スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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EP1も長くなりましたが、今回が91話で、
多分93話でEP1の最終回となります。
無事に年内に終わる見込みです。
なのでもうしばらくお付き合い頂ければ幸いです。
それが終わったらQ&Aコーナーを設けますので、
気軽に質問疑問など今のうちに
メッセージでも感想欄にでも書きこんでください。
勿論普通に感想も大歓迎です はい。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想を書いてくれると作者喜びます。
感想欄でなくてもメッセージ機能なり
ツィッター(@neko_neko_xojya)でお寄せ下さい。
なおイラストとか挿絵書いてくれる人は万年募集中です。


091.「私はあなたを信じています」

『スノーフレークのマスター。

 そちらは落ちついたようなので、

 kとキルシェを戻させてもらいます。

 まだ苦戦しているチームに回します』

 

通信は指揮をしている

止まり木のマスターからだった。

 

「ああ、助かったよ。

 お陰様でなんとかなった」

 

kは軽く手を振り、

キルシェは丁寧にお辞儀をして

キャンプシップに転送されていった。

彼女たちはまだまだ

戦闘の激しい場所へ戦いに行くのだろう。

あれだけ戦っても余力が

あるのはさすがと言わざるえない。

 

『それにしても……

 スノーフレーク、

 よくやってくれました』

 

「期待してなかったってことか?」

 

『ええ、正直に言えばその通りです』

 

隠すことなくストレートに言われる。

それも当然だろう。

近くにいる他の8つのチームは

一流とまでは行かなくても

いずれも実績を持つチームばかり。

アックスボンバーズもあんな感じだが、

やる時はやるチームなのである。

その中でスノーフレークは

設立も実績も浅いチームで

加えてメンバーの半数は新米アークスだ。

心配されるのは当然だが……

 

『――想像以上です。

 あなたたちがこの戦いに参加してくれていて

 本当に良かった。

 共に戦えたことを嬉しく思います』

 

真っ直ぐな称賛にウェズは

照れたように鼻を掻く。

しかし……

 

『簡単に信じちゃダメよ~ウェズ君。

 そのマスターはね~、

 人を乗せるのが上手なんだから~』

 

『その通りでござる。

 人ではなくまさに狸。

 なんどその殊勝な態度に拙者たちも騙されたか……』

 

それぞれのマスターたちが恨み節を言う。

ウェズは半眼になって

通信越しに止まり木のマスターの顔を見るが、

彼女は明後日の方向を向きながら口笛を吹き

 

『やれやれ、信じてもらえなくて寂しい限りですよ。

 私の嫌いなのは嘘、大げさ、紛らわしい……

 こうして素直な激励ですら疑われてしまうとは』

 

まるで悪戯がばれたかのような気まずそうな表ジョゥ。

明らかに言葉と口調が乖離していた。

見た目とは裏腹に

どうやら中々に曲者らしい。

 

『ったくよ!

 だからオメェと一緒に組みたくねーんだ!』

 

吐き捨てるように叫ぶのは

アックスボンバーズのアックス。

 

『大体前々から気に食わなかったんだよ!

 思いだした、オメェこの前も――』

 

その瞬間

 

ドゴォンッ!

 

通信回線越しに激しい爆音が響き渡った。

 

「なんだ今のは!?」

 

一体どこの場所なのか。

ウェズが周囲を見回す。

 

「あそこです!」

 

レシアの指差した方向。

そこには粉々に砕かれた残骸があった。

戦っていたであろうアークス……

かろうじて無事だったようだが、

無重力に放り投げ出されて

手足を動かしてジタバタしていた。

 

『リコット、キミ、ロサード!

 すぐにアックスボンバーズの救出を!

 他のチームは警戒!』

 

どうやらアックスボンバーズが

戦っていた場所が砕かれたらしい。

 

「……あれを見て!」

 

彼らを襲ったモノ……

メディリスがそれを見つけていた。

 

『きやぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

通信機からまた悲鳴が響き渡る。

今度はウェズにも見えた。

 

それは最後に残ったファルスアーム。

残されたアームたちが連結して、

凄まじい勢いで突っ込んでいるのだ。

 

『スペルキュレイション!』

 

今までとは違い、

完全に理性を失いがむしゃらに

襲い掛かっているようだった。

 

「……マズいね、ここにも来るよ」

 

アザナミが残骸の隅に立つ。

ウェズはその隣に立ち、

暴れまわる腕を睨む。

あんなモノ、どうすればいいのか。

 

「ねえ、ウェズ」

 

そんな切迫した状況下だというのに、

アザナミは軽い口調で弟子の名を呼ぶ。

 

「レイ=タチバナ……彼女は強かった?」

 

そういえばアザナミとレイは顔見知りだったはずだ。

どういう仲なのか詳しくは聞いていないが、

親しい間柄だったであろうことは想像に難くない。

しかし何故、今そんなことを聞くのだろうか。

意図はわからないが、

 

「……ああ。凄く強かったよ。

 結局……最後まで勝てなかった」

 

ウェズはスサノグレンを握りしめる。

 

「そっか。

 でも、彼女はウェズを認めていたよ。

 君みたいなアークスがもっと増えればいいってさ」

 

そう言って、アザナミは自分のカタナから

フォトンアーツのディスクを取り出す。

 

「本当はレイにあげるつもりだったんだ。

 だけど、ウェズ、君に上げよう」

 

投げられたそれを受け取る。

ちらっと見ただけで

どんなフォトンアーツかわかった。

 

「私のカタナじゃ、無理だからさ」

 

アザナミはカルネサスを見せる。

どれほど酷使したのか……

細かい傷だらけの刀身、

中央に大きく亀裂が入っていた。

とてももうフォトンアーツを

放つことはできないだろう。

 

「……ありがとう、アザナミさん」

 

スサノグレンにフォトンアーツをセットする。

 

「ウェズ……!

 ファルスアームがきます!」

 

向こうから真っ直ぐと突っ込んでる様が見える。

あれが直撃すればひとたまりもなく、

スノーフレークの面子は宇宙へ投げ出されるだろう。

 

『カルマ、アカネ!

 バタフライエッジの場所に移って、

 攻撃しつつ怪我人を急いでキャンプシップへ!』

 

遊撃に当たっていた止まり木の面子が

それぞれの場所から攻撃しているが、

体積は減ってはいるものの

その勢いを殺すことはできていない。

 

ウェズはアザナミに一度頷いてから叫んだ。

 

「みんな!

 ありたっけの攻撃をぶつけてくれ!」

 

カタナを掲げる。

ライバルが託してくれたスサノグレンが、

戦場の中できらりと光を反射させていた。

 

「最後は、俺が決める!」

 

一瞬、全員がそんなマスターを

惚けたような表情で見たが

 

「「「了解!」」」

 

すぐに頷き、それぞれが武器を構えた。

 

「ペネレイトアロウ!」

 

イオがエーデルイーオーを引き絞り、

巨大なフォトンの矢を放つ。

 

「ピアッシングシェル!」

 

メディリスがありったけのフォトンを込めて、

赤のライフルの銃身が焼け付くのも構わずに連射する。

 

「エイミングショット!」

 

アンジュもバウガーディンを射撃モードにし、

ひたすら射撃を行う。

 

「メテオフィスト!」

 

遠距離攻撃を持たない

ケーラはパオネリアンから

フォトンの衝撃波を放つ。

 

「セイクリッドスキュア!」

 

ライガンはラムダライゼノークを

思い切り振りかぶって投げつける。

 

それぞれが今できる最大の攻撃を

迫りくるファルスアームに向けて放っていた。

 

「ウェズ」

 

唯一、タリスを使い切って

武器を失ってしまっているレシアは

ウェズの傍に立つ。

一度、カタナを持つ手に、

自分を手を添えて呟く。

 

「私はあなたを信じています」

 

それはほんの少し前に、

彼が彼女にいった言葉だった。

 

曇りなき信頼の瞳。

ウェズは笑い、

「ああ、任せろ」と頷いた。

 

全周囲からのアークスたちの攻撃、

そしてスノーフレークとイオの

全力の攻撃を受けて、

ファルスアームは装甲がほとんど剥がれ落ちていた。

だがその勢いは止まらず、

土台ごとアークスを砕かんとばかりに

スノーフレークのいる足場へ突っ込んでくる。

装甲がないファルスアームは

ぶつかれば衝撃に耐えれないはずだ。

このままではスノーフレークと相打ちになるだろう。

 

「……すぅ」

 

ゆっくりと息を吸う。

もう脅威は目の前。

だがウェズの心は落ちついていた。

スサノグレンをゆっくり抜き頭上に掲げる。

 

「……」

 

そしてゆっくりと……

時計回りに剣を回していく。

まるで流れる水のように、

剣先からフォトンが煌びやかに弧を描く。

 

360度回転させた時には、

刀身を眩いフォトンの光で覆われていた。

 

オォォォォォォォォォォ!

 

すぐそこまで迫る腕。

 

ウェズは叫んだ。

 

「カザンナデシコ!」

 

刀身がフォトンの刃で何倍にも伸びる。

そのフォトンアーツはまさに切り札。

カタナの技にしては大振りで隙が多いモノの、

他のフォトンアーツとは段違いの破壊力を持つ。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

ウェズ=バレントスの全てを今ここに。

全身の力を振り絞り、

頭上から一気に振り下ろした。

 

ズバンッ!

 

放たれた大きな光刃に、

ファルスアームは正面から突っ込んできた。

フォトンの光の前に、

まるだ竹を割るように真っ二つに分かれいく。

その衝撃にカタナから手が離れそうになるが、

 

「……!」

 

レシアがその手をしっかり握りしめる。

彼女の視線にしっかりとウェズは頷く。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

長いファルスアームを完全に切り裂き、

最後の敵をダーカー因子への変えた……




※カザンナデシコはそんなに強いPAではありません
 良い子は真似しないようにしてください
※止まり木のマスターは作中ではアレな人みたいですが
 モデルとなったマスターは裏表なくとても優しく
 ピュアホワイトなアークスなので狸とは無縁です
※アックスボンバーズは
 なんか死んだみたいな見えますが一応生きてます。
 アークスは宇宙空間でも活動できるらしく、
 足場がなくなった程度なら大丈夫とのこと。

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