スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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ここでやっとPSO2の醍醐味、マルチ戦闘です。
9人PTで戦うビックヴァーダー!
アレですね、緊急もこんな感じなんでしょう、多分


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


046.「お前は一人じゃねーんだ!」

――ビックヴァーダー。

 

対決戦用陸上戦艦型機甲種。

その機甲種は他のモノと比べることはできない。

何故なら規格外過ぎるからだ、全てにおいて。

まずその巨体。

70メートルはあるだろうか、

縦に長いフォルムで、高さも30メートル近くはある。

これに比べればキャンプシップも小さく見えるだろう。

まさに「戦艦」という名に相応しい。

そして他の機甲種との決定的な違いは

全身に備え付けられた武装の数々。

前面の超大型レーザーキャノン四門。

接近する敵を迎撃するバルカン砲が左右あわせて十門。

上下に稼動するロケット砲が六門。

中型のミサイル発射口が十二。

それを守る火炎放射器が四。

あまりにも多すぎる武装だ。

けれどそれは土台なる部分。

本体はその上にクレーンで吊るされており、

それにもバルカン砲と、

恐ろしく大きな大型ミサイルを搭載していた。

 

「うががががががが!

 鬱陶しい、鬱陶しいぞ!」

 

ボディビルダー顔負けの体を持つ強面のハンター、

アックスは苛立った様子で叫ぶ。

両腕両ひざにだけ最低限のプロテクターをつけた

ヴォフマナフという衣装を身に着けて

愛用の戦斧ようなソード、

ブレイザックスをぶんぶん振り回す。

 

「親分、またきやすぜ!」

 

後ろにいる二人の男も似たような容姿に服装。

違いをあげろと言うなら、

リーダー各のアックスの帯が赤で戦斧も赤。

舎弟のコッコリスとドンタケスは

それぞれ帯が黄色と青、

武器もザックとブリザックスと色でわかれていた。

彼ら三人がチーム「アックスボンバーズ」である。

全員が刈り上げ頭のなんとも体育会系のチームだ

 

しかし全員ソード使いという

近接しかいない彼らにとって

ビックヴァーダーは相性が悪すぎた。

バルカン砲の容赦ない雨に避けるのが精一杯。

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

自慢の戦斧で破壊をしても、

 

ビビビビビビビ……

 

すぐに小さいコアのよう機甲種

修復ロボであるギルナッチコアが飛んでくるのだ。

一体どういう技術なのか

叩き潰してもわずか数十秒で修復が完了する。

ギルナッチコアを破壊しても、

すぐに新しいのが本体から飛び出してくる。

まるでハエのように大量に飛び回っており、

どこをどれだけ壊しても

すぐに元通りというわけだ。

 

「……ちっ」

 

苦戦しているのは反対側で戦っている

彼女たちも同じだった。

 

「レイ、どうするのさ!

 これじゃあジリ貧になっちゃうって!」

 

「こいつは完全に暴走しておるぞ!」

 

レイ=タチバナ率いる「黒耀の牙」。

しかし彼らもカタナを持つブレイバーに、

ナックルのファイター、

そしてウォンドのテクターだ。

近接戦闘を得意としているため、

この嵐のような攻撃の中では苦戦をしていた。

テクターであるガンスが

一応は遠距離攻撃をできるが、

攻撃テクニックが苦手な彼では、

相手の修復速度を上回る破壊はできない。

 

「……ギルナッチコアの生成さえ止めれば、

 なんとか押し勝てるが、厄介だな」

 

レイは舌打ちをする。

 

暴走するビックヴァーダーは

更に攻撃を苛烈にしていく。

威嚇するように連射するレーザー、

近づくものを正確に狙い撃つバルカン、

雨の様に降らすミサイル。

ロケット砲も容赦なく連射してくる。

そして極め付けは

 

「うおおおおおおおおおおおおお!」

 

近くでさく裂した大型ミサイルの爆風で

アックスボンバーズの面々が飛ばされる。

 

「お、おめーら!

 足を止めるなよ!」

 

転がりつつもすぐに立ち上がり逃げる。

少しでも足を止めれば蜂の巣にされるからだ。

 

「アックスボンバーズ!

 死んでくれるなよ!

 お前たちがやられたらこっちに攻撃が集中する!」

 

「うっせぇ!

 てめーら黒耀の牙こそ黒こげにされんなよ!」

 

悪態を付き合うが、

それはお互いを奮い立たせるようなもの。

どちらか倒れたら一気に押し潰される。

絶望感が両チームに伸しかかってきていた。

 

『……間に合ったか!』

 

そこへ通信が入る。

若い少年の声。

それは……

 

『チーム「スノーフレーク」、

 援護に入るぜ!』

 

ウェズたちだった。

レシアとメディリスの三人。

これで計九人のアークスが

ここに集まったことになる。

 

ウェズは状況はここに駆けつけるまでに

現場をモニターしていた

トゥリアから確認していた。

 

『……お前たちは足手まといになるだけだ、下がれ』

 

レイの冷たい声に一瞬言葉を詰まらせたが、

それでもウェズは叫ぶ。

 

「強がりを言うのは時と場合を考えろ!

 こっちはフォースとレンジャーがいる!

 この状況を打破できる構成だ!」

 

その強い口調に、

レイが一瞬「ほう」と呟いたのが聞こえた。

 

『スノーフレーク!

 あの修復ロボが沸いてくるのだけなんとかしてくれい!

 そうすりゃオレっちたちがゴリ押す!』

 

アックスボンバーズのマスターの声に頷く。

 

「レシア、あっちが辛そうだから支援してやってくれ。

 ハンターしかいなくて辛そうだ」

 

「わかりました!」

 

レシアがミラージュエスケープで

レーザーをかいくぐりながら救援に向かう。

 

「でもウェズさん……

 私たちが加勢してもこの状況じゃあ……」

 

メディリスが言うのも最もだ。

目の前に行われているのは戦いというよりは、

これはまるで戦争のような地獄絵。

 

「でも、やらなきゃいけないんだよ」

 

ここは地下坑道。

そんな無茶な攻撃をしていたら、

どれだけ堅い施設とはいえ長くは持たないだろう。

理由は不明だが、アークス本部からは

「必ず施設を守れ」と厳命も受けている。

 

「メディリス」

 

ベテランのアークスたちでさえ、

この状況を覆せる術を思いつかない。

だが、ウェズにはたった一つだけ……

スノーフレークにしか

できない方法を知っていた。

 

「メナアリスを使うぞ」

 

「え!?」

 

「あのライフルの出力なら、

 遠距離から撃ちぬける。

 あの修復するロボが出ているのは

 本体の主砲部分からだ。

 つまり、あそこを壊せば勝てる」

 

「でも、私は……!」

 

当然だ。

彼女にとってそれは

思い入れのある祖父の愛銃であると同時に、

自分の力不足のトラウマともいえるシロモノ。

出力が高すぎて使えない。

 

けれど

 

「できる!」

 

ウェズは断言した。

 

「お前は一人じゃねーんだ!」

 

戸惑う彼女の抱きかかえる。

 

「ウェズさん!?」

 

そのまま跳躍して移動し、

高いコンテナの山を登る。

 

そこは戦場が見下ろせる場所だった。

メディリスを降ろす。

距離にして200メートルくらいか。

ここなら戦艦の索敵範囲外だろう。

 

言われた通り

メナアリスを取り出したメディリスだが

 

「……当てれる自信なんて、ないよ」

 

銃を抱えて俯く。

ウェズはその様子に笑う。

 

「せっかく最近は調子が良かったのに、

 また弱虫になっちまったか」

 

あやすように背中をぽんぽんと叩いた。

 

「これは根性とかの精神論じゃねーんだ。

 その銃は反動が強すぎて、

 どれだけ狙いを定めても

 撃つ時に抑えきれずに外れる」

 

だから、と続ける。

 

「俺も手伝う。

 俺が反動を抑え込むから、

 メディリスが狙い撃つんだ」

 

「……え?」

 

「時間がない、やるぞ!」

 

メディリスは戸惑う。

けれど、戸惑いは一瞬だった。

 

「うん!」

 

自信なんて全くない。

けれど自分を仲間だって

言ってくれるこの人を信じよう。

メディリスにとって、

ウェズは特別な存在だ。

こんな自分を信じて、

そして背中をいつでも支えてくれる。

本当はこの人も自信なんてないはずだ、

だけどみんなに心配かけまいと背伸びをする

この人がいつだって眩しかった。

 

「決めて見せるから!」

 

腰だめに構える。

メナアリスは超大型のライフルではあるけれど、

決して精密射撃ができないわけではない。

むしろ遠距離から撃つための照準補正機能や、

4つの爪によるロングバレルは

精確な狙撃を可能とする。

 

「頼むぜ……」

 

まるで後ろから抱きかかえるように

彼がライフルを一緒に持ってくれる。

背中越しに鼓動が聞こえてくる。

それだけで、体の震えは止まった。

 

狙うは本体の主砲。

距離はあるけれど、

的はそこまで小さくない。

 

フォトンをチャージしていく。

元々メナアリスに詰められていた、

祖父のフォトンアーツを起動する。

 

「エンドアトラクト!」

 

引き金をひいた瞬間、

体全体にかかる凄まじい反動。

ブレそうになる銃身を

彼がきちんと支えてくれた。

 

高密度のフォトンの弾丸が

真っ直ぐにビックヴァーダーに迫り……

 

ドォンッ!

 

肩の大型ミサイルを貫いた。

 

「かまわねぇ、もう一発撃つぞ!」

 

外れたけれど、

すぐに誤差を修正する。

今度は外さないはずだ。

 

けれどビックヴァーダーにも

捕捉されてしまったらしい。

残った肩の大型ミサイルが

こちらを狙って発射される。

 

視界に迫ってくるミサイルがあるけれど、

このチャンスを逃せばもう次はない。

 

彼が私を励ますように頷く。

 

「お願い、当たって!」

 

引き金を引いた。

 

「エンドアトラクト!」

 

再び発射された弾丸は……

 

ドォンッ!

 

今度こそ正確に

ビックヴァーダーの主砲を撃ちぬいた。

 

「メディリス!」

 

けれど喜ぶ暇もなく、

二人がいる場所に大型ミサイルが直撃した……

 


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