スノーフレーク   作:テオ_ドラ

36 / 111
都市伝説の話、どこかで聞いたことがあるような……
ストーリーモードをしている人なら、
ひょっとしたら心当たりがあるかもしれませんね。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


035.「私、ただちょっと寒いだけです」

スノーフレークの面々が凍土に降り立つ。

幸いにも吹雪いてはいなかったが……

 

「寒いな……」

 

「寒いですね……」

 

ウェズとレシアは露骨に嫌そうな顔をしていた。

アークスはフォトンとユニットで体を護っている、

なので気温変化は影響がないはずだが……

 

「どうして二人はあんなに寒そうなの?」

 

「うむ、苦手意識がついてる者にとって、

 この凍土は視覚的にもう駄目なのだろう」

 

当然ながらライガンとメディリスは平気である。

今は雪雲の合間から太陽も顔を出しており、

陽光が白銀の世界を照らして

むしろ気分がいいくらいだ。

 

「レシア、マフラーとかずりーぞ」

 

「ウェズこそ……カイロ何枚張ってるんですか」

 

寒がりの彼らにとって凍土は鬼門だったらしい。

メディリスは「私が頑張らないと!」と

気合を入れなおしたが、

 

「肩を力を抜くといい。

 最初から張り切ると肝心なところでミスをする」

 

ライガンの言葉でしゅんとしてしまった。

 

「そういえば、

 出かけにトゥリアが言ってたアレ……

 何なんだ?」

 

「ああ、そういえば何か言ってましたね」

 

キャンプシップに乗り込む前に

オペレーターは言っていた。

 

『……ゴーストのこと?』

 

トゥリアが通信で応える。

片手には牛乳のパック。

暖かい部屋でストローを

ちゅうちゅうしてるのが

ウェズとレシアにとっては腹立たしい。

 

『……昔、5年前くらいに凍土へ

 調査に向かった船が原因不明の事故で墜落したの。

 どうしてかわからないけれど、

 どこに墜落したかわからない』

 

例え撃墜されて破片になったとしても、

オラクルの技術なら簡単に見つかるはずだ。

それでも見つからないということは……

 

「その話自体、嘘じゃねーの?

 だってそもそも記録にも残ってないんだろ?」

 

そう、そういう話はあれど、

どこにもそんな調査船の記録はないのだ。

たかだか凍土への調査、

改竄してまで隠ぺいする理由なんてないはず。

 

「それでその時の生き残りが、

 たまに凍土で姿を見せるという話でしたか」

 

『……ただこの話、一つ確かなことがあるの』

 

端末に送られたデータを見ると……

 

「不審な人影っていうの目撃例は結構あるんですね」

 

別々のアークスから複数の目撃情報が上がっている。

けれどそれに対してアークス本部は

「調査の必要なし」と指示を出していた。

 

「でも5年も経っちゃってたら、

 さすがに誰も生きてないよね……」

 

メディリスが言うことはもっともだろう。

同意を求めてライガンに向き直ると、

 

「……奇妙だな」

 

何か難しい顔をしていた。

 

「ライガン……?」

 

「トゥリア、この区域を調査したアークスが

 以前、いつ来たか調べてはくれないか?」

 

『……それくらいはすぐわかる。

 ……うん

 ……1年はこのエリアには誰も来ていないはず』

 

その言葉に、ライガンは唸ってしまった。

 

「マスター、先ほどのゴーストの話……

 あながち嘘ではないかもしれん」

 

「は?」

 

「ライガン、根拠はあるのですか?」

 

問いかけに頷き、

少し窪んだところにいる雪原を指さす。

 

「見ろ、ダーカーの死骸がある。

 コアを正確に打ちぬいたようだ」

 

それはいくつものミクダの死骸だった。

ダーカー因子は消滅しているので、

中身はなく堅い殻だけではあるが……

 

「あっ」

 

それを見てメディリスも気付いたようだ。

 

「凍土は雪が常に降り続いているから……

 表面にこんな風に残ってるのはおかしいね」

 

「つまり……誰かつい最近、

 このダーカーと戦った……ってわけか?」

 

4人は押し黙る。

科学技術が発達したオラクルにおいては、

心霊現象などまずもってありえない。

全ての不明なことは解明されているのだ。

とはいえ都市伝説というのはなくなることはない。

例えば突如として後ろから現れ暗殺していく、

アイドルに似た姿の殺し屋……

誰もいないはずの地域に突如として現れる

「当時は存在しなかった武装」の

まるで未来から来たかのようなアークス……

何故か記録にはない10年前の記録……

意外と探すと結構噂だけではあるのだ。

 

つまりゴーストというのも、

珍しくはない都市伝説だが……

もしかしたらという考えが、

誰もが否定できない気持ちになっていた。

 

「なんだか寒くなってきましたね」

 

「そ、そうだね。

 私も気温が下がったのかなー……」

 

レシアがそそっとウェズの後ろにつく。

メディリスもウェズにぴったり寄り添う。

 

「……おい?」

 

「私、ただちょっと寒いだけです」

 

「わっ、私もちょっと寒くなってきたなって……」

 

まるでおしくらまんじゅうである。

その様子にライガンは溜息をつき

 

「遊びはそれくらいにしておこう。

 どうやら、ダーカーのお出ましのようだ」

 

遠くから盾を構えた巨人のようなダーカーを中心に、

もそもそ動くミクダの群れがこっちに向かってきていた。

 

「ちっ、なんだか面倒そうな連中がきたな」

 

ウェズはキャスティロンを取り出し構える。

レシアとメディリスも武器を構えた。

 

「いくぞ!」

 

4人は駆けだした。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。