スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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ついにライバルとの再戦。
果たして勝負の行方は……
そろそろブレイバー同士の決闘を書くのも
ネタ切れて辛くなってきました、まる。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


048.「切り札を、見せてやる」

対峙した二人は

構えを取ったまま動かない。

ブレイバーが使うカタナの本骨頂は

「後の先を制す」ことと言われる。

つまりはカウンターこそが決め手……

と言われるが実は正確には正しくない。

 

「……」

 

基本的には先制攻撃が

そもそも圧倒的に有利なのだ。

相手の動作を見てから動くということは、

半歩思考が相手より遅くなるということ。

ゆえに先制攻撃を仕掛けた方が

半歩先のことを予測して動ける。

が、こと一騎打ちの場面では

決して「攻撃」だけが先手ではない。

 

「どうした、前はいきなり斬りかかってきたのに、

 今日はやけに慎重じゃないか」

 

挑発もそうだが、目線、息遣い、重心の移動……

そういった一つ一つの動作で、

相手にプレッシャーを与えている。

ゆえに、単純に先に

攻撃すればいいというモノではない。

傍から見たら攻撃されてからカウンターで仕留める、

「後の先」に見えるが……

既にそれは先手を取った後なのだ。

 

「ならこちらから行かせてもらうぜ!」

 

レイもウェズの実力を認めているからこそ、

前回のようにいきなり飛びかかりはせず

「真剣勝負」を挑んでいる。

 

「……ちっ!」

 

前とは違い、今度はウェズから仕掛ける。

まるで地面に前のめりに

倒れていくような前傾姿勢で駆けだす。

 

手に持つのは新しい愛刀ディオシガルガ。

初めてだが、一番最初に手にして

一番長く使っていたシガルガと同じモデル。

使い勝手は十分にわかっている。

 

「アサギリレンダン!」

 

無数の斬撃を叩き込む。

カウンターの隙さえ与えない怒涛の攻撃。

出力の上がったカタナは

レイといえばも軽くいなすことはできない。

 

「ふんっ!」

 

キンッキンッキンッ!

 

結果として彼女もスサノグレンを引き抜き、

同じフォトンアーツを選択した。

剣戟をあわせ、弾いていく。

正確に一つ一つ丁寧に。

スサノグレンの細見で清廉な刀身と、

柄に結ばれたピンクの紙垂が美しく舞う。

 

「そうこなくっちゃな!」

 

きちんと打ち合えている、

そのことに確かな実感を得た。

……勝てない相手じゃない。

 

「ツキミサザンカ!」

 

隙を見てすかさず下から切り上げる。

 

「甘い!」

 

だが彼女はそれをあっさりと鞘で受け止め、

 

「カウンターエッジ!」

 

居合による反撃で衝撃波を飛ばす。

ツキミサザンカは切り上げた後に

無防備になりやすいPAだ。

レイはそこに叩き込んだのだが……

 

「カンランキキョウ!」

 

いつの間にかステップで

横に回り込んでいたウェズが抜刀する。

 

キンッ!

 

完全に不意を突いたはずだが、

レイはすかさずガードして後ろに飛び退る。

 

(ちっ……さすがに相手の方がまだ上か)

 

ウェズは表情にこそ出さないが、

内心では舌打ちをしていた。

先ほどコンボは前々から再戦した時を想定して

練習していた必殺の動きだった。

だがそれを難なく防がれてしまったのだ。

 

(……この短期間でここまで成長したのか)

 

対するレイもポーカーフェイスを崩さないが、

実のところウェズの剣技に感心していた。

スサノグレンほどではないが、

ディオシガルガという

出力が高い剣を十分に使いこなしている。

またフォトンアーツのの一つ一つが

何度も鍛練され磨かれているのは身に染みてわかる。

 

「呼吸を整え、一気に抜刀。

 呼吸を合わせて、後の先を取る、か」

 

ポツリとレイが呟く。

 

「お前……それはアザナミさんの言葉を」

 

それはウェズがアザナミさんに教わってる時に

よく言われた言葉だった。

 

「なるほど……

 アザナミが何故ブレイバーというクラスを

 改めて確立したいと言ったか……

 私にも少しだけわかった」

 

彼女は独り言のように言い、そして

 

「見せてみろ!

 彼女から教わったという技術をな!」

 

サムライ、というよりは

まるでニンジャのように素早く跳躍してくる。

 

「ゲッカザクロ!」

 

上からの斬りおろし攻撃を

ウェズはすかさずバックステップで避ける。

スサノグレンの勢いのついた攻撃を

鞘で防ぐのは危険だ。

 

「サクラエンド!」

 

だが彼女は喰らいついて離さない。

着地した後に勢いを殺さずそのまま

すかさず十字に斬りつける。

 

「……っ!」

 

けれどウェズは見切り、

半身を後ろによじるだけで紙一重で避けた。

お返しとばかりにアサギリレンダンで突っ込む。

懐に飛び込み斬撃を浴びせるが

初撃に綺麗にカウンターをあわせてくる。

 

肉薄して数手打ち合い、

そろそろ二人はお互いの体力の限界を感じていた。

 

二人ともここに至るまでに

激戦をくぐり抜けてきたのだ。

本当ならば決闘をする余裕なんてない。

けれどそれでも気合だけで戦っていた。

 

「……本当にアンタは強いな!」

 

突然に切りかかられた理不尽に対する怒り、

それよりも純粋に

相手の技量に敬意の方が上回っていた。

 

「私には、やるべきことがある!」

 

それはレイにとっても同じだった。

格下、やる気のないブレイバーの面汚し、

最初はそう考えていたが、

この仕合で技量は劣れど

十分に一人前と言える実力と意志があることを認めていた。

 

(もう、限界が近いな)

 

本当はもっとずっと戦っていたかった。

刃を交える度に、

一つ一つ洗練されていく気がする。

だがそろそろ決着をつけるべきだろう。

 

「これで、決めるぜ!」

 

再びウェズは前傾姿勢で突っ込む。

 

「なら、終わらせてみろ!」

 

またアサギリレンダンかと彼女が構える。

だが……

 

「……ふっ!」

 

近づいた瞬間、

斬られないように速度のギアを上げて

その脇を全速力で跳躍して抜けた。

 

「なに!」

 

不自然な姿勢ではあれど背後を取ったウェズは、

温めていた切り札を使う。

 

「ヒエン、ツバキ!」

 

吼えながら、カタナを投げる。

かつてレイにやられたその技で、

今、彼女を倒そうとしていた。

 

「――!」

 

今からでは回避も迎撃も間に合わない。

それをすぐに理解したレイは

 

「ふっ」

 

一瞬でも自分の上を行ったウェズに

驚きながらも口元に笑みを浮かべ、

 

「切り札を、見せてやる」

 

その場でカタナを抜刀した。

 

「ハトウリンドウ!」

 

それは初めて見せるフォトンアーツ。

彼女がここぞという時でしか見せない、

そう「最後の」切り札だった。

抜刀ともに生み出された衝撃波が

ウェズに襲い掛かる。

 

投げられたディオシガルガはレイに直撃し、

そしてスサノグレンが生み出した衝撃波は

ウェズを吹き飛ばした……

 


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