スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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満を持して、あの男が登場します。
みんな大好き、あの男が!
歴戦の勇者ともに、戦えスノーフレーク!


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


057.「巻き込みはしねぇ、安心しろ!」

「……んっ!」

 

スノーフレークに対して

完全に敵意を持った「敵」。

そのことを感じたアンジュは

背後から攻撃を仕掛ける。

 

「レイジダンス!」

 

彼女が狙ったのは尻尾の付け根。

どれだけ皮膚などが堅い相手でも、

「生物」であるなら

そこは弱い場合が多い。

野生での戦い慣れした

アンジュならではの選択だ。

激しい突きの嵐、

バウガーディンの刃が

クォーツドラゴンの皮膚を削る。

 

ガガガガガッ

 

それは岩を削る音そのもの。

だが表面を少し削って行ける程度だ。

クォーツドラゴンはわずらわしげに

足を軸に勢いよくグルンと回転し、

鋭い鼻先でアンジュを薙ぎ払う。

けれど既に動きを察した彼女は

バックステップで範囲外へと離れていた。

 

「ゲッカザクロ!」

 

アンジュのお蔭で

無防備になった背中へと

ウェズは思い切りカタナを斬りおろす。

 

カキンッ!

 

皮膚に弾かれて舌打ちする。

アンジュのバウガーディンですら

やっと少し削れる硬さの皮膚。

ウェズのフォトン感応率と

ディオシガルガの攻撃力では少々辛いようだ。

 

カキンッカキンッ!

 

それはメディリスのライフルも同様らしい。

岩の物陰に隠れながら狙撃しているが、

弾丸は弾かれてしまう。

急所を狙い撃ちしたくても

岩の塊のような龍、

どこを狙えばいいかわからない。

 

「メギド!」

 

唯一、レシアのテクニックだけが有効だった。

フォトンを凝縮させて放たれた

黒い闇のフォトンの塊を放つテクニック。

メギドは威力は高いが、

反比例して速度が遅いという欠点がある。

しかしアンジュが

注意を逸らしてくれているので

撃ち逃げが容易にできる。

速度が遅いということは

敵にぶつかるまで時間があり、

その間にレシアは

別の場所へと移動しているのだ。

 

「サ・メギド!」

 

合間合間に複雑な軌道を描く

テクニックも混ぜることで位置を悟らせない。

彼女が手に持っているのは

前に使っていた青い羽根のタリス、

ブルクレインではなかった。

更に改良を重ねて周囲の

フォトンの反射率を高めるため

リアクターで補強したモノ。

形状こそ同じだが

深い紅色へとなったそれは

セラータクレインという上位モデル。

 

「アサギリレンダン!」

 

「トライインパクト!」

 

ウェズとアンジュが

前後からクォーツドラゴンを

まるで挑発するように

斬っては離れるを繰り返す。

アンジュに至っては時には

相手の背中を駆け抜けたり、

まさに縦横無尽の動きを見せていた。

 

「ガァァァァァァァァ!」

 

苛立ちを隠せないクォーツドラゴンは

唸りながら口を開く。

 

「わわっ、こっち見ないで!」

 

慌ててメディリスが岩陰に隠れる。

龍族の口から放たれたのは

白いレーザーのようなもの。

道中にいたウィンディラが放ったモノに似ているが、

その出力は段違いだ。

横薙ぎに放たれた一閃は

メディリスの隠れた岩を半分ほど吹き飛ばす。

 

「メディリス!」

 

「大丈夫! 当たってないから!」

 

お返しとばかりに銃身だけ岩陰から出して、

クォーツドラゴンがいる方向へ乱れ打ちをする。

激しい銃声、

けれど全て甲高い音ともに弾かれていく。

 

ピシッ!

 

否、一回だけ違う音が混じった。

小高い位置へ移動していたレシアは

龍の全体を見下すことができたので気付いた。

 

「……鼻先の色が違う部分、

 そこは少し柔らかいみたいです!」

 

フォトンの弾丸が

その場所にだけ穴をあけたのだ。

トゥリアがレシアの報告を受けて

すかさずに部位の解析をしてくれる。

 

『……解析完了。

 そこには周囲の磁力を操作する器官があるみたい。

 それを守る部位、爪……じゃないけど、

 他に比べてもろい感じ。

 それを壊せば器官を直接攻撃して倒せるかも』

 

狙える場所さえわかれば後はこちちのものである。

 

「レシア、なんとか隙を作ってくれ!

 俺とアンジュで破壊する!

 メディリスはウィークバレッドを頼む!」

 

細かい指示はいらない。

結果へと導くための過程は

それぞれが最適だと思ったものを

繋ぎ合わせればいいのだ。

仲間を信用しているからこそ、

ウェズはそれだけしか指示をしなかった。

 

「……うん」

 

「わかりました!」

 

「了解だよ!」

 

彼女たちの小気味よい返事。

最初に仕掛けたのはレシア。

 

「私から行きます!」

 

彼女は物陰から

セラータクレインの羽を4枚同時に投げる。

クォーツドラゴンの上を囲うように

展開されたそれはどれもテクニックをチャージしている。

それはレシアが以前に見せた

テクニックの多重起動。

 

「ラ・メギド!」

 

ラ・メギドは闇のフォトンの塊を

雨の様に降りそぞくテクニックだ。

本来は密集した相手に対して

爆撃する使い方だが

 

ドドドドドドドッ!

 

4つのタリスから同時に発生した黒い雨は、

豪雨という言葉さえ生ぬるいほどの激しさで

クォーツドラゴンに降り注ぐ。

 

「ガァァァァァァァァァァァ!」

 

全身へのダメージに雄叫びをあげる。

だが攻撃よりも違う目的がそれにはあった。

立ち込める黒いもや……

そう暗い雨で視界が完全に遮られていた。

 

「お願い、当たって!」

 

出し惜しみはせず、

メディリスは詰めていた4発の特殊弾道を

クォーツドラゴンの鼻先目がけて放つ。

視界が悪くなるのはこちらも同様だ。

目測だけでなんとか狙い撃つ。

 

ピシっ!

 

幸いにも1発が鼻に当たったらしい。

黒い霧が晴れてきたところで見ると

うまく鼻先に弾丸が突き刺さっていた。

フォトンが活性化され、

弾丸を中心に赤いマーキングが放たれる。

 

「……っ!」

 

クォーツドラゴンは近接の2人を

雨で見つけることはできない。

けれど逆は違う

だがその最悪の視界の中でも

ウィークバレッドが放つマーキングは

しっかりと確認できるのだ。

 

 

「ゲッカザクロ!」

 

背中を駆け抜けたウェズは飛び上がり、

上から力任せにディオシガルガを叩きつける。

そしてあわせるように

地面すれすれを走っていたアンジュは

バウガーディンを切り上げる。

 

「エインラーケン!」

 

クォーツドラゴンの鼻を中心として

カタナとガンスラッシュの刃が交錯する。

一人攻撃では割れなかったかもれしない、

だが上下からの同時攻撃は

2倍以上の衝撃を与え……

 

バリンッ!

 

耐えきれずに鼻先の結晶が吹き飛んだ。

 

「よし!」

 

ここまですれば後は刃が通る。

勝利を確信したウェズだったが、

それは甘い考えだった。

 

「ォォォォォォォォォォォォォ!」

 

激しい雄叫びと共に、

クォーツドラゴンは空へと飛びあがったのだ。

 

「しまった!」

 

相手は空を飛べることを忘れていた。

凄まじい速度で空を舞い、そして

 

「ウェズ、隠れてください!」

 

ウェズはアンジュを抱えて、

岩陰へと飛び込んだ。

 

ドドドドドドドッ!

 

クォーツドラゴンの羽から放たれた

光のミサイルが地面に降り注ぐ。

もうこちらのことが

きちんと認識できていないのか、

まるで大地を壊さんがごとく

ひたすら、そして執拗に攻撃をし続ける。

 

「……おー、綺麗」

 

「当たったら死ぬぞ!」

 

抱えられたままのアンジュが

目をぱちくりとして見ている。

間一髪で難を逃れたウェズは肩で息をする。

 

「これ、まずいね……

 なんかもう手が付けられないよ」

 

メディリスも匍匐前進で物陰にやってきた。

 

ヒュンッ

 

ミラージュエスケープで

空気からしみ出すように出てきたレシアも頷く。

 

「クォーツドラゴンが力尽きるのが先か

 島が壊れるのが先か……

 なんとかして止めないといけませんね」

 

そうは言うモノの、

物陰から出ることすらできない。

 

「まいったな……」

 

ウェズが唸る。

既に逃げることから叶わない状態だ。

爆撃の嵐に揺れる大地。

閃光で目がちかちかする。

どうしたものかと歯噛みしていたが……

 

バァァン!

 

激しい爆発音。

 

「ウォォォォォォ!」

 

そしてドラゴンの雄叫び。

 

「なんだ!?」

 

何事かと確認すると、

数発のミサイルが

クォーツドラゴンに直撃していた。

爆発にたまらずクォーツドラゴンが

攻撃をやめて回避に専念する。

 

「遅くなった、マスター!」

 

力強いその声は……

 

「ライガン!」

 

頼もしいスノーフレークのハンターだった。

 

『おいおい、俺も忘れてもらっちゃ困るぜ!』

 

そして見知らぬ軽そうな男の声。

 

物陰から顔を出して見ると、

そこにいたのはアークス支援用の戦闘機だった。

ライガンはその上に

槍を構えて仁王立ちをしている。

 

戦闘機はバルカンとミサイルで

クォーツドラゴンを追い払っていた。

 

『巻き込みはしねぇ、安心しろ!

 これから援護射撃を行うぜ!』

 

優勢から一転、

危機に陥っていたスノーフレークに

一類の希望の光が差し込んだ。


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