スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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祝100話目!
超頑張った、私!


【挿絵表示】



100.「ならば……全力で潰すのみ!」

距離をあけてもすぐに詰められる。

ウェズたちは何度もそんなことを

繰り返しつつもなんとか逃げていた。

 

「無為!」

 

ヒューナルが思い切り地面に右拳を叩きつける。

どれほどの威力なのか、

その衝撃は大地を大きく揺らす。

 

「ウェズ、気を付けろ!」

 

敵との距離は30メートル、

どんな攻撃であっても避けるには

十分すぎる間合いと言えるだろう。

だがアインの叫びに

ウェズは回避行動を取る。

 

「愚鈍!」

 

ヒューナルの目が一瞬光った。

それと同時に圧縮されたダーカー因子が

地走りのごとく襲い掛かってくる。

その数は3つ。

それは非常に予測しづらい複雑な軌道。

 

「くっそ!」

 

横に跳んだウェズの横を

大地を削る音と共に衝撃波が過ぎる。

想像以上の速度にウェズは舌打ちをした。

回避行動を早めにとっておかねば

避けきれずに直撃していただろう。

赤い光は周囲のビルに直撃し、

轟音と共に破壊していた。

 

ブンッ!

 

横からお返しとばかりに

ナイトメアが自動車を持ちあげて

思い切り投げつけた。

キャストのハンターならではの怪力と言えよう。

風斬り音を立ててヒューナルに車は飛んでいくが、

 

「脆弱!」

 

バンッと甲高い音共に

車は腕の一振りで吹き飛ばされる。

なんという力であることか。

 

「……そろそろか」

 

このままではジリ貧……

とはいえウェズたちも

ただ闇雲に逃げていたわけではない。

 

「ストレイトチャージ!」

 

既に場所は最初に「終着駅」と

決めていた交差点に辿りついていた。

物陰から飛び出してきたケーラは、

全身をバネにして思い切り突っ込み

パオネリアンを脇腹に叩き込む。

 

「クセイゼンシューラク!」

 

逆方向からもアンジュが

バウガーディンの切っ先を突き出し飛び出す。

挟み撃ち……

回避する間もなく間もなく攻撃を叩き込むが、

 

「ぬるい!」

 

ビクともしないヒューナルは

攻撃されたままの姿勢から強引に回し蹴りを放つ。

アンジュは器用にバックステップで避け、

ケーラはギリギリのところでスウェーで仰り回避した。

 

「バンタースナッチ!」

 

二人へ追撃をしようとしたヒューナルを止めるように

背後に回りこんでいたライガンが

ラムダライゼノークで2発斬撃を浴びせる。

直撃させたが深追いさせずに

すぐに後ろに跳んで距離をあけた。

 

「合流したか!」

 

ウェズは助かったとばかりに声をあげるが

 

「ウェズ、こいつ……

 私たちには荷が重いと思うんだけど!」

 

対照的にケーラは悪態をつく。

不意を突いた必殺の一撃だったというのに、

まるで平然としているからだ。

ナックルとガンスラッシュが刺さったところは

少し皮膚が削れ落ちていたが……

ゆっくりと再生していっているようにも見える。

 

「これは困りましたね……」

 

ボディが大きく陥没しているナイトメアも

苦しげな声で呟く。

たった一撃でキャストの分厚い装甲もこの有様。

生身の面子では掠るだけでも致命傷になりかねないだろう。

 

交差点の中心に立つヒューナル。

ウェズたち6人は取り囲んではいるが、

追い詰められているのはこちらの方だ。

 

「よもや終わりではあるまい!」

 

ヒューナルが拳を打ち鳴らし、

挑発するうように声をあげた。

ウェズたちは視線だけで意思疎通をする。

例え致命打を与えられなくても

一斉に仕掛ける以外に方法はないと考えたのだ。

 

だが……

 

「浅薄、脆弱、無為、弁えよ!」

 

高らかにヒューナルは叫び声をあげた。

 

「応えよ深淵、我が力に!」

 

まるでそれに応えるように

周囲に漂うダーカー因子が共鳴し、

ヒューナルの両の拳へと集まってく。

眩いばかりの赤い輝きは鮮血のごとく、

 

「まずい、全員離れろ!」

 

危険を察知したアインの叫びに

一斉に全員が後ろに跳び退る。

 

「遅い!」

 

ドオンッ!

 

両手を上げて拳を合わせ、

勢いよく地面へと光を叩きつけた。

先ほどまでとはけた違いの衝撃。

近くにあった車が地面から跳ねるほどだった。

ヒューナルを中心にまるで渦が広がるように

幾重の赤いウェーブが周辺全てを薙ぎ壊していく。

 

「ぐっ!」

 

掠ったライガンが苦しげな声をあげる。

ただ少し当たっただけだというのに、

ダーカー因子がこびりつき

ライガンの体を赤く染めていく。

フォトンで防護しているアークスは

ダーカー因子に対する強い抗体がある……

だというのにお構いなしに

ヒューナルからのダーカー因子は

体を急速に浸食してきていた。

 

「……んっ!」

 

アンジュが腰につけていたカプセルを投げる。

空中で弾けたそれは周囲にフォトンの粒子をばらまく。

ソルトアドマイザー、フォトンを活性化させて

アークスの状態異常を回復させるものだった。

対応が早かったからかライガンから

ダーカー因子は消え去った。

 

「すまない……!」

 

足の遅いライガンでは回避も難しいようだった。

連発されると危険だろう。

そんな攻撃を避けるだけで精一杯の

ウェズたちを無感動に見回し、

ヒューナルはつまらなさそうな声をあげた。

 

「脆弱……やはり貴様らでは我の相手にならん。

 ヤツはどこにいる……!」

 

果たしてそれは誰のことなのか。

なんとなくではあるが、想像はできる……

しかし

 

「言ってくれるじゃねーか。

 一度ならず二度もアークスに負けた癖にな!

 お前は俺たちがここで倒す!」

 

ウェズは吼える。

手はスサノグレンに添えて

油断なくヒューナルを睨む。

 

勿論、自分たちが過去に

倒したわけではないのはわかっている。

けれどフォトンの力……

アークスであるならば

ダークファルスであっても倒せることは

あの戦いで証明されている。

 

「余裕ぶっこいていられるのも、

 今のうちだけだよ、アンタ」

 

ケーラも手をクイクイッとして

わざと挑発するように告げる。

 

「うむ、

 【巨躯】ほどの体積も力もない……

 ならば我々であっても勝てる」

 

ライガンがドンッと

槍の石突を地面に打ち鳴らす。

 

「……うん」

 

アンジュが短く頷き

バウガーディンの切っ先を向ける。

 

「そうです、私たちはアークスなのだから。

 退くことはしないのです」

 

ナイトメアはタルナーダを

がっしりと正眼に構えた。

 

「……仲間たちを

 あんな目にあわせたお前を私は許さない」

 

そしてアインはピタリと照準を

ヒューナルの額にあわせた。

 

「……ふん」

 

そんなアークスたちを見回し、

ヒューナルは鼻を鳴らした。

 

「ならば……全力で潰すのみ!」

 

頭のトサカのような、

あるいは尾びれのような……

それを掴むとヒューナルは勢いよく引き抜いた。

シャキン……

甲高い金属音。

外側の弧の部分に淡い紫色のギザギザの刃が現れる。

その形状はまるでシャムシール、

だが大きさが桁違いであり

ナイトメアのタルナーダを優に超すサイズだ。

 

「ぐっ……」

 

みなが息を飲む。

剣を抜くことがヒューナルの本気なのだろう。

ヒューナルの持つダーカー反応が、

膨大に膨れ上がった……




倒すところまで書こうかと思ったんですが、
抜刀してからももう少し戦わせようと
思って中途半端なところで終わりました。
アリス?
ちゃんと見せ場があります、忘れているわけじゃないのです

表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
EP1が終わり、EP1.5は EP2との間の時間軸となります。

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なおイラストとか挿絵書いてくれる人は万年募集中です。

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