干物妹!まきちゃん   作:ユカタびより

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はいお待たせしました。

投下です。


新しく高評価をいただきました。

ガンマン10 さん

ありがとうございました!


その4 廃校と友達

 

 

 

 キーンコーン カーンコーン…♪

 

 

 

「いっただっきま~す♪」

「いただきます…はぁあうっ!?きょ、今日も白米がいい香りを出してますーっ♡」

「~♪」

 

 お昼休み。

 待ちに待ったランチタイムということで、私はウキウキな気分でお弁当箱を出す。

 昨日まではずっと一人の昼食だったのだが、今朝の出来事もあって今日から凛と花陽とも一緒だ。

 

 

『もう凛たち”友達”だから』

 

『これからよろしくね。”凛”、”花陽”』

 

 

 …うぅっ//思い出すとなんか恥ずかしくなってきたわね、早く食べましょう…っ

 っていうか花陽どうしたのかしら?あんなに嬉しそうにお弁当を見つめて…。好きなものでも入ってたとか?まぁいいわ。

 

 パカ、と遅れて私もお弁当の蓋を開けていよいよランチタイムへと洒落込む。

 

  (ん~っ!今日もトマトが絶品ね~っ)

 

 

 

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「そういえば真姫ちゃん、今日の朝凄く眠そうだったけどどうしたの?」

「あ、それ凛も気になってた~」

 

 お昼を食べ終えた頃に、ふと花陽がそんなことを口に出した。

 

「ヴぇえ!?み、見てたの…?」

「う、うん。ごめんね?でも真姫ちゃん、ずっと目こすってたからどうしたのかなって…」

 

 くっ西木野真姫、一生の不覚ね…っ

 仕方ないわね、ここはお兄ちゃんに犠牲になってもらうとしましょう。

 

「そ、そう…悪いわね心配かけて。実はお兄ちゃんが『会社行きたくない』なんて言いだしちゃってね…」

「「真姫ちゃんお兄ちゃん(さん)いるのっ!?」」

「えぇ、挙句に会社辞めてニートになるなんて言いだしたのよ。もうホント困っちゃう」

 

 フッフッフ、朝のしかえしにお兄ちゃんの評判をガタ落ちにしてあげるわ。

 

「あはは…真姫ちゃんのお兄さん、けっこう子供っぽいところあるんだね」

「凛のお兄ちゃんと大差ないにゃー」

 

 

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【その頃の秀平】

 

「へっくしっ」

「どうした秀平、風邪か?」

「ズズー…分からん」

 

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「本当にね…え?凛もお兄さんいるの?」

「うんっ、でもどうしようもないお兄ちゃんだけどね」

「でも、いつも凛ちゃんのことを気にかけてくれてて、優しいお兄さんなんだよね?」

「かよちん?そんなこと言ったらいっつもうちの兄貴は調子にのるからダメだよ?」

「あ、あはは…」

「なんか、凛のところも色々と大変そうね…」

「う、うぅっ…真姫ちゃーーーん!分かってくれて凛嬉しいにゃーーーーーーー!!」

「なぁっ!?ちょっ、ちょっとやめなさい凛!ここ教室、ひゃあっ!」

 

 一体何が嬉しいのか、わざわざ席を立って回り込んできて抱き付いてきた凛。

 

「にゃふにゃふふ~♪」

「あぁもうっ!やめなさいスリスリしてこないでっ!」

「くすくす…凛ちゃん嬉しそうっ」

 

 

 キーンコーン カーンコーン…♪

 

 

 と、そこでチャイムが鳴った。お昼休み終了を告げるものだ。

 

「あ、お昼休み終わっちゃったね」

「えぇー?まだ10分しか経ってないよー」

「そんなわけないじゃない…もう30分は経ってるわよ」

「確か今から…」

「えぇ、確か緊急の集会があるからって体育館に行くんだったわね。早くいきましょう」

 

 それにしても、緊急?何か大事なお知らせがあるとか?まぁ行けば分かるわね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――そして学校が終わり、無事に帰宅。

 

 

 【西木野家】

 

 

「はぁっ!?廃校!?」

「ちょ、うるさ……あぁ~もうっ!お兄ちゃんのせいで乙った!!」

「ちょっとゲーム止めろ」

「っ、むぅ…仕方ないわねぇ」

 

 割とマジなトーンで言われたので、私は渋々とPSPをスリープモードにして机に置く。

 

 今日も今日とて長い一日が終わり、無事帰宅して宴という名のグータLIFEを満喫していると、お兄ちゃんが帰って来た。

 

 私はお兄ちゃんに今日の緊急集会で知された内容を話した。

 その内容は…

 

「成程。近年の入学希望者の減少が影響で、音ノ木坂学院は廃校か」

「まぁそんなところね」

「でも廃校は3年後…つまりまき達を含めた今の在校生が卒業してからっていうことになるのか」

「だから別に取り立てて問題になるっていうわけじゃないのよ。編入とかそういう心配もないし」

「ふむ…じゃあ特に問題はないのか…」

「そうね」

 

 そう。

 だから私は今回のこの問題に対して何も危機感を感じている所なんてないのだ。

 確かに、突然に開かれたあの集会でそのことを伝えられた時は驚いたけど、3年後という言葉の意味を把握したら、すぐに「あ、そう」ってなったしね。

 

 でも廃校になるという事に対して、2年生3年生の人達はやっぱり愛校心からか大きい衝撃を受けてた人は多かった気がするわ。ふと廊下を通った時なんか…

 

『私の輝かしい、高校生活がっ…!?』

 

 とか聞こえたし、すれ違った3年生の金髪の人なんか凄い剣幕をしていたわね…。っていうかあれって確か生徒会長じゃなかったかしら。それでその横にいたおっとりした感じの人が副会長…。

 

 「…き」

 

 なんか今この時期、生徒会は殺伐としてそうね…。尤も私には関係ないからどうでもいいけど。

 

「おいまき!!」

「ヴぇえ!?な、なに…?」

「いや今日の夕飯豚テキでいいか?って。さっきから呼んでるだろ…」

「え、う、うん…うん?何って?お兄ちゃん」

「だから豚テキ。今日の夕飯だよ」

「え~トンテキ~?まきちゃん牛がいいんだけど~。それかシースー」

「はいはい、牛もシースーもまた今度な。さってんじゃあ支度支度っと…」

「むぅ~~」

 

 

 ――――そう。

 

 たとえ廃校になろうがなるまいが、私の日常は変わらない。変わることはない。

 これまで通り、普通に学校に行って、家では至福の時を過ごす。

 私のライフスタイルは、どんなことがあろうと乱れることはないっ…

 

「いや既に乱れてるだろ、お前の生活は」

「ヴぇえ声に出てた!?」

 

 

 

 

 【まきSide End】

 

 

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 

 

 【秀平Side】

 

 

 廃校、か…。

 あそこは女子高だから俺が高校生だったとしても縁のないところだけど、実際に通っているまき達からすれば聞かされたときはけっこうな衝撃だっただろうな…。

 

 トントンと音を立ててキャベツを切りながら、俺はゲーム画面と向き合っているまきをちらりと見やる。

 

「よっと…はぁ!?どうして今のが当たるのよ判定おかしいんじゃないの!?」

 

 ゲームにマジギレするなよ…。

 しかしどうやら、まき自身はこの問題をさほど気にしていないようだ。

 今のこいつの様子がそれを物語っている。

 

 …お、いい感じに焼けたな。

 

「よ~しまき、もう焼けたから早く座れよー」

「こっちももう焼けたわよ」

 

 『上手に焼けました~♪』

 

 帰って来た返事と共にPSPから聴こえてくるそんなアナウンスとBGM。

 

「じゃあそれ食ったらな」

「うん」

 

 よし、じゃあ盛り付けるか…。

 

 

 

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「そういえば…」

「?」

 

 卓に着いて箸を進めていると、気になったことがあったので俺は口を開く。

 

「なぁまき」

「どうしたのお兄ちゃん」

「まきはこの近所に『穂むら』っていう和菓子屋があるってこと、知ってたか?」

 

 ふと、俺は今日出会ったオレンジ髪で活発な女の子のことを思い出しながらまきに尋ねる。

 

「ほむら??ううん聞いたことない」

「そうか…」

 

 まぁ俺自身も今日まで知らなかったし、おかしくはないか…。

 

「ねぇ、その和菓子屋さんがどうかしたの?」

「ん?いや、実は今日の朝食はそこの和菓子を買ったんだよ」

「朝ご飯を和菓子にするってお兄ちゃんどんだけ上級者なの?」

「ドリトスのお前が言うな、それにそうなったのはお前のせいでもあるんだぞ」

「そうだっけ?それよりそれでどうしたのよ」

 

 な、流された…。

 

「…いや、その和菓子屋を営んでいる家にも音ノ木坂に行ってる娘がいるんだよ。確か2年、っていってたっけな…」

「ふ~ん…一つ上、ね」

「元気で明るそうな娘だったし、とりあえず学院内でお前に遭う事があったらよろしくってだけ伝えといたからな」

「はぁ!?ちょっと信じられない!!そんな余計な事言ってこないでよ!!」

「余計な事じゃない。これを機にお前はもうちょっと知り合い、あわよくば友達を作るべきだ」

「と…ともだちなら、今日出来たわよ!!…うぅ」

 

 なぜか顔を赤くさせながらそのまま俯いてしまうまき。

 この反応はどういうことだ?いつものこいつなら

 

 

 『余計なお世話よ。だって私はソロでいる方が落ち着くから』

 

 

 とか言い始めるのに、正直この反応は予測していなかったぞ…。

 まさか本当にこいつに…

 

 ん?いや…

 

「ゲームはノーカウントだ」

「トモコレじゃないわよバカ!本当に出来たのよ!!」

「はははっ……は?」

 

 はぁ?

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ちょっと驚きすぎじゃない!?」

 

 まきが愕然としている中、俺は卓を離れて慌ててカレンダーを確認する。

 そ、そうだよなっ今日は4月1日じゃないもんな…。

 

「前から思ってたけど、お兄ちゃんも大概失礼よね」

「え、じゃあ本当に…」

 

 俺が確認の意味も込めておそるおそるそう言うと、まきはまた照れたように少し顔を赤くして小さく頷く。

 

「そ…そうか。出来ちゃったのか…」

「うん、でもちゃんと言い方を改めるか主語をつけてよ…。ママとパパが聞いたら勘違いしそうだから」

「?」

 

 こいつは何を言ってるんだろう?

 しかしそうか、友達か…。だったら今日は寿司にしてやればよかったかな。

 

「ま、まぁそういうわけだから?私は別にその2年の人?が来ようが来まいがと、ともだちなら間に合ってるのよ」

 

 いつものように髪の毛を指で絡ませるようにクルクルとさせながら、少しふふんと得意げな表情をしつつも、”ともだち”の部分だけはぎこちない発音なまき。

 

「でも」

「?」

「で、でも…もし私もその人も、その事を覚えていて遭うことができたら…その時は、よ、よろしくさせてもらうつもりよ…」

「………そうか」

 

 これまたぎこちない口調で、そして相変わらず照れたように顔を赤くしてそう言うまきだったが、その台詞には確かなまきの意思があった。

 初めて友達ができたことによって、少しは友達と付き合うという事に対して考え方・見方が変わったのではないだろうか?

 

 友達ができた。

 たったこれだけのことだが、今までのまきのことを考えると実に喜ばしいことだと思う。

 友達が出来たことで、まきも少しは休みの日は引きこもってばかりではなく、外で…というアウトドアな日々を過ごすことが多くなるかもしれない。

 

 もしかすると、まきのこれからの学生生活は廃校なんて気にならない程に充実した良いものになるんじゃないか?

 それも、これまでになかった新しいものに…。

 

「…ちゃんっ」

 

 いずれにしても、なぜか楽しみにしている自分がいるな。

 これを機に、まきも少しはグータLIFEから離れることになってくれたら

 

「お兄ちゃんってば!!」

「うぉっ…なんだ、どうした?」

「ん」

 

 なんだ?

 まきは携帯の画面を俺に見せるようにして向けながら、

 

「今日夜にゲリラあるから課金してもいい?」

「……………5000迄な」

「ありがとう!!」

 

 そう言い残してタッタッタとリビングを抜けていくまき。

 そのうきうきとした背中からは、今日もオールが確定したといわんばかりのものを語っていた。

 

 ポツンと一人残されたリビングで、俺はあることを思い出す。

 

 

「……家と外じゃ、あいつ別人だったなぁ」

 

 

 呟いて、俺は片づけに取り掛かる…。

 

 

 




ここまでお疲れ様でした。

割と不定期更新になりがちで、最近は特にバタバタと忙しくなってきましたが
これからもお付き合いいただけたら嬉しいです。


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