スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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落ちついて考えたら
浮遊大陸ほど恐ろしいマップないですよね。
足踏み外したら一発で即死ですよ。
高所恐怖症でなくても絶対怖いですよ。
もしヴァーチャルリアルティが実装されたら
絶対に浮遊大陸だけは行きません。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


053.「振りじゃないですからね?」

惑星アムドゥスキアには

主に二つのエリアが存在する。

一つは隆々とした岩に囲まれ、

大地からマグマが溢れ煮え立つ地殻部。

そしてもう一つ上空高くにあり、

無数の浮き島から成り立つ

通称「浮遊大陸」と呼ばれるエリアだ。

地表からおよそ10キロという高度に位置し

島の中にはまるで大陸の様に

大きなモノもあるため

浮遊大陸と呼ばれているのだ。

 

アムドゥスキアは

全ての物質に地場を持つという特殊な惑星。

特に上空はその影響が強く、

恐らく磁力の力で島々は浮いているのだと

トゥリアからは説明を受けていた。

 

「……凄い」

 

木々もない広い草原の広がる島、

周囲の雲に手が届きそうな絶景だ。

アンジュは呆然と見回していた。

ウェズもキャンプシップから

見るのとは全然違うので珍しげに見回す。

 

「この前は下から見上げていたけど、

 こいつは中々な景色だな」

 

遮る物のない視界は、

どこまで遠くを見渡せる。

 

「これは落ちたら助からないね」

 

メディリスは崖から下界を見下していた。

いかにアークスと言えど

この高度から落下したら助かる術はない。

 

「足場には気を付けて戦わないとな。

 しかしちょっと肌寒い程度か。

 別荘でも建てる奴が出そうだ」

 

浮遊大陸の高度は高いけれど、

まるで風が吹いておらず、

突風であおられることがないのは救いだ。

 

「で、レシア。

 お前は何をしてるんだ?」

 

呆れたようなウェズの声。

振り返らずとも彼女が

どんな状態かは手に取るようにわかる。

彼女はガッシリとウェズの裾を掴んでいた。

ちょんと掴むのとはほど遠い、

ガッシリ鷲掴みでぶるぶる震えている。

 

「……聞いても、笑わないですか?」

 

「いや、わざわざ隠さなくても、

 お前が高所恐怖症なのは

 もう、よーーくわかったから」

 

「絶対、後ろからドンっと

 悪戯はしないでくださいね。

 振りじゃないですからね?

 本気で怖いんです」

 

もう真っ青だった。

足も生まれたての

小鹿のように足もガクガクしている。

それに比べて

 

「……おー」

 

無邪気に走り回るアンジュ。

今日のアンジュは

綺麗にリペアしたアリスリーパーのパーツに

新調したばかりのバウガーディン。

機嫌も良く、絶好調だった。

 

「まあ立ち止まっていても仕方ねぇ。

 早く行こうぜ」

 

レシアを半分引きずる形で進む。

まあところどころ、

浮島には穴も開いているから

高所恐怖症にはたまったものではないだろう。

しばらく何もない場所を歩いていたが

 

「あれ……これはなにかな?」

 

何かを見つけて立ち止まる。

メディリスで指でなぞっているのは

不思議な文様の刻まれた

青い正方形の大きな石。

自然に出来たものではなく、

明らかに何者かが

岩から切り出したモノだ。

動力は不明だが少し空に浮いている。

 

「磁場の影響を受けやすい鉱石のみたいですね。

 磁力の干渉により空に浮かぶようです。」

 

彼女が前方を指差す。

 

そこには少し離れた浮島同士を繋ぐように、

たくさんの正方形の石がびっしりと敷き詰められていた。

 

「龍族たちはそれを繋げて

 ああして橋のようにしているのでしょう」

 

「なるほどな。

 龍族ってのはオラクルほどではないにしろ、

 色んな技術があるんだな」

 

感心しながらウェズたちは住む。

橋を渡ろうとしたところで

トゥリアから通信が入った。

 

『……動力もよくわからない石だから、

 突然磁力がなくなって落下する

 可能性は0ではないかも』

 

「お前は、それを渡る前に言うか?」

 

『……渡る前だから言うんじゃない。

 落ちたら大変だし』

 

確かに正論ではあるが……

 

「まあ龍族の足跡とかあるし、

 普段から使ってそうだから大丈夫だよ」

 

嬉しそうにスキップしながら進むアンジュに続き

メディリスも苦笑しながら進んでいく。

 

「……」

 

「大丈夫だって、行くぞ、レシア」

 

レシアを今回は置いてきた方が

良かったかと考えながら石の橋を歩く。

 

キィーーーン……

 

「なんの音だろ?」

 

真っ先にメディリスが反応して、

周囲を見回すと……

 

ヒュッ!

 

――突然の浮遊感。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

レシアが激しく絶叫した。

 

「ちっ」

 

トゥリアが余計なことを言うからだと舌打ちする。

 

「これは、捕縛用の罠!?」

 

落下は5メートルほどで止まったが、

脱出を阻止するように

周囲を青白い電撃のような策が覆った。

 

「ウガァァァァァ!」

 

すると見渡しの良いこの平地で

どこに隠れていたのか

上から雄叫びをあげながら

浸食された龍族たちが飛び降りてくる。

青白い鱗に身を包んだ、

2足歩行の少し小柄な龍族たちだ。

火山洞窟で戦ったのよりも色が青く、

降ってきたのは4体、

みなが無骨な骨を削ったような剣を持っていた。

彼らはセト・サディニアンという

攻撃力の高い龍族の剣士たちだった。

 

「くそっ!」

 

飛び降りる勢いのまま、

頭上から振りおろされる剣を鞘で防ぎ、

カウンターで弾き飛ばす。

小柄なので体重は軽く、

弾き飛ばされた龍族は

周囲の電流に当たり感電して動かなくなる。

今度は同時に三体襲い掛かってくるが、

 

「カンランキキョウ!」

 

居合いで三方からの攻撃を弾く。

 

「邪魔」

 

そこへ風の様に割り込んできたアンジュが、

激しい蹴りで一体を柵に吹き飛ばし、

もう一体をバウガーディンの射撃で頭を撃ちぬいた。

 

「ディフューズシェル!」

 

残りの一体は背後に回り込んでいた

メディリスがライフルの

ショットガンモードですかさず撃ちぬく。

これで飛び降りてきた4体の

セト・サディニアンは全員沈黙させた。

初撃を凌いで気が緩みそうになるが、

ウェズはすぐに次の攻撃を察知した。

 

「あぶねぇ!」

 

メディリスとアンジュを伏せさせ、

ディオシガルガの鞘を頭上に掲げる。

 

ドォンドォン!

 

青白い炎が頭上から降り注ぐ。

上の浮島から沈んだ橋をめがけて、

大砲を持った龍族、

ソル・サディニアンたちが撃ってきたのだ。

全員が浸食されており、

高台から狂ったように攻撃してくる。

 

「ウェズさん!」

 

「わかってる!」

 

突然の横からのレーザーを

三人は飛びのいて避けた。

それはコウモリのような翼を持つ龍族、

ウィンディラ。

他の龍族とは違い、

人型ではなく有翼の恐竜を思わせる。

それが一匹、口からレーザーの

ようなものを撃ってきたのだ。

飛行しているのは

ソル・サディニアンたちほどの高さではないが、

それでも飛んでいるために非常に厄介だ。

 

「このっ、このっ!」

 

メディリスがライフルのモードを切り替え、

マシンガンのように乱射するフォトンアーツ、

ワンポイントで撃ち落とそうとするが、

龍族は巧みに弾道を避けて飛ぶ。

 

「面倒くせぇ奴らだな!」

 

攻撃を防ぎながら、

高い場所へ攻撃する術のないウェズは毒づく。

ヒエンツバキなら届くかもしれないが、

万が一、カタナが浮遊大陸から

落下したら目も当てられない。

 

「私ならいける」

 

そこへ力強く告げたのはアンジュ。

彼女は狭い足場の中で、

勢いをつけ駆けて行き、

 

「んっ」

 

「いってぇ!」

 

ウェズを踏み台にして高く跳んだ。

そして、

 

「サーペントエア!」

 

回転しながらガンスラッシュで

ウィンディラの翼を切り裂く。

 

「……!」

 

そしてその龍族の背を蹴って、

なんと上の浮島まで跳びあがったのだ。

勢いよく上から射撃していた

龍族の背後に回りこみ

 

「アディションバレット!」

 

思い切り射撃しながら蹴って

まとめて下に落とした。

 

「サンキュー、アンジュ!」

 

接近戦の苦手なソル・サディニアンは

近づいてしまえばブレイバーの格好の餌だ。

 

「サクラエンド!」

 

逃げ惑う龍族たちを切り捨てていく。

 

「ピアッシングシェル!」

 

翼を切り裂かれて機動力を殺され、

ふらふら飛んでいたウィンディラも

メディリスが頭を撃ちぬいて仕留める。

力なく地面へと落下していった。

 

「ふう……油断してたぜ」

 

「周辺に反応はなし。

 これで終わりみたい」

 

メディリスがレーダーを確認する。

もう敵はいないらしい。

やれやれと汗をぬぐった。

 

『……脱出用のカタパルトを転送するから

 それで沈んた場所から出て』

 

キャンプシップからの転送で、

ジャンプカタパルトが送られてくる。

 

「次からも罠があることを気を付けないとな」

 

ウェズとメディリスが

カタパルトで頭上へ出ようとする。

けれどアンジュが首を振って、

何かを指差した。

 

「レシア」

 

短く一言。

 

「あっ」

 

「そういえば」

 

いつもはテクニックで支援してくれるはずの

レシアが確かに戦っていなかった。

アンジュの差す方向を見ると、

 

「……」

 

スノーフレークのマネージャーは

橋の隅でうつ伏せに倒れて気絶したまま、

ピクリとも動いていなかった……

 


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