スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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ワンポイント背中からぶっぱなされたのに、
嫌な顔一つしないライガンさんすげぇ!という感じです。
砂漠編はまだボスも倒してないので
もうしばらく続きます、はい。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。



028.「失敗しても、いい……?」

「ぅぅ……これでまたここでも入団を断られるよぅ……」

 

メディリスは蹲って泣き始めてしまった。

吹き飛ばされたライガンを

癒して戻ってきたレシアが

視線で「どうするんですか?」と問いかけてくる。

 

ウェズは頬を掻きながら

 

「こんな細かいことで気を落としてるんじゃねーよ」

 

どしっと彼女に向かい合うように

あぐらを組んで座った。

 

「ホント、私ダメなの……

 すぐ何度も失敗して、

 みんなの期待に応えれなくて……」

 

緊張の糸が切れてしまったのか、

口調まで幼い感じになっていた。

多分、本来の彼女はこちらなのだろう。

 

きっと今までも何度もチームに入ろうとして

こうやって失敗をして

入れてもらえなかったのだろう。

それをずっと繰り返していたら、

確かに自分に自信がなくなってもしまう。

 

「なんだ、そんなことで悩んでいたのかよ」

 

なら、彼女に対してスノーフレークはどうするか。

 

「正直に俺たちに言えばよかったんだよ。

 『私はノーコンですけどチームで頑張らせてください!』って」

 

「ウェズ……さすがにそれは」

 

マスターの言葉にレシアも呆れているが、

何より一番ぽかーんとしてるのはメディリスだ。

 

「……もし、そう言ってたらどうなってたの?」

 

恐る恐る聞いてくる彼女に、ウェズはニカッと笑う。

 

「じゃあ俺たちはお前に期待しない。

 だからそんな俺たちを見返すように頑張れってくれ」

 

ウェズは新しくなったカタナを取り出す。

 

「俺とレシアだってまだまだ他のアークスに比べれば、

 駆けだしも良いところの新米だ」

 

シガルガよりは強いとはいえ、

キャスティロンは決して中級者向けのカタナではない。

未熟者が使うレベルのカタナだ。

メディリスの持つライフルに比べれば

玩具と言われても仕方ない。

 

「けどよ、一人前になろうってさ、最近思い始めたんだ。

 そこに至るまでは失敗しても構わねーし、

 色々試していけばいいじゃねーか」

 

「失敗しても、いい……?」

 

「ああ。

 だからもし……

 俺たちと一緒に一歩ずつ前に進む気があるなら」

 

手を差し出した。

 

「スノーフレークは、メディリス=ランドナーを歓迎する」

 

泣き腫らして、目を真っ赤にした彼女は

手を伸ばそうとして、一度躊躇して止める。

悩んでいる彼女にウェズは笑って頷いた。

 

「……よろしく、お願いします!」

 

彼女は、しっかりと手を握った。

そしてまた涙を流してしまう。

泣きだした彼女にウェズは戸惑うが

 

「違うの……これは、嬉し涙だから……」

 

そのまま繋いだ手を引いて抱き寄せて、

泣きじゃくる彼女の頭をぽんぽんと叩いてやる。

 

「ありがとう……ありがとう……」

 

長身の彼女がまるで子供のように泣く姿は、

どこか微笑ましい様子ではあったが、

 

「女たらしですね」

 

氷点下よりも冷たい、レシアの声に

ウェズは反射的に立ち上がっていた。

 

「な、なんだよ……励ましただけじゃねーか」

 

「……なるほどですね。

 ウェズ=バレントスは励ます時に、

 出会ったばかりの女性でも抱きしめるわけですか」

 

まるで道端のゴミを見るかのような視線に、

何故自分は怒られているのかわからないウェズは

とてもとても戸惑いつつも視線を逸らした。

 

「だ、誰でも良いわけじゃねーから……」

 

「つまり、メディリス=ランドナーで

 あれば良かったということですか?」

 

「いや、そういうわけじゃなくてだな……」

 

そんなウェズを救ったのは、

衝撃から立ち直ったライガンだった。

 

「メディリス。

 恐らく武器がまだあっていない。

 何やら思い入れがある武器と見受けるが、

 とりあえずは身の丈に合った武器を使ってはどうだ?」

 

「でも私、メナアリス以外は持っていなくて……」

 

ライガンは頷き、懐から一丁の長銃を取り出した。

 

「ヤスミノコフ3000R。

 ガンナーであるミミの副兵装だったアサルトライフル。

 サイズも一般的で使いやすいのではないか?」

 

銀のグリップと銃身に、木目調のパーツのついた

どこかクラシックな見た目のライフルだ。

出力はメナアリスとは比べ物にならないが、

スノーフレークが行うクエストなら十分だろう。

 

「ライガン、いいのか?

 そいつはミミさんの大切な武器じゃ……」

 

「うむ。

 実は今回のクエストに行く前に渡されたのだ。

 メディリスにちょうど良いのではないか、と言われてな」

 

どうやら同じ射撃職である

ミミには最初からわかっていたらしい。

 

「なんだか……凄く手に馴染む」

 

受け取ったメディリスは

まるで昔から自分が使っていたかのような持ち心地に驚く。

 

「使いやすさを追求したカスタムをしていたからな。

 それでしばらくは慣れるといいだろう」

 

「うん……ありがとう、ライガンさん!」

 

話がまとまったところで、ウェズはみんなに声をかける。

 

「まあ、つーわけでクエストの続きに行くか」

 

砂を払いながら歩き出した。

 

「ウェズ、クエストが終わったら一度話し合いましょうか」

 

「マネージャー、今回は見逃してやっても良いのではないか……」

 

三人の背中にメディリスは「ありがとう」と小さく呟く。

 

「……うん」

 

ウェズが差し出してくれた温かい手、

それを握った自分の手を大事そうに胸に抱えながら

 

「メディリス=ランドナー、頑張るから!」

 

駆けだした。

 


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