スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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珍しく一日休載しましたが、今日は無事更新。
みんな大好きリリーパ防衛Eトラです。
リリーパを救え、アークスたち!


【挿絵表示】

表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


043.「お願い……暴れないでね」

鳴き声に急いで駆けつけるとそこにいたのは

 

「なんだあれ……?」

 

何やら毛むくじゃらの砂色の生き物がいた。

多分体長は50センチくらいだろうか、

2歩本足で立ち、少しずんぐりとした体型。

まるで兎のような耳とつぶらな瞳が特徴的だ。

そういえば前に、

砂漠で見かけたような気がする。

……お蔭で酷い目にあったが。

 

「りっ、りっ、りりり!」

 

それが2匹。

一匹が何やら上半身になっただけの

人型の機甲種ギルナスにがっちり掴まれていた。

もう一匹はそこから助け出そうと必死の様子。

 

『……えっと、最近フーリエという

 アークスが報告をしている生物かも。

 一応、「リリーパ」って名前で呼んでるみたい』

 

「惑星リリーパにいるからリリーパですか。

 少し安直すぎる気もしますけれど」

 

「まあ、んなことは気にしても仕方ねぇ。

 とりあえずギルナスを破壊すればいいんだろ?」

 

ウェズがカタナを振りかぶる。

 

「だ、ダメです!」

 

けれどそれを止めたのはミリアだった。

慌ててリリーパたちに駆け寄り、

彼女は掴んでいるギルナスを見る。

何かを色々と確認して頷いた。

 

「ギルナスは自爆装置を起動させたところで、

 どうしてか休止状態になってるんです。

 そこにこの子たちが掴まれて……

 下手に刺激を与えたら……」

 

一瞬でよくそれだけわかったものである。

武器職人だから機甲種の構造も

ある程度はわかるということなのだろうか。

メディリスはライガンの後ろにそそくさと隠れる。

 

「爆発するってこと?

 ど、どれくらいの威力があるんだろ」

 

盾にされたライガンはメディリスにため息をつき、

 

「もし破壊力があるなら、

 離れて爆破するというのはどうだろう?

 さすがにコンテナの影にいれば大丈夫だと思うが」

 

そんな提案に、ウェズとレシアは考える。

 

「けれどその場合、

 この子たちはどうなると思いますか?」

 

「そりゃ吹き飛ぶだろうな。

 どんな火薬量か知らないけどよ」

 

簡単な結論だった。

 

「りっりっりりりりりりりり! りっ!」

 

言葉がわかっているのか猛烈な勢いで

リリーパたちは抗議するように叫ぶ。

ウェズはわかったわかったとなだめて

 

「冗談はさておき、すまねえミリア。

 ゆっくり引っ張って外してやってくれ」

 

「はい、やってみますね」

 

屈みこんでよいしょよいしょ始める。

それを見守っていたスノーフレークたちだが

 

『……あっ、なんか機甲種の反応が

 そっちにたくさん行ってる』

 

トゥリアの通信で武器を取り出し、

このタイミングで来るのかとため息をつく。

 

「なんだ、雑魚がきたのか。

 仕方ない、こいつらが守ってやるか」

 

やれやれとウェズが通路の奥に視線を向けた。

スバルダンAくらいなら余裕だろう。

ただシグノビートが多いと厄介だ。

そう考えていたのだが……

 

「ウェズ……なんか嫌な予感がするのですが」

 

レシアが物凄く硬い声で告げる。

どういうことだ、と思って尋ねようとするが

 

ぴぴぴぴぴぴぴ

 

なんだか目覚まし時計のような

耳障りな甲高い音が響き渡る。

しかもそれが大量に。

 

「マスター、出るぞ!」

 

ライガンがいち早く飛び出す。

ウェズも事態を把握してないが前に出ると

 

「あっ……あれは!」

 

コンテナの上に陣取ったメディリスが

迫ってくる敵の大群を確認して叫ぶ。

 

「スパンザイル、たくさん!」

 

暗がりから出てきたのはスパルタンAのような

四脚の機甲種。

他の種と同じような形なのだが、

一つだけ決定的に違うのは……

 

「なんか、やばそうだな」

 

赤く点滅する、爆薬の詰まったような頭

どう考えても、ロクなシロモノじゃないだろう。

 

『……正解。

 スパンザイルは自爆特攻型の機甲種。

 しかも誘爆したりするから、

 とっても危険』

 

それが一気に迫ってくるのだ。

 

「りっりっりっりっり!」

 

小さい生き物たちはもう死にもの狂いで

ギルナスから脱出しようとしている。

 

「スニークショット!」

 

メディリスが狙撃を開始する。

 

ドォンドォンッ!

 

正確に頭の爆弾を貫き、

誘爆しながらどんどん吹き飛ぶ。

しかし爆風で逆に視界が悪くなり、

 

ピピピピピピ

 

爆発しなかった個体がいくつも

煙の中から勢いよく飛び出してくる。

 

「スライドシェイカー!」

 

「ヒエンツバキ!」

 

爆発に巻き込まれると無事では済まない。

ウェズはカタナを投げて、

ライガンは思い切り円を

描くように槍を振り回す。

できるだけ射程の長い

フォトンアーツで応戦する。

 

坑道という地下空間に爆発音が

ひっきりなしに響きわたる。

 

「メディリス、

 私たちはできれば後ろの敵を狙いましょう!

 近くで爆発させたら、

 視界が悪くなる一方です!」

 

「りょ、了解!」

 

メディリスとは別のコンテナの上に乗り、

タリスを放り投げて、

空中から後方のスパンザイルを

雷撃で撃ちぬいて行く。

雷撃という特性上、

どうしても頭部の爆弾を

撃ちぬいてしまい爆発させてしまう。

誘爆、雷撃、狙撃をくぐりぬけて

猛進してくるスパンザイルには

 

「カンランキキョウ!」

 

ウェズは低い姿勢からの居合で脚を破壊し、

 

「スピードレイン!」

 

ライガンの真空波で吹き飛ばしていく。

 

「お願い……暴れないでね」

 

ミリアはゆっくりとリリーパを

ギルナスから引き離そうとしている。

防衛対象さえいなければ、

スノーフレークの面々は

もっと自由に戦えるはずだからだ。

戦うことができない彼女には、

これくらいしかできることがない。

 

「メディリス!

 あと何体いやがるんだ!」

 

「えっと……その、たくさん!」

 

「そんな答えでわかるかよ!」

 

「ウェズ、残り46体です!」

 

「マスター、次、3体同時に来るぞ!」

 

爆発音に負けないように、

全員が大声で叫びを上げる。

フォトンで護ってるとはいえ、

爆風の熱気を全て消せるわけではない。

前衛の二人は熱気に耐えながら、

後衛の二人は連鎖する爆発に

チカつき痛む目に耐えながら戦い続ける。

せめて通路が壊れて先がなくなれば

機甲種の侵攻も止まるはずなのに、

どれだけ爆発しても過去の遺産である地下坑道は

どういうわけか傷一つつかない。

だから、戦うしかないのだ。

 

「くっそ! なんだってこんなことに!」

 

数は確実に減っている。

それと反比例するように

ウェズたちの疲労は溜まって行く。

 

『……大きい反応、来てる!』

 

「こんな時にですか!」

 

キュィィィーン……

 

爆弾型機甲種の向こう側……

そこには、まるで

戦車のような機甲種が迫ってきていた……

 


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