スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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今回はウェズたちの視点ではなく、
ゲストキャラの戦いの話です。
「私のキャラを出してほしい」というリクエストにお応えした形ですが、
どうでしょうか、
きちんと要望された通りにできたでしょうか。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


054.「伊達じゃないんだぜ!」

「答えろ!

 お前たちは何者たちなんだ!」

 

彼はまるで嵐だった。

凄まじい力で振り回される

大剣が生み出す暴風は、

余程のベテランのアークスでも

風圧の前に恐怖を覚えるだろう。

 

「ノヴァストライク!}

 

横薙ぎの大ぶりな一撃が

近くの岩ごと吹き飛ばす。

けれど嵐は止まらず、

烈火の如く攻撃を繰り出していく。

 

勇猛な戦いぶりを見せる

ヒューマンの青年の名はベルリックという。

身長は170半ば、

中肉中背の体格ではあるが、

その堂々たる立ち姿は

実際よりも大きく見える。

少し茶色がかったぼさぼさ黒髪で

横の一房だけまとめて垂らしているのが

アクセントのオウガショートカットという髪型。

けれど何よりも印象的なのは、

まるでカラスを思わせる仮面だ。

目の部分だけ開いた鋭角的な仮面で、

彼は素顔を隠している。

 

「ベルくん!」

 

「ティオ、大丈夫だ!」

 

常に最前線で戦う彼が身に着けてるのは

傷だらけ青い鎧。

それは「騎士」をイメージして作られた戦闘服であり、

常に最前線……

仲間の盾となることを前提として作られたモノ

敏捷性は損なわれるが

それを補って余りある非常に高い防御力を誇る。

セルレイダーという甲冑なのだが、

それは彼の覚悟が形となったもの。

そう仲間を必ず護るという決意。

傷だらけの鎧は彼の誇りである。

 

ぶんっ!

 

彼の持つ規格外すぎる大きさのソード、

黄色を基調とした青い刀身の剣は

「クルセイドロア」はまるで

誓いを賭ける騎士の剣のよう。

 

「こいつ……」

 

しかしダーカーですら怯む豪快な剣戟にも、

敵はまるで恐れを抱く気配が微塵もない。

想像せぬ事態に戸惑いを隠せなかった。

 

「ベルくん、横!」

 

後ろからの少女の声に、

反射的に剣を構える。

間一髪、激しい衝撃を防いだ。

 

「ラ・フォイエ!」

 

彼に攻撃した何者かを

炎の爆撃が吹き飛ばす。

それは彼のチームメンバー、

ティオの得意とする炎のテクニックだ。

黒いスーツのような衣装、

エーデルゼリンを着た少女は

2本の大きな角と、

琥珀色と深紅の色のオッドアイ、

典型的なデューマンの特徴だ。

緑で短く切り揃えたボーイッシュな髪型や

華奢でまだ幼さの残る

愛嬌のある顔立ちの彼女は

とても最前線で戦うアークスには見えない。

 

「ソニックアロウ!」

 

剣からの衝撃波を牽制にして、

ベルリックは一度後ろに下がる。

 

「ティオ、無事か!」

 

「う、うん。

 ボクは大丈夫だけど……

 ベルくん、傷だらけだよ!」

 

紅い宝玉を持つ太陽のような長杖

「キュイブロウ」をかざして

光のテクニックで癒そうとするが

 

「必要ないぜ。

 フォトンを回復に回すくらいなら、

 あいつらに炎を

 叩き込んでくれたらいいんだ」

 

そう言って、

眼前に立つ「敵」を睨む。

 

「……」

 

「……」

 

ゆらりと立ち塞がるのは、

2人の無表情なアークスたち。

見た目は確かに人間だが、

黒いモヤをまとう

その姿は不気味の一言。

一人はまるでタイツのような

隠密性を重視した衣装

ザムロードを着たスキンヘッドの男。

青い鉱石の刃を持つツインダガー、

「メッサーアゲート」を逆手に構えている。

もう一人の癖毛の強い単発の女は、

全身をプロテクターで包む

シリングオーダーを着込んでいる。

手に持つダブルセイバー

「エクセランブレード」の両刃についた

チェンソーが不気味な音を

立てながら回転していた。

 

「ベルくん……」

 

不安そうなティオの声に、

ベルリックは「心配するな」と力強く告げた。

 

「……この程度の奴ら、、

 負ける相手じゃないから大丈夫だ!」

 

この薄気味悪いファイターたちは

浮遊大陸でクエストをしていたベルリックたちに、

突然に襲い掛かってきたのだ。

無言で、殺意も敵意もまるで感じさせず、

機械的に彼らは攻撃をしかけてくる。

アークス同士の闘いはご法度だが、

これは完全に正当防衛。

降りかかる火の粉は払うのみ。

 

「ベルセルクの異名……

 伊達じゃないんだぜ!」

 

もう仲間は死なせない、

その強い意志が彼に力を与える。

デュアルマフラーをなびかせて、

ベルリックは突撃をした。

 

「ふっ!」

 

放たれた大剣の横殴りの一撃を

男はツインダガーをクロスさせて防ぐ。

が、勢いを殺しきれず

体が浮いたところを

ベルリックは蹴り飛ばした。

 

「ラ・フォイエ!」

 

それを逃さずにティオが爆発させる。

一糸乱れぬ連携攻撃、

お互いの戦い方を

熟知しているからこそできる

彼らの強みだ。

 

「……!」

 

動きの止まったベルリックに

すかさずダブルセイバーの女が

高く飛翔して

まるで叩きつけるように

刃を振り下ろしてくる。

矛先にフォトンを凝縮して

突き刺すフォトンアーツ、

サプライズダンクは強力ではあるが、

 

「自分から来てくれるとは

 手間が省けるだけだ!」

 

圧倒的にソードの方がリーチが長い。

ベルリックは冷静に攻撃を見極めて、

 

「クルーエルスロー!」

 

クルセイドロアを突き刺して、

そのまま倒れている男の方へ投げ捨てる。

叩きつけられて

二人は勢い良くバウンドしていた。

人が人形のように吹き飛ぶ姿は

見ていて心地よいモノではないが……

 

「……野郎ども、これでも

 死なないってどういうことだ」

 

仮面の下でベルリックが呻く。

全身を焼かれたり、

ソードを突き刺したのだ。

間違いなく致命傷。

だというのにアークスたちは、

まるで何事もなかったかのように

立ち上がり武器を構える。

 

「こいつら、アークスじゃないな……」

 

レーダーにアークスとしての反応もない。

最初は何か事情があるのかと思ったが、

戦っていて確信した。

 

――これはダーカーの亜種

 

「なら全力行かせてもらうぜ!」

 

女が愚直なほど真っ直ぐに突っ込んできた。

そしてダブセセイバーの強みである、

息もつかせぬ怒涛の刃の嵐を叩きこんでくる。

イリュージョンレイヴを防ぐのは至難……

だがそれは実力が拮抗していればの話。

 

「イグナイトパリング!」

 

大剣でそれを華麗にさばいていく。

質量が圧倒的に違うというのに、

相手の速度にあわせられるのは

それだけ力量の差があるというこだ。

そのことに今更気付いた女は、

アクロエフェクトを発動させ

十字に斬りつけてから

後ろに跳んで距離を開けようとする。

仕切り直しをするつもりなのだろうが、

それはベルリックは想定済みだった。

 

「これで……終わりだぜ!」

 

ソードが青白く輝いた。

集約されたフォトンが剣に集まり、

巨大な刀身を形成していく。

高密度な蒼いフォトンの刃は

ただでさえ長いクルセイドロアの刀身を

更に大きくして

3倍以上モノへと変える。

 

「オーバーエンド!」

 

突き刺しても死なないなら、

圧倒的な質量で消し飛ばせばよい。

それがベルリックの出した結論だった。

 

振り下ろされたフォトンの奔流は

距離をあけたことで

油断していた女を飲みこみ、

そして跡形もなく吹き飛ばした。

女がいた場所で

まるでダーカー因子のような

赤い粒子が霧散する。

 

(やはり人間ですらないな)

 

ベルリックは

相手がアークスでなかったことに安堵した。

けれど、それが油断に繋がった。

 

オーバーエンドは威力が高い反面、

隙の多い大技のフォトンアーツだ。

女を囮にして身を潜めていた

ツインダガーの男が

高く跳びあがっていた。

 

「……!?

 しまった!」

 

男が狙うのは彼ではなかった。

わき目もふらず

ベルリックの頭上を飛び越す。

その先にいたのは……

 

「ティオ!

 逃げろ!」

 

岩陰に隠れながらテクニックを撃っていた

フォースのティオがいた。

遠距離で戦うことを生業とする彼女は

近づかれると成す術がない。

 

「……えっ」

 

彼女もベルリックの背中にいることで

油断していたのだろう。

突然のことに足が立ちすくみ、

迫りくる男を呆然と見上げるだけだった。

また仲間を目の前で喪うのかと、

ベルリックは歯噛みしながら

軋む体を無理に動かし駆けようとする。

 

だがハンターの彼よりも

ファイターである敵の方が圧倒的に速い。

彼女に迫る男の背中に剣先は届かない……!

 

「ベルくん……」

 

彼女が目を閉じ、

迫りくる凶刃に覚悟をした。

 

「……っ!」

 

けれど、

その間に疾風の如く割り込んできた者がいた。

小さなキャストの少女で、

手にはガンスラッシュを持っている。

まるで肉食獣のような狩人の冷酷な目。

獣のような低い体勢から、

剣を振り上げる。

 

「エインラーケン!」

 

まさか他に仲間がいるとは

思ってなかった男は

成す術もなく切り上げられて飛ばされる。

それを容赦なく

 

ドンッ!

 

ガンスラッシュの射撃で追い討ちする少女。

 

「……」

 

彼女がベルリックに何かを伝えるように見る。

 

「……誰か知らないが助かったぜ!」

 

すぐに意図を察したベルリックは

空中を吹き飛ぶ男を目がけて

ソードを構えて跳んだ。

 

「ライジングエッジ!」

 

クルセイドロアによる対空斬撃。

男は無防備なまま直撃し、

真っ二つになって霧散した……。

 

 


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