スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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少し独白が長いかもしれません。
そんな新しい場面に突入しました。
PSO2を知る人なら、
何が起きたかわかってもらえるかなぁと。
章タイトルは
The sorrow attacks it suddenly
タイトルとこの61だけで
どんな話になるかは想像できると思います。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


Episode 1 :The sorrow attacks it suddenly(巣窟編)
061.「今が楽しいってことだよ」


ケーラ=ニベルムは

今でこそ知らぬ者も多いが、

一時期はほどほどに有名人だった。

青のツインテールに、

デューマン特有のオッドアイ。

オレンジとパープルの瞳は

どこかいつも悪戯っぽい色を宿しており、

飄々としていた物腰は捉えどころがない。

そんな派手な容姿も特徴的ではあるけれど、

知る者にとってはもっと別のことで覚えていた。

 

――地獄への水先案内人。

 

なんとも陳腐な通り名。

ケーラ自身もその言われ方は

安っぽくて好きではない。

由来も単純、彼女を除いて

パーティが全滅することが続いたからだ。

まるで彼女が味方を殺したかのような、

そんな風評も一度や二度ではなかった。

けれど冷静な者、

またはベテランになればなるほど

それが正しくないことは知っている。

ファイターである彼女が

自慢のパオネリアンを手に、

敵へと突進して立ち回る姿は勇猛そのもの。

度胸も実力も兼ね備えた彼女は

いつだって率先して最前線で戦い続けた。

けれども彼女に任せきりで

油断していた後方支援のメンバーが壊滅……

そんなことが繰り返されたのだった。

 

彼女は、自身の役割を全うしただけ。

格下のアークスが嫉妬で

陰口を叩いているだけだったのだ。

 

けれどいい加減、

ケーラもうんざりしていた頃に彼女と出会った。

 

「次は惑星リリーパの資源採掘の護衛か」

 

レイ=タチバナというアークスに。

今いるのは目的地へ向かう途中の

キャンプシップの中だった。

端末でクエストの詳細を

確認する彼女の横顔は

まるで迷いのない真っ直ぐ凛とした表情。

 

彼女には師を支えるために強くなる、

そんな揺らがぬ単純明快な戦う理由がある。

その姿を見ていたら

つまらない風評で不貞腐れていた自分が

なんだか「つまらない」と思ってしまった。

 

出会いは本当に特別なことはない。

偶然、クエストで一緒になり、

お互いの実力を認めて以後

一緒に活動することになっただけ。

彼女と一緒になってから

誰とも組んでいないため当然、

地獄への水先案内人の通り名は自然消滅した。

また今までは特に戦う理由を

持たなかったケーラにも

レイがどこまで強くなれるかを見届けるという

そんな目標が出来たのだった。

 

「うんむ。

 マスター、最近少し

 クエストを詰め過ぎだと思うんじゃが」

 

疲れたように進言するのは

彼女にずっと付き従うガンス。

詳しい事情は聞いていないが、

この初老のテクターは

どうにも小さい頃から

彼女の面倒を見ているようだ。

メセタの羽振りもいいことから、

レイは元々は良いところの

お嬢様だったのかもしれない。

 

「ふっ、どうにも最近調子が良くてな。

 体を動かしたくて仕方がない」

 

本人も意識していないのだろうけれど、

口元には笑みを浮かべていた。

 

「そんなにあの小僧との戦いが

 楽しかったのかのぅ。

 ワシにはよくわからん」

 

そう、あのウェズという少年と戦ってからだ。

一心不乱だった剣技も、

どこか余裕をもった太刀筋になっていた。

前よりも明らかに

戦いの幅が増えて強くなっている。

 

(……悔しいな。

 私と一緒にいても何も変わらなかったじゃん)

 

なんだかんだで彼女の

一番の相棒は自分だと思っていた。

だというのに突然に横から出てきて、

あっさりと彼女に変化をもたらした

あの少年が少しだけ憎い。

 

(ウェズ=バレントス、か)

 

面白い少年だとは思う。

彼と関わることがあれば、

自分もまた変わるのだろうか。

 

「ケーラ。

 どうかしたか?」

 

「いや、なんでもないよ。

 最近砂漠が多いし、

 たまには海も行きたいなってだけ」

 

レイに私は笑う。

すると彼女は笑いながら肩を竦めた。

 

「海か……たまにはいいかもしれんな」

 

――ほら、今まで

クエスト以外に興味持ったことないのに。

 

唐変木な彼女には、

私のこと複雑な心境は理解できないだろう。

というよりわかろうとする気配もない。

 

「ま、それがレイ=タチバナなんだけどね」

 

「……突然にどうしたんだ?」

 

「今が楽しいってことだよ」

 

でもまあ今が居心地がいい。

慌てることは何一つとしてない、

ケーラはそう考えていた。

 

そんな私の想いを打ち砕くように、

突然にキャンプシップ内の

赤い非常灯が点滅を始めて

緊急事態のアラームが

うるさく鳴り響いたのだった……


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