰ったわ」
「ら、落雁ってあのお供え物として使われるやつ、ですよね…?」
海未が顔を引き攣らせながら確認してくる。
あっ、少し引いてるわねこれ。
「えぇ、そうよ」
「は、ハラショー…」
それぞれ苦笑や呆れの混じった反応を、皆見せる。
まぁ、当然よね。ハロウィンだとか以前に、まず女の子に渡すものでもないでしょうに…。
「ぜ、絶望的なセンスしてるわね…あいつ」
「さっき言った茎わかめを今まで”クッキー”って愛称で呼んでたくらいだし…。全く、何を思ってこれを選んだのやら」
「「「「「「「「ぷっ…」」」」」」」」
噴き出す。
「で、でもそれを全部食べたっていう事は美味しかったんやろ?いいやんっ♪大好きなお兄ちゃんが一生懸命に選んでくれたと思」
「お、思ってないわよ!//……まぁ、美味しかったけど」
私を除いたこれら8人の少女たちは、今の今までお兄ちゃんがいた間もずっとこの西木野家に潜んでいたのだ。
さて、現在時計の針はPM10:00よりも少し前を指している。
なぜ今回こんなにも遅い時間に、μ'sが集結しているのかというと…
「そっ、そんなことより!//これからいよいよ先日の練習終わりに話したことを実行するわけだけど、みんな確認とか大丈夫なの!?」
私たちは、今日この日のために”とあるイベント”を計画しているのだ。
「うん!私はいつでも大丈夫だよっ真姫ちゃん!」
「はいっ。私も、いつでも大丈夫です」
「ふわ~、なんかドキドキするねぇ」
「うぅっ…私も緊張で胸がいっぱいです…っ」
「なんか凛、テンション上がって来たにゃー!」
「ったく、みんなソワソワしてるのが隠せてないわね。どんだけ楽しみにしてるのかしら…」
「っとかいいながら一番ソワソワうきうきしてるのを隠せてないにこっちは可愛いなぁ~」
「べ、別にそんなにしてないわよっ!//」
「ほらほら二人とも、そこまでにしなさい。っていうかにこ、あなたそれ自爆してるわよ?「んなっ!?」あぁ私たちも大丈夫よ、真姫」
絵里が手をパンパンと叩いて、希とにこの騒ぎを鎮める。
よし、どうやら全員大丈夫みたいね!
「分かったわ。それじゃあ早速始めましょう、みんなはそれぞれ所定の場所について」
私…
「「「「「「「「うんっ(はいっ)(えぇ)(分かったにゃー)!!」」」」」」」」
いえ、私たちのハロウィンはこれからが本番よ?お兄ちゃん♪
【まきSide End】
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時刻はPM10:00を少し過ぎた。
まきに言われてお菓子の調達に向かった俺は、閉店ギリギリの中思いつくお菓子を片っ端から確保することに成功し、無事帰路につくことができている。
それにしても、入店した時に聴こえてきた蛍の光には焦ったというより驚いた。あそこ9時半で閉店だったのか、今後のためにも覚えておこう…。
「はぁ、それにしてもサラダおかきの何が駄目だったんだ?普通においしいと思うんだけどな」
確かに今時の子、それも年頃の女の子はおかきといった部類のものに手を付けることなんてまずないだろう。しかし、あそこまで露骨に拒否されると流石に傷つくものがあるのだ。
「これがジェネレーションギャップというやつか…」
しかしやはり今だに納得できない。緑茶、麦茶、玄米茶、他にも様々なお茶とベストマッチするお菓子に俺は未だかつて遭遇したことがない。あらゆるお茶のベストパートナーとなるのが『おかき・お煎餅』なのだと俺は強く推したいっ…。
・・・いやまてよ?
「まさかあいつ、おかきじゃなくてお煎餅派だったのかな?」
いやでも俺がこの前あいつの目の前でお煎餅を食べたときピクリとも反応しなかったし、やっぱり違うか…。
じゃあ…
「海老おかき派?」
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色々考えながら帰路についていると、いつの間にか自宅の前まで帰ってきていた。
後はこのまま家に入って、さっさとまきにお菓子を渡して明日に備えて休むだけなのだが、俺は玄関の前で照明の光に包まれながら、携帯を片手に立ち尽くしていた。
「どういう意味なんだ…?これは」
つい先ほど受信した一通のメール。
それが俺に家に入ることを躊躇わせていた。
画面には、メールが開かれて内容が表示されている――――…
『 疲れてるのに遠くまで足を運んでもらってありがとう、お疲れ様。
それでね、もう一つお願いがあるんだけど
玄関の前まで帰ってきたらそのまま入るんじゃなくて、
左に向かって進んで欲しいの。お願いね 』
「まきのやつ、今度はなんのイタズラだ?はぁ…」
正直今日はもうこのまま休みたいので、この付き合いはまた別の機会にしてもらおうと思いそのまま扉に手をかけるも、
ガチャガチャガチャ…
「鍵かけてやがる…」
当然のことながらこんな展開になるなんて予想はしていなかったので、鍵は持ってきておらずこちらから開けることができない。
つまりおとなしくあいつのお願いを聞いてやるしか道はないというわけだ。
「…はやく終わらせてくれよ?まき」
ぼそっと、俺は呟きを残してそのまま左へと進む―――…
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左に進んでいくと、庭がある。
母さんが育てているのだろうか?庭のとある箇所には、プランターから咲くコスモスが見える。
この庭は日中になると日当たりが良く、さらに草の手入れも丁寧にされているので風通しも良く、おまけにそこそこの広さも誇っているので密かに西木野家の自慢の場所とも言えるのだ。
「……………………」
さて、この時期に開花するコスモスはそれは綺麗なものなので目を引かれるのだが、今回ばかりは
「……なんだ?これは」
そこにあったのは、犬小屋。
人一人分が入るくらい大きい、そんな赤い犬小屋だ。
なんか不気味だな…。それに赤色というよりは赤黒い感じで、まるで血の色の様にも見える。
さらに所々塗られていないこともあれば斑点のようにポツポツと塗られている所もあるから余計に気味の悪さが増して際立っている。
犬小屋からはただただ沈黙が発せられているだけだ…。
「…………………………………」
「……凝ってるな」
この犬小屋はあくまで雰囲気づくりとして置かれているのだろうか?まさか今日の為にこんなものを作っているとは思わなかった。いつの間に作ったんだあいつ?
まぁとりあえず進むとするか…。
その判断と同時に俺は足を動かして先へ進む。
…しかし中々怖かったな。雰囲気出てたし、あいつって本当に手先が器「ガタっ!!!」よ……う…。
「…………」
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………静寂。
俺は正面を向いたままその場に立ち尽くす。
静寂の中聞こえるのは、ざわざわと風が草を撫でる音だけだ。こんな風もいつもなら風情を感じる心地のよいものとなるのだが、今この時だけは冷や汗を流している俺にとって別のもののように感じる。
さて、下手に進んでしまったお陰で、今俺は運の悪いことにちょうど犬小屋と隣接する位置で立ち止まってしまっているわけだ。
先程の音の出処は、十中八九この犬小屋からとみて間違いはないだろう。だとするならば当然中にはいるわけだ、
ここで、次の事が考えられる…。
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ケースその1:まきがいる。
暗く静かなこの空間の中に不気味な犬小屋を置いて潜伏スポットとし、タイミングを見計らって鳴りを潜めたまきが飛び出て俺を驚かそうとする可能性。
まぁ妥当だな。
ケースその2:本物の犬。
特に凶暴性の強い犬をまきが連れ込み手懐けているという可能性……いやないなこれはない、あまりにもぶっ飛びすぎだなこれは。
流石のあいつもそこまではしないはずだ。……………………………………多分。
ケースその3:そもそも何もいない。
しかし、何かは
それは、あたかも何かがいると思わせるような物の存在。例えば、ボイスレコーダー。
あらかじめ物音を記録したレコーダーを潜ませて、何かがいるような演出を出す…
って考えたけど、流石にドラマの見過ぎかな…?
そもそもボイスレコーダーでの物音の記録を鮮明に残すにはどうしても難しいらしいしな…。
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ふぅ、色々考えてみたけどどれもピンとこないなこれは…。
このままこうしていても仕方がないし、もう思い切って覗いてみるか?
それで終わるんだったらそれでいいし、少なくとも今こうしてるよりかはずっとマシだしな。
よし、じゃあいくか。
せーの
「う~~~~~~~~~~~~~…」
「!?」
決断して、思い切って小屋の中を覗こうとする瞬間に聞こえてきたそんな唸り声。
とてもレコーダー等から発せられたような質のものではなく、100%の生の声だと俺は確信した。
なっ、なんだ!?やっぱり中に何か―――――――ッッ!?
「ま、まき…なのか?」
「う~~~…」
返答がない。答える気がないのか、まきではない何かか…。
それは―――――
ガタタっ
「!? うお」
「がおおおぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!……」
「うおおおおおおぉっ!?け、ケルベロス!?」
ではなく、それは…その
「えっへへ~、なーんちゃって♪こぉわいワンちゃんだと思った?残念!高坂穂乃果でしたー…あ、だったワンっ♪」
ピコピコと動く犬耳、パタパタと振られている尻尾、両手に装着されたもきゅもきゅとした肉球が特徴の犬の手。
もふもふとした毛皮で頭の上から下までの全身を包ませる女の子、穂乃果ちゃんだった―――…
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「ほ、穂乃果ちゃん!?」
「えへへっ、こんばんは!秀平さんっ」
「どうしたの?こんな夜に。あと、ずっと隠れてたの…?」
この際格好については触れないでおくとしよう。こう言っちゃうと悪いけどやたら似合ってる…。
「はい!秀平さんが帰ってくるまで、ず~っと待ってましたっ」
「そ、そうなんだ…。あ、なんかゴメンね?もう秋に入って冷えてきてるのに待たせちゃって…」
「いえいえとんでもないですっ、それよりも真姫ちゃんから何も聞いてませんか?」
「まきが何かを仕掛けてきているっていうのは実はさっき本人からメールがきて分かってるんだけど、穂乃果ちゃんも一緒っていうのは知らされてないなぁ…」
ほら、と俺は先程のメール画面を見せながら答える。
「そうなんですか…。じゃあじゃあっ秀平さんは私たちがここにいたこと、知らなかったんですね?」
ほっとした顔を見せたと思ったら、今度は少し声を弾ませて嬉々としながら言う穂乃果ちゃん。なんで嬉しそうなんだろう……ん?
私、
「ねぇ穂乃「それよりも秀平さんっ!!」うわっ!?な、なに…?」
引っかかった疑問を口にしようとするも遮られてしまう。
穂乃果ちゃんは口に手を添えて女王様のようなポーズをとって、
「むっふっふっふ~…」
悪女のような微笑みを見せて不審に笑い出す。オーホッホッホとか言っても違和感ないな…。
しかし何故だろう?穂乃果ちゃんが今見せてるこの笑顔。とてつもなく凄まじい既視感を感じる…。っていうか1時間前に見たばかりだった、うちの干物妹のナチュラルフェイスの一つだ。
「ふひひひひひ、秀平さん…」
「はい」
「今日は、ハロウィンですよね…?」
「………………」
『今日は、ハロウィンですよね…?』
穂乃果ちゃんのこの台詞が俺の中で木霊して響いていくことを感じた
たったこの一言ですべてを察してしまう自分はまきによく訓練されてしまったなと思う。
俺は苦笑をして、手に持っている買い物袋を開いて中が見えるようにして出す。
「ほら、好きなやつ持って行っていいよ」
「わーい!ありがとうございます秀平さんっ」
怪しい笑顔から一転して、穂乃果ちゃんはパアァと花が咲いたように明るく純粋な笑顔を見せてガサガサと袋の中のお菓子をじっくりと品定めしている。
うん、やっぱりこういうところはまきと似ているな。純粋っていうかピュアな心の持ち主で素直だからこう、分かりやすいっていう感じがする。…まぁもっとも、あいつの場合は純粋(ピュア)っていうより純粋(幼稚)って言った方がしっくり来るんだけど…。
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「お菓子、ありがとうございます!秀平さんっ」
「どういたしまして。…それより穂乃果ちゃん、もう夜遅いし家の人、心配してるんじゃない?」
ずっと気になっていたことを俺はようやく聞くことができた。
「ふっふっふ、ご心配なく!既にお母さんには電話で、μ'sの皆で集まって真姫ちゃんの家でパーティーをするって伝えてますっ」
穂乃果ちゃんは腰に手を置いて胸を張り、ドヤァとした顔で答える。
成程、パーティーね。確かに今こうしてやってることはパーティーのそれに近いかもしれないな。
「そうなの?それならそれでいいけど、でもだからってあまり遅くならないようにね?」
「む、むむぅ~…秀平さんって時々海未ちゃんみたいになりますよね…」
あれ?しつこかったかな。
穂乃果ちゃんは呻いたあとに口を尖らせながら、不貞腐れるような感じでそんなことを言った。
その事に俺はなぜだかおかしくなってしまって…
「あはは、そうかな?」
「そうですよっ!全くもうっ…」
穂乃果ちゃん頬を膨らませながら、とうとうぷいっとそっぽを向いてしまった。
さっきまでご機嫌中のご機嫌だったのになぁ…。
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「それじゃあ俺はそろそろ行くよ、穂乃果ちゃんはどうする?」
あれから中々機嫌を直して貰えず、どうしようかと悩んで困っていたところへ穂乃果ちゃんから…
『お菓子をもう一つくれたら許してあげます!』
との要求がきたので、俺がありがたくその要求を呑むこととさせて頂くことで、事態は収束した。
本当にまきにそっくりだなぁ、あはは。
「はむはむはむ…あ、わひゃひはもうひょっほほほひひまふ」
訳:私はもうちょっとここにいます。…だと思う。
数あるお菓子の中から穂乃果ちゃんのお眼鏡に適ったのは、ランチパック(ピーナッツクリーム)だった。なお、賞味期限が今日までの為、2割引きシールがついている。
しかし、これだけ美味しそうに食べてくれるとなんだか微笑ましくなってくるなぁ…。
「分かった。じゃあゆっく「秀平さん!」?」
口元が緩みそうなのをなんとか堪えて歩を進めようとすると、後ろから穂乃果ちゃんの呼ぶ声が聞こえたのでそのまま振り返る。
っていうか食べるの早いな…。
「次は、勝手口の方へ向かって下さいっ。そこに、案内人がいますので!」
穂乃果ちゃんは両手でメガホンの形を作って教えてくれた。
勝手口、か。っていうか、案内人?
「分かった。ありがとうっ」
そう言って前に向き戻って今度こそ俺は足を前へと進ませる。
「あ、あと」
「ん?」
おかきは私も好きですよっ―――――――――――――
そんなフォローにも似たような声を背中で受け止めながら…。
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さて、と…。あれからはとりあえず何事もなく勝手口まで来れたわけだ。あとは肝心の…
「案内人、っていうのはどこにいるんだろう?」
穂乃果ちゃんから聞いた話だと、この辺りにいるって話しだけど…。
キョロキョロと周りを見渡しているその時だった。
「あ、あの~」
「ん…?って、え!?」
声が聞こえた方向に視線を向けてみると、そこには…
「花陽ちゃん!?」
「ひゃうっ…えへへ、こんばんは秀平さん。驚かせちゃったみたいで、ごめんなさい」
そこには、まきと穂乃果ちゃんと同じくμ'sのメンバーである小泉花陽ちゃんが立っていた。
花陽ちゃんのこれも仮装、なのかな?
頭には獣の耳がついたカチューシャを着けて、その身には紅葉の絵柄が入った着物の上にメイドエプロンを身につけている。聞いただけだとその組み合わせに疑問を持つものの、こうして見てみると正直とても似合っていて可愛い。
「大丈夫だよ、気にしないで。それより、もしかして案内人っていうのは花陽ちゃんのこと?」
「はっはい!あ、あのっ不束者ですがよろしくお願いしますっ!」
花陽ちゃんは早口でそう言いながらこれまた素早い動作で深いお辞儀をする。
しかしこれだとまるで、
「あ、あはは…。花陽ちゃん、それだとまるで結婚の挨拶みたいだよ?」
「ふぇえええっ!?///あ、し、失礼しましたっ!!//」
花陽ちゃんはまたまた、頭を素早く丁寧に下げて謝ってくる。
そんな様子が続く花陽ちゃんを見て俺は――――
「………っぷ」
「?//」
「ぷっ…くくくくくく、あはははははははははははっ」
我慢できずにおかしくて、噴き出してしまうのだった…。
「はは、ごめ…っははははは!」
「う、うぅっ…///」
決壊したダムの流水のように俺の笑いはしばらく止まることはなく、やっと落ち着いた頃にはすっかりつーんとへそを曲げてしまった花陽ちゃんに申し訳程度にお菓子を渡して、宥めることに努める俺の姿がそこにあったのだった…。
♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢
「えぇぇっ!?そ、それじゃあ今この家には穂乃果ちゃんと花陽ちゃんだけじゃなくてっ、μ'sの娘たちがみんな集まってるの!?」
「は、はいっ、実はそうなんです…っ」
花陽ちゃんの機嫌を損ねてしまった俺は、お菓子を与えることで怒りを鎮めるというなんともハロウィンチックな今日に相応しい宥め方をして落ち着かせて、今度は衝撃的な事実を聞いた今に至っている。
「成程ねぇ…だから穂乃果ちゃんは”私たち”、なんて言ってたのかぁ…」
うん、納得だ。
「あ、あはは…穂乃果ちゃん、言っちゃってたんだ…」
「あはは、その様子だと俺には内緒っていうことだったのかな?」
「はい、本当は、私から秀平さんに伝えることで初めて、秀平さんにはみんながここにいるって知ってもらってお、驚いてもらう取り決めだったんですけど…」
「俺が既にそれらしいことを知ってしまって、ちょっと変にグダグダな感じになった…っていうことか」
「うぅっ、そうです…。あの、なんか変なことになっちゃってて、ごめんなさいっ」
そう言いながら、もう何度目か分からないお辞儀をする。
「ふふっ、別にいいよ大丈夫。それよりもう一つ気になることができたんだけど」
新たに生まれた疑問を口にして、俺は花陽ちゃんに問いかける。
「は、はいっ!な、なんですか…?」
「今この家にμ'sのみんながいるっていう話だけど、ただいるっていう訳じゃないんだよね?」
そう。例えば、
「あ、はいその通りです。私は案内人ということなんですけど、ほ、他のみんなはさっきの穂乃果ちゃんのように姿を隠してます…」
「そうか、ありがとう。…じゃあ花陽ちゃん」
「は、はい…?」
引っかかっていた疑問が解消された俺は、これからやることを決めて花陽ちゃんに手を差し出す。花陽ちゃんは俺のそんな動作に不思議そうな顔をするが、
「…案内、よろしくね?」
「! はいっ、よろしくお願いします!」
微笑みを見せながら俺がそう言うと、花陽ちゃんもまた意味を理解した後に、明るい花のような笑顔で応えてくれた。
To be continued…
はい!というわけで中編でした。
花陽ちゃんの仮装はスクフェスにある既存のものです!
【小泉花陽 紅葉浴衣 スクフェス】等でGoogle画像検索で出てくるかと思います。
私のTwitterの方でも上げてますので、ご参照ください。
さて、
後編につきましては諸事情により、少し遅くなります。
といっても来週以内の投稿を予定しております。
その頃にまた、お付き合いいただけたら嬉しいです。 では一度、失礼します。
感想、評価などいただけたら嬉しいですっ!
新たに高評価いただきました、七宮さんありがとうございます!
Twitter垢です。
フォローやそして感想をこちらでもいただけたら幸いです。
@yukata_chika