スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
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003.「ダカン討伐任務に行くことを命じます」

非常に気まずそうに立つ二人に対して、

アークス管理官であるコフィーが溜息をつく。

 

「どうしてこんなにも時間がかかったのか説明してもらえますか?」

 

彼、ウェズは少女を指さし

 

「体調が悪そうだったから看病してたんだ」

 

彼女、レシアは少年を指さし

 

「手際が悪かったので手伝ってあげたんです」

 

そして顔を見合わせて

 

「はあ!? 何デタラメ言ってるんだよ!

 誰が誰のクエストを手伝って!?」

 

「あなたこそ、私に対してあんなことしておいて

 よくもそんなふざけたことが言えましたね!」

 

カウンターの前でぎゃーぎゃー騒ぎ出した。

周囲にいたアークスたちも何が起きたのかと一瞬見るが

新米アークスたちのじゃれ合いとわかると、

肩を竦めてすぐに興味をなくしていった。

 

コフィーはそんな二人のやりとりに再び溜息をつき

 

「ダカン討伐任務の評価は、

 ウェズ=バレントスはB。レシア=エルシアはC」

 

端末でクエスト結果を見せながら淡々と告げる。

 

「よって、二人とも基準に達しなかったため未達成し、

 再度ダカン討伐任務に行くことを命じます」

 

「「そんな!?」」

 

そして管理官は続けた。

 

「なお、ウェズ=バレントスとレシア=エルシアは

 パーティを組んで本クエストに挑むこと。

 モニターをしていますので、守られていないと判断した場合には

 相応のペナルティを課します」

 

2人は何を言われたか一瞬理解できていないようだったが、

お互いに顔を見合わせて

 

「こいつと一緒に!?」

 

「こんな人とパーティなんて無理です!!」

 

実に息の合った返しをした。

 

けれどコフィーは諭すように新米アークスたちに説明する。

 

「いいですか?

 これから先パーティを組まなければクリアが難しい任務が増えます。

 だというのにあれは嫌だこれは嫌だなど言っているようでは何も任せられません」

 

そして周囲を見回して視線を巡らせる。

 

「ロビーにいるアークスたちはほとんどがパーティを組んでいるでしょう?

 危険な任務に挑むのですから当然です。

 ましてやあなたたちはまだ全てが未熟。

 至らないところをフォローしあってクエストに挑んでください」

 

実際、新米アークスたちは中々にパートナーを見つけることができず、

ソロで活動することが多い。

一部の例外はあるものの、やはりソロでは壁に行き当たるアークスが多く

そのまま実力を発揮することなく埋没する。

ウェズとレシアも放っておいては恐らくそうなると考え、

今回コフィーは強引ではあるがパーティを組ませることにしたのだ。

 

それに惑星ナベリウスは比較的安全な地域とはいえ、

3月前に行われた修了試験では大量にダーカーが発生し

多くの研修生が犠牲となってしまった。

救援に向かったベテランチームもほぼ壊滅してしまい、

今でもコフィーは自分の判断が見誤ったせいだと後悔している。

 

ただ……その時に生き残った研修生の一人が、

たった3か月で劇的過ぎる成長を遂げて、最前線に立ち戦っている。

既にベテランであるゼノやエコーを引っ張るほどの存在。

 

――明らかに規格外……異常ともいえる。

 

けれどその話は、目の前にいる劣等生たちには関係のない話だ。

 

「以上です」

 

ぐうの音も出ない正論に押し黙る二人に

「いいですね?」と念を押してからコフィーはカウンター中に入ってしまった。

 

ウェズとレシアは渋々にお互いに目を合わせて、

揃ってため息をついてしまった。


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