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表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
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「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
裂ぱくの雄叫びが森に響き渡る。
まるで仁王像のように立ち塞がるのは
身長2メートルには達するであろうロボット。
ただの機械ではなく、
ヒューマンと同じような「思考」を持ち、
フォトンにより動く「キャスト」と呼ばれる存在だ。
全体は黒を基調としたカラーで、
関節部分はグレー、そして要所要所に黄色のライン。
落ちついたフォルム、
けれど肩のパーツは誇示するように大きいアーマーのようになっている。
シェリフ・シリーズと呼ばれるパーツで構成されたキャストだ。
ライガン=ボルテックス。
それが彼の名前である。
どこか斧を連想させる、威圧的で巨大な得物を振り回していた。
これはハルバードではなく立派な槍であり、
ラムダパシレイオンと呼ばれる汎用性に優れるカスタムタイプ。
ハンタークラスの彼が愛用している武器だ。
周囲にいた原生種たちはその希薄に後ずさりする。
「どうした、かかってこないのか!」
彼が低い電子音声で周囲を威圧する。
(まずいな、突破口が見えない)
猿の原生種ウーダンの向こうに
のっそり巨大な獣が姿を現す。
豹のようなしなやかな体に、
それでライオンのような巨大なタテガミを持つ4足の獣。
それはファングパンサーと呼ばれる森林の王。
非常に素早い俊敏性と、
そしてロックベアに勝るとも劣らない腕力。
森林の中で最も遭遇したくない原生種である。
本来ならば戦わずに逃げるのが得策だ。
だがライガンはその場で槍を構えて迎え撃つ姿勢を崩さない。
いや、彼が動かないのではない
……その場から動けないのだ。
後ろをちらっと見る。
木の陰には意識を失った女性がいた。
彼のチームメンバーであり、
先ほどまで一緒にクエストをしていたのだが
目の前にいる獣の不意打ちでやられたのだ。
ユニットが破損してしまいもはや生身と変わらない。
フォトンで身を守るユニットがなければ、
普段からすればほんの些細な衝撃でも体は耐えられない。
ゆえにライガンは敵の注意を引いて耐えている。
先ほどまでの戦いで
ファングバンサーにもかなりのダメージを与えているが、
それ以上にライガンの損傷が激しい。
右肩のパーツはひび割れ、
左腕は手首より先が吹き飛んでしまっていた。
「いつまで持ちこたえれるか」
弱気になりそうな心を叱咤する。
「我はライガン=ボルテックス。
獣どもよ、何体でも相手になるぞ!」
自分に注意をひきつける。
仲間を守る……全てを引き換えにしても。
無傷のウーダンが4体に、手負いのファングバンサー1体。
満身創痍の自分には絶望的な相手だ。
ウーダンたちが飛びかかろうと身を低く下げる。
迎撃しようとラムダパシレイオンを腰だめに構えた。
一触即発の空気。
「よっし間に合ったぜ!」
そこへ砂煙をあげて何かが突撃してきた。
それは俊足で駆けてきた一人の若者。
「カンランキキョウ!」
一息でライガンと原生種の間に割って入った彼は
イアイでウーダンたちを吹き飛ばす。
「アンタ、まだ無事か!」
一目でわかる、まだ若く新米のアークスだ。
ファングバンサーは完全に格上の相手……
(だというのに何の躊躇もなく間に飛び込んできたのか)
振り返った彼の強気な瞳に、
絶体絶命だと思っていたこの戦場で
ライガンは一縷の希望を見出した。