スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
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004.「……なんだか気恥ずかしいです」

先日と同じ場所……

惑星ナベリウスの森林エリアに降り立つまで二人はずっと無言だった。

 

先に口を開いたのはウェズ。

 

「そういえば自己紹介はまだだったな」

 

ぼさぼさの黒髪を所在なさげに左手で掻きながら

 

「ウェズ=バレントス。2か月前に正式にアークスになったばかりだ。

 クラスはブレイバー、主にカタナをメインにしている」

 

腰に下げたシガルガをぽんぽんと右手で叩く。

 

「ブレイバー? 珍しいですね」

 

彼女は思わず言ってから付け加える。

 

「いえ悪い意味ではないんです。ブレイバーの方に初めて会いましたから。

 新設されてまだ間もないはずですよね?

 まだ試験段階だと聞きましたが」

 

ウェズは少し困ったように笑う。

 

「ブレイバーの考案者……アザナミさんには世話になってな。

 俺のフォトンの素質は近接全体に合っていたから、

 カタナに向いてるって押し切られてさ。

 アザナミさんほど重要視はされていないけど、

 一応、俺のデータも今後のブレイバーに運用するらしい」

 

もう一人、弓を専門で使う同期の新人デューマンの少女がいるのだが、

一度顔を合わせてからはメールのやりとりくらいでほとんど会っていない。

 

「私はレシア=エルシア。私も2か月前だから同期みたいですね。

 クラスはフォース、タリスを使っています」

 

鳥の羽を模したタリスを出して見せた。

 

「属性は一通り使えますけど……特化型ではないとも言います」

 

見栄を張らずに正直に告げるレシアに、ウェズは少し感心をした。

自己紹介で自分短所まできちんと教えてくれるのは

パーティを組むうえでは好感が持てる。

 

それに同期のようだから、肩ひじ張らずに自然体で接しようと改めて思い直した。

出会いの印象はお互いによくないが、認められる部分は素直に認めよう。

 

「なら俺が前で、お前……」

 

首振り、言い直す。

 

「レシアが後方から支援を頼む。タリスなら向いてるだろうしな」

 

「それが最善ですね。前は頼みますよ、ウェズ」

 

名前を呼びあい、パーティとして確かめ合う。

実はお互い、正式にアークスになってからパーティを組むのは初めてなのだ。

明言はしていないが二人ともそれがわかっているから、一つ一つ決めていく。

 

「……きた」

 

しばらく歩いていたが、空間のゆがみを感じて足を止める。

 

「――!」

 

耳障りな鳴き声と共に赤い粒子が集まり、虚空から4足の怪物が姿を見せる。

ダカンだ、数は二匹。

 

「アサギリレンダン!」

 

先手必勝、ウェズ一息で距離を詰めカタナでダカンを切り刻む。

カタナならではの初動の速さは敵の意表を突く。

ダーカーを死滅させるにはフォトンの力しかない。

ウェズは体内のフォトンを活性化し、

刀身は応えるように青いフォトンを発光させる。

 

不快な悲鳴をダカンが発する。

けれどまだフォトンの力の弱いウェズでは一撃で仕留めれない。

仲間がやられている隙にもう一匹がウェズに飛びかかる。

一人だったらここで一度後ろに下がって回避していたが……

 

「グランツ!」

 

光の矢が4本出現し、飛んでいたダカンを勢いを止める。

 

「あらよ、ゲッカザクロ!」

 

飛びあがりダカンを打ち落とす。

下に叩きつけられたダカンは、もう一匹にぶつかり悲鳴をあげる。

 

「今だ!」

 

「言われなくてもわかっています!」

 

グランツを放ってすぐに次のテクニックをチャージしていたレシアは

すぐさまテクニックを放つ。

 

「フォイエ!」

 

ダカンめがけて一気に飛んで行った火の玉はダカンをまとめて燃やし切った。

 

「……」

 

今までは手間取っていたダカンをあっという間に倒したことに、

2人は少し戸惑っていたが、

 

「よっしゃあ!」

 

「ふう」

 

ウェズはガッツポーズを取り、レシアは満足げに息を吐いた。

 

「ほら」

 

「……?」

 

手を挙げたウェズにどういうことかと首を傾げていたレシアだったか、

少し考えて意味を察したのか、おずおずと手をあげる。

 

パシンッ!

 

2人の手が心地よい音を響かせる。

 

「……なんだか気恥ずかしいです」

 

「いいじゃねーかよ、ハイタッチくらい」

 

満更でもない様子の彼女に笑いかける。

 

2人にとってこれは初めての共同作業。

慣れたアークスたちにとっては何の感慨もないことでも、

彼らにとっては味わったことのない達成感なのだ。

 

けれどこれは本当に始まりの一歩でしかない。

一番弱いダーカーを倒したくらいで喜んでいてはいけないのである。

 

「よっし、張り切って行こうぜ!」

 

「そうですね。良いところを見せてコフィーさんを見返しましょう」

 

クエストが始まった時はぎこちなかった2人も

足並みを揃えて歩き始める。

 

 

……とはいえ、これから先がそう上手くいくほど簡単ではないのだけれども。

 


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