スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
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登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html


018.「見返してやろうじゃねーか……!」

『…チーム「黒耀の牙」のマスター……

 レイ=タチバナ……どういうつもり?』

 

通信でトゥリアが相手に問いかけるが、

相手は通信機を切っているのか返事をしない。

 

「名前だけは知っていたが、

 立派な戦績のチームだとは思っていたのに

 若いアークスを狙うとは『黒耀の牙』も底が知れるぞ!」

 

ライガンが油断なくパルチザンを構えながら叫ぶ。

けれど黒髪の剣士、

レイは既に戦う意志はないらしく、

スサノグレンを鞘にしまう。

 

「ふんっ……。

 そんな中途半端な意志でカタナを振るうなら、

 ブレイバーなどやめてしまえば」

 

「テメェにそんなこと言われる筋合いはない!」

 

「ウェズ、動かないで……!」

 

ウェズを抱えたレシアは

傷ついた体をフォトンを活性させることにより癒す。

立てないウェズと支えるレシアの様子に

もう興味をなくしたのか背を向けて立ち去ろうとしていた。

 

「貴様はよくても、

 アザナミは情けない思いをしてるだろうさ」

 

「……お前、アザナミさんの知り合いか?」

 

「……違う。

 あんな奴……私とは関わりがない」

 

初めてそこで敵意以外の感情を見せた。

それは寂寥というべきか……物憂げな表情だった。

 

そこへ遠くから二人のアークスが駆けてきた。

 

「マスター、

 なんかオペレーターから規則違反の警告が凄いんじゃが!」

 

一人は屈強な体をした初老のアークスの男。

耳が長く、ニューマンであるらしい。

白髪交じりのぼさぼさ髪にどこか狸を思わせるとぼけた顔。

華奢な体格が多いニューマンにしては、

ずんぐりとしているアークスだ。

ただでさえでかいのに、

まるでプロテクターのような完全防備の服

「ヴォルカノパッカー」を着用しているので余計に暑苦しい。

後ろに背負っているのは骨を複雑に組み合わせたかのような

どこかスケルトンを思わせる杖「ゴロンロッド」。

 

「もー、なんなのさー。

 こんなところでいらないペナルティもらっちゃって。

 せっかくのS評価だったのに台無しじゃん!」

 

後ろにいたのは小柄なデューマンの女性。

白を基調としたゆったりとした戦闘服

「ハマノイクサ」を身にまとっている。

前に二本垂れたツインテールは薄い青色、

瞳は左がオレンジ、右がパープルと、

中々にカラフルな印象を与える。

そしてこれまた腰につけた武器、

煌びやかな装飾がされた金色のナックル

「パオネリアン」が彼女が

ファイターであると物語っていた。

どこか企んでそうな含みを持っていそうな、

小悪魔というべきか……そんな表情をしている女性だ。

 

「ガンス、ケーラ。

 キャンプシップに戻る」

 

二人を一瞥したレイは、

特に何も感情を見せずに歩き出していた。

 

「あっ、ちょ、待たんか!

 説明を先にせんか!」

 

慌てて追いかけるガンスと呼ばれたフォース。

ファイターのケーラも追いかけようとして、

 

「君、ちょっとカッコ悪いよ。

 もっと強くなった方がいいじゃない?」

 

振り返り、意地悪そうに言い残して立ち去って行った。

 

あまりの突然の理不尽な襲撃に、

ウェズは地面を叩く!

 

「くっそ! 一体なんなんだあいつらは!」

 

「ウェズ、気持ちはわかるけど落ち着いて」

 

彼は悔しげに持ち手だけになったシガルガを握りしめる。

レシアと出会い、チームを作り、

そしてライガンが仲間になった。

あまりに順調に進んでいたから忘れていたのかもしれない。

 

――まだ自分が未熟だということを。

 

レイ=タチバナが自分を

目に敵にしていた理由は不明だが、

もはやそのことはどうでもよかった。

 

「見返してやろうじゃねーか……!」

 

今はまだ、負け犬の遠吠えかもしれない。

けれどいつか、必ずあいつを倒す。

勝ち鬨を上げてみせる。

 

初めて強い意志を持った、それが今。

 

レシアとライガンも、

そんな彼に力強く頷いて見せたのだった。

 


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