スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
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登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


059.「終わらせて、くださいね」

「オプタさん、

 ウェズさんとレシアさんが!」

 

悲痛な叫び声。

けれどパイロットはそれどころではなかった。

 

「持ちそうに見えるだろ?

 そう長くは持たねえんだこれ……

 クソッ!

 姿勢保つだけで精一杯だ!」

 

これが惑星ナベリウスの上空なら

軽微の損傷だと笑い飛ばせただろう。

しかしここは惑星アムドゥスキア、

強力な磁界の影響下なのだ。

戦闘機の飛行がまるで安定しない。

 

「ぐっ……」

 

ライガンも歯噛みしながら

バルカン砲で牽制する。

速度が下がった戦闘機を

次は確実に仕留めようと

クォーツドラゴンは

旋回しながら様子を伺っているのだ。

メディリスもワンポイントで

なんとか応戦しているが……

動揺が隠せなくて狙いが定まらない。

 

「……ウェズさん」

 

そんな絶望感が支配する中、

一人だけ呑気な者がいた。

 

「おー……」

 

下を覗き込んでいるアンジュ。

何を見ているのか知らないが、

感嘆の声をあげる。

 

少しでも弾幕を張りたい

ライガンが彼女へ叫ぼうとする。

けれど次に少女が発した言葉に息を飲んだ。

 

「ウェズとレシア、

 凄いのに乗ってる」

 

「え!?」

 

メディリスがどういうことかと

振り向いたその時、

 

ドォンッ!

 

クォーツドラゴンに、

強烈な火の玉が直撃した。

 

「ォォォォォォォォォォ!」

 

ドラゴンは

たまらずに距離を開けるために離れた。

 

「おいおいおいおい、

 あれはどういうことだよ!」

 

オプタが叫ぶ。

それもそのはず、

窮地に駆けつけたのは

 

「グォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

大気を震わす力強い咆哮。

アムドゥスキアで唯一、

空の王に対抗しうる存在……

 

「ヴォルドラゴン!」

 

地の王が大きな翼をはためかせ、

大空へと姿を現したのだ。

 

「ウェズさん、レシアさん!」

 

その背中に乗る2人に、

メディリスは知らないうちに

目に涙を浮かべていた。

 

 

 

 

 

ウェズは龍の背中の角を掴み

飛ばされないようにしながら空を睨む。

 

「トゥリア!

 戦闘機を下がらせてくれ!」

 

2人が乗るヴォルドラゴン……

それは前に火山洞窟で助けた龍だった。

クォーツドラゴンとの戦いは

遥か地表からも見えており、

彼は助けに来てきたのだ。

 

「……ラクニ、シテヤッテクレ」

 

否、彼が助けにきたのはウェズたちではない。

ダーカー因子に浸食され、

理性を失ったクォーツドラゴン。

暴れ狂う同族の姿を見ていられなくなったのだ。

かつての自分も、

あと少しウェズたちに助けられるのが遅ければ

同じようになっていたかもしれないのだから。

 

ゆえにウェズとレシアを拾ったのも

あくまでそのついで。

 

「もうクォーツドラゴンはかなり弱っています。

 ……今なら浸食核を破壊も可能でしょう」

 

ウェズの腰にしがみついている

レシアが冷静に分析する。

 

「追いつけるか!」

 

「……ダレニ、モノヲイッテイル」

 

ヴォルドラゴンは速度を上げる。

空を飛ぶことを生業としない彼は、

本来はクォーツドラゴンに追いつけるほどの

スピードを出すことはできない。

だが今は相手が弱って

かなり遅い飛行速度……十分だ。

 

「ォォォォォ!」

 

危険を察したクォーツドラゴンが

全身から小さな結晶を周囲に放つ。

それは一つ一つが光り輝いており、

 

ヒュンッヒュンッ!

 

後ろから追いすぎる

ヴォルドラゴンを目がけて

光の雨が降りそぞく。

直撃すればいかに

ヴォルドラゴンといえど無事では済まない。

 

「……!」

 

けれどそんな攻撃、

同じ龍族である

ヴォルドラゴンにとって想定の範囲内だ。

攻撃が届く前に口から火炎を放つ。

それは火の玉ではなく拡散する炎の霧。

攻撃を撃ち落とすモノではない……

自身の全体を覆う炎の鎧だ。

 

「ナ・バータ!」

 

レシアが全力で正面に水流を放つ。

拡散させて炎から身を護るシールドする。

 

「俺たちが乗ってるのを忘れちゃいねーか!」

 

「……フン」

 

炎を全身に浴びたヴォルドラゴンは

いつかのように黄金色になっていた。

炎は自身の力になると同時に、

いかなる攻撃も弾く鉄壁の守り。

これこそが地獄の王の真なる姿。

 

……危うくウェズたちも

焼かれるところだったが。

力を信用してくれている、ということにしよう。

 

攻撃をもろともせず突っ込み、

そのお蔭で距離が縮まってくる。

尻尾へとヴォルドラゴンが噛みつこうとするが、

 

「待ってくれ!

 アンタが近づいたら、

 ひょっとしたらダーカー因子が

 感染するかもしれねぇ!」

 

鮮血の様に粒子を放つ浸食核は、

花をように大きく開いている。

もし倒したとしても

周囲に猛烈な因子を

ばらまく可能性が高いだろう。

 

「……ゥゥッ!」

 

ヴォルドラゴンが忌々しげに唸る。

 

「レシア!

 あいつ近づいた時に……

 俺を飛ばしてくれ」

 

どうやって、とは言わなかった。

だからレシアは頷く。

彼の期待に応えるのが、

彼女の役割なのだから。

 

「終わらせて、くださいね」

 

ヴォルドラゴンが

ついにクォーツドラゴンに追いつき

速度をあわせて併走していく。

ギョロッとしている血走った眼で

クォーツドラゴンがこちらを睨む。

 

「解放してやるよ、その痛みから」

 

ディオシガルガを抜く。

 

「ウェズ……行きます!」

 

「おう!」

 

レシアが全力でテクニックを起動する。

 

「ナ・ザン!」

 

上空の風圧に負けないほどの

強烈な突風がウェズの背中を押す。

それは凝縮した風の塊で

相手を巻き込んで吹き飛ばす風のテクニック。

本来であれば近づいてきた敵を

引き離すテクニックだが、

今は味方を遠くへ飛ばすことに使ったのだ。

 

「ぐぅ……!」

 

だがナ・ザンも攻撃のテクニック。

全力で放たれた突風に

体がくだけそうになる衝撃に耐えながら

ウェズは空中を舞う。

 

「けど……終わらせて来いって言われたからな!」

 

クォーツドラゴンの頭、

そこから生える浸食核へと突っ込む。

 

「うおおおおおおおお!」

 

ありったけのフォトンを剣先に込める。

もう後のことを考える必要はない、

この一撃で決めるのだ。

 

ズブッ!

 

深々とディオシガルガが浸食核に突き刺さる。

貫通したその刃はクォーツドラゴンの頭ごと貫いた。

 

「……!」

 

中枢器官を破壊された龍は、

絶叫さえあげることかできずに絶命する。

 

 

そして空の王は力尽きて落下していった……。

 

 


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