スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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アイドルモードのクーナ「らしい」台詞って、
そもそもどんなのだろうか、と悩みながら書きました、はい。
あわせて今回は何かと色々「知っていそう」なマスターも出てきます。
大分に引っ張りましたが、
やっと次回から戦闘シーンに入ります、はい。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想を書いてくれると作者喜びます。
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087.「熱いあの歌、歌うからね!」

黒のロングヘアーに白い羽根飾り。

どこか巫女を思わせる儀式服のような、

ゆるとした袖口を持つ服装はミコトクラスタという。

それだけ見れば彼女はかつて存在したとされる

「ヤマトナデシコ」とでも呼ばれていただろう。

しかし彼女は、

巨大な肩アーマーであるウィングセレスと、

クラフターズマントという

足元まで届くであろうマントを羽織っている。

チームメンバーにもよくよく脱げと言われる

彼女のお気に入りのソレは一言で言うなら「威圧的」だ。

更にどこか含みを持つ表情を見れば、

とても「淑女」とは言えない。

 

「……あー、マイクテステス」

 

彼女を取り囲むように

無数のモニターが浮かんでいる。

目まぐるしく情報が更新される

それを見ながら口を開いた。

 

「私は『止まり木』のマスター。

 今回、このエリアの指揮を任された者です」

 

彼女が立つのは特殊な形をした船。

船の上部が綺麗に平らになっている。

長さは10メートル四方といったところか。

これは通信用に特化した船であり、

アークスたちの通信を仲介する機能がある。

 

「今ここに参加しているチームは

 私たち止まり木に加え9つ。

 アックスボンバーズ、仮面の騎士団、

 スペルキュレイション、フリージア、

 スノーフレーク、バタフライエッジ、

 旋風、紅炎館、シューティングスター」

 

周囲に表示されているのは

各チームのメンバー全員のバイタルサイン。

それぞれの状態だけでなく

クラス、使用武器、フォトン量まで

リアルタイムで更新していた。

総勢140人分、

彼女の仕事はその情報と戦況を把握しながら

指揮をしていくこととなる。

 

「各チームは今いる持ち場で、

 ファルスアームを迎撃し続けてください。

 ただチームによっては

 得手不得手があると思うので、

 それはうちの面子でフォローします」

 

防衛箇所は9つ。

本来であるならクラスを調整して

戦力を均等に整えた方が良いのだが、

やはりチーム単位の方がそれぞれが連携しやすく、

指揮も上がるのでこの形となった。

一番メンバー数が多い「止まり木」は

ばらけてそれぞれの場所に援軍に行っている。

 

『おい、止まり木の!

 なんでテメェが指揮してんだよ!』

 

怒鳴り声はアックスボンバーズのマスター。

基本、誰かの指揮下に入ることなんて

アークス同士ではないのだから、

彼が理不尽に感じ怒るのも最もだろう。

だが彼女は苦笑して

 

「いやぁ、実に残念です。

 アックスボンバーズがうちより

 功績を上げていたら

 任せることができたんですけどね。

 代われるモノなら代わりたいモノですよ」

 

『ンだとゴラァ!』

 

「ははは、

 まずはメンバー数増やして活躍して、

 あとその怖い顔を整形してから発言してください」

 

『ケンカ売ってんのかよ!

 あと、顔は関係ねぇ!』

 

そもそもにおいて

複数チームがこうして

まとまって作戦行動すること自体がほとんどない。

指揮を取れる人間、というよりは

「責任を取れる立場」の人間が少ないと言える。

一見すると花形にも思える指揮官だが、

その実、一番の貧乏クジである。

今、アークスたちが直面しているのは

誇張なしで「人類存亡の危機」。

失敗は許されない場面で、

誰がその矢面に立ちたがるというだろうか。

それがわかってるマスターたちは、

特に不満もないようで黙っていた。

 

『ね~、これだけアークスがいるんだから、

 こんなところで

 チマチマする必要はないんじゃないの~?』

 

『うむ、拙者たちの力をあわせれば、

 本体を倒せるのではござらぬか?』

 

代わりにフリージアのマスター「クシナ・ホウジョウ」と、

旋風のマスター「烈閃」が意見を出す。

迎撃というのは後手に回るということにもなるので

彼らの意見も決して間違ってはいない。

 

「いえ、私たちの役目はダークファルス【巨躯】の、

 体積を減らしてその力を弱めることです」

 

だが彼女はその提案に首を振る。

 

「かつて三英雄ですら封印までしかできなかった相手。

 正攻法では我々が押し負ける……

 それがアークス本部の出した結論です」

 

『……その言い方だと、

 正攻法以外があるってことか?』

 

スノーフレークのウェズ。

ここで戦う仲間に、「全て」を話せないのは

非常に心苦しいが……

 

「あります。

 が、それは言えません」

 

ばっさり言い切った。

 

『……』

 

各マスターは無言だったが、

けれど不満は伝わってくる。

彼女は小さく

「憎まれ役になってしまったな」と苦笑した。

 

「今、ここで戦うアークス全員が『主人公』……

 私だってそう言って鼓舞したいところ。

 けれど役者はきちんと用意されているのです。

 なればこそ、私たちは舞台を盛り上げましょう、

 新たな英雄誕生の伝説の幕開けの引立て役として」

 

その言葉の意味を誰かが問い返す前に、

彼女はパチンと指を鳴らす。

 

 

すると船の上部が開き、

下から何かが競りあがってくる。

それはステージだった。

ピアノ、ギター、ベース、

フルート、ドラム、バイオリンと

6つの楽器が設置されている。

 

シュンッ……

 

するとアークスたちが転送されて

それぞれの楽器の元に現れる。

 

そのアークスの顔を見ても

ほとんどの者は誰が誰だか知らないだろう。

それもそのはず、

彼らは虚空機関と呼ばれる研究機関に所属する者たち。

あまり表には出てこないアークスたちだ。

唯一ドラムのタキオンはちょくちょく、

色んな場に顔を出しているようだが。

表向きはオラクル繁栄のための組織ではあるが……

 

(まさか『彼女』まで出てくるとはね……)

 

楽器を演奏する準備を終えたところで、

最後の一人……歌い手が転送されてきた。

 

フリルのついた短いスカートに、

ぴっちりとボディラインが浮かぶ

どこか扇情的な衣装。

羽をイメージしたという

あるアイドルのためだけに

作られたその衣装の名前はミラセリアという。

 

ラフツインテールに、

美しく整いながらも、

どこか愛嬌のある顔立ち。

ただそこにいるだけで太陽のように

周囲を照らす存在感あるアイドル……

 

「みんなー!

 私も応援に来たよー!」

 

――クーナ。

今オラクルで大ブレイク中のスター。

彼女がこの最終決戦に応援に駆け付けたのだ。

 

「凄く強大で大きな敵を目の前にして

 挫けそうになるかもしれないけれど……

 みんな、絶対に諦めないで!

 私も一緒に頑張るから!」

 

アークスたちを鼓舞するのに、

彼女以上の適任はいないだろう。

だがそれ以上に彼女の「裏の顔」を

知る者たちにとっては……

今回の【巨躯】復活も含めて

色々と勘ぐってしまい

素直に喜べないのだけれども。

 

「私に戦うことはできないけれど……

 でも私だってみんなと一緒にいるから!

 全身全霊、魂込めて!

 熱いあの歌、歌うからね!」

 

しかしそんな事情は今は気にするべきではない。

目の前に立ち塞がる敵と

戦わなければならない。

ダークファルスを倒さなければ

オラクルは壊滅してしまうのだから。

 

「明るく激しく鮮烈に!

 みんな、盛り上がって行こう!」

 

クーナの明るい声が宇宙に響き渡る。

フォトンは意思の強さでその輝きを増す。

彼女の歌声は、

アークスたちの力となるだろう。

 

高らかに彼女が叫ぶ。

 

 

「――Our Fighting!」

 


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