スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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挿絵とかイラストがそろそろ欲しい今日この頃。
そんなスノーフレークです。
感想とか「自分のキャラ出して欲しい!」みたいなご意見、
大歓迎です。



【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711


011.「今度は俺たちの番だ!」

ウェズとレシアは再び、

惑星ナベリウスの森林に来ていた。

 

「なんかいつも来てたところより暗いな」

 

うっそうと生い茂る木々を見上げながら呟く。

レシアは端末で地図を表示させて見せてきた。

 

「この前クエストに来た場所よりも森の深い場所ですね」

 

今回二人がいるのは普段のクエストではなく、

チームに依頼されたオーダーのためだった。

 

『……スノーフレークに依頼された任務は、

 深部にてダーカーの反応があるかの調査』

 

通信で抑揚のないトゥリアの声が聞こえる。

今日は真面目にアークス本部から掛けてきていた。

余談だが、先日はやはり研修に寝坊していたらしい。

後でコフィーからかなり絞られたんだとかなんとか。

 

「いつものクエストとはどう違うんだ?」

 

『……3か月前にナベリウスで起きたダーカー大量発生。

 それによりチーム「グレアシールド」が壊滅したのは知ってる?』

 

「ああ、知っている。

 確か、俺たちの先輩たちの修了研修の時に起きた事件だよな。

 救済のために駆けつけたチームは全滅。

 研修生もほとんどが犠牲になったって聞いている」

 

『……そう。今二人がいる場所はそのダーカー発生地域。

 あれからそのあたりは……とても不安定な状況だから

 アークスによる定期的な哨戒は必要なの。

 ……ダーカーたちの動きも不自然で注意が必要』

 

「今まで私たちがしてきた任務より、随分と危険なものですね」

 

確かに、今は何も起きてはいないとはいえ、

ベテランチームが全滅したような場所なのだ。

新米二人のチームが任されるのも荷が重いだろう。

 

『……大丈夫。

 ……専属オペレーターの私が常にモニタリングしてるから

 ……それに……事前にテレパイプを支給してる。

 危険になったらすぐにそれでキャンプシップに逃げて』

 

「トゥリアに任せろと言われてもな。

 なんていうかさ、心配しかないんだけど」

 

「ええ……私も同意見です」

 

二人の呆れたような声に、トゥリアは不満そうだった。

 

『……酷い。私は真面目にしていてるのに

 私の何が信用できないのかわからない』

 

「それを本気で言ってることに俺は驚くぜ」

 

レシアはもう諦めているので話を切り上げる。

 

「とりあえず危険があったら逐一報告してくださいね」

 

その言葉にトゥリアは何かに気付いたような声をあげた。

 

『……あ。

 ……すぐそばに原生種の反応が』

 

弾かれたように2人は左右に跳ぶ。

 

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……!

 

するとそこに緑色の玉が砂煙をあげて

凄い勢いで横切って行った。

 

『……ガロンゴ。普段は温厚だけれど、

 回転してくる時は完全に敵愾心が振り切ってるから気を付けて』

 

「もっと早く言えよ!」

 

思わず叫ぶが、彼女に文句を言うのは後だ。

 

「フォイエ!」

 

レシアがすかさずタリスから炎のテクニックを起動する。

火の玉は止まってのそのそしていたガロンゴに直撃するが、

 

「駄目です。皮が厚すぎます!」

 

「カタナも刃が通らなさそうな感じするな」

 

再び回転して突進してくるが、

単純な攻撃だからさすがに当たることはないだろう。

乱戦の中ならまだしも、

向かい合っていれば脅威にはならない。

 

しかし問題はその堅さと耐久力だ。

 

『……ガロンゴの弱点はお腹。

 ……そこは皮も薄いみたい』

 

トゥリアがデータを調べながらアドバイスをくれる。

 

「そういうことなら……!」

 

ちょうど良いPAをアザナミから教えてもらったばかりだ。

 

「レシア、腹が見えたら頼むぜ」

 

「……わかりましたが、大丈夫なのですか?」

 

「任せろって!」

 

壁にぶつかってのろのろしているガロンゴに駆け寄る。

 

「見てろよ」

 

カタナに収めたディスクを起動して、一気に抜刀する。

 

「カンランキキョウ!」

 

眼にも止まらぬ居合の一閃。

カタナから放たれたフォトンが

ガロンゴの足元を通り抜ける。

一瞬での攻撃で甲殻虫は地面から浮かび

その勢いのまま仰向けに転がった。

 

そこにすかさずにレシアはテクニックを叩きこむ。

 

「ザン!」

 

放たれた3つのカマイタチがガロンゴの腹を切り裂く。

 

――!

 

先ほどまでとは打って変わって、

たったテクニック一発で

唸り声のような鳴き声をあげてガロンゴは息絶えた。

 

「思ったより使いやすいPAなんだが……

 ちょっと威力が心もとないか」

 

「いいじゃないですか。

 威力だけがPAの価値ではないでしょう。

 現にこうして倒せたんですから」

 

「そうだな」

 

二人は満足げに武器をしまう。

 

『……私がきちんと弱点を教えてあげたから、

 ということを忘れないで』

 

不満そうなトゥリアの声に

 

「初めてトゥリアが役に立った気がするな」

 

「とはいえガロンゴの接近を

 もっと早くに知らせてくれていれば慌てることはなかったのですけれど」

 

『……なら勝手にすればいい。

 ……私はおやつを食べてるから』

 

呆れた口調の2人にますます補佐官見習いは機嫌を損ねるのだった。

 

「さて、もうしばらく歩き回ってみるか」

 

周囲を見回しながら歩き出そうする。

 

『……待って!』

 

その足をトゥリアの切迫したような声が止めた。

初めて聞く彼女の叫び声に、

ただ事ではないと直感し通信に集中する。

 

『これは……エマージェンシートライアル。

……近くでアークスが救難信号を出してる。

 ……なんだか…大きい原生種の反応もそこに』

 

「近いのですか!」

 

『……近い。そして周囲にはスノーフレークしかいないから、

 急がないと……

 二人のうち一人のアークスの生体反応が弱いから、

 多分……危険な状態』

 

大型の原生種が一体なんのかはわからないが、

自分たちしか行けないのならば行かない理由はない。

 

自分たちは前回、

ログベルトに襲われている時に見知らぬアークスに助けてもらった。

ならば次は、自分たちの見せ場ではないだろうか。

 

二人はまだまだ新米でできることは少ないし、

フォトンだって上手く扱えているとは言い難い。

それに戦う理由だって些細なことで、

ましてや信念みたいなものはまだない。

 

「レシア!」

 

「大きな声を出さなくても聞こえます、ウェズ!」

 

二人は頷きあって、トゥリアの指示する方向へ駆けて行く。

 

「今度は俺たちの番だ!」

 

まだ至らないことだらけ……、

けれど、できることはしたい。

ウェズとレシアにも、そんな心が芽生えていた。

 


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