スノーフレーク   作:テオ_ドラ

104 / 111
ヒューナル戦、これでいいのかと読んで思われるかもしれない。
しかしそれは作者も思っていることなのである……
ヒューナルを強くし過ぎたのです……


【挿絵表示】



101.「今だ!」

「ふんっ!」

 

水平に振られた巨大な剣が空を切った。

同時に発生した紫の刃が放たれる。

 

「任せろ!」

 

ライガンが前に出て

ラムダライゼノークを回転させる。

広範囲に広がる剣激波は非常に回避がし辛い。

一発避けたしても繰り出される連撃の全てを

見切るのはまずもって不可能だ。

 

ガンッ!

 

だがそれも広がる前に防げば良い。

単純な話ではあるが……

 

「うおおおおおおお!!!」

 

まるで襲い来る津波を一人で押し留めるような

そんな無茶な行為でもある。

激しい音を立ててライガンの槍は悲鳴を上げ、

ヒビが入りつつもまだ耐えていた。

 

「マッシブボディ!」

 

そしてライガン自身も

衝撃に体が吹き飛びそうになるのを

全身を使いただ耐え凌ぐ。

槍だけでなくライガン自身も

長くはもたないのは明らかだ。

 

「……っ!」

 

その時、物陰から飛び出す人影。

ここにいた6人以外のアークス……

それはアリスだった。

傷を負い戦線からは離れていたが

決して逃げるためではない、

なにか……チャンスになる瞬間を探していたのだ。

 

「チェイントリガー!」

 

車を踏み台に跳び、

更にビルの壁を蹴りあがり、

空中から特殊弾頭を放つ。

狙いはソード……

果たしてその選択が正しいかはわからない。

だが、本体を狙っても致命傷にならない予感がしたからだ。

 

「ワンポイント!」

 

フォトンの小さな塊はソードの中ぐらいにあたり、

アインはすかさずその場所に対して

バイオトライナーの弾丸を精確に当てて行く。

動き回られると難しいが、

ヒューナルは攻撃をソードで防ぐという選択をした。

チェイントリガーの弾丸が圧縮されていく様は

アークスでなければ把握できない。

相手はまだこちらの意図に気付いていないようだ。

 

「フラッシュサウザンド!」

 

――この一瞬に賭ける。

 

その場にいたアークスたちは決意した。

ケーラはありったけのフォトンを両拳に込め、

ソードに連打を叩きこむ。

 

「ソニックアロウ!」

 

ナイトメアはフォトンの真空波を放ち

 

「スラッシュレイヴ」

 

ガンスラッシュのアンジュは

眼にも止まらないステップを踏みながら

左右から連撃を叩きこんでいく。

 

ピピピピピピッと甲高いフォトンが凝縮されていく

アークスたちにだけ聞こえる音……

自分たちの力では傷をつける程度がやっと、

ならば恐らくガンナーのチェイントリガー以外に

この場を切り抜ける術はない。

 

ざっ……

 

ウェズは一度深呼吸してから

しっかりと大地を踏みしめる。

だからこれで決めるしかない

 

カタナに手を添え、

一気に引き抜きフォトンを放つ!

 

「ハトウリンドウ!」

 

居合いと同時に放たれた衝撃波が

ソードを直撃する。

それが引き金となり

フォトンのトリガーは一際、眩く輝いた。

 

アリスがヒューナルの死角、

空中から懐に飛び込む。

最も危険な場所……けれどだからこそ意味がある。

 

「サテライト……エイム!」

 

零距離。

L&K14コンバットを押し当てて引き金を引いた。

 

「……ぬぅ!?」

 

そこでやっとヒューナルは

アークスたちの意図に気付いたらしい。

だが遅い、アリスの双機銃から放たれた強烈な一撃は

凝縮されたフォトンの塊に引火させて……

 

パキンッ!

 

ソードをボロボロに砕いた。

さすがに折るまではいかなかったが、

しかし紫色の刃はまるで

虫歯でボロボロになった歯のようになり

いかにヒューナルの武器であっても

もう使い物にならないだろう。

 

そのボロボロになった剣をヒューナルは

無表情に見下ろし……

 

「ふふふ……」

 

剣を捨てて、大きな声で笑い出した。

 

「ふはははははははははは!」

 

心底楽しそうに、堪えきれないように。

 

「面白い、面白いぞ烏合!」

 

するとヒューナルは両手の拳をガチンッと叩きつけ、

力を込めだした。

体内からダーカー因子が本流の如く

激しく溢れだして肩や頭から、新しい棘が現れる。

変身、というほどではないが、

新しい「モード」に切り替わっていくようだ。

両手を広げた時には、

先ほどまでより更に威圧的な姿へと変わっていた。

胸にあるダーカーコアが、

より一層妖しく輝きを増している。

 

両手を広げて無防備に立つ。

自分の剣を折ったアークスたち、

ゆっくりを見回してニヤリと笑う。

だがアークスたちは先ほどの攻撃で

フォトンを使いつくしてしまった。

自然回復をするには少しの時間を必要とするが、

とてもこの相手が待ってくれるとは思わない。

 

「……む?」

 

悠然と歩きだそうしたヒューナルは、

そこで動きを封じようとするように

自分に絡んでいるワイヤーに気付いた。

 

「まだ私は戦えるぞ!」

 

それは斬撃を防いで満身創痍となったライガンだった。

少し離れたところからラムダハイペリオンを飛ばし、

ヒューナルの体に巻きつけて引っ張っている。

 

それは無意味だとヒューナルは思っただろう。

そんなちゃちなワイヤーでは止められないし、

なによりワイヤーを持っているライガンも

ヒューナルから逆に逃げれないからだ。

 

ゆっくりとライガンの方向へ振り向き、

そして

 

「……メディリス。今だ!」

 

ウェズの叫び声。

 

 

ピシッ……

 

 

小さな音。

ヒューナルは一瞬、何が起きたかわからなかった。

違和感を感じた部位、自らの胸に視線を落とすと

唯一の弱点ともいえるダーカーコア、

その横に小さな穴が空いている。

そこからコアがヒビが入っていたのだ。

辛うじてヒビだけで済んでいるが

僅か2センチ横であれば

ヒューナルのコアは貫かれていただろう。

 

「……」

 

顔を上げる。

身体能力に優れたアークスといえども

肉眼では見えないその先……

ビルの屋上を見上げた。

 

「ふははははは!」

 

ヒューナルであるならば見えたのだろう、

自分を射抜いた狙撃者が。

そして同時に悟る。

自分がこの場所に誘い込まれ、

隙を見せるたった一瞬、

それをアークスたちは狙っていたのだと。

 

全ては、この一撃の為にあったのだ。

 

「今回は貴様たちの勝ちにしておいてやろう」

 

体が浮かび、姿が消えていく。

 

「良き闘争であった」

 

一瞬で、圧倒的なまでの敵性反応が消える。

その場にいたアークスたちは

力が抜けて尻もちをついたのだった。

 




悠々と剣を抜いたのに、
全然猛威を振るう前に倒されてしまったヒューナルさん。
何故アークスたちは剣を狙ったのか……
一応、「隙を作るため」というちょっと納得しづらい理由で理解しておいてもらえればなと。ヒューナルを強くし過ぎたのである……。
一応、健闘に敬意を示し、今回は撤退したらしい。
次回はEP1.5になってから一度も登場していない
メインヒロインとサブヒロインが
この戦場で何をしていたかの話です。
忘れていたわけではないのです ほんとほんと

表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
EP1が終わり、EP1.5は EP2との間の時間軸となります。

気軽に感想を書いてくれると作者喜びます。
感想欄でなくてもメッセージ機能なり
ツィッター(@neko_neko_xojya)でも大丈夫です。
なおイラストとか挿絵書いてくれる人は万年募集中です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。