スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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システム【アインのパートナーカードを入手しました】


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103.「困った時はお互い様だからな」

「勝った……か」

 

ウェズは確認するように周囲を見回す。

 

「……まだ敵に余力はあった。

 しかし退いたのだから、勝利だ」

 

壊れた車に寄りかかっていたアリスが頷く。

彼女はL&K14コンバットを腰のホルスターに入れ、

血の滲む脇腹を軽く押さえながら

ウェズたちに背を向けた。

しばらく歩いた後、立ち止まる。

 

「……その、ありがとう」

 

肩越しに振り返った彼女の横顔は

少し照れたような表情。

そしてそのまま立ち去った。

まるで一匹狼のよう。

彼女が偶然ヒューナルと

先に交戦してくれていなければ

ウェズたちも危険だっただろう。

彼女には感謝しなければならない。

 

「しかし、何故ファルスヒューナルは

 こんな場所にいたのでしょうね

 何もこんな既に廃棄されそうな

 アークスシップで待ち伏せなどしなくとも」

 

ナイトメアが凹んだ装甲をさすりながら呟く。

「さあ?」と横に座り込んでいたケーラは肩を竦める。

 

「破壊して回っていたって感じじゃないじゃん?

 アークスを狙っていたんじゃないの?」

 

「うむ、確かにな。

 明らかにアークスを狙っている気がした」

 

ライガンも頷いて答える。

アインたちのチームメンバーが襲われた時も考えると

確かにそう捉えてもいいかもしれない。

 

「まあけれど……

 これで、あいつらも少しは気が晴れるかな」

 

アインはバイオトライナーを抱えるようにして

折れた電柱に背を預けて静かに息を吐いた。

 

「……ウェズ」

 

そこで足を広げてちょこんと座っていた

アンジュが少し首を傾げて声をかけてくる。

 

「さっきのって、アークスを探してたの?」

 

「そうじゃねぇか。

 アークスはフォトンの反応があるから

 ダーカーから見ればわかるだろうし」

 

「アークスなら誰でも良かったの?

 それとも、誰かを?」

 

何気ない疑問。

けれどその言葉に全員が押し黙ってしまった。

ダークファルスヒューナルは最初から

本気ではなかったような気がする。

まるでこちらを試しているかのような、

様子を伺っていたような節すらある。

最後こそ、超遠距離からの狙撃で不意を突いたが

あれがなければ今頃は全員、

@家パーティの面々ように医務室送りだ。

 

(……いや、そもそも奇妙な話だ)

 

重体は負っていたものの、

死亡者が誰もいなかった……

何故、トドメをささなかったのか。

 

「まるで、誘い出されたような気がするな」

 

現にこうしてアークスたちが増援に来ている。

アインが少し考え

 

「もしかしたら、私たちも『餌』だったのかもしれない」

 

そう言って立ち上がって歩いてきた。

 

「アークスの『誰か』を探している……

 それを引っ張り出すために、

 ヒューナルはこんな回りくどいことをしていた」

 

「推測に過ぎないけどな」

 

その『誰か』とは六芒均衡なのか。

あるいはもしかしたら……

あのエルダーにトドメを刺したあのアークスなのかもしれない。

 

「考えても仕方ないさ。

 ウェズ……今回は、本当にありがとう。

 私一人じゃどうにもならなかった」

 

差し出された手をしっかりとウェズは握り返した。

 

「困った時はお互い様だからな」

 

そう言って笑う。

その顔を見てアインは視線を逸らし、

明後日の方向を向きながら照れたように

頬を書きながらポツリと呟く。

 

「その……なんだ。

 アークスになってからは初めて会ったけれど、

 候補生の時からは想像できないくらい、恰好良くなった」

 

「え?」

 

「……なんでもない。

 また一緒にクエストをする機会を楽しみにしている」

 

問い返したウェズには答えず

アインは足早に帰って行った。

ウェズはなんといえばいいのか、

表情を決めかねていたが、

 

『……楽しそうですね』

 

通信機からレシアの冷たい声に

別に後ろめたいことなどないのにビクッとした。

 

『ウェズさん、動かないでくださいね』

 

続いてメディリスの声。

すると顔面を何かが一瞬よぎる。

 

ドオンッ!

 

近くの壊れていた車が吹き飛んだ。

そこにはダーカッシュがいたらしく、

断末魔をあげて霧散していった。

 

……わざわざウェズの目の前を

狙撃しなくてもやりようがあったはずなのだが。

そんな様子を見ていたナイトメアが、

苦笑しながらこう忠告した。

 

「女難の相が出てますね」

 

ウェズは途方に暮れて空を見上げたのだった……




だいぶんに更新速度が下がってしまいましたが、
これで市街地緊急編は一応終わりとなります。
こういう単発エピソードでEP1.5はしていこうかなぁって感じですね。
次はどんな話にすべきか・・・

表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
EP1が終わり、EP1.5は EP2との間の時間軸となります。

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なおイラストとか挿絵書いてくれる人は万年募集中です。

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