諸君は「機動戦士ガンダム」と聞けば、いったい何を思い浮かべるだろう。
モビルスーツ?
確かに作品のメインとなる機動兵器だ。ワンオフの機体から量産機まで、様々な機体があるだろう。
歴代主人公やライバルたち?
確かに彼らが居なければ、物語は進まない。
国か?組織か?財閥か?
あえて言わせてもらおう。
機動戦士ガンダムを初めとした、ほぼすべてのロボットアニメにおいて、キャラクターや組織を支えたのは、「母艦」であると。
「…ふう、今日もいっぱい出撃させたなぁ」
一人の少女が、一台のパソコンを前に体を伸ばしていた。
そのディスプレイには、数々の少女たちが映っていた。小学生のような少女から、凛々しい大人の女性まで、見た目は様々だ。
この少女たちは、ゲームのキャラクター。艦娘という、擬人化された軍艦たちだ。
そのゲームの名は「艦隊これくしょん」といい、絶大な人気を誇る、戦術シュミレーション(その他含む)ゲームなのである。
彼女の時代からしてみれば、相当にクラシックな軍艦ばかりだが。なぜなら、彼女の時代では軍艦といえば空を飛ぶものだから。それにいまどき戦闘機など使われない。それよりも、もっと高性能で、汎用性の高い機動兵器が存在するのだから。
まあ、そのギャップが人気のポイントでもあるのだ。
この少女はつい最近このゲームを始めた新人提督だ。
提督レベルは29、艦娘の最大レベルも27と、駆け出しもいいところである。最近ようやく資材の安定が見込めてきて、この三日ほど2-4でレべリングを始めた程度である。
本人に軍艦の知識はほとんど無く、友人に勧められるがままに始めたばかりだ。
「これからしばらく旅行に行くし、大型艦建造でもしようかなー」
…現在午前4:00ごろ。旅行前日である。
彼女自身に欲しい艦娘は特にいない。女で、しかも仕事が仕事であるがゆえにのほほんとプレイしていた結果、資材は各6000ずつ程所持している。
というわけで、俗にいう「大和レシピ」を投入。
ろくに建造時間を見ないまま、画面前で寝落ちを敢行してしまった。
―建造時間 99:99:99―
この、異常な建造時間を見る前に。
薄暗い工廠の中、小さな妖精さんたちが忙しなく働いていた。
「…提督、この艤装はいったい?」
士官服に身を包んだ青年が、その作業を見守っていた。
傍で立っていた少女…榛名は、提督に尋ねた。既存の艦艇の艤装とはかけ離れた、この艤装は一体なんだ、と。
この青年提督の秘書艦である榛名は、その普段の業務の賜物か、はたまた趣味か、ほぼすべての艦娘の艤装について記憶している。しかし、彼女の記憶には、現在建造中の艤装は存在しなかった。
青い装甲、それに接続された四つのコンテナ。特徴的なコーン型の推進部。そして、その艤装に武装は、無い。
規模からして、ほぼ戦艦サイズの代物だ。榛名自身も戦艦級の艦娘であるため、そのサイズに見合わない風貌に疑問を隠せなかった。
「新たに確認された戦艦ですか?そのような報告は挙がっていませんが」
問う榛名に提督は聞き捨てならない言葉を発した。
「…輸送艦、だ。少しばかり変り種だがな」
「……は?ゆ、輸送艦ですか!?戦艦ではなく!?」
このサイズで、輸送艦。その規模は大和型に匹敵するというのに。
「妖精たちがそういうのだ、そうなんだろう」
「…見慣れない妖精さんがいますね。お、男の子、ですか?」
「”いあん”と”りんだ”、というらしい。本部からあの夫婦を引き渡されて、工廠に連れて行った途端、すぐにアレを作り始めた」
俺もよくわからん、と首を振る。
もとから居た妖精たちも協力的なため、判断に困るそうなのだ。
「…そういえば、あいつら、変なものを大事に抱えていたな。確かアレは………」
…”GN-ドライブ”、だったか。
懲りずに新作投稿。
アイデアがあるのが悪い。