スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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今日は新しいスクラッチの日ですね。
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表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711


012.「いつまで持ちこたえられるか」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

裂ぱくの雄叫びが森に響き渡る。

まるで仁王像のように立ち塞がるのは

身長2メートルには達するであろうロボット。

ただの機械ではなく、

ヒューマンと同じような「思考」を持ち、

フォトンにより動く「キャスト」と呼ばれる存在だ。

全体は黒を基調としたカラーで、

関節部分はグレー、そして要所要所に黄色のライン。

落ちついたフォルム、

けれど肩のパーツは誇示するように大きいアーマーのようになっている。

シェリフ・シリーズと呼ばれるパーツで構成されたキャストだ。

 

ライガン=ボルテックス。

それが彼の名前である。

 

どこか斧を連想させる、威圧的で巨大な得物を振り回していた。

これはハルバードではなく立派な槍であり、

ラムダパシレイオンと呼ばれる汎用性に優れるカスタムタイプ。

ハンタークラスの彼が愛用している武器だ。

 

周囲にいた原生種たちはその希薄に後ずさりする。

 

「どうした、かかってこないのか!」

 

彼が低い電子音声で周囲を威圧する。

 

(まずいな、突破口が見えない)

 

猿の原生種ウーダンの向こうに

のっそり巨大な獣が姿を現す。

 

豹のようなしなやかな体に、

それでライオンのような巨大なタテガミを持つ4足の獣。

 

それはファングパンサーと呼ばれる森林の王。

非常に素早い俊敏性と、

そしてロックベアに勝るとも劣らない腕力。

森林の中で最も遭遇したくない原生種である。

 

本来ならば戦わずに逃げるのが得策だ。

だがライガンはその場で槍を構えて迎え撃つ姿勢を崩さない。

 

いや、彼が動かないのではない

……その場から動けないのだ。

 

後ろをちらっと見る。

木の陰には意識を失った女性がいた。

彼のチームメンバーであり、

先ほどまで一緒にクエストをしていたのだが

目の前にいる獣の不意打ちでやられたのだ。

ユニットが破損してしまいもはや生身と変わらない。

フォトンで身を守るユニットがなければ、

普段からすればほんの些細な衝撃でも体は耐えられない。

 

ゆえにライガンは敵の注意を引いて耐えている。

 

先ほどまでの戦いで

ファングバンサーにもかなりのダメージを与えているが、

それ以上にライガンの損傷が激しい。

右肩のパーツはひび割れ、

左腕は手首より先が吹き飛んでしまっていた。

 

「いつまで持ちこたえれるか」

 

弱気になりそうな心を叱咤する。

 

「我はライガン=ボルテックス。

 獣どもよ、何体でも相手になるぞ!」

 

自分に注意をひきつける。

仲間を守る……全てを引き換えにしても。

 

無傷のウーダンが4体に、手負いのファングバンサー1体。

満身創痍の自分には絶望的な相手だ。

 

ウーダンたちが飛びかかろうと身を低く下げる。

迎撃しようとラムダパシレイオンを腰だめに構えた。

 

一触即発の空気。

 

「よっし間に合ったぜ!」

 

そこへ砂煙をあげて何かが突撃してきた。

それは俊足で駆けてきた一人の若者。

 

「カンランキキョウ!」

 

一息でライガンと原生種の間に割って入った彼は

イアイでウーダンたちを吹き飛ばす。

 

「アンタ、まだ無事か!」

 

一目でわかる、まだ若く新米のアークスだ。

ファングバンサーは完全に格上の相手……

 

(だというのに何の躊躇もなく間に飛び込んできたのか)

 

振り返った彼の強気な瞳に、

絶体絶命だと思っていたこの戦場で

ライガンは一縷の希望を見出した。

 


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