スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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私もわかっているのです……
そう、これは本編のクローンとは違うということを!
殴ってきたり現実にできない動きをしてきたり……
しかしもう三度目の戦いです、ネタがなかったのです……
今後はブレイバーvsブレイバーはもう書かない!
あ、ここで書くのもなんですけど、
感想は勿論のこと、
評価で一言メッセージとかくれるととても励みになります、ちらっ


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想を書いてくれると作者喜びます。
要望などは個別にメッセージ機能なり
ツィッター(@neko_neko_xojya)でお寄せ下さい。
※感想欄に書くと規約に引っかかるため
※要望は全てに対応できるわけではないのはで予めご了承ください。


069.「……何にも嬉しくねぇよ」

「先に行ってくれ。

 後で必ず追いつく」

 

ウェズは居合いの構えを崩さず、

複製体を睨みながら告げる。

 

「……一人で大丈夫ですか?

 クローンはオリジナルよりも、

 ダーカー因子で構成されているため

 強化されているとは聞きますが」

 

言葉こそは丁寧だが、

どこか試すような口調に

ウェズはニヤリと笑う。

 

「あいつとはもう2回戦った。

 だから俺が適任だ。

 ブレイバー相手にアンタも、

 シェスタも分が悪いだろうしな」

 

唯一、ファイターのケーラなら

十分以上に渡り合えるだろうが……

 

「レイ……」

 

呆然と立ち尽くす彼女に、

複製体とはいえ……

慕う相手と同じ姿の敵とは

戦うことはできないだろう。

 

「言うじゃないさ。

 なら……あんまりカッコ悪いとこ、

 見せるんじゃないよ」

 

シェストが新しいタバコを取りだし、

しゅぼっと火をつける。

 

幸いにも複製体は

進行方向を塞いでるわけではない。

背を向けない限りは

誰か一人が食い止めれば大丈夫だろう。

 

「では、後で落ちあいましょう」

 

「アンタが来る頃には終わらせておくよ」

 

ナイトメアとシェスタがそう言い残し、

振り返りもせずに奥へと走っていく。

 

「ケーラ、アンタも行ってくれ。

 こんな紛い物じゃない……

 本物のあいつがアンタを待っているはずだ」

 

彼女は強く噛んだ唇から血が溢れる。

ウェズの言葉に従うのが

この場では一番正しいというのはわかる。

 

「っ!」

 

近くの壁を思い切り殴ってから、

彼女は顔を上げて、

 

「……先に行ってるよ」

 

小さく呟き、駆けて行った。

 

「……」

 

複製体はちらっとそちらに視界を向けるが、

ウェズがいるので追いかけはしなかった。

 

(まあ背を向けてくれたら

 楽だったんだけどな)

 

クローン相手に正々堂々と

一騎打ちなんて考える必要もない。

ナイトメアたちを追いかけさせ、

その後ろから斬るというのも考えていたのだが、

さすがに簡単にはいかないようだ。

恐らくクローンは

難しいことは考えていないのだろう。

ただ目の前の敵を倒すことだけが行動原理。

 

「……!」

 

複製体が飛び込んでくる。

さすがはレイのクローン。

オリジナルと同じ……

いやそれ以上の勢いだ。

 

「カンランキキョウ!」

 

けれど駆け引きもない突進、

冷静にウェズは居合いで牽制する。

 

「なっ!」

 

これがレイ本人であるならば、

恐らくガードをしてカウンターを

狙ってきただろう。

だが複製体は鋭い跳躍でウェズを飛び越す。

 

ギロッ。

 

一瞬だけ、

何も映さない濁った赤い瞳と交錯する。

 

シュンッ!

 

少しでも身をよじるのが遅ければ、

顔面を真っ二つにされていた。

すれ違いざまに放たれた

スサノグレンもどきの一閃が、

ウェズの肩をかする。

 

「ちっ!」

 

傷は浅いが血が流れる。

相手の前で飛びあがるなど、

あまりにも無防備極まりない。

曲りなりともレイの姿をしているのだ。

まさかそんなことをするとは思っておらず、

反応が遅れてしまった。

 

キンッ!

 

ウェズの頭上を飛び越えた複製体は

振り向きざまに居合いを放つ。

 

「カウンターエッジ!」

 

ギリギリだがガードが間に合い、

カウンターによる衝撃波を放つが、

相手は後ろへ飛び退り回避した。

……アークスがするには

あまりにも体に負担のかかる

無茶苦茶な動きだ。

 

「クソッ、完全に別物じゃねーか」

 

戦った経験があると言った手前、

情けないことは言えないが

悪態もつきたくなる。

オリジナルのように

緻密で鋭い戦い方ではなく、

荒々しく力任せな攻撃。

むしろアンジュの野性味溢れる

戦闘スタイルに近い。

 

――ツキミサザンカ

 

離れていたと思ったのに、

一気に懐に飛び込んできて下から斬り上げてくる。

サイドステップで回避して

ディオシガルガを叩きこもうとするが、

 

「っ!」

 

慌てて鞘でブロックする。

そこへ重い一撃が叩き込まれた。

それはカタナではない、拳だ。

 

クローンにも骨があるのか知らないが、

堅い鞘を殴ったせいで複製体の拳から

メリッという嫌な音が聞こえる。

だが構わず剣を持ち直して

喰らいついてくる。

 

「ナメんな!」

 

あまりのなりふり構わぬ戦い方に

ウェズは怒りを覚えていた。

 

「カンランキキョウ!」

 

ウェズの中でレイ=タチバナは

ある意味で師とも言える存在になっていた。

一つ一つの動作に意味があり、

それが重なり合うことで

あの流麗というべき戦い方が生み出されている。

そこに至るまでに

彼女はどれほどの鍛練を重ねたのか……。

同じカタナ使いとして学ぶところばかりで、

影でいつも動きを真似て

自分の動きに取り入れようとしていたくらいだ。

 

だというのに今、目の前にいるのは、

ウーダンが棍棒を力任せに

振り回しているかのような

とても雑な戦い方そのもの。

人間離れした体だからこそ成り立つのであり、

これが普通のアークスであるなら、

ウェズにとっては相手にならなかっただろう。

 

ガンッ!

 

柄で顔面を思い切り殴りつけて、

相手を引き離す。

複製体は一瞬怯むが、

だがまるで何事もなかったかのように、

黒い髪をなびかせて襲い掛かってくる。

オリジナルは死神だと感じたそれも、

今はただ黒い獣と戦っている気分だ。

 

――アサギリレンダン。

 

至近距離から無数の斬撃を繰り出してくる。

 

「アサギリレンダン!」

 

いつかと同じような斬撃の応酬、

しかし今度は逆で

ウェズが上手くいなしていた。

とはいえ相手の馬鹿力に

ディオシガルガは悲鳴をあげる。

 

(フォトンアーツの性質は同じなのか)

 

純粋な膂力はあがっていても、

フォトンの出力が高いわけではない。

正確にはフォトンに「似せたモノ」だが

「真似をする」ことしかできなかったのか。

 

なるほどと思う。

これが複製体の性質だ。

形振り構わないがむしゃらな戦い方に

アークスとは違うと戸惑っていたが、

根本的なところはアークスを基礎としている。

 

ドゴッ!

 

死角から繰り出された拳が右肩に当たり、

ウェズは顔をしかめる。

例えば今のパンチ、

威力は高いモノの

「腕が伸びたりはしない」。

 

(なら……)

 

うまくいくかはわからない。

だがウェズは賭けることにした。

 

「くっ!」

 

殴られた右肩を左手で抑えながら

よろめきながら後ろに下がる。

無防備な姿を晒して

カタナを持つ手をだらんと垂らす。

 

「……」

 

複製体がカタナを鞘に納める。

この距離で、

油断をした相手に対して何が有効か……

 

シュンッ!

 

そしていきなりカタナを

その場で引き抜いた。

カタナから生み出された縦の衝撃波が

離れて安全圏にいたはずのウェズを襲う。

 

そう、それはいつかウェズが

直撃して敗北を喫したフォトンアーツ……

ハトウリンドウ。

 

「ふっ!」

 

けれど来るとわかっていれば、

一度見た技だ……

ギリギリの見切りで身をよじり、

衝撃波を避ける。

大気を震わせる波動は直撃を避けても

ウェズの体を幾重にも切り裂いていく。

だが倒れはしない。

 

――あの敗北の後に

何度もこのPAについて脳内でシュミレーションした。

 

どれくらいの距離なら

ヒエンツバキより長いのか……

どの場面で使うのに

適したフォトンアーツなのか……。

レイ=タチバナが

切り札として使ったということは、

つまりはここぞという場面でしか使えないからだ。

 

「つまり、隙が出来るってことなんだよ!」

 

本物であるならこんなに

迂闊に使用はしてこないだろう。

だが、距離など条件さえあわせれば

「ちょうど良い」と無造作に使ってくる……

複製体がそう動くように間合いを調整をして

賭けを挑んだのだった。

 

剣を振りぬいた無防備な硬直状態。

ウェズは全ての力を振り絞り駆け抜け

高く飛び上がる。

 

「ゲッカザクロ!」

 

振り下ろしたのは全身全霊を込めた一撃。

脳天から叩き割ろうとしたカタナは

 

キンッ!

 

かろうじて間に合ったスサノグレンに防がれる。

だが……

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

偽物のスサノグレンと、

ミリアが丹精込めて作り上げてくれた

ディオシガルガ……

ディオは彼女のカタナを信じた。

 

パキンッ!

 

甲高い音ともにスサノグレンは

折れてダーカー因子に還り、

そして

 

「――!?」

 

複製体を真っ二つに切り裂いた。

もうディオシガルガも限界だったのか、

勢い余って地面にまで振り下ろした時に

折れてしまった……。

 

赤いギョロッとした目がウェズを睨む。

 

「……何にも嬉しくねぇよ」

 

複製体はダーカー因子に胞状分解し、

空気へと霧散した。

 

「くそっ!」

 

レイ=タチバナと戦った時のような

高揚感はどこにもなく、

ただ、虚しい勝利だった。

本物を乗り越えなければ、

何の意味もないというのに。

 

中折れしたディオシガルガを鞘に戻し、

一度複製体が消えた場所を見てから

 

「……」

 

ウェズは奥へと駆けだした。

 


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